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第424話 防衛力強化

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『ポチ・いやぁ…みんな協力的でよかったね。』

「おかげでこっちは破産しそうだよ。特に氷国と海上都市が協力的すぎるだろ。あいつら資源不足だからってここぞとばかりに来たな。」

 魔神会談の翌日、ミチナガは昨日決定したことを全て書類にまとめている。昨日の話し合いは全て上手くまとまった。これでもしも法国と龍の国が動いた際、もしくはそれ以外にも何らかの緊急事態が起きた時には6人の魔神が国ごと動く。

 はっきり言ってどんな問題でも解決できるだろう。無敵の連合軍の完成だ。しかしその代わりにミチナガは全財産の半分近くを吐き出すことになった。ミチナガの全額支援のもと造られる防衛拠点は全部で70以上にのぼる。

 しかもどの拠点も簡単なものではない。対魔神を想定した完全要塞だ。そんなものを1人の魔神につき10個以上作るというのだからその額はとんでもないものだ。ミチナガのスマホで材料を供給しなければ成し得ないだろう。

 特に氷国や海上都市に関しては元々資源が乏しいため、作る材料と資金さえあれば幾つでも作りたいと考えていた。だから今回のミチナガの提案は渡りに船であった。真剣な表情で自国の戦力分析をして、かなり無理をした戦力の供給を行ってでも恩恵を得ようとした。

 かなり無理をしたようだが、これで海神は今まで一つだけしか作れなかった海上都市を10以上増やすことが決まり、陸地の人々と交易が盛んにできるようになった。

 これによるミチナガ商会の恩恵も多大なるものとなるだろう。だから意外と防衛拠点を作ることでミチナガ商会が得るメリットも大きいのだ。今回散財した分はそのうち取り戻すことができるだろう。

 それから氷国には現在建造中の超巨大船も何隻か送ることが決まった。氷国は一番龍の国と距離が近いため、戦端となる可能性が高い。だからこそ海神とも協力しやすいように海の上で戦えるように超巨大船を送っておいた。

 ただ今日からすぐに始めたとしても防衛拠点となる要塞の完成には1年はかかるであろう。逆に短期間でやったところで必要最低限の防衛拠点しか完成せず、いざという時に使い物にならない。

「そういやマクベスにも連絡して拠点の強化をしてもらわないとな。火の国は魔国の次に法国と近い。英雄の国が攻め込むときはマクベスと協力することになる。」

『ポチ・マクベスは対法国を常に意識しているから防衛も完璧だよ。ただ火の国の西部はダメだね。未だ洗脳事件の余波から抜け出せていない。どこもかしくもボロボロでこんな状況で攻め込まれたら一瞬で滅ぶよ。』

「…何とかできない?今治めているのは誰なのよ。」

『ポチ・昔火の国全域を治めていた火神の末裔なんだけど…一応魔帝クラス上位の実力者。ただ血統は良いんだけど、まあ国王としての才覚はなさそうだね。長年火の国をまとめられていないし。そもそも魔神を頂点と考えていたから国王が魔神じゃない時点で従わない人が多いみたい。』

「そいつがマクベスと同盟を組むことは?」

『ポチ・まああり得ないね。実力主義だから個人で魔王クラスの戦闘力もないマクベスと同等の同盟を結ぼうと思わない。向こうが優位の同盟を結ぼうとする。ただ国力はマクベスの方が圧倒的に上だから同盟はマクベス優位でなくちゃならない。マクベスもその辺が分かっているから交渉も何もしない。』

「下手に交渉すれば逆に戦争の火種になる…か。仕方ない…西部は切り捨てよう。西部に法国が乗り込むと考えて西部側に向けて防衛拠点を多数配置。イッシンには西部を主戦場にしてもらおう。」

 ミチナガは残酷な判断を下した。火の国はすでに東側を新興勢力であるマクベスが治め、西側を旧勢力である火神の末裔が治めている。そして西と東が同盟を結べない以上、すでに国として力を失っている西側を切り捨てるしかない。

 今も西側に住んでいる一般市民を犠牲にするという判断はあまりにも残酷なものだが、西側の人々も自分たちの状況がまずいというのが分かっているようで日々東側、もしくはセキヤ国に亡命して来ている。

 法国と本格的にドンパチ始める前に多くの人々に逃げ延びてもらいたいものだ。そうすればもしかしたら今の西側の王たちもまずいと思ってまともな同盟を結んでくれるかもしれない。

