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第九章―世界の向こう側―

9−6・転移門

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【デゼスポワール大陸】
―――双竜島―――

 桃矢とノアは古代兵器オヘビウェポンを打ち倒し、封印の壺へと封じ込めた。
 そして転移門をくぐり再びデゼスポワール大陸双竜島へと向かう。

「ぬ……桃矢よ、赤蛇の姿が見えて来たぞぃ」
「あぁ、ようやくこれで大陸の安定が保たれるはずだ」

 桃矢は双竜島にある洞窟の前へと降り立つ。そこは古代兵器オヘビウェポンが封印してあった場所。

『おぉぉぉ……桃矢かい、よくぞ戻って来てくれた……首を長くして待っておったぞ……』
「赤蛇!待たせたな!オヘビウェポンは無事に封印が済んでるぞ!」
『何から何まで感謝致す……おや?その封印はいずこで?』
「あぁ、これは赤蛇の……」

 桃矢は赤蛇に事情を説明し、赤蛇の子供が封印をしてくれた事を話した。

『そうじゃったか……そうか……ようやく我が子は帰って来れたのじゃな……』

涙を浮かべる赤蛇。

「ぬ……時間はかかるじゃろうが千年の後、また会えるじゃろうて。赤蛇よ、しばしゆっくりと休むが良い」

 ノアに促され、赤蛇は壺を洞窟内へと大事そうにしまった。
 そして赤蛇も死者の泉へと帰っていく。

「ようやく……終わったな」
「ぬ……桃矢よ、ご苦労じゃったな。温泉にでも浸かって帰ろうではないか」
「ははは!そんな呑気な事を言ってたらまた転移門が閉じてしまう」
「ぬ……それは困るのぉ……シシシ」

 桃矢とノアは赤蛇を見送った後、封印の洞窟の見張りに事情を説明し各国への伝達を任せる。
 そしてエスポワールへ帰ろうとした時だった。

「桃矢様っ!桃矢様!!」

聞き慣れた声が遠くからする。

「ミーサ?ミーサはエスポワールにいるはずだが……?」
「桃矢様っ!」

走ってくるなり、桃矢に抱きつき泣き出すミーサ。

「会いたかった!会いたかった!会いたかった!」
「ミーサなのか!?どうしてデゼスポワールに?」

 レディスもクルミも、ミーサにつられて駆け出したものの、行き先が無く何気にノアに抱きつく。

「ぬ……ぬぬぬ……」
「ノアおばさま!」
「ぬっ!おばさまではないっ!まだまだピチピチじゃ!」
「ピチピチのおばさまっ!」
「ぬぬぬ!」

 ノアはこういう事には慣れていない。レディスとクルミもお互いにどうしていいかわからないまま、桃矢とミーサの動向を見守る。
 ミーサが事情を説明すると寂しそうな顔をする桃矢。

「そうか……姉さんは残るのか」
「はい……でも!また会えますよ、必ず」
「……そうだな。わかった。帰ろう、僕達の世界へ」
「はいっ!」

 こうして無事に再会できたミーサとレディスとクルミはエスポワールへと帰っていく。

【エスポワール大陸】
―――トメト村―――

 転移門を無事にくぐり、トメト村に戻ってきた桃矢達。早紀達もトメト村で帰りを待っていた。

パチパチ……

 焚き火を囲んで夕食を取り、桃矢達は早紀達とエスポワール大陸の憂いが取り除かれた事を喜んだ。

――深夜

パチパチ……

「ぬ……眠れないのかぇ?」
「あぁ……ノアか。体は疲れているんだが、どうも頭が冴えて眠れない」
「ぬぅ……他の者は皆、はしゃぎ疲れて眠った様じゃのぉ……」
「そうだな、久々に楽しい時間を過ごせた気がするよ」

パチパチ……

 焚き火の火は小さくなり、時々ノアが小枝を放り込む。

「ところでノア、あの魔法文字のあった転移門なんだが……」
「ぬ……わしも今、それを考えておった。転移門を隠した意味、そしてこの村に転移門があった偶然……」
「……これは推測なんだが、愛がこの村で封印されていた事に関わりがあるのだろうか」
「ぬ……それはわからん。が、その棺の下に転移門があるなぞ、偶然ではなかろうな……」
「あぁ……それにあの転移大門が消滅したタイミング。何者かが僕らを誘導している様にも思えた」

パチパチ……

「ぬ……そんな事が出来るのは月読様くらいしかおらぬよ。元々、デゼスポワール大陸は月読様の作られた別荘みたいなもんじゃからのぉ……」
「おいおい、エスポワール大陸と同じ広さの別荘ってケタが違うな。さすが神様……か」

パチパチ……

「しかし、今回の赤蛇の暴走には参ったよっと」
「はははっ!言えてる。もう少しで世界が終わるところだっ――」
「ぬぅ……確かにの、転移門が消えかけた時はどうな――」

『タケミカヅチッ!?』
『タケオッ!?』

「はははっ!ノアリスも、桃矢も元気そうで良かったよっと」

バチバチッ!

 閃光で辺りが一瞬明るくなり、徐々にまた元の暗闇へと戻っていく。

「急にどうしたんだ?あれから姿を見ないからてっきりデゼスポワール大陸にいるもんだと……」
「ははは!色々忙しいんだよっと」
「ぬぅ……お主はいつも唐突に……」
「ノアリス。僕がここに来たことは誰にも言わないでくれよっと。ちょっとあるお方から頼まれ事をしているんだ」
「ぬ……お主が、あるお方なんて言うのは数人しか心当たりがないがのぉ」
「ははは!あんまり勘ぐらないでくれよっと……おっと。日が登るまでに行かないといけないからまたよっと!!」

バチバチッ!

「ちょ!タケミカヅチ!」

 そう言うとタケミカヅチはまたどこかへと飛んでゆく。

「相変わらず忙しい神だな……」
「ぬ……昔から変わらぬよアイツは……」

――翌朝

 村の中央にある祭壇の前に人々が集まっていた。桃矢はノアと祭壇の更に下にある転移門を確認しに行く。

カツンカツンカツン……

「まさか転移門が……」
「ぬ……消えておるの……」

桃矢は地上に戻り、早紀達にもこの事を伝える。

「おや?どうかされましたか?マイア神様、桃矢様達もお揃いで……」
「村長さん!あっ、今はバナナ町の町長さんでしたか」
「どっちでも構わんよ、ふぉふぉふぉ……」
「ぬ……桃矢、気が付かぬか?こやつ鬼の匂いがするぞ?」
「何だって!」

カチャ……

身構える桃矢。

「二人共待って!村長さんは昔はジオナさんに仕えてた鬼族なの!でも封印された私をずっと守ってくれてた!敵じゃないわ!」
「愛ちゃん!」
「それに皆をたくさん助けてくれたじゃない!」
「あぁ……すまない、愛。つい身構えてしまった。村長さんもすまない」
「ふぉふぉふぉ……構わぬよ。転移門の事を調べたいのじゃろ?皆、祭壇に来るが良い。そこで話をしようかのぉ……」

そこにはニヤリと笑う村長がいた。
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