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第374話 逃げのびる者達
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英雄の国の西部に位置する諸王国群。かつては魔神による統一もあったと言われるこの諸王国群は一癖も二癖もある王ばかりだ。そんな諸王国群を今の世で統一するのは不可能と言われてきた。しかし現在、その諸王国群はアンドリューの元でアンドリュー自然保護連合同盟としてまとまりを見せている。
偉業と呼ばれるこのアンドリュー自然保護連合同盟だが、全ての諸王国群が同盟に加盟しているわけでは無い。まだ加盟していない国も多い。そして現在、転移によって現れた法国の軍はピンポイントで加盟していない国々を襲っている。
さすがの法国も英雄の国に加え、アンドリュー自然保護連合同盟にまでケンカを売るのはまずいとわかっている。だからこそ同盟に参加していない国を襲い、その国の人々を洗脳することで数を増やしている。
これにはすぐに襲われている国がアンドリュー自然保護連合同盟に助けを求めた。しかしその求めはすぐに却下された。法国がアンドリュー自然保護連合同盟と一戦交えたくないのと同じようにアンドリュー自然保護連合同盟もまた法国とは戦いたくないのだ。
数多の国々が参加しているアンドリュー自然保護連合同盟だが、流石に魔神が相手となれば総力の差は魔神側の方が上手だ。しかも魔神第3位の法神となればその差は歴然である。だからこそアンドリュー自然保護連合同盟は攻撃を受けない限り法国と戦うことはしたくない。
そのことはアンドリューもよくわかっている。本当はミチナガのためにも英雄の国に助力し、法国を倒したい。しかし多くの諸王国が参入しているアンドリュー自然保護連合同盟の同盟長としては絶対に自身の感情でこの戦いに参戦してはいけない。
アンドリューはもどかしい思いに苛まれ続けながら決して動くことはなかった。そしてそんなアンドリューのことを喜ぶように法国はいくつも国を落としていった。その戦火から逃れるために逃げる難民の数もまた計り知れない。
「た、助けてくれ!お願いだ!助けて…」
「お願いします!この子だけでも…この子だけでも良いから中に入れて!!」
「す、すまない…俺たちじゃどうすることもできないんだ。」
とあるアンドリュー自然保護連合同盟に加盟している国では国の外に幾人もの避難民が助けを求めてやってきていた。彼らは法国の軍によって村を焼き払われ、命からがら逃げてきたもの達だ。しかしそんな彼らは決して国の中に入ることを許されなかった。
彼らを受け入れてしまえば今起きている法国と他の国の戦いに干渉することにつながる。ここで避難民を受け入れてしまえば彼らの独断で法国との戦争が始まってしまう可能性があるのだ。故に彼らを助けることはできない。
同様のことが他のアンドリュー自然保護連合同盟の加盟国でも多発している。しかし誰も助けの手を伸ばさない。伸ばせない。どんなに助けを求めても彼らを助けるものはいない。避難民の中にはそれを薄々わかっているものもいる。だがそれでも他に方法がない、頼れるものがいないのだ。
避難民の背後には法国の追っ手が迫っている。避難民はさらに怯えた表情で必死に助けを求める。その様子を国の兵士たちは無視することしかできない。個人の独断で助けることは許されない。一人を助けたせいで数万の自国民に危険が及ぶ。
あまりの悔しさに歯を食いしばる。あまりの食いしばる強さに歯が割れる音まで聞こえてくる。誰も避難民を助けることはできない。どれだけ助けを求めても手を指し延ばすことは許されない。ただしそれはアンドリュー自然保護連合同盟加盟国に限る。
各地の避難民の元へ大量の魔導装甲車が近づく。そこには使い魔が手を繋ぎ合う絵柄の旗が立っていた。それはまさにセキヤ国の旗印だ。魔導装甲車は避難民の前で止まると乗車口を開いた。
