82 / 572
第81話 遺産の報酬
しおりを挟む計画はしばらく考えていたが、俺とジャギックのことも考えて日をまたぐ前に終わることとなった。全員が布団に入っていく中。俺は急いでスマホのあるアプリを起動させた。
『女神ちゃんガチャへようこそ。今日の分をまだ回してないよ。』
「あぶねぇあぶねぇ。1日1回のガチャだからな。日をまたぐ前にやっておかないと。」
女神ちゃんガチャ。正直最近は素材ばっかりだが、時々良いものも出てくるのでサボるということはありえない。いつもは日をまたいだらすぐに回しているのだが、昨日はあんなことがあったので回すことができなかった。今日はまだ日が変わるまで時間はあるが、とっとと回してしまう。
『今日は木の板10枚だよ。また明日~』
「木材も集まってきたな。これでもうすぐスミスたちの家を作れるな。」
木材は外れ枠に近かったが、家の増設が必要になってきた今では必須のアイテムだ。とはいえいえ一軒分の木材はなかなか集まらないのでそのうち金が貯まったら買わないといけないな。するといつもならここで終わるはずの女神ちゃんガチャで何やら硬貨が現れた。
『おめでとう。遺産の発見報酬を入手したよ。ガチャを回してね。』
「遺産?なんだそりゃ。なんかあったっけ……ダメだ。全然検討つかない。」
いくら頭をひねってもなんのことかわからない。遺産…あのゼロ戦のことかな?あの時に何かスマホで通知きたっけ?ダメだ、思い出せん。普段から朝は寝ぼけながらスマホ開くし、何か通知きていてもわからない。まあ貰えるものはもらっておこう。
ガチャを回す。するといつもならアイテムがゆっくり出てくるのだが、なぜか出てきたアイテムが勢いよく飛んでいった。それはボールを投げるような放物線ではなく、空高く舞い上がった。そして再び下に降りてくる。それは、まるでおもちゃのラジコン飛行機のようであった。そのラジコン飛行機には見慣れた白い塊がのっていた。
『おめでとう!新しい使い魔を手に入れたよ。』
「おお!久しぶりに女神ちゃんガチャで使い魔出たな。この感じは…飛行機乗り?」
サクラ『“お初にお目にかかります。自分、サクラと申す者であります。以後、よろしくお願いいたします。”』
ミチナガ『“名前が初めからついているのか。これは新しいパターンだな。初めまして、これからよろしくな。それでサクラは何ができるんだ?”』
サクラ『“自分は戦闘機乗りであります。それとひとつ伝えておきますと自分、今回だけ特別に一度だけ能力を完全に使うことができるであります。”』
ミチナガ『“能力を完全に?能力に完全も何もあるのか?”』
サクラ『“はい!自分たちの能力は魔力を用いることによってさらに高めることができます。それ以外にも要因はありますが、主な要因は魔力であります。”』
超初耳なんだけど。試しに他の使い魔たちに聞いてみると今知ったという。使い魔の解放は新しい能力を目覚めさせるトリガーにもなるのかもしれないな。これはこれからもどんどん使い魔を増やしていかないと。
サクラ『“それといくつか言っておきたいことがあります。まずは自分が解放されたことで整備場の建設ができるようになったであります。それから使い捨ての射出機を手に入れたであります。”』
ミチナガ『“射出機って……なんか違くね?まあそれで飛ばせるならいいや。整備場はこの一件が片付いたらだな。金がなくて今は作れない。それから能力を完全に使えると聞いたけどそれってどんな能力だ?”』
サクラは自分の力をそれはそれは雄弁に語ってくれた。どのようにして使って、どのような力があるか。それを聞いた俺は一つのことを考えついた。考えついたが、この方法は取りたくない。しかしこの方法は確実な結果をもたらしてくれるだろう。
ミチナガ『“わかった。じゃあお前にいざという時のバックアッププランとしての役割を与える。……その時は、決して何も考えるな。わかったな?”』
サクラ『“その任務、承りました。”』
それから作戦を練ること約3日、メリリドさんたちがこの国の近くまでたどり着いたという連絡を受けた。メリリドさんたちにはシェフの眷属を連れた状態で周辺を移動しまくってもらう。そうすることで、俺のマップアプリのマップが埋まっていく。こうすることで作戦の成功率がさらに上がる。
それからルシュール辺境伯の元に残っているシェフからも連絡が来た。洗脳から身を守るための抗魔の指輪は今ある分を含めて全部で10個入手できたとのことだ。そのうち9個をメリリドさんたちに渡し、一人2個ずつ装着してもらい、残りの1個は予備として取っておく。場合によってはカイを殺す実行役に念のため3個装着してもらう。
残る1個は俺が装着する。これも万が一の時のためだ。それから洗脳を撹乱するための魔道具、というよりこれは粉薬だ。それを大量に用意してもらった。しかしこれはあくまで撹乱するためのもので、洗脳を治す効果はない。しかし撹乱された人間は戦闘において役に立たなくなるだろう。
そして今日、とうとう作戦の前段階の遂行に移る。これが失敗したらこれまでの全て、そしてこれからの全てが駄目になる。この作戦の遂行者にはかなりの重圧がのしかかっている。間違いない。なんせ…
