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ダンスパーティー

して……しまった※

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 翌日、対面したばかりのアルファとベッドを共にしたというのに、朝まで熟睡したレオンは爽やかな目覚めを迎えた。先に目を覚ましていたジェラルドはもうすでにかっちりとした黒い騎士服を身につけていて隙が無い。やはり心がお姫様の彼はだらしない格好を人目に晒したくないのだろう。

「おはよう、レオン」
「おはよう、ジェラルド」

 挨拶を交わしてレオンはベッドから降りた。ジェラルドによれば、すでにモーリスと連絡を取り、この部屋で四人揃って朝食を取るという話になっているらしい。昨晩事情を説明すると言っていたので、そのための場を設けてくれたのだろう。本来なら朝は、番予定のアルファとオメガが二人きりで食事をすることになっていたはずだ。

「まだ少し時間がある」
「そうか。ではシャワーを浴びるよ」

 昨晩『浄化クリーン』を使ったけれど、湯を浴びるのはリフレッシュの意味合いが大きい。レオンは人が来るのだから早く済ませた方がいい、と足早に風呂場へ向かった。
 魔道具文化が進んだ昨今、客室には個室風呂が備わっており、とても便利だ。一日中どの時間であっても風呂やシャワーを使える。
 脱衣したレオンは真鍮製のこじゃれたハンドルをひねってお湯を出した。魔石で温められた湯は最初はぬるいけれど、しばらく出しっぱなしにしていれば適温に変わり、制御術式のおかげで高温になることもない。浴場内にこもる湯気を胸いっぱいに吸い込めば、身体の中から温まり、末端まで潤っていく。

(あ……)

 浴場内にある鏡もヒート式の魔道具のようで、曇ることなくレオンの姿を映している。それを見て、昨晩熱を持ったこの身体をジェラルドが癒やしてくれたのだと思い出してしまった。

(うそ、だ)

 レオンは目を見開いて鏡を眺め、そしてまじまじと自分の下半身に視線を落とす。そこは芯を持って上向き、明らかに湯でないもので濡れていて、触れれば粘液質な感触があった。

(薬の影響……いや、もう抜けているはずだし違うな。これは……)

 男性は朝、性器が立ち上がる生理現象があると教科書を読んで知っている。オメガ男性は個人差があるとのことだが、レオンはアルファのような見た目の割に、朝にその兆しはなかった。

(体質が変わったのだろうか。それともジェラルドのフェロモンの影響だろうか。……まぁいい、自分で処理してしまおう……)

 レオンはそう決意して恐る恐る性器を握った。慣れない手つきであっても扱けば、刺激で硬さが増してくる。ジェラルドに丁寧に剥かれたせいか、数度の往復で皮が捲り上がったそこは、桃色の敏感な先端がすべて露出し、小ぶりであっても卑猥に見える。

(ここを……何度も擦られて……あ、お尻の……穴に……)

 レオンは昨晩行ったジェラルドとの行為を思い出す。優しく上下する手つきや、ゆっくり後孔に指を挿入して精の排出を促してくれた、あのたまらなく気持ちいい感覚を。初めての経験は鮮明で、それを頭の中で反芻しながら自身を高めていけば呼吸は荒くなり、溜まった快感はすんなりと噴出して、握りしめた部分から白濁がこぼれていく。

「は……ふ……」

 一人きりの行為は気を使う必要もなく、すぐに達する事が出来た。エデンで一度だけ自慰を試みたことがあったが、それとは比べ物にならないほどの快感で、今も心地いい余韻が続いている。

(して……しまった)

 竿を握っていた手を開けば、そこには白濁がこびりついていて、レオンはそれが無性に恥ずかしくなり、慌ててシャワーで洗い流した。
 射精を終えたことで朝立ちはおさまったが、精神的なダメージは大きい。レオンを心配してくれたジェラルドを、自己処理の共として使ってしまった罪悪感で、気が重くなってしまった。

(……とりあえず手早く身綺麗にして出よう)

 レオンは全身を洗い流し、シャワーを止める。湯気を背負ったままドアを開けると、そこにはジェラルドが立っていた。

「……」
「……」

 しばしの間、二人の時間が止まった。湯気はレオンの後方から脱衣所に流れ込み、もや掛かった空気は徐々に冷えてクリアになっていく。

「着替えを置きに来た」
「……そうか」
「もうすぐモーリスたちが来るから、私が対応しておこう。支度に慌てる必要はない」
「わかった。ありがとう」

 ジェラルドは着替えを棚に置き、静かに脱衣所を出ていった。棚にはあらかじめアイディール家の使用人によって用意されていた、淡い色調で爽やかなコーディネートの衣服が並んでいた。その上には折りたたまれた衣服の上に、昨日着用していたものよりもセクシーなレースの下着が置かれている。

「……」

 外で何かぶつけたような大きな物音がしたが、気のせいだろう。

(しまった。どうして着替えを持って入らなかったのか……。人が来るんだしバスローブでうろついてはいけないよな)

 ジェラルドは他のアルファにレオンの鎖骨を見せることさえ嫌がっていたので、着替えを持ってくる行動も理解できる。昨夜は脱いだ下着を隠して安心していたが、明るい時間帯にお似合いでないデザインの下着をしっかりと見られてしまった。レオンはなぜか羞恥心が湧き上がり、時間差で顔が熱くなる。

(……もう見られてしまったのは仕方ない。それにジェラルドも平然としていたから、さほどショックじゃなかったのかもしれないし)

 レオンはそう結論づけて『乾燥ドライ』の魔術で全身を乾かし、純白総レースの下着に足を通した。





 身支度を調えたレオンがリビングスペースに向かうと、そこには大きなテーブルと四脚のチェアが配置されていた。元々はなかったものだが、知らない間に持ち込まれたのだろうか。テーブルの上には既に食事が並べられているが、希望があれば控えている男性が給仕として対応してくれるとのことだ。昨日ティールームでも給仕をしていた彼はオメガだろうから、コーディーについての話を聞かれても問題ないだろう。レオンはまず彼に紅茶を頼んだ。

「おはようございます、モーリス卿、リック」

 先に席に着いていた二人に挨拶すると、モーリスは涼しい顔で、リックは朝なのに疲れた様子で挨拶を返してくれた。コーディーが無事見つかったということだが、やはり捜索は大変だったのだろうか。レオンは自分が手伝えなかったことに申し訳なさを感じ、気持ちが沈んだまま席に着いた。その隣にジェラルドが座る。

「それで、コーディーは……」

 全員の飲み物が揃ったタイミングで、食前の挨拶を交わし、レオンは本題に入った。その問いにモーリスが答える。

「結論から言うと、コーディーさんは現在発情して、部屋にこもっている」
「えっ」
「もうすでに番関係が成立したけれど、発情期ヒートは三日ほど続くからしばらく会えないよ」
「な……‼」
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