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第189話 バベルの塔
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「お、おい!これを見ろ!世界でまだ3回しか確認されていない希少植物だぞ!は、初めて見た…」
「このバカは何を言っているんだ。その隣には世界で初めて確認された新種があるだろうが。」
「は…はははは!み、見ろ!俺はもう新種を5種類も見つけたぞ!」
「何を言っている!それは先に俺が見つけたんだぞ!」
なんというかもう阿鼻叫喚だ。学者たちはまるで子供のように走り回って調査を続けている。まあこんなことになるのは薄々気が付いていた。しかし重要なのは新種が発見されることではないのだ。この森の植物の中に有用なものがあるかが重要なのだ。
すでに数多くの新種があるという事実は勇者神にも報告してある。しかしそんなことよりも薬になるとか果実が美味であることが重要なのだ。この森の植物がただ新種であるというだけで終わるのならば俺の地位は危うい。
「やだー、儂もうここに住む。もうここから出ていかないから。ここに住むから。」
「だ、駄々っ子まで現れやがった。しかもいい歳した爺さんだし。」
誰かこの状況納めてくれ。じゃないとこの森の査察がうまくいかない。こいつら、もう私利私欲のために調査しているぞ。そして学者たちの調査はあたりが暗くなるまで行われた。すでに手元もよく見えなくなっているほどの暗さだというのに、誰も調査を止めようとはしない。
すると小さな黄色く光る点が現れ始めた。日本でも初夏の風物詩として知られる蛍だ。発光の仕方は1秒間隔で発光を繰り返している。蛍の発光の仕方は種によって異なるので、この蛍は異世界ならではの発光の仕方をしている。
「みなさん、見てみてください。蛍が出ましたよ。綺麗ですよ。」
「ホタルというのは一体な…に……げ、月光蟲だ!月光蟲が出たぞ!逃げろぉぉ!!」
一人の学者が月光蟲と叫んだ途端、急に学者たちは慌てふためきながら悲鳴をあげ、走り出した。そして俺がぽかんとしている間にその場から誰もいなくなってしまった。
月光蟲と言っていたが一体なんなのだろうか。この前白獣のみんなと一緒に蛍を見たときはみんな喜んでいた。逃げ惑っていた学者たちは使い魔たちによってこの森の入り口である兵士たちが常駐している場所に移動させてある。とりあえず俺もすぐにそこに向かおう。
俺が森を抜けるとそこには大勢の学者たちが体を震わせながら兵士たちに守られていた。大丈夫かと思い、心配そうな表情で俺が近づくと全員が再び悲鳴をあげた。
「あ、あた…頭…う、動くな…動くんじゃない!」
『クロック・あ、ボス。頭に蛍ついていますよ。』
「え?ああ、本当だ。ずっとくっついてきたのか。かわいそうだから後で帰してやらないとな。」
俺が蛍を手に持つと全員が悲鳴をあげる。一体なんだというのだろうか。おそらく月光蟲というやつが関係あるのだろうが、話を聞ける雰囲気ではない。すると一人の兵士が俺に声をかけてきた。
「は、早くそいつをどうにかしたほうがいい。手を食いちぎられるぞ。」
「え?蛍は水しか飲み食いしませんよ。そんな物騒なことにはならないので大丈夫です。」
一体なんなのか詳しく聞いてみると、この世界には蛍によく似た月光蟲というものがいるらしい。青白く発光するその蟲は自身の光に寄って来た他の昆虫や動物、モンスター、人間に到るまでなんでも食いつくらしい。
しかも悲鳴をあげるとその声の振動を感知して他の月光蟲も集まってくるとのことだ。月光蟲はモンスターではなく、昆虫という扱いなのだが、その危険度はC級だ。月光蟲の出る森は月光蟲の繁殖期及び、夜間の侵入は禁じられるほどである。
そういえば蛍は幼虫の頃はカワニナという貝を食べる肉食だったな。海外なんかじゃ成虫でも肉食の蛍がいるらしい。案外蛍って…怖いかもな。
それでもなんとか話をするとようやくこの蛍は安全であると理解してくれたらしい。恐る恐る見に来た昆虫学者たちはビクビクと体を震わせながら観察をしている。戻ってみんなで蛍の鑑賞をしないか誘っても見たが、どうやら月光蟲の恐怖があるらしく断られてしまった。
白獣のみんなと蛍鑑賞ができたのは月光蟲のことを知らなかったからなんだな。まああんな砂漠に住んでいたら知らなくて当然だけどね。
そして翌日からは昨日までの勢いが嘘のように恐怖に体を震わせながら朝から夕方までという時間厳守で調査を行うようになった。下手に暗くなって蛍を見るのがよほど嫌なのだろう。安全だとわかっていても身に染みてしまった恐怖というのはそう簡単にはぬぐえないようだ。
そして10日に及ぶ調査は終わった。学者たちとしてはさらに調査したいところではあるのだろうが、一度採取したサンプルを持ち帰り研究所で調べる必要もある。結果はなるべく早く出すとのことだが、しばらく時間はかかるだろう。
しかしこれでようやくひと段落ついた。学者たちが居る間は毎日朝から晩まで対応をしなくてはならなかった。久しぶりにがっつり働いたせいで少し疲れた。
翌日、久しぶりにゆっくりしようかと思ったが、この数日間の白獣たちの行動を聞いていなかった。何か進展があったかもしれないので白獣たちの元へ向かうとそこでは大量のカニをさばいて居るところであった。
「ああ、ミチナガ様。どうされましたか?」
「それはこちらが聞きたいんですけど…こんな大量のカニをどうしたんですか?」
「実は数日前に鍾乳洞らしきものを見つけまして、その中に大量の鉱石蟹を見つけたんです。いくら乱獲しても数が減る気がしなくて…そのおかげで賢者の石も大量に手に入りましたよ。」
森の調査中に見つけた鍾乳洞らしき場所で壁一面の鉱石蟹を発見したとのことだが、まずいつの間にか鉱石蟹なんて名前がついていることにも驚いている。なぜそんな名前かというとこのカニの甲羅には鉄や銅などの鉱物が混ざっているとのことだ。
鉄や銅などの鉱石で甲羅を強化していたが、賢者の石だけは甲羅に混ぜることができずに身に残ってしまったらしい。そんな鉱石蟹を大量に乱獲しているとのことだが、どうやらその鍾乳洞らしき場所には数万を越すほどの鉱石蟹がいるとのことだ。
「しかし鍾乳洞らしき場所って…」
「どうやら鉱脈のようなんですが、鉱石蟹は鉱石以外のものを体外に排出していて…。それが積もって鍾乳洞のようになっているようです。まあ我々は鍾乳洞というもの自体知らないのですが、使い魔の方々曰くそうらしいです。」
つまり蟹のウンコの鍾乳洞か。いや、正確には鍾乳洞ではないのだが、氷柱になっているものの色は白っぽいので、見た目は完全に鍾乳洞らしい。ややこしいな。
そんなことで鉱石蟹によって賢者の石の安定供給が可能になったようだ。それから甲羅に含まれる金属成分のおかげで他の金属も入手することができそうだ。このことに関してはすべて任せてほしいということなのですべて任せて俺はその場を後にした。
それから他にも何かないか聞いて回ったが、森についての情報ばかりだ。ただ、森の情報に関してはすでに使い魔たちによってほとんど知っているので実りある報告は特になかった。
するとスマホに通知が来た。どうやらあの鍵を入手して始まった新規システムというものが終わったらしい。すぐに確認して見ると新しいアプリが増えていた。その名もバベルの塔だ。開いてみると説明が始まった。
『バベルの塔へようこそ。ここでは己が智を試される。日に1時間まで入場することができる。さあ、己が智略を我が前に示せ!』
「うわぁ…なんかレトロゲーっぽい感じ。」
バベル『“初めましてこの塔の管理者、バベルと申します。以後、よろしくお願いします。では早速ですが…入場しますか?”』
ミチナガ『“よろしくな。まあよくわからないけどじゃあ入場するわ。”』
バベル『“わかりました。では健闘を祈ります…”』
入場すると早速ゲームが始まった。どんなものかというと脱出系のゲームだ。部屋の中のものから出口に到達するヒントを探していく。そして部屋の中のオブジェクトを動かして脱出するのだ。
結構作り込んであるゲームで、今までのこのスマホのゲームとは一風変わっている。なんというか普通に楽しめるゲームだ。難易度は高いが、むしろそれくらいがやりがいもあるというものだ。
「よしクリア。あ、奥の部屋みたいなのがあるんだ。ステージ1–2みたいなものか。」