『デルタ46・全員こっち!早くこの車両に乗って!我々はセキヤ国、ミチナガ商会!英雄セキヤミチナガの名に置いて彼らを保護します!セキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟から脱退しました!我々が助けます!だから早く!!』
使い魔達の言葉に避難民達は何も考えることなくただ一目散に魔導装甲車に乗り込んだ。その様子を見ていた加盟国の兵士たちは小さくガッツポーズを取る。喜んでいることを法国の者に見られてはいけない。あくまで人に気がつかれないように小さく喜びを見せた。
使い魔達はアンドリューに迷惑がかからないように一時的にアンドリュー自然保護連合同盟から脱退した。正式な手続きで脱退したためイチャモンのつけようがない。使い魔の独断で決めたことだが、ミチナガもセキヤ国の人々ものちにこのことを知った時に何も怒らず、むしろ使い魔を褒めた。
セキヤ国は避難民から生まれた国だ。だから他国とはいえど戦争の避難民を放っておくことはできない。これがもしも普通の国なら他人のために危険を冒すのかと批判が殺到するだろう。理解のある国民を得られたからこその判断だ。
しかしこの判断のせいでセキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟からの支援は受けられない。それどころかセキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟から脱退したせいで法国から攻められることになるだろう。この戦争に巻き込まれることになる。
しかしそのことについて攻める者はいない。むしろ皆、法国と戦うぞと息巻いている。火の国の内乱には法国も関わっていた。だからその恨みを晴らせる良い機会だと思ってくれたのだろう。セキヤ国の心配は必要なさそうだ。
それよりも今は使い魔達が回収した避難民の行方だ。回収した避難民の行くあてがないのだ。諸王国軍の中に唯一あるミチナガの領地であるアンドリュー・ミチナガ魔法学園都市に逃げ込むこともできない。
この学園都市はミチナガとアンドリューの共同出資だ。セキヤ国がアンドリュー自然保護連合同盟から抜けたところでアンドリューが出資していることには変わりないため、アンドリューに迷惑がかかる。
つまり避難民を保護しても逃げる先がないのだ。ひとまず使い魔達は法国の兵士の元から離れる。その間に他の使い魔達が大急ぎで避難場所を探しているが、そんな都合の良い場所が見つからない。
食料や物資はミチナガ商会でどうとでもなるが、必要なのは現在の法国との戦いにおける防衛力、それに避難民が暮らす場所だ。その二つの条件を満たせる国自体が数少ない。その上避難民を受け入れてくれなければならないのだ。そんな条件が短時間で見つかることはまずない。
『ガンマ67・と、とりあえず妖精神に頼んでみるとかは?』
『デルタ46・魔神系統はダメ!下手すれば神龍が出張ってくる。ああもう!アンドリュー自然保護連合同盟に加盟していない国がうちを受け入れてくれるわけないもんね!受け入れるくらいの懐の広さがあればアンドリュー自然保護連合同盟に加盟するもの!英雄の国の属国にいい国があれば良いんだけど、向こうも向こうで戦闘中だから避難民を連れて行けるわけないし…もういっそのこと戦争終わるまでこうやって逃げている?』
『ベータ83・そんな無茶な……ちょい待ち、今良いところ見つかったかも……うん!行けそうな気がする!!全部隊とりあえずそっちの方面に向かって!』
使い魔達はとりあえず一つの国にめがけて移動を開始した。その国はこの法国との騒動が起きる半年前に前王と前王の孫が敵対し、内乱が起きた国だ。そしてひと月前に孫が勝利し、新王政が始まった。
どうやら前王がかなりの圧政を敷いていたため民衆の不満が溜まり、孫が民衆を率いてクーデターを起こしたと言うわけらしい。前王は警戒心が高く周辺国を警戒するため守りを万全にしてある。さらに圧政やクーデターの影響で国民の数はかなり減っている。
つまり防御がしっかりしており、人口不足も出ていると言うことだ。さらにクーデターの影響で物資の枯渇が起きているため、物資の提供ができるミチナガ商会とつながりを持ちたい。なんとも完璧な条件の揃った国である。
