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第65話 冒険者ギルド
しおりを挟むさて、店は使い魔の眷属を4体おいてきた。彼らは自由に俺のスマホからアイテムを取り出せるし、何か問題が起きても知らせることが可能だ。まあ昨日の営業を見る限り、俺がいなくても全く問題はない。眷属たちと従業員のみんなさえいれば十分に店は回る。
なので今日は冒険者ギルドに来ている。これは来るべき英雄の国へ行く時の護衛選抜だ。別にそこまで急ぐことはないので、じっくりと選ばせてもらおう。
冒険者ギルドに入ると中には屈強な男女がぞろぞろといる。まあ魔法使いのような割と華奢めの人もいるにいるのだが、俺はあまりこの雰囲気は好きではない。なんて言うんだろう、みんな血の気が多いから怖いんだよね。ちょっと小突かれただけで死ぬ気がする。
とりあえずビクビクと移動しながらギルドの受付カウンターに移動する。結構視線が集まっていてなんか怖いし恥ずかしい。受付の人は優しい感じのお姉さんだった。受付は外部の人のことも考えてこう言う人を選んでいるのかな?だとしたらそれ正解。結構心が安らいだよ。
「こんにちは。ご依頼の方でしょうか。」
「はい、護衛依頼を出したいんです。場所は…死の湖まで。」
「なるほどわかりました。それでは…」
「おいおいにいちゃん。護衛かい?それなら俺たちがやってやろうか?ヒック…」
うっわ、何これテンプレじゃん。マジでこんな風に絡んでくる人いんのかよ。ちょっとなんだろう。逆に感動したわ。すげぇ…
けどこの感じ、酔っ払いにただ絡まれただけという感じも否めないな。こいつまだ朝だって言うのにかなり酔っぱらっているぞ。足元ふらついているし。
「いえ、指名依頼なので大丈夫です。」
「そんなこと言うなって、俺たちに任せとけば…ヒック…安心ってもんよ。」
えーっと…こう言う時の対処法はすでにメリリドさんから教えてもらっているし、貰っている。懐から一本の短剣を取り出し、机に突き刺す。
「紹介状があるんです。これを見せれば良いって言う。」
「そ、それは……め、メリリドの姉御の…つ、つまり……し、失礼いたしやしたぁぁ!!」
うわ、一瞬で酔い冷めているよ。すげえなメリリドさんって。周りの冒険者も何人か立ち上がっているし、あ、なんか小刻みに震えている人もいるんだけど。
「えっと…指名依頼と言うことなのですが、どなたをご指名なんでしょうか?」
「えっと…C級冒険者のマックと言う人のパーティですね。そこなら大丈夫だと聞きましたから。」
「あ、それ俺だわ。」
お前かい!ものすごく信用できなさそうなんだけど!こんな朝っぱらから酔っ払っているようなやつで本当に大丈夫なのか?メリリドさん?メリリドさーん!
