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深化3

アンフェールと馬車内での蜜事2 ※

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 支度を済ませたアンフェールは、グレンの左隣に座る。
 グレンはコートを脱いで、アンフェールの腰の上に掛けてくれた。冷えると思ったのだろうか。

「兄上、コートを汚してしまいます」
「構わないよ。リラックス出来るのが大事だから」

 下半身全て脱いだのは視覚効果的な部分だったのに、隠されてしまった。でも、こちらの身体を気遣ってくれる番の優しさにキュンとする。グレンは本当に紳士だ。
 裸の下半身に触れるつるつるのコート裏地が心地良い。そこにグレンの手が滑り込んでくる。

「あっ……」

 思わず声が出る。
 彼の指先が優しく触れただけだ。それでも普段の閨と違う環境で性接触をされていると思うだけで堪らない。
 グレンがゴクリと喉を鳴らしている。彼もこの状況に興奮してくれているんだろうか。
 アンフェールはグレンのシャツの袖を握り、あざとい上目づかいで彼を見上げる。

「あにうえに、ありがとうのキスをされてから、ずっと、つらくて」
「そうだったのか」
「ごめんなさい、はしたなくて……」

 アンフェールはずっと勃ちっぱなしだった事をカミングアウトした。
 グレンが激しい口付けをしてくる前から、身体は発情していた。
 そう言う風に伝えておけばグレンの気持ちは軽くなるだろう。彼の罪悪感を有耶無耶にするための行為だし、より刺激的に楽しんだ方がいい。

「……はしたなくなっていい。二人きりだ」

 グレンは一際低い声で、語り掛けてくれる。
 アンフェールはこの雄みのある声の出し方が好きだ。お腹にきゅんきゅん響いてしまう。勃つし濡れる。
 アンフェールは早速おかしくなってしまった。なっていいって言うし、いいのだ。

 グレンの手がアンフェールの性器を包み込み、優しく扱いてくれる。
 その部分は既に濡れていて、擦られると粘液質な感覚がある。アンフェールはそのヌルヌルに自分のいやらしさを実感して、より高まるのだ。

 アンフェールはグレンが触りやすいように脚を広げ、彼の手を誘い込む。

「あ……あ」

 日頃閨でアンフェールを何度もかせているグレンは、こちらの気持ちいい部分を知り尽くしている。どうされたら弱いか攻め方まで隈無く。

 そしてアンフェールも、彼が快感に対して素直に振舞う様子を好んでいる事を知っている。
 だから、もっともっとと強請るように腰を動かし、グレンの事を煽るのだ。
 真面目で純情な彼であっても、番の蜜を摂取しながら煽られていけば、徐々に本能が剥き出しになっていく。
 理性の仮面がはがれ、獣になっていく。
 最近の閨では後半、ビックリするくらい雄っぽくなるのだ。アンフェールが日々育てた、アンフェール好みの雄だ。

「ここも、欲しい?」

 アンフェールの背にグレンの腕が回された。そのままグッと抱き寄せられる。そして回された彼の左手指が乳首に軽く触れる。
 シャツは着ているので布越しだ。
 それでも、掠めるように触れられただけでアンフェールの身体は敏感に反応してしまった。

「~~~~っ!」
「よさそうだ」

 アンフェールはあまりの快感に、声にならない声を上げる。

 すごくいい。
 布越しの刺激は程よくソフトで気持ちがいい。布自体の刺激もある。
 グレンはアンフェールの乳首を布ごと摘まんだり、カリカリと引っ掻くようにして刺激してくれる。
 アンフェールの乳首は小さいなりに硬くなって、布をツンと押し上げている。性感帯であることを主張している。

 その敏感な尖りと共に、性器はずっと扱かれている。
 寝台でない分、快感をどう逃していいか分からない。ギュッと握るシーツも無い。アンフェールは身体に籠る熱に翻弄されながら、ひたすら甘い声で喘いだ。

「あにうえ、むね、きもちいい、です」
「そうか。アンフェールは物覚えの良い、いい子だ。ここで善くなるの覚えたんだね」
「はい」

 アンフェールはグレンに褒められると、トロンと幸せな気持ちになってしまう。
 閨でも、上手に気持ち良くなれると一杯褒めて貰える。

「アンフェール、おねだりしてごらん」

 グレンはアンフェールに優しい命令を下す。
 いつも、閨でもそう言われるのだ。言われたら、何をされたいか口に出すルールになっている。

「あにうえ、わたしの、ここに、キスを……ください」

 アンフェールは、腰に掛かったグレンのコート越しに性器を指し示す。
 閨の寝台でない場所で、性器への口淫を求めている。そう考えただけで、アンフェールは苦しい位興奮してしまう。

 グレンはアンフェールの髪を優しく撫で、微笑んでくれた。

「いい子だ」

 グレンはアンフェールの前に跪いた。
 そう言えばこの馬車は広い。座椅子の前に大人の男が膝まづいても問題無いスペースがある。
 しかしアンフェールは現在トロトロで頭が回らないので、そんな細かい事は気にならない。

 グレンのコートが取り去られ、熱を持ったペニスが外気に触れる。番にドロドロに感じている部分を晒している、と思っただけでキュンとしてしまう。
 アンフェールは大きく脚を開き、グレンにいやらしい己を見せつけた。