バベル『“ちょ!も、もう終わったの!?5分しかかかってないよ!!”』
むしろ5分もかかったと驚いている。こういうゲームのクリア方法は発想の転換とちょっとした気づきだ。一つのことだけに悩むのではなく、他のことと連動させながら考えればすんなりと解ける。
それにこういったゲームは得意分野だ。かつて新しくリリースしたばかりの謎解きゲームの攻略サイトを30分で立ち上げた時は開発者からクレームのメールが何通も来た。だけど10分程度でできる謎解きゲームを開発した方にも問題あるだろ。
そして1時間後、俺はバベルの塔の第1層をクリアした。管理者だといっていたバベルは半泣きである。だけどなかなかやりごたえのあるゲームだったぞ。泣くことはない。
バベル『“だ、第一層クリア…おめでとうございます…グスン。クリア報酬として知識か物品を差し上げましょう。どちらにされますか?”』
「おお!まじでか!」
まあこのスマホだからただのゲームで終わりということはないと思っていたが、そんな特典があるとは思いもしなかった。しかしどちらかだけか…そう思うと少し報酬がしょっぱい気がする。少しおだててみるか。
ミチナガ『“いやぁ…今回はうまくいったけど、かなりの難関だったなぁ。これだけのことをして得られる情報や物はさぞかしいいものなんだろうなぁ…これは悩んじゃうなぁ…。”』
バベル『“え?…そ、そうかな。ま、まあ今回はうまくいったけど、これってすごーく難しいからね!あ、でもどうしよ…報酬大したことな……こ、今回は特別に両方あげちゃおうかな!”』
よし!運営が使い魔ということで隙くらいあるだろと思っていたが、予想以上にチョロかった。しかしこいつ今大したことないって言おうとしていたぞ。やっぱこのスマホくそだな。
バベル『“では報酬が与えられます!先ずは知識ですが、チーズ作成の知識を差し上げましょう。物品は菌です。”』
「わぁ~…まじでクソみたいな報酬だな。」
別にチーズはこの世界でも作られているので、そういった人から話を聞けば特に問題ない。菌の方は一体なんの菌なのかわからないが、菌だって入手しようと思えば入手できるだろ。やっぱりこのスマホの報酬なんて高が知れているな。
「このバカは何を言っているんだ。その隣には世界で初めて確認された新種があるだろうが。」
「は…はははは!み、見ろ!俺はもう新種を5種類も見つけたぞ!」
「何を言っている!それは先に俺が見つけたんだぞ!」
なんというかもう阿鼻叫喚だ。学者たちはまるで子供のように走り回って調査を続けている。まあこんなことになるのは薄々気が付いていた。しかし重要なのは新種が発見されることではないのだ。この森の植物の中に有用なものがあるかが重要なのだ。
すでに数多くの新種があるという事実は勇者神にも報告してある。しかしそんなことよりも薬になるとか果実が美味であることが重要なのだ。この森の植物がただ新種であるというだけで終わるのならば俺の地位は危うい。
「やだー、儂もうここに住む。もうここから出ていかないから。ここに住むから。」
「だ、駄々っ子まで現れやがった。しかもいい歳した爺さんだし。」
誰かこの状況納めてくれ。じゃないとこの森の査察がうまくいかない。こいつら、もう私利私欲のために調査しているぞ。そして学者たちの調査はあたりが暗くなるまで行われた。すでに手元もよく見えなくなっているほどの暗さだというのに、誰も調査を止めようとはしない。
すると小さな黄色く光る点が現れ始めた。日本でも初夏の風物詩として知られる蛍だ。発光の仕方は1秒間隔で発光を繰り返している。蛍の発光の仕方は種によって異なるので、この蛍は異世界ならではの発光の仕方をしている。
「みなさん、見てみてください。蛍が出ましたよ。綺麗ですよ。」
「ホタルというのは一体な…に……げ、月光蟲だ!月光蟲が出たぞ!逃げろぉぉ!!」
一人の学者が月光蟲と叫んだ途端、急に学者たちは慌てふためきながら悲鳴をあげ、走り出した。そして俺がぽかんとしている間にその場から誰もいなくなってしまった。
