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第81話 遺産の報酬

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 計画はしばらく考えていたが、俺とジャギックのことも考えて日をまたぐ前に終わることとなった。全員が布団に入っていく中。俺は急いでスマホのあるアプリを起動させた。

『女神ちゃんガチャへようこそ。今日の分をまだ回してないよ。』

「あぶねぇあぶねぇ。1日1回のガチャだからな。日をまたぐ前にやっておかないと。」

 女神ちゃんガチャ。正直最近は素材ばっかりだが、時々良いものも出てくるのでサボるということはありえない。いつもは日をまたいだらすぐに回しているのだが、昨日はあんなことがあったので回すことができなかった。今日はまだ日が変わるまで時間はあるが、とっとと回してしまう。

『今日は木の板10枚だよ。また明日~』

「木材も集まってきたな。これでもうすぐスミスたちの家を作れるな。」

 木材は外れ枠に近かったが、家の増設が必要になってきた今では必須のアイテムだ。とはいえいえ一軒分の木材はなかなか集まらないのでそのうち金が貯まったら買わないといけないな。するといつもならここで終わるはずの女神ちゃんガチャで何やら硬貨が現れた。

『おめでとう。遺産の発見報酬を入手したよ。ガチャを回してね。』

「遺産?なんだそりゃ。なんかあったっけ……ダメだ。全然検討つかない。」

 いくら頭をひねってもなんのことかわからない。遺産…あのゼロ戦のことかな?あの時に何かスマホで通知きたっけ?ダメだ、思い出せん。普段から朝は寝ぼけながらスマホ開くし、何か通知きていてもわからない。まあ貰えるものはもらっておこう。

 ガチャを回す。するといつもならアイテムがゆっくり出てくるのだが、なぜか出てきたアイテムが勢いよく飛んでいった。それはボールを投げるような放物線ではなく、空高く舞い上がった。そして再び下に降りてくる。それは、まるでおもちゃのラジコン飛行機のようであった。そのラジコン飛行機には見慣れた白い塊がのっていた。

『おめでとう!新しい使い魔を手に入れたよ。』

「おお!久しぶりに女神ちゃんガチャで使い魔出たな。この感じは…飛行機乗り?」

サクラ『“お初にお目にかかります。自分、サクラと申す者であります。以後、よろしくお願いいたします。”』

ミチナガ『“名前が初めからついているのか。これは新しいパターンだな。初めまして、これからよろしくな。それでサクラは何ができるんだ?”』

サクラ『“自分は戦闘機乗りであります。それとひとつ伝えておきますと自分、今回だけ特別に一度だけ能力を完全に使うことができるであります。”』

ミチナガ『“能力を完全に?能力に完全も何もあるのか?”』

サクラ『“はい!自分たちの能力は魔力を用いることによってさらに高めることができます。それ以外にも要因はありますが、主な要因は魔力であります。”』

 超初耳なんだけど。試しに他の使い魔たちに聞いてみると今知ったという。使い魔の解放は新しい能力を目覚めさせるトリガーにもなるのかもしれないな。これはこれからもどんどん使い魔を増やしていかないと。

サクラ『“それといくつか言っておきたいことがあります。まずは自分が解放されたことで整備場の建設ができるようになったであります。それから使い捨ての射出機を手に入れたであります。”』

ミチナガ『“射出機って……なんか違くね?まあそれで飛ばせるならいいや。整備場はこの一件が片付いたらだな。金がなくて今は作れない。それから能力を完全に使えると聞いたけどそれってどんな能力だ?”』

 サクラは自分の力をそれはそれは雄弁に語ってくれた。どのようにして使って、どのような力があるか。それを聞いた俺は一つのことを考えついた。考えついたが、この方法は取りたくない。しかしこの方法は確実な結果をもたらしてくれるだろう。

ミチナガ『“わかった。じゃあお前にいざという時のバックアッププランとしての役割を与える。……その時は、決して何も考えるな。わかったな?”』

サクラ『“その任務、承りました。”』



 それから作戦を練ること約3日、メリリドさんたちがこの国の近くまでたどり着いたという連絡を受けた。メリリドさんたちにはシェフの眷属を連れた状態で周辺を移動しまくってもらう。そうすることで、俺のマップアプリのマップが埋まっていく。こうすることで作戦の成功率がさらに上がる。

 それからルシュール辺境伯の元に残っているシェフからも連絡が来た。洗脳から身を守るための抗魔の指輪は今ある分を含めて全部で10個入手できたとのことだ。そのうち9個をメリリドさんたちに渡し、一人2個ずつ装着してもらい、残りの1個は予備として取っておく。場合によってはカイを殺す実行役に念のため3個装着してもらう。

 残る1個は俺が装着する。これも万が一の時のためだ。それから洗脳を撹乱するための魔道具、というよりこれは粉薬だ。それを大量に用意してもらった。しかしこれはあくまで撹乱するためのもので、洗脳を治す効果はない。しかし撹乱された人間は戦闘において役に立たなくなるだろう。

 そして今日、とうとう作戦の前段階の遂行に移る。これが失敗したらこれまでの全て、そしてこれからの全てが駄目になる。この作戦の遂行者にはかなりの重圧がのしかかっている。間違いない。なんせ…

「よし、じゃあミチナガくん。頼んだわよ。」

「は…はい。本当に…今から行くんですよね?」

 この作戦の遂行者は俺だ。というよりこの作戦を遂行できるのは俺しかいない。というか俺なしでできない作戦プランになっている。本当にこんな作戦しかないのかよ。3日話し合ったけどさ。俺には正直無理だって。

「じゃあこれからやることを確認するわよ。あなたはこれから城に行く。そして門番に手紙を見せる。その手紙はどこ?」

「む、胸ポケットに…あ、内ポケットに入っています。村長からもらった国王へ謁見できるように書かれているものです。」

 そう、最初の段階はまず国王カイに会うことだ。まず普通なら会うことは不可能だ。そこらへんで書いた何かの訴状を持って行っても門前払い。よくてその手の関係者が見てお終い。しかしあの村長からもらった手紙なら直接国王への謁見が叶う。これで最初の段階が成功する。

「そしてカイに会ったらどうするの?」

「村のピンチだと言って兵を出動させます。そこにカイがついて行くように仕向けます。女性がさらわれていると言えばあの色ボケは乗ってくる可能性があります。その他の場合も計画通りに話します。」

 第2段階はカイを城から連れ出す。その方法はいくつも考えて、パターンを決められている。そのパターンに嵌められれば必ずうまく行くはずだ。

「そして最後はメリリドたちの元へおびき寄せる。Aプランはメリリドたちに殺させる。だけどそれができなかった場合は…頼むわよ。私たちはこの国から出られない。だからあなたのプランに全てをかける。それでいいわね?」

「ええ、ミミアンさんたちはそれで十分です。大丈夫です。大丈夫…。では…ちょっと一回トイレ行かせて…緊張でお腹が…」

 ここまで緊張に弱いとは思いもしなかった。しかしまさか自分がこの国の命運を背負うなんて夢にも思わなかった。そんなすごい人間でもないんですよ、本当に。今だって緊張でお腹が痛くなっちゃうんだから。

 あー…緊張でゲロ吐きたくなって来た。もう帰りたい…帰る場所ないけど帰りたい。もういや、本当に嫌…あー…

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