「よし、じゃあミチナガくん。頼んだわよ。」
「は…はい。本当に…今から行くんですよね?」
この作戦の遂行者は俺だ。というよりこの作戦を遂行できるのは俺しかいない。というか俺なしでできない作戦プランになっている。本当にこんな作戦しかないのかよ。3日話し合ったけどさ。俺には正直無理だって。
「じゃあこれからやることを確認するわよ。あなたはこれから城に行く。そして門番に手紙を見せる。その手紙はどこ?」
「む、胸ポケットに…あ、内ポケットに入っています。村長からもらった国王へ謁見できるように書かれているものです。」
そう、最初の段階はまず国王カイに会うことだ。まず普通なら会うことは不可能だ。そこらへんで書いた何かの訴状を持って行っても門前払い。よくてその手の関係者が見てお終い。しかしあの村長からもらった手紙なら直接国王への謁見が叶う。これで最初の段階が成功する。
「そしてカイに会ったらどうするの?」
「村のピンチだと言って兵を出動させます。そこにカイがついて行くように仕向けます。女性がさらわれていると言えばあの色ボケは乗ってくる可能性があります。その他の場合も計画通りに話します。」
第2段階はカイを城から連れ出す。その方法はいくつも考えて、パターンを決められている。そのパターンに嵌められれば必ずうまく行くはずだ。
「そして最後はメリリドたちの元へおびき寄せる。Aプランはメリリドたちに殺させる。だけどそれができなかった場合は…頼むわよ。私たちはこの国から出られない。だからあなたのプランに全てをかける。それでいいわね?」
「ええ、ミミアンさんたちはそれで十分です。大丈夫です。大丈夫…。では…ちょっと一回トイレ行かせて…緊張でお腹が…」
ここまで緊張に弱いとは思いもしなかった。しかしまさか自分がこの国の命運を背負うなんて夢にも思わなかった。そんなすごい人間でもないんですよ、本当に。今だって緊張でお腹が痛くなっちゃうんだから。
あー…緊張でゲロ吐きたくなって来た。もう帰りたい…帰る場所ないけど帰りたい。もういや、本当に嫌…あー…
10
お気に入りに追加
545
あなたにおすすめの小説
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。
ドグラマ3
小松菜
ファンタジー
悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。
異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。
*前作ドグラマ2の続編です。
毎日更新を目指しています。
ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
異世界隠密冒険記
リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。
人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。
ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。
黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。
その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。
冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。
現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。
改稿を始めました。
以前より読みやすくなっているはずです。
第一部完結しました。第二部完結しました。
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚
なっくる
ファンタジー
「黄金の釣りスキルだと? 戦いの役に立たないスキル持ちなど不要だ!」
スキル評価が人生のすべてを決める冒険者。ハズレスキルである【釣りスキル】しか持たない冒険者レイルは、所属していた冒険者学校の悪徳理事長から放校を宣告される。
だが、レイルのスキルは突如大進化を遂げる……異世界に繋がるようになった釣りスキルは、なぜか美少女大魔導士を一本釣りしてしまう。
彼女と意気投合したレイル、彼女を元の世界に戻すヒントを探すため、一緒に旅に出ることに。
旅の途中、次々と新たなスキルが目覚めていき、魚だけでなくレアアイテムやチートな召喚獣まで異世界から釣れるようになったレイル、気が付いたら史上最強の釣り師に?
釣り師が無双とかこれ、釣りじゃないですから!
彼女と大金を手にいれたレイル、ついには世界の危機へ挑む、彼の手にあるのは黒光りした一本の釣り竿だったッ!
これは、戦闘の役に立たない【釣りスキル】を持った少年が、異世界の少女と共に、2つの世界をまとめて救う物語。
※他サイトでも連載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる