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第1章

居所

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駅前徒歩10分。我が城はワンルームだ。

近所の物件で欠陥が見つかりニュースになった。2階に上がる階段が老朽化かなんかで崩れ落ちたとか。

そのいわくつき物件の近くが、おれの住処だ。1階だから、階段の欠陥を気にしなくていい。しょぼい事故はごめんだ。

上の階の人間が夜10時ぴったりに筋トレを始めるのでうるさい。それ以外は快適な部屋だ。

メシを作るのもめんどくさいので、出来合いの冷凍食品を温める。

テレビをつける。
国営放送MHKは基本退屈なのでとりあえず押すのは4チャンネルのボタン。

夕方のニュースがやってる。
通り魔事件、高齢者の車の誤操作事故。
話題は尽きない。

人が死ぬことを悲しむと言うよりかは、加害者を吊し上げにしてる印象。それがテレビだ。

電子レンジの聞き馴染みのピープ音を合図にソファから腰を上げる。

退屈な夕飯。

孤独。


タウィッターを見ながら他人のどうでもいいツイートに機械的にいいねをくれてやる。
承認欲求をみたしてあげるための慈善事業だ。

無料のツールでいがみ合う人たちをみると面白い。タダより高い代償を支払うのだから。コミュニケーションツールなどと言っているが搾取する側とされる側のわかりやすい構図に気づかない人間を集めて、一番儲かっているのはタウィッター社だということに気づかない。

いや、あるいは気づいていてもこうやって退屈を紛らわすために親指の運動スワイプを繰り返してるのかもしれない。

人間は進化して親指が喋るようになった。指は口より馬鹿だ。

本来、ものを言うように設計されていない。

60兆もの細胞がせっせと働いてるのに目玉は誤解を招き、親指は他者の攻撃をする。

口は災いのもと、と言うが今の時代は指は災いのもと。"炎上"という言葉はわかりやすい表現で好きだ。


画面が暗転した。

電池が切れたらしい。

文鎮と化したそれに映るおれの顔はやつれて、クマができてる。それは悪魔のようだった。

背後になにか写った気がした。
目が疲れてるのか。
この青い光は精神によくないと医者が言っていた。麻薬よりも依存性が高いし、孤独はなによりも怖い。
人は一人では生きられないのだろう。

繋がってるようで、機械的に接続されてるだけ。スマートフォンはそういうツールだ。
データをやり取りするだけのツール。
いまは電池が切れて、ただの文鎮だが。


味気のない夕飯。

味がしなくなるというのは病の兆候か、この化学薬品まみれのメシが不味いのか。
精神によくない化学薬品漬けの夕飯。
電子レンジで温めたが、温もりは感じられない。

食べ終わったトレーを、ゴミ袋に詰め込んで匂いが出ないように閉じ込めた。
さっきまで食べ物だったコレはもうゴミだ。


そんなどうでもいいことを考えてるうちに意識が途絶えた。

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