現在現地に出向いている使い魔が王と交渉しているが、かなりの手応えがあるようだ。現状この国以外に条件の揃った国はないため、この国にかけるしかない。各地の避難民を魔導装甲車に乗せて使い魔達は全速力でその国に向かった。
しかしそれと同じくらいに法国の兵士の追っ手が少なくなった。単純に多くの国を攻め落としているため、人員不足が起きているのかと思ったがそう言うわけでもなさそうだ。明らかに見逃すことが多くなったように思える。
『黒之佰弍拾・面倒だからほっとく…とか、もう十分だからいいや……なんて甘い考え…ないかな?』
『白之弐佰伍・ないだろうねぇ…こっちの動き…と言うより考え読まれているよね……』
『紅之伍拾・わざわざ追うよりも一箇所に集まるなら集まりきったところを一網打尽の方が早いからねぇ……多分避難民の中に法国の手のものがいるよ。集めたところを招き入れればさらに楽だから。』
法国にとってこの諸王国と戦うのはあくまで英雄の国と戦うための兵力集めでしかない。法国にとってこの戦いは羊狩りくらいなものだ。勝つとか負けるとかそんなレベルではない。うまく羊を狩れるかどうかだ。
とりあえずそんな法国の考えはどうでも良い。法国の魂胆を崩すために使い魔達は避難民に血液検査を行う。そこで血中に麻薬の残留が確認されれば洗脳されている可能性が高い。そしてその血液検査に引っかかったもの達には世界樹の薬を飲ませる。
ただいくら世界樹の薬でも洗脳による脳の変質はすぐに治らない。ただそれでも異変は起きるはずだ。元の人格と洗脳されたことによって生まれた人格でせめぎ合いが起こる。その異変が起きれば洗脳されたと確証できる。そして洗脳されたもの達を牢屋に入れておけば内乱は起こらない。
国に避難し、避難民全員の検査を行い、戦争のために備えるとなればかなりの時間がかかるだろう。しかし法国もわざわざ一つの国に集まってくれるのであればすぐに手は出さない。他の国を攻め落として最後の最後にくるはずだ。多少の時間はある。その時間を利用して守るための準備をしなくてはならない。
だが明らかに対法国の戦力が不足している。しかも相手が法国となると手を貸してくれる戦力がない。あったとしてもこの戦争の状態ではどこも戦力を求めている。集めるのは至難の技だろう。
偉業と呼ばれるこのアンドリュー自然保護連合同盟だが、全ての諸王国群が同盟に加盟しているわけでは無い。まだ加盟していない国も多い。そして現在、転移によって現れた法国の軍はピンポイントで加盟していない国々を襲っている。
さすがの法国も英雄の国に加え、アンドリュー自然保護連合同盟にまでケンカを売るのはまずいとわかっている。だからこそ同盟に参加していない国を襲い、その国の人々を洗脳することで数を増やしている。
これにはすぐに襲われている国がアンドリュー自然保護連合同盟に助けを求めた。しかしその求めはすぐに却下された。法国がアンドリュー自然保護連合同盟と一戦交えたくないのと同じようにアンドリュー自然保護連合同盟もまた法国とは戦いたくないのだ。
数多の国々が参加しているアンドリュー自然保護連合同盟だが、流石に魔神が相手となれば総力の差は魔神側の方が上手だ。しかも魔神第3位の法神となればその差は歴然である。だからこそアンドリュー自然保護連合同盟は攻撃を受けない限り法国と戦うことはしたくない。
そのことはアンドリューもよくわかっている。本当はミチナガのためにも英雄の国に助力し、法国を倒したい。しかし多くの諸王国が参入しているアンドリュー自然保護連合同盟の同盟長としては絶対に自身の感情でこの戦いに参戦してはいけない。
アンドリューはもどかしい思いに苛まれ続けながら決して動くことはなかった。そしてそんなアンドリューのことを喜ぶように法国はいくつも国を落としていった。その戦火から逃れるために逃げる難民の数もまた計り知れない。
「た、助けてくれ!お願いだ!助けて…」
「お願いします!この子だけでも…この子だけでも良いから中に入れて!!」
「す、すまない…俺たちじゃどうすることもできないんだ。」
