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第505話 変化と事実
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戦争終結から2年が経過した。各国の田畑には多くの作物が実っている。まだ戦争前ほどの収穫量は望めないが、人口が大きく減った分、食料自給率はかなり高い。この調子であればミチナガからの支援がなくても食糧問題は来年には完全解決することだろう。
街の市場では物価が落ち着き、気軽に買い物をしている人々の姿が目立つ。すでに各国での復興は落ち着き始めている。復興事業が終わり復興バブルも終わったが、その後は多くの職種で人手が必要となったため仕事にあぶれた人の姿はない。
そんな中でも一番活気のある場所はやはり9大ダンジョンだ。英雄の国周辺に存在する巨大のヨトゥンヘイムと人災のミズガルズでは毎日のように大勢の冒険者達がダンジョンに潜り、そして大量のダンジョンアイテムを発見している。
それらのダンジョンアイテムのほとんどは英雄の国とミチナガ商会で買い取っている。特に人災のミズガルズから出土したダンジョンアイテムは非常に危険なものが多い。
ダンジョンアイテムの使用法を知らないものが知らずに使い疫病を撒き散らす事件も起きたほどだ。ただその際の被害は一時的な入院を除けば死者ゼロという結果に終わっている。なぜ被害がないのか。それはこの世界に世界樹が戻ってきたからだ。
というのもこの人災のミズガルズとユグドラシル国の世界樹の相性は非常に良い。人災のミズガルズで巻き起こる疫病の類は全て世界樹を用いたポーションで治療できる。むしろ人災のミズガルズ攻略には世界樹製のポーションが必要不可欠だ。
そのため毎日ユグドラシル国から世界樹製のポーションが大量に人災のミズガルズへと輸送されている。その逆に人災のミズガルズからは大量のダンジョン出土品がユグドラシル国へと輸送されている。
これによりユグドラシル国ではこれまでにないほどの活気を見せている。いやそれだけではない。世界樹が戻ったことも合わさり、その活気は異常なほどだ。
新たにエルフ街に建設された薬品製造所は日々フル稼働でポーションの製作をしている。そしてドワーフ街ではダンジョン攻略に必要な武器の生成を行なっている。獣人街では食糧の大量生産、人間街では衣類などの生活必需品を生産し、それらを人災のミズガルズへと出荷している。
それだけ様々なものを大量に出荷しているがそれでも足りないと思えてしまうほど人災のミズガルズでは大量の物品が消費されている。
そしてその事実は他の魔神達の耳にも届いている。そしてその恩恵にあやかろうとミチナガ商会と共同で各地の9大ダンジョン攻略が始まりだした。
今一番勢いが強いのは氷神が保有する極寒のニヴルヘイムだ。氷国は今回の戦争で他と比べて大きな被害がない。蘇った死者も数多くいたらしいが、氷神ミスティルティアが蘇った歴代の氷神と戦闘を行った影響で気候が変動。あまりの極寒の環境に蘇った死者はその場で凍ってしまったという。
現在では10階層まで攻略が済んでおり、地上部のモンスターの掃討も終わっている。使い魔達も極寒の環境に耐えられるエヴォルヴを作成したおかげで問題なく作業に当たれている。
未だに手付かずなのは火の国にある煉獄のムスプルヘイムだけだ。そしてこの煉獄のムスプルヘイムはしばらくの間は手がつけられないだろう。
煉獄のムスプルヘイムが存在するのは火の国の西側。マクベスの治める東側からは大きく離れている。そして西側を治めていた火の国最大の国家は滅んでしまった。
もともと西側では法国の暗躍により国の中枢はすでにガタガタであった。そこへ膨大な死者の群による攻撃。その影響でなすすべなく敗北したというのが大方の見解だ。
ただ不可解なのがその火の国最大の国家があったという地では国があったという痕跡すらなくなっている点だ。その国があったという場所では大地がえぐれた跡と不気味な炎が燃え盛っている。
その炎は消すことができず、一度イシュディーンに観てもらったが、手の施しようがないということで完全封鎖している。今後神魔のフェイミエラルにその炎を対処してもらうように要請するつもりだ。