月光蟲と言っていたが一体なんなのだろうか。この前白獣のみんなと一緒に蛍を見たときはみんな喜んでいた。逃げ惑っていた学者たちは使い魔たちによってこの森の入り口である兵士たちが常駐している場所に移動させてある。とりあえず俺もすぐにそこに向かおう。
俺が森を抜けるとそこには大勢の学者たちが体を震わせながら兵士たちに守られていた。大丈夫かと思い、心配そうな表情で俺が近づくと全員が再び悲鳴をあげた。
「あ、あた…頭…う、動くな…動くんじゃない!」
『クロック・あ、ボス。頭に蛍ついていますよ。』
「え?ああ、本当だ。ずっとくっついてきたのか。かわいそうだから後で帰してやらないとな。」
俺が蛍を手に持つと全員が悲鳴をあげる。一体なんだというのだろうか。おそらく月光蟲というやつが関係あるのだろうが、話を聞ける雰囲気ではない。すると一人の兵士が俺に声をかけてきた。
「は、早くそいつをどうにかしたほうがいい。手を食いちぎられるぞ。」
「え?蛍は水しか飲み食いしませんよ。そんな物騒なことにはならないので大丈夫です。」
一体なんなのか詳しく聞いてみると、この世界には蛍によく似た月光蟲というものがいるらしい。青白く発光するその蟲は自身の光に寄って来た他の昆虫や動物、モンスター、人間に到るまでなんでも食いつくらしい。
しかも悲鳴をあげるとその声の振動を感知して他の月光蟲も集まってくるとのことだ。月光蟲はモンスターではなく、昆虫という扱いなのだが、その危険度はC級だ。月光蟲の出る森は月光蟲の繁殖期及び、夜間の侵入は禁じられるほどである。
そういえば蛍は幼虫の頃はカワニナという貝を食べる肉食だったな。海外なんかじゃ成虫でも肉食の蛍がいるらしい。案外蛍って…怖いかもな。
それでもなんとか話をするとようやくこの蛍は安全であると理解してくれたらしい。恐る恐る見に来た昆虫学者たちはビクビクと体を震わせながら観察をしている。戻ってみんなで蛍の鑑賞をしないか誘っても見たが、どうやら月光蟲の恐怖があるらしく断られてしまった。
白獣のみんなと蛍鑑賞ができたのは月光蟲のことを知らなかったからなんだな。まああんな砂漠に住んでいたら知らなくて当然だけどね。
そして翌日からは昨日までの勢いが嘘のように恐怖に体を震わせながら朝から夕方までという時間厳守で調査を行うようになった。下手に暗くなって蛍を見るのがよほど嫌なのだろう。安全だとわかっていても身に染みてしまった恐怖というのはそう簡単にはぬぐえないようだ。
そして10日に及ぶ調査は終わった。学者たちとしてはさらに調査したいところではあるのだろうが、一度採取したサンプルを持ち帰り研究所で調べる必要もある。結果はなるべく早く出すとのことだが、しばらく時間はかかるだろう。
しかしこれでようやくひと段落ついた。学者たちが居る間は毎日朝から晩まで対応をしなくてはならなかった。久しぶりにがっつり働いたせいで少し疲れた。
翌日、久しぶりにゆっくりしようかと思ったが、この数日間の白獣たちの行動を聞いていなかった。何か進展があったかもしれないので白獣たちの元へ向かうとそこでは大量のカニをさばいて居るところであった。
「ああ、ミチナガ様。どうされましたか?」
「それはこちらが聞きたいんですけど…こんな大量のカニをどうしたんですか?」
「実は数日前に鍾乳洞らしきものを見つけまして、その中に大量の鉱石蟹を見つけたんです。いくら乱獲しても数が減る気がしなくて…そのおかげで賢者の石も大量に手に入りましたよ。」
森の調査中に見つけた鍾乳洞らしき場所で壁一面の鉱石蟹を発見したとのことだが、まずいつの間にか鉱石蟹なんて名前がついていることにも驚いている。なぜそんな名前かというとこのカニの甲羅には鉄や銅などの鉱物が混ざっているとのことだ。
鉄や銅などの鉱石で甲羅を強化していたが、賢者の石だけは甲羅に混ぜることができずに身に残ってしまったらしい。そんな鉱石蟹を大量に乱獲しているとのことだが、どうやらその鍾乳洞らしき場所には数万を越すほどの鉱石蟹がいるとのことだ。
「しかし鍾乳洞らしき場所って…」
「どうやら鉱脈のようなんですが、鉱石蟹は鉱石以外のものを体外に排出していて…。それが積もって鍾乳洞のようになっているようです。まあ我々は鍾乳洞というもの自体知らないのですが、使い魔の方々曰くそうらしいです。」