とあるアンドリュー自然保護連合同盟に加盟している国では国の外に幾人もの避難民が助けを求めてやってきていた。彼らは法国の軍によって村を焼き払われ、命からがら逃げてきたもの達だ。しかしそんな彼らは決して国の中に入ることを許されなかった。
彼らを受け入れてしまえば今起きている法国と他の国の戦いに干渉することにつながる。ここで避難民を受け入れてしまえば彼らの独断で法国との戦争が始まってしまう可能性があるのだ。故に彼らを助けることはできない。
同様のことが他のアンドリュー自然保護連合同盟の加盟国でも多発している。しかし誰も助けの手を伸ばさない。伸ばせない。どんなに助けを求めても彼らを助けるものはいない。避難民の中にはそれを薄々わかっているものもいる。だがそれでも他に方法がない、頼れるものがいないのだ。
避難民の背後には法国の追っ手が迫っている。避難民はさらに怯えた表情で必死に助けを求める。その様子を国の兵士たちは無視することしかできない。個人の独断で助けることは許されない。一人を助けたせいで数万の自国民に危険が及ぶ。
あまりの悔しさに歯を食いしばる。あまりの食いしばる強さに歯が割れる音まで聞こえてくる。誰も避難民を助けることはできない。どれだけ助けを求めても手を指し延ばすことは許されない。ただしそれはアンドリュー自然保護連合同盟加盟国に限る。
各地の避難民の元へ大量の魔導装甲車が近づく。そこには使い魔が手を繋ぎ合う絵柄の旗が立っていた。それはまさにセキヤ国の旗印だ。魔導装甲車は避難民の前で止まると乗車口を開いた。
『デルタ46・全員こっち!早くこの車両に乗って!我々はセキヤ国、ミチナガ商会!英雄セキヤミチナガの名に置いて彼らを保護します!セキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟から脱退しました!我々が助けます!だから早く!!』
使い魔達の言葉に避難民達は何も考えることなくただ一目散に魔導装甲車に乗り込んだ。その様子を見ていた加盟国の兵士たちは小さくガッツポーズを取る。喜んでいることを法国の者に見られてはいけない。あくまで人に気がつかれないように小さく喜びを見せた。
使い魔達はアンドリューに迷惑がかからないように一時的にアンドリュー自然保護連合同盟から脱退した。正式な手続きで脱退したためイチャモンのつけようがない。使い魔の独断で決めたことだが、ミチナガもセキヤ国の人々ものちにこのことを知った時に何も怒らず、むしろ使い魔を褒めた。
セキヤ国は避難民から生まれた国だ。だから他国とはいえど戦争の避難民を放っておくことはできない。これがもしも普通の国なら他人のために危険を冒すのかと批判が殺到するだろう。理解のある国民を得られたからこその判断だ。
しかしこの判断のせいでセキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟からの支援は受けられない。それどころかセキヤ国はアンドリュー自然保護連合同盟から脱退したせいで法国から攻められることになるだろう。この戦争に巻き込まれることになる。
しかしそのことについて攻める者はいない。むしろ皆、法国と戦うぞと息巻いている。火の国の内乱には法国も関わっていた。だからその恨みを晴らせる良い機会だと思ってくれたのだろう。セキヤ国の心配は必要なさそうだ。
それよりも今は使い魔達が回収した避難民の行方だ。回収した避難民の行くあてがないのだ。諸王国軍の中に唯一あるミチナガの領地であるアンドリュー・ミチナガ魔法学園都市に逃げ込むこともできない。
この学園都市はミチナガとアンドリューの共同出資だ。セキヤ国がアンドリュー自然保護連合同盟から抜けたところでアンドリューが出資していることには変わりないため、アンドリューに迷惑がかかる。
つまり避難民を保護しても逃げる先がないのだ。ひとまず使い魔達は法国の兵士の元から離れる。その間に他の使い魔達が大急ぎで避難場所を探しているが、そんな都合の良い場所が見つからない。
