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第一章―旅立ちと双子―
1−5・竜の咆哮
しおりを挟む―――山小屋―――
アンドロイドのメイから、能力と知識を与えられ僕たちはその能力を試していた。
舞の体が光輝き、周辺を明るく包み込む。
「それはヒーリングサークルデス。その中では一時的に傷が癒え、体力が回復しマス。また魔物が近付くことは出来ないのデスヨ」
「これが……ヒーリングサークルデス……」
「あ、いえ、ヒーリングサークルデス」
「ヒーリングサークルデス……」
「あ、そうじゃなくて……ヒーリングサークルデス」
しばらくこのやり取りをして気付く。語尾のデスがややこしいことになっていた……
「次は桃矢様の番デス。いいですか――」
その時だった!静かな湖畔の森の陰から……叫び声が聞こえた!
「いやぁぁぁぁ!来ないで!!」
「早紀の声だっ!!」
「桃矢くん!行きましょう!」
僕達は声のする方向へと走る!!
「桃矢様、舞様!足に集中して!羽根がある感覚で走るのデス!」
メイに言われるがまま、足に集中し地面を蹴るっ!
バシュッッ!!
すると、視界が急に森を抜け――
信じられないことに一本の跳躍で……空を飛んだ。
横には宙に浮く舞の姿もある……
「嘘だろ……なんだコレ……ハハハ……ハ……」
「桃矢様!見えまシタ!早紀様デス!」
空からあっと言う間に早紀を見つけ、早紀の元へ降りていく!足の集中で跳躍し、羽根のイメージを作り降下していく――
「すごい……これが能力の開花か……」
僕らは早紀の元へ降り立つ。
「早紀っ!!」
「と、桃矢!!ア、アレ……!?」
早紀が指差す先には、獣の群れがいた……
「ガルゥゥゥゥ……」
「早紀ちゃん!」
「舞っ!メイ!!」
「舞様!ヒーリングサークルを!」
「は、はいっ!」
舞が意識を集中し、早紀を中心にサークルを描く!
「ヒーリングサークルデス!!」
「ガルゥゥゥゥ!!」
獣達はサークルの外で威嚇をする。
「舞!!この青白いのは何っ!?痛っ!」
「早紀ちゃん!?足から血が出てる!」
すると、ヒーリングサークルの効果で出血が止まり傷口が塞がっていく……
「うそっ……!?舞……これはどういう……」
「来まス!!」
メイがヒーリングサークルの外で獣を殴りつける!!
ガコンッ!
「素手……か。メイがいなかっら今頃、早紀は……」
「桃矢様!腕に意識を集中させてください!アナタ様は――」
「わ、わかった!こうかっ!」
腕が光り出す!!
「わっ!!腕が光った!メイ!次は!!」
「敵に向かい、腕の光を放ってくださいっ!その技は――」
僕は腕の光を獣めがけて突放つ!!同時に、脳に直接語りかけてくる言葉があった――
(竜の咆哮――)
『竜の咆哮!!!』
キィィィン――
ゴォォォォォォォ!!!
光が輝きを増し、前方向に轟音を響かせて解き放たれる!!
パラパラパラパラ……
ゴロゴロ――
一瞬の出来事だった。周囲が見えなくなる程の光の竜がすべてを飲み込んで……消えた。
「ハァハァハァハァ……まずい……気を失いそ……」
僕の意識はそこで切れた。
◆◇◆◇◆
「……主人様、ご主人様」
「ここは……?」
「ここは、メイの意識が作り出せる亜空間です」
「亜空間……って!メイ!その姿っ!!」
何ということでしょう!
メイのその姿に、あ然とする!
裸じゃん……
「裸じゃん……あっ!」
思った言葉が口に出てしまい、さらにちょっと前かがみになる僕……
「ご、ご主人様!?どうされました!?」
「い、いや……メイが……裸……」
前かがみで心配するメイ。理性が持たない。
「ご主人様……まさか私の裸姿が見えているのですか?」
じぃぃぃと、僕の目を見つめるメイ。
そぉぉぉと、視線をそらす僕。
「この変態っ!!!」
パァァァァァァァン!!
パァァァンパァァァンパァァァン――
スローモーションの様に繰り返される平手打ち。
「ご、ごめんなさいっ!!」
―――山小屋―――
「ご、ごめんなさいっ!!」
と言いながら目覚める。不思議そうな顔をする早紀とメイ。
「桃矢っ!!良かった……気が付いて……」
「はっ!?ここは!」
涙ぐむ早紀に抱きしめられる。
感動のシーンだ。傍から見たら感動のシーンのはずだ。
しかしなぜだ。お色気シーンが忘れられない。
「夢……か」
舞は……炊事場か。料理する音が聞こえてくる。
しっかりしろ!ロボットの裸だ!
ロボットのおっぱいで興奮するなんてどうかしている!
僕はその思いを払拭するかの様に、おもむろに早紀のおっぱいを揉む!
「柔らかい!どうだ!これが本物のおっぱいだ!」
「――シネ、トウヤ!!」
パァァァァァァァン!!!!
強烈な平手打ちを喰らい、僕はノックダウンするのであった……
「あらあら!ご飯出来ましたよ!」
――数十分後
沈黙の中、ご飯を食べ終わる。
「皆、本当にごめん……舞とバカ桃矢が眠ってる間に、メイに聞いた……」
「早紀ちゃん……」
「早紀様……」
「バカ桃矢って……」
今までの話を聞き、早紀も踏ん切りがついたのかもしれない。
「わかりまシタ。早紀様も腕を出してくだサイ」
「うん……」
早紀の腕にも、僕達と同じ時計のような刻印がされる。
「早紀様の能力は……鋳造合成……ですね」
「鋳造合成?」
「はい。鍛治師とでも言いましょうか……そうですね、この設計図見れますか?」
メイが、ポシェットから一枚の設計図を出す。
「これは?」
「失われた古代文明……発電機と言う電気を作る機械デス」
「電気!?」
僕達は聞き慣れた言葉に、愛しさと切なさと懐かしさを感じた――
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