ただ現在フェイは母親が再びあの世に戻ってしまったショックで寝込んでいるということだ。父親である国王からは後もう1年は待って欲しいと言われている。
しかし神魔にしか対応できないような不気味な炎は一体どこから生まれたのか。その明確な答えを出すことは不可能だろう。ただあの戦争が終わった頃から、かの魔帝煉獄の所在が不明となっている。それが関係ある可能性は高いだろう。
所在が不明となっているといえば戦争中一切情報が入らなかった監獄神。彼の情報も手に入っている。ただしこれに関してはトップシークレットだ。
というのも監獄神はすでに死んでいる。それだけではない。監獄神の配下も半数以上がこの世を去っている。それは実質監獄神の保有する監獄は崩壊していることを意味する。そんなことが公になれば世界中の息を潜めていた犯罪者たちが表に出てくる可能性がある。
なぜこんな事態になっているのか。それは監獄神カルアトラズが監獄神になった経緯とその配下達がどのようにして配下になったのかが大きく影響している。
監獄神になった理由、そしてその配下になった理由のほとんどが復讐だ。親や子供、妻や兄弟を殺されたことに対する罪人への復讐、それが全てだ。彼らは復讐のために生きていた。
しかし今回の十本指の騒動により殺されたはずの愛するもの達が蘇った。失われたものが戻ってきたのだ。それは彼らの復讐のための人生を終わらせるだけの理由になった。もう復讐しなくても愛するもの達がそばにいる。それだけで何もいらない。
しかし蘇ったもの達は1年以内にまたこの世を去る。その事実に例外はない。そして彼らは愛するもの達がこの世を去る時、共にこの世を去った。監獄神カルアトラズは自殺したのだ。
結果として十本指は法神、神龍のみならず監獄神まで殺したのだ。一つの組織により三人もの魔神が死んだなど歴史上から観ても稀なことだ。
現在監獄神が保有していた監獄は生き残ったもの達だけでなんとか運営している。あの死者の復活により囚人達も多く殺されたのは不幸中の幸いだ。それがなければ今頃大勢の罪人が脱獄していた。
ただどんなに隠しても監獄神カルアトラズ死亡の情報はいつか出回ることになるだろう。その時はヴァルドールに監獄神としての仕事を多少肩代わりしてもらう必要がある。こればっかりは他に適任者がいないだろう。
まだまだこの世界は多くの問題を抱えている。様相をガラリと変えたこの世界が平定するのはまだまだ先になりそうだ。
街の市場では物価が落ち着き、気軽に買い物をしている人々の姿が目立つ。すでに各国での復興は落ち着き始めている。復興事業が終わり復興バブルも終わったが、その後は多くの職種で人手が必要となったため仕事にあぶれた人の姿はない。
そんな中でも一番活気のある場所はやはり9大ダンジョンだ。英雄の国周辺に存在する巨大のヨトゥンヘイムと人災のミズガルズでは毎日のように大勢の冒険者達がダンジョンに潜り、そして大量のダンジョンアイテムを発見している。
それらのダンジョンアイテムのほとんどは英雄の国とミチナガ商会で買い取っている。特に人災のミズガルズから出土したダンジョンアイテムは非常に危険なものが多い。
ダンジョンアイテムの使用法を知らないものが知らずに使い疫病を撒き散らす事件も起きたほどだ。ただその際の被害は一時的な入院を除けば死者ゼロという結果に終わっている。なぜ被害がないのか。それはこの世界に世界樹が戻ってきたからだ。
というのもこの人災のミズガルズとユグドラシル国の世界樹の相性は非常に良い。人災のミズガルズで巻き起こる疫病の類は全て世界樹を用いたポーションで治療できる。むしろ人災のミズガルズ攻略には世界樹製のポーションが必要不可欠だ。
そのため毎日ユグドラシル国から世界樹製のポーションが大量に人災のミズガルズへと輸送されている。その逆に人災のミズガルズからは大量のダンジョン出土品がユグドラシル国へと輸送されている。
これによりユグドラシル国ではこれまでにないほどの活気を見せている。いやそれだけではない。世界樹が戻ったことも合わさり、その活気は異常なほどだ。
新たにエルフ街に建設された薬品製造所は日々フル稼働でポーションの製作をしている。そしてドワーフ街ではダンジョン攻略に必要な武器の生成を行なっている。獣人街では食糧の大量生産、人間街では衣類などの生活必需品を生産し、それらを人災のミズガルズへと出荷している。