「キスを、しながら、おしりも、かわいがってください」

 アンフェールが指で尻肉を開くをようにすると、濡れた様な水音が聞こえた。
 既に後孔は淫らに雄を誘うように、トロリと蜜を零しているのだろう。

「ああ。アンフェールの好きな所を沢山擦ってあげよう」

 そう言ってグレンの口が、アンフェールの性器を咥えた。
 ぬるりとした口内。番の唾液に性器が包まれれば腰は溶けるほど気持ち良くなってしまう。
 手技も気持ちいいのだが、この味を覚えてしまうと一度は口淫を受けないと満足できなくなってしまった。

 グレンのネットリとしたキスを性器に受けると、後孔はお漏らししたみたいに濡れてしまう。
 そのぬかるみに、彼の男らしい指がゆっくりと侵入してきた。

 グレンはアンフェールの後孔に対する手技が上手い。――まるで竜の性感帯を知っているかのようだ、とも思う。
 そんな訳はないのだが。
 きっとアンフェールが分かりやすく感じるせいで、グレンが早々にアンフェールのツボを把握しただけなのだ。
 彼は器用だし、物覚えがいい。だからだ。

 グレンは舌を当てて頭を上下し、アンフェールの性器の裏側とくびれを刺激してくれる。
 それが本当に気持ち良くて、気持ちよくて、アンフェールは粟立つような快感に全身を震わせた。

「あにうえ、あにうえ、もう、だめです……あ、あぁ」

 後孔に入り込んだ指は的確にアンフェールの性感帯であるしこりを押し上げてくる。
 クイクイと刺激される度、何度もアンフェールの精がせり上がりそうになった。
 だというのに決定的な刺激をくれない。グレンはアンフェールのおねだりを待っている。

 アンフェールが、はしたない言葉を口にするまで溶かすつもりでいる。
 こんな場所で。
 真の意味で可愛らしい弟であればそれは羞恥であり、忌避する事なのかもしれない。

 しかしアンフェールは気持ちいい事が大好きだ。
 こんな場所でいやらしい言葉で番を煽れるのだと思うと、物凄く興奮してしまう。

「~~~~ッ! あにうえ、いかせて、いかせてぇ!!!」

 アンフェールは欲望の赴くままに声を上げる。
 するとグレンの指は心得たとばかりに追い詰める様に動き始めた。
 くの字に曲がった指がアンフェールの善い部分を強く押し上げる。くびれを激しく掻き上げられれば、導かれるように熱はどぷりと放出された。

「~~~~!!! あっ、あ~~~~!!!」

 ビクビクと何度も腰を震わせて精を放っていく。
 グレンは口を離さずに、それを口内で受け止めていく。
 アンフェールが射精し切った所でゆっくり後孔から指を抜き、残滓を吸い上げる様にちゅっとした後、性器を開放してくれた。

 そしていつもの様に、アンフェールによく見えるように、口内の精を飲んでくれる。
 彼の喉仏が上下する様にゾクリとしてしまう。
 飲み干されると、全てグレンのものにされてしまったようで照れてしまうのだ。

「あにうえ、きもちよかったです」
「そうか。よかった。私もアンフェールの可愛い姿を見られて嬉しい」

 アンフェールは素早く脱いだ衣服を身につけ直した。
 グレンは現地につくまで機嫌が良さそうにしていた。
 良かった。アンフェールの作戦のおかげで、グレンのしんどい気持ちは吹き飛んだのだ。

 策士冥利に尽きる。
 アンフェールは満面の笑みを浮かべた。



◇◇◇



 工場こうばでの消火容器に対する魔術付与エンチャント業務も無事終わった。
 やはり精霊の助力があると仕事が早い。
 これで国の各地に防衛アイテムが配備出来るようになった。

 グレンは消火器担当のおじさんに「窪地や建物内の閉鎖空間など酸欠が起こりやすくなる。使用場所は気を付けるよう指導もお願いしたい」と指示していた。
 高温で燃える炎はバンバン酸素を使うらしい。なるほど。それで亡くなるパターンもあるのか、と番の見識の広さに感心する。
 王らしく元帥らしくある番はカッコいい。
 アンフェールはさっきまでえっちな事をしていたのも忘れて、番の凛々しさに感動し、うっとりしてしまった。




 公務を無事に終え、離宮に戻ったところでエドワードに声を掛けられた。

「殿下、閨車ねやぐるまどうだった? いやぁ、ロビンにそう言うのがあるって聞いてさ。手配したんだ」

 どうやら本日の馬車は閨事が捗る車だったらしい。
 道理で車内が妙に広くソファーの座り心地もいいと。車内の揺れも少なかったし、御者台と内部も完全分離していて防音の魔道具までついていた。
 なんで公務の日にそれをぶつけて来たかは分からないけれど、確かにそういう展開にはなった。グレンも喜んでいた。
 しかし国王と王弟が車内で盛り上がったと言う事を口にするのは、良くないかもしれない。
 アンフェールは対外的には慎み深いのだ。


「兄上は常に紳士でした」
「そっかー」


 エドワードは残念そうな顔をしていた。
 盛り上がって欲しかったんだろうか。母心は時々よく分からないのだ。


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