「いや…その…他の人でいい人いますか?」
「ちょちょちょ…待ちなや、にいちゃん。確かに今は酔っ払っているが、それは前の報酬の良い仕事がうまくいったからってだけだ。俺たちはちゃんと腕は良いんだぜ。もうじきB級に上がるしよ。」
「…本当ですか?」
「本当だぜ。まあここで話しすんのもなんだからこっち来いよ。俺たちのパーティ紹介するからよ。」
う~ん…まあそう言うなら試しに話しくらいはしてみるか。ダメそうならメリリドさんに断りを入れて他の人を探そう。今の所、第一印象は最悪だけどね。
「おう、ここだ。おいオメェら指名依頼だ。護衛だってよ。」
「あ?護衛?今そんな面倒なことしていられねぇな。他あたんな。」
「俺たちは今羽振りはいいんっすから、そんなシケた依頼はごめんっす。」
「そうですか、わかりました。メリリドさんの紹介でしたが、そんなにダメならメリリドさんにもそう伝えて断っておきます。」
「「ちょっと待て!」」
うお、すごい反射神経だな。一瞬で席から立ち上がって俺の肩掴むとは。ちょっと怖かったけど、その小刻みに震える手で肩握られているとなんだかなぁ…
「あ、姉御のお知り合いの方で?」
「今、メリリドさんの働いている商店の経営者です。」
「こ、これはこれは大変失礼いたしましたっす。それで…お願いします!このことは姉御には黙っておいてください!もうあんな目にあうのはごめんだぁぁ!!うわぁぁぁん」
「な、泣くんじゃねぇよ、だからお前はガキだって言われんだよ。ほら、酒でも飲んで元気出せや。」
「オメェも手が震えていんぞ。いい加減グラスから手を離せ、中身がみんな溢れちまう。」
「そんなにメリリドさんはすごい人だったんですか?」
今からは想像もつかな……いや、なんとなく雰囲気で感じる時はあるが、それでもそこまで想像できないな。そんなに怖かったのか。
「やめてやってくれ。みんなすげぇ世話にはなったが、それ以上に恐怖が優っちまってんだよ。今はにいちゃんのとこで働いていんだな?」
「ええ、毎日ニコニコ働いていますよ。なかなか忙しくて苦労をかけさせてしまっていますが。」
「ニコニコ?」
「ダメだ…金棒片手に笑われた時のことしか思い出せねぇ……うぅ…すまん、ちょっと吐いてくる。」
そう言うと厠の方へと一目散にかけて行く。よっていたはずなのにかなり足元はしっかりとしているな。一瞬で酔いは覚めたか。
「それで依頼は受けるんですか?」
「ああ、もちろんだ。断りでもしたら姉御が来るからな…みんなもそれでいいだろ?」
「もちろんだ。断ることなんてゆるされねぇ…」
「しかし3人だけですか?それだと護衛には…」
「ああ、今は3人だが、普段は5人だ。残り二人は借金の返済と娼館に行ってんだ。戻ったらこっちから伝えておく。5人なら問題ないだろ?さて、依頼内容に戻ろうか、死の湖までだったな?」
「ええ、そこまで行って帰る間の護衛です。一泊二日、場合によっては日数が伸びる場合もあります。」
「なるほどっすね。つまり、今回の護衛は俺たちの見極めっすか。」
やはりすぐに気がついたか。実はメリリドさんと護衛の見極めのために移動する、いいとこはないかと聞いた時に今回行く死の湖がすぐに出てきたのだ。多くに人が護衛の見極めのために行く場所らしい。
初めは死の湖なんて、なんて酷いとこに行かせる気だよ!と思ったのだが、この死の湖は周囲にモンスターも人も植物でさえもない場所で、かなり安全な場所らしい。そこには何か面白いものがあると言うのをメリリドさんから聞いており、ちょっと楽しみにもなっている。
「それで今回の報酬はいくらなんだ?」
「金貨1枚です。日数が伸びた場合もその値段で。」
「安くないっすか?5人で割ったらたいした儲けにもならないっすよ。」
「ボーナスが欲しかったらメリリドさんが、私が一日可愛がってあげる、だそうです。」
「金貨1枚だけでお願いします。」
まあ確かに日数が伸びても金貨1枚だけと言うのは少し少ない。5人で割ったら大銀貨2枚だからな。せいぜい二日までが割に合った仕事だ。それ以上となると損になる。
「しかし俺らもそんな仕事じゃこの先食っていけなくなる。その後の護衛の仕事はデカいんだろうな?」
「ええ、英雄の国まで行こうと考えていまして。そこまでの護衛をする方を探しにきたんですよ。」
「英雄の国っすか。超長期の護衛依頼っすね。俺、あの国に行ったことまだないんすよ。」
「それだけ長期ならB級への昇格依頼にも十分なるな。俺らにも渡りに船ってことか。よし、それならなんの問題もねぇ。仕事についてだが、行くのはいつにする?なんなら明日でもかまわねぇぞ。」
「本当ですか?なるべく早い方が良いと思っていたのは確かですけど。」
「数日分の護衛に必要なものならすぐに集まる。じゃあ明日で良いな。すぐに全員に伝えておこう。時間は関所が開く時間だ。集合も関所で良いな?」
「ええ、それで大丈夫ですよ。ではそれでお願いします。」
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