それだけ様々なものを大量に出荷しているがそれでも足りないと思えてしまうほど人災のミズガルズでは大量の物品が消費されている。
そしてその事実は他の魔神達の耳にも届いている。そしてその恩恵にあやかろうとミチナガ商会と共同で各地の9大ダンジョン攻略が始まりだした。
今一番勢いが強いのは氷神が保有する極寒のニヴルヘイムだ。氷国は今回の戦争で他と比べて大きな被害がない。蘇った死者も数多くいたらしいが、氷神ミスティルティアが蘇った歴代の氷神と戦闘を行った影響で気候が変動。あまりの極寒の環境に蘇った死者はその場で凍ってしまったという。
現在では10階層まで攻略が済んでおり、地上部のモンスターの掃討も終わっている。使い魔達も極寒の環境に耐えられるエヴォルヴを作成したおかげで問題なく作業に当たれている。
未だに手付かずなのは火の国にある煉獄のムスプルヘイムだけだ。そしてこの煉獄のムスプルヘイムはしばらくの間は手がつけられないだろう。
煉獄のムスプルヘイムが存在するのは火の国の西側。マクベスの治める東側からは大きく離れている。そして西側を治めていた火の国最大の国家は滅んでしまった。
もともと西側では法国の暗躍により国の中枢はすでにガタガタであった。そこへ膨大な死者の群による攻撃。その影響でなすすべなく敗北したというのが大方の見解だ。
ただ不可解なのがその火の国最大の国家があったという地では国があったという痕跡すらなくなっている点だ。その国があったという場所では大地がえぐれた跡と不気味な炎が燃え盛っている。
その炎は消すことができず、一度イシュディーンに観てもらったが、手の施しようがないということで完全封鎖している。今後神魔のフェイミエラルにその炎を対処してもらうように要請するつもりだ。
ただ現在フェイは母親が再びあの世に戻ってしまったショックで寝込んでいるということだ。父親である国王からは後もう1年は待って欲しいと言われている。
しかし神魔にしか対応できないような不気味な炎は一体どこから生まれたのか。その明確な答えを出すことは不可能だろう。ただあの戦争が終わった頃から、かの魔帝煉獄の所在が不明となっている。それが関係ある可能性は高いだろう。
所在が不明となっているといえば戦争中一切情報が入らなかった監獄神。彼の情報も手に入っている。ただしこれに関してはトップシークレットだ。
というのも監獄神はすでに死んでいる。それだけではない。監獄神の配下も半数以上がこの世を去っている。それは実質監獄神の保有する監獄は崩壊していることを意味する。そんなことが公になれば世界中の息を潜めていた犯罪者たちが表に出てくる可能性がある。
なぜこんな事態になっているのか。それは監獄神カルアトラズが監獄神になった経緯とその配下達がどのようにして配下になったのかが大きく影響している。
監獄神になった理由、そしてその配下になった理由のほとんどが復讐だ。親や子供、妻や兄弟を殺されたことに対する罪人への復讐、それが全てだ。彼らは復讐のために生きていた。
しかし今回の十本指の騒動により殺されたはずの愛するもの達が蘇った。失われたものが戻ってきたのだ。それは彼らの復讐のための人生を終わらせるだけの理由になった。もう復讐しなくても愛するもの達がそばにいる。それだけで何もいらない。
しかし蘇ったもの達は1年以内にまたこの世を去る。その事実に例外はない。そして彼らは愛するもの達がこの世を去る時、共にこの世を去った。監獄神カルアトラズは自殺したのだ。
結果として十本指は法神、神龍のみならず監獄神まで殺したのだ。一つの組織により三人もの魔神が死んだなど歴史上から観ても稀なことだ。
現在監獄神が保有していた監獄は生き残ったもの達だけでなんとか運営している。あの死者の復活により囚人達も多く殺されたのは不幸中の幸いだ。それがなければ今頃大勢の罪人が脱獄していた。
ただどんなに隠しても監獄神カルアトラズ死亡の情報はいつか出回ることになるだろう。その時はヴァルドールに監獄神としての仕事を多少肩代わりしてもらう必要がある。こればっかりは他に適任者がいないだろう。
まだまだこの世界は多くの問題を抱えている。様相をガラリと変えたこの世界が平定するのはまだまだ先になりそうだ。
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