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第五章―生と死と―

5−6・悪魔の所業

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―――帝国城―――

 外は暗闇に覆われ、月の明かりと街の街灯のみで人影はない。人影がないことでやけに不気味な感じがする。
 僕とノアは愛の行方を追って、帝国首都マルクの帝国城へと来ていた。

「ノア……こんなに人気が無いなんて……」
「ぬ。おかしいの……人の気配がせぬ。昼間は生気が無くとも、人の気配はあった……あの悪魔、一体何を企んでおるのだ」
「桃矢様……」
「カナデか、どうした?」
「実は先程、チホさんと思われる人物が愛様達を連れて転移陣を使用した模様です。行き先は不明です」
「転移陣?いったいどこへ……」
「ぬ……まさか。神の山か……少々危険なかほりがしてきたの……急ぎ戻った方が良いかもしれぬ」
「神の山?あそこは転移陣が敷かれてる神域と聞いたが」
「ぬ。神域も神域じゃ。悪魔が封印されておるのじゃからな」
「な!?悪魔!!」
「ぬ。だから神の山じゃ。誰も近付けさせぬよう、カモフラージュされておる」
「でも、そうだとして愛達をそこへ連れて行く意味は……?」
「ぬ。魂の生贄じゃな。愛とダリアという娘の魂は美しかった。あと可能性があるのが……マキか」
「カナデ!!マキさんの……郊外の本屋に向かってくれ!僕たちは先に神の山へ向かう!」
「はっ!お任せを!マキさんとやらが見当たらない場合、我々も後を追います!」
「任せた!と、早紀達にも連絡を!神の山で落ち合う!」
「御意!」

 僕とノアは急ぎ、カナデに教えてもらった城の転移陣を探す。そこから神の山へと向かう――

――オニノ城――

「――えぇ、わかったわ。カナデありがとう!」
「早紀ちゃん!愛は!?」
「舞、愛達は神の山に向かったそうよ。桃矢達も追いかけてるそうなの。私達も行きましょう。ミーサ、留守をお願い出来るかしら?」
「早紀様、わかりました。気を付けていってらっしゃいませ!」
「えぇ。舞、メイ、行きましょう!」
「うんっ!」
「ハイデス!」

早紀、舞、メイも時を同じく、神の山へと向かう。

――神の山――

ゴロゴロゴロ……

 雷が鳴り、今にも雨が降り出しそうな神の山。先程まで見えていた月明かりも雲に隠れ辺りは真っ暗だった。
 神の山の裏手。ここにも一つの転移陣があった。それはかなり古く、誰にも気付かれない洞穴の中……そこに桃矢とノアは転移される。

「困った。暗くて何も見えない……」
「ぬ。人間……お主は鬼か。どちらにせよ不便じゃのぉ……よっと」
「ぬあっ!?」

ノアの第三の目が光る。

「……その目ってヘッドライトなの?」
「ぬ?ヘッドライトとはなんぞ?」
「あぁ、頭に付ける電球みたいな……」
「ぬ……頭に電球付けたら、まぬけな姿になるではないか?ピコーンみたいな……そうまるで、ピコーンみたいな」
「二回言わなくてもわかるから……それよりここは神の山なのか。禍々しい感じがする」
「ぬ。神の山の深部に近いのぉ……かつてここは……」

グラグラグラ……

ノアの話の途中で地面が揺れる。

「地震か……崩れたらやばいな」
「ぬ。桃矢よ、向こうに明かりが見えるの……」
「ホントだ、行ってみよう」

 洞穴の中をノアのおでこの明かりを頼りに進んでいく。洞穴内は冷たく、入口方向から冷たい風が流れてくるのがわかる。

カツン……カツン……カツン……

明かりがある方へ向かって歩いていく。

「誰かいるな……」

明かりがある眼下の広場らしき所に人影がある。そして聞いたことのある声が聞こえ――

「魔王よ!今ここに汝の魂を開放する!!」

ゴゴゴゴ……グラグラグラ……

地響きが聞こえ、また地震が起こる!

「愛っ!?」
「ぬ!桃矢!ちょっと待て!」

 ノアに腕を掴まれ、踏みとどまる。愛とダリア……そしてマキが十字架に縛られ気を失っている。
 そして祭壇の上にはチホさんの体を乗っ取った悪魔、ともう一人女性の姿がある……チカゲさんだ。

「何てことだ……チカゲさんまで悪魔の手下だったとは……愛がさらわれたのもチカゲさんの仕業なのか……」
「ぬ。本屋の娘も入れ違いでさらわれたのじゃな。少々分が悪いのぉ。ここは様子を見て一度引くのも――桃矢っ!待たぬか!」

ノアの声を背に聞きながら、広場へと降り立つ。

「おいっ!悪魔ヤロウ!お前何をしている!」
「……そろそろ来る頃かと思ってイタ。おい、殺ってしまえ……」
「はっ!!」
「こいつらの殺気は!ムルーブにいた悪魔の手下か!」
「我らはアドヴァン様の使徒……オズとメズ!先の借りは返させてもらう!!」
「悪魔ぁぁ!!何度来ても無駄だぁぁぁ!!」

キィィィン!!キィィィン!キィィィン!!

洞穴の広場で剣のぶつかる音が反響する!!

「メズ!!」
「はいよっ!兄様!!」
「挟み打ちかっ!ならば……」

常闇の陽炎トコヤミノカゲロウ――』

 桃矢の姿が消える。ノアに教わった闇に溶け込む魔法。

「どこだっ!!」

――桃矢がオズとメズと戦っている間に、ノアも広場へ降りてくる……

「ぬ。やはり主はアドヴァンか。この世の災いを開放して何とする……」
「……ノアリス。貴様か……裏切り者め。我ら魔王様に命を捧げた身。この世界は魔王様と共にあるべきだ」
「ぬ。くだらぬ……ワシはお主らの仲間になった覚えはない。今一度、闇の世界へ帰れ……死滅の大鎌――」

 ノアが闇から大鎌を取り出す。クルミを助けた時とは違い、血まみれの鎌を持っている……

「ぬ。覚悟せよ。魔王の復活などありえん!!」
「こしゃくな……邪魔ばかりしおって……ノアリス。許さん……悪魔の剣――」

アドヴァンも闇から剣を取り出す。

そしてノアとアドヴァンの戦いも始まった――
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