食料や物資はミチナガ商会でどうとでもなるが、必要なのは現在の法国との戦いにおける防衛力、それに避難民が暮らす場所だ。その二つの条件を満たせる国自体が数少ない。その上避難民を受け入れてくれなければならないのだ。そんな条件が短時間で見つかることはまずない。
『ガンマ67・と、とりあえず妖精神に頼んでみるとかは?』
『デルタ46・魔神系統はダメ!下手すれば神龍が出張ってくる。ああもう!アンドリュー自然保護連合同盟に加盟していない国がうちを受け入れてくれるわけないもんね!受け入れるくらいの懐の広さがあればアンドリュー自然保護連合同盟に加盟するもの!英雄の国の属国にいい国があれば良いんだけど、向こうも向こうで戦闘中だから避難民を連れて行けるわけないし…もういっそのこと戦争終わるまでこうやって逃げている?』
『ベータ83・そんな無茶な……ちょい待ち、今良いところ見つかったかも……うん!行けそうな気がする!!全部隊とりあえずそっちの方面に向かって!』
使い魔達はとりあえず一つの国にめがけて移動を開始した。その国はこの法国との騒動が起きる半年前に前王と前王の孫が敵対し、内乱が起きた国だ。そしてひと月前に孫が勝利し、新王政が始まった。
どうやら前王がかなりの圧政を敷いていたため民衆の不満が溜まり、孫が民衆を率いてクーデターを起こしたと言うわけらしい。前王は警戒心が高く周辺国を警戒するため守りを万全にしてある。さらに圧政やクーデターの影響で国民の数はかなり減っている。
つまり防御がしっかりしており、人口不足も出ていると言うことだ。さらにクーデターの影響で物資の枯渇が起きているため、物資の提供ができるミチナガ商会とつながりを持ちたい。なんとも完璧な条件の揃った国である。
現在現地に出向いている使い魔が王と交渉しているが、かなりの手応えがあるようだ。現状この国以外に条件の揃った国はないため、この国にかけるしかない。各地の避難民を魔導装甲車に乗せて使い魔達は全速力でその国に向かった。
しかしそれと同じくらいに法国の兵士の追っ手が少なくなった。単純に多くの国を攻め落としているため、人員不足が起きているのかと思ったがそう言うわけでもなさそうだ。明らかに見逃すことが多くなったように思える。
『黒之佰弍拾・面倒だからほっとく…とか、もう十分だからいいや……なんて甘い考え…ないかな?』
『白之弐佰伍・ないだろうねぇ…こっちの動き…と言うより考え読まれているよね……』
『紅之伍拾・わざわざ追うよりも一箇所に集まるなら集まりきったところを一網打尽の方が早いからねぇ……多分避難民の中に法国の手のものがいるよ。集めたところを招き入れればさらに楽だから。』
法国にとってこの諸王国と戦うのはあくまで英雄の国と戦うための兵力集めでしかない。法国にとってこの戦いは羊狩りくらいなものだ。勝つとか負けるとかそんなレベルではない。うまく羊を狩れるかどうかだ。
とりあえずそんな法国の考えはどうでも良い。法国の魂胆を崩すために使い魔達は避難民に血液検査を行う。そこで血中に麻薬の残留が確認されれば洗脳されている可能性が高い。そしてその血液検査に引っかかったもの達には世界樹の薬を飲ませる。
ただいくら世界樹の薬でも洗脳による脳の変質はすぐに治らない。ただそれでも異変は起きるはずだ。元の人格と洗脳されたことによって生まれた人格でせめぎ合いが起こる。その異変が起きれば洗脳されたと確証できる。そして洗脳されたもの達を牢屋に入れておけば内乱は起こらない。
国に避難し、避難民全員の検査を行い、戦争のために備えるとなればかなりの時間がかかるだろう。しかし法国もわざわざ一つの国に集まってくれるのであればすぐに手は出さない。他の国を攻め落として最後の最後にくるはずだ。多少の時間はある。その時間を利用して守るための準備をしなくてはならない。
だが明らかに対法国の戦力が不足している。しかも相手が法国となると手を貸してくれる戦力がない。あったとしてもこの戦争の状態ではどこも戦力を求めている。集めるのは至難の技だろう。
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