 ただ西側の王が国民を盗まれると思って戦争を仕掛けてくる可能性もなくはない。その時は法国との前に火の国の統一戦争が始まることになるだろう。ただそんな事態は避けたいものだ。

「妖精の国が全面協力してくれるのはありがたいな。いざという時は一般市民を妖精の国で保護してくれる。妖精の国は普通に入ることはできないから市民を逃がすのには最適だ。」

『ポチ・そうだね。各地に点在する妖精の隠れ里の位置も教えてくれたから作戦を立てやすい。まあ距離があるから逃がす時は早めに逃がさないとね。…確かに空間魔法師がいたら楽だったんだろうね。』

「例の…か。まあ仕方ないだろ。いつまでも昔の話をしても仕方ない。」

 ミチナガとポチがため息をつく。それは魔神会談の終盤に誰かがふと漏らした言葉から始まった。それは今から数百年前に起きた過去の魔神たちによる歴史の汚点である。

 現在でこそ少なくなった魔神同士の戦いであるが、かつては数多く行われていたという。しかし膨大な魔力を持つ魔神同士が戦えば世界に大きな爪痕を残す。神魔と神剣が衝突したことでできた終末の地が良い例だ。

 これは余程の特別だが、魔神同士が戦えばそれなりの被害が残るのだ。今回の法神と勇者神の戦いでもその跡地は現在12英雄たちが数人がかりで荒れ果てた魔力の快気を行なっている。いうなれば魔神の戦いとは核ミサイルと核ミサイルをぶつけ合わせるようなものだ。

 それだけ慎重に行わなければならないデリケートなものなのだが、かつては比較的安全にできた。それが空間魔法師である。空間魔法師とは各々が特別な異空間を持っている特別な人間だ。簡単にいうのであればミチナガのスマホの世界のようなものを持っている人間のことだ。

 その異空間の入り口を作ることができるのは空間魔法師だけで、しかも空間魔法師は生まれた時に自身の異空間を持っている。つまり生まれ持った才能でしかなることができない。自身の異空間、世界を持っている空間魔法師はかつて神の愛し子とも呼ばれたという。

 つまり大きな戦いの時にはその空間魔法師の異空間を用いたということだ。そうすれば世界への被害もなく済む。さらには国の重要な宝を隠すのにも使われたし、悪党の財産を秘匿するのにも非常に便利であった。そして戦争に際して国民を逃しておくのにも使えた。

 しかしそれだけ万能だと各国が、各魔神が空間魔法師を求めた。かつては1人の優秀な空間魔法師を求めて戦争が起きたという。そして元々希少であった空間魔法師は数多くの陰謀や戦争に巻き込まれ絶滅したという。

 当時は知られていなかったが、空間魔法師とは一つの血統の人間にしか発現しなかった。その血統の人間が全て滅んでしまったのだ。だから空間魔法師はこの世から消え去った。明らかな歴史の汚点である。

 もしも今その空間魔法師が生きていたら安全に一般市民を守ることができた。他にも色々とやれることがあっただろう。そういう意味でついもしも生きていたらと口にしてしまったのだ。

 ちなみに神剣と神魔は異空間へ入ることができる。ただ神剣の場合はたまたま切ったらたまたまその異空間に繋がるくらいの感覚でしかない。同じ異空間に何度も繋げるのは難しい。それに切り繋げるので、もしも異空間の中に人がいたらその人も切ってしまう可能性がある。

 神魔の場合は膨大な魔力で異空間への道を作るのだが、こちらも同じ異空間に繋げるのは難しいらしい。なんでも特定の異空間に繋げるのにはいくつもの魔力の周波数を合わせなくてはならないようだ。それにこちらも基本的に膨大な魔力で無理やりこじ開ける方式なので中に人がいたら間違いなく死ぬという。

 つまり神魔と神剣でも安定し、安全に行うのは難しいほど繊細な魔法なのだ。だからこそかつて多くの人々が求めたのだろう。

「まあ昔は昔だ。いつまでもそんなことを言っていても仕方ない。それよりも今できる仕事終わらせるぞ。物資を搬入するための使い魔は送ってあるか?」

『ポチ・各国に1000人以上送っておいたよ。ナイトのおかげで白金貨が山のようにあるから使い魔不足は心配ないね。……今日の仕事はもう終わりで良いかもよ?』

「マジで!じゃあ…今日はパフェでも食いながらスマホぽちぽちして時間来たら風呂に入って……よし!昨日疲れた分リフレッシュするぞぉ!!」
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