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第五章―生と死と―

5−3・行方不明

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―――オニノ国―――

 帝国から戦争で家族を失った移住民が訪れた。その中にひときわ目を引く存在のチカゲ親子がいた。僕はチカゲ親子が気になり、元メローペの家へと案内する。

翌日――

「とう吉さんおはようございます。良いお天気ですね」
「チカゲさん、千明ちゃんおはようございます」
「おにぃたんおはよう……」
「あら、千明ったら恥ずかしがって……もぅ」
「ははは、良いんですよ。今日はお友達を連れて来ましたよ」
「お友達?」
「はい、おいでレディス、クルミ」
「は、はじめめして!レディスちゃんでした!」
「クルミにゃぁ!!よろしくにゃぁ!」
「ひゃぁぁ!びっくりしたぁ!猫さんだ!!千明です!よろしくお願いします!」
「三人共、仲良く遊んでおいで」
「うんっ!おにぃたん!また後でね!千明ちゃん、いこっ!」

 レディスとクルミが千明ちゃんの遊び相手になってくれた。

「あらあらまぁまぁ……」
「さ、チカゲさん行きましょう」
「はい……とう吉さん」

 僕はチカゲさんに、オニノ国を案内して回る。もちろん……深々と帽子をかぶって……

―――オニノ城―――

「ビルビルビルッ!ビィルゥ!」
「は、はい!ミーサ様!お呼びでしょうか!」
「遅いっ!ビル!桃矢様はどこへ行ったの!」
「え……あ……桃矢様は……け、今朝から見ておりません!」
「はぁ?聞こえない。桃矢様はどこ?」
「え……あ……その……ミーサ様……私は知りません……」
「どうしたの?ミーサ、怒鳴りちらして。あっ。おはよう」
「ミーサちゃんおはよう」
「早紀様、舞様、おはようございます。それが桃矢様の姿が無くって……」
「ふぅん……ビル。何か隠してない?」
「ひっ!早紀様……お許しください……!」
「お許しください。だって!早紀ちゃん、ビルさんは何か隠しているねぇ」
「ふぅん……ビル……いい度胸ね……」
「早紀様!ミーサ様!ご勘弁を!」

 というビルは吊るしあげられ、桃矢の行き先をすべて白状させられた。

「ほぅ……その女の元へ行ったのですね……」

ポキポキ……

「なるほど。変態桃矢の考えそうな事だわ……」

ポキポキ……

「ふむふむ!桃矢くんは愛人さんの所なのね!」

ポキポキ……

『アイツ、コロスッッ!!』
「ひぃぃぃ!!皆様!落ち着いてください!!」

―――オニノ国西街―――

「ヘックション!!」
「あらあらまぁまぁ、お風邪ですか?」

『ピィーーー!!お呼び出しを申しあげます。国王様国王様。大至急城までお戻りください!繰り返します――』

「ぶっ!」
「あら?国王様はどこへ行かれたのでしょうね?とう吉さんどうかされました?」
「あ。いや。何でもありません。風邪ですかね?ははは……」
「あらあら、今日は早めに休んでくださいね」
「はい、そうします……チカゲさん、少し待っててください。薬をもらってきます」
「はい、そこのベンチで待ってますね」

商店の角を曲がり、跳躍で急ぎ城へ戻る。

「ビル!どうした!さっきのアナウンスは何かあっ……え?」

ぎったんぎったんにのされたビルが廊下に転がっている……

「桃矢様……ご覚悟はよろしくって?」
「は?」
「変態桃矢……チカゲさんて誰……」
「ちょっ!」
「桃矢くん……私は信じてたのに……」
「たんまっ!話せばわか――」

バキドカボキゴンチーン……

「す、すびばせんでした……」

 廊下で寝転んでいるビルの横で正座し、女性陣に謝罪を申し上げる。

「誰かおるかっ!」
「はい、ミーサ様」
「チカゲさんを今すぐ連れて来なさい」
「かしこまりました」
「え?ちょ!ちょっと待って!」
「駄目です。誰か!桃矢様をそこの柱に!」
「え?いや、さすがにそれは!」
「いいからやりなさい!」
「桃矢様……すみません。ミーサ様のご命令ですので――」

 柱に縛られた。足元でビルは寝たフリをしている。こいつ……

三十分後――

「チカゲさんがいらっしゃいました!」
「お通ししてちょうだい」
「はっ!」

ギィィィ……

大広間の扉が開き、チカゲさんの姿が見える。

「え……と。はじめまして、チカゲと申します。国王様に呼ばれて……え?とう吉さん?」
「……え、と。チカゲさんいらっしゃい」
「とう吉?変態桃矢、とう吉って誰」

ゴンッ

早紀の何気ない蹴りは殺意を感じる。

「チカゲさん。ここに縛られたとう吉……が、この国の主、桃矢太郎です」
「えっ……?主……国王様?とう吉さんが……」
「黙っててすみません。これには深い事情が……」

ゴンッ

早紀の無言の蹴りに殺意を感じる。

「さて、チカゲさんとやら……選択肢は二つよ。このままコイツを置いて去るか、私の手下になるか。さぁ、どうする?」
「早紀……その選択肢はおかし――ゴフッ!」

早紀の蹴りでとうとう股間が潰れた……

「えぇ……と。私は……」

しばし考えた後にチカゲはこう言った。

「ここで働かせてください!」
「おだまりっ!!」

なんでやねん。
いや、今はそんなツッコミよりも股間のケアが大切だ。

「ここで働きたいんです!」
「……ふん、いいわ。明日から通いなさい」
「ありがとうございます!」

 このコントみたいな劇が終わり、チカゲは王城で働くことになった。
 帝国から追われ、疲れてきっていたチカゲにとってはまたやり直せる希望が見えたのだった。

――数日後

 チカゲ達がオニノ国に来て間もなく、突然の急報が入る。

「国王様!大変です!マイア城の愛様が!」
「どうした!」
「行方不明です……」
「え?」
「詳しく教えてください!愛はっ!」

 舞の顔つきが変わる。数日前までここに居た愛は、一旦マイア城へと帰った。そのタイミングでの急報となった。そしてこの出来事を皮切りに、予期せぬ未来が訪れる――

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