つまり蟹のウンコの鍾乳洞か。いや、正確には鍾乳洞ではないのだが、氷柱になっているものの色は白っぽいので、見た目は完全に鍾乳洞らしい。ややこしいな。
そんなことで鉱石蟹によって賢者の石の安定供給が可能になったようだ。それから甲羅に含まれる金属成分のおかげで他の金属も入手することができそうだ。このことに関してはすべて任せてほしいということなのですべて任せて俺はその場を後にした。
それから他にも何かないか聞いて回ったが、森についての情報ばかりだ。ただ、森の情報に関してはすでに使い魔たちによってほとんど知っているので実りある報告は特になかった。
するとスマホに通知が来た。どうやらあの鍵を入手して始まった新規システムというものが終わったらしい。すぐに確認して見ると新しいアプリが増えていた。その名もバベルの塔だ。開いてみると説明が始まった。
『バベルの塔へようこそ。ここでは己が智を試される。日に1時間まで入場することができる。さあ、己が智略を我が前に示せ!』
「うわぁ…なんかレトロゲーっぽい感じ。」
バベル『“初めましてこの塔の管理者、バベルと申します。以後、よろしくお願いします。では早速ですが…入場しますか?”』
ミチナガ『“よろしくな。まあよくわからないけどじゃあ入場するわ。”』
バベル『“わかりました。では健闘を祈ります…”』
入場すると早速ゲームが始まった。どんなものかというと脱出系のゲームだ。部屋の中のものから出口に到達するヒントを探していく。そして部屋の中のオブジェクトを動かして脱出するのだ。
結構作り込んであるゲームで、今までのこのスマホのゲームとは一風変わっている。なんというか普通に楽しめるゲームだ。難易度は高いが、むしろそれくらいがやりがいもあるというものだ。
「よしクリア。あ、奥の部屋みたいなのがあるんだ。ステージ1–2みたいなものか。」
バベル『“ちょ!も、もう終わったの!?5分しかかかってないよ!!”』
むしろ5分もかかったと驚いている。こういうゲームのクリア方法は発想の転換とちょっとした気づきだ。一つのことだけに悩むのではなく、他のことと連動させながら考えればすんなりと解ける。
それにこういったゲームは得意分野だ。かつて新しくリリースしたばかりの謎解きゲームの攻略サイトを30分で立ち上げた時は開発者からクレームのメールが何通も来た。だけど10分程度でできる謎解きゲームを開発した方にも問題あるだろ。
そして1時間後、俺はバベルの塔の第1層をクリアした。管理者だといっていたバベルは半泣きである。だけどなかなかやりごたえのあるゲームだったぞ。泣くことはない。
バベル『“だ、第一層クリア…おめでとうございます…グスン。クリア報酬として知識か物品を差し上げましょう。どちらにされますか?”』
「おお!まじでか!」
まあこのスマホだからただのゲームで終わりということはないと思っていたが、そんな特典があるとは思いもしなかった。しかしどちらかだけか…そう思うと少し報酬がしょっぱい気がする。少しおだててみるか。
ミチナガ『“いやぁ…今回はうまくいったけど、かなりの難関だったなぁ。これだけのことをして得られる情報や物はさぞかしいいものなんだろうなぁ…これは悩んじゃうなぁ…。”』
バベル『“え?…そ、そうかな。ま、まあ今回はうまくいったけど、これってすごーく難しいからね!あ、でもどうしよ…報酬大したことな……こ、今回は特別に両方あげちゃおうかな!”』
よし!運営が使い魔ということで隙くらいあるだろと思っていたが、予想以上にチョロかった。しかしこいつ今大したことないって言おうとしていたぞ。やっぱこのスマホくそだな。
バベル『“では報酬が与えられます!先ずは知識ですが、チーズ作成の知識を差し上げましょう。物品は菌です。”』
「わぁ~…まじでクソみたいな報酬だな。」
別にチーズはこの世界でも作られているので、そういった人から話を聞けば特に問題ない。菌の方は一体なんの菌なのかわからないが、菌だって入手しようと思えば入手できるだろ。やっぱりこのスマホの報酬なんて高が知れているな。
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