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第30話 予想外の報酬

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 さて、嘘八百並べたところでみなさん納得してもらえたかな。まあ完全な嘘というわけでもないだろ。ところどころ事実は入っているぞ。だから許してね。

「流石の先生の言葉でも、にわかには信じられませんね。ちょっと試しに取り出すところを見せてもらえませんか?」

「いいですよ。では試しに流通制限金貨を取り出してみましょうか?一瞬だけですけどね。」

 ルシュール辺境伯からスマホを返してもらう。そういやもう読み込みは終わっているな。これが終わったら早速起動させてみよ。とりあえず今は流通制限金貨を取り出す。すると取り出した瞬間に黒い靄がどんどん出てきた。あ、これ一瞬でもやばいやつだ。このままだと呪われるか何か起こりそうなので、すぐにしまう。

「ほ、本当にその中に入っているのですね。これは…なんという…さすがは先生です…」

「私も信じられませんでした。しかし目の前で確かに見てしまいましたね。そのマジックアイテムは人に見せない方が良いでしょう。」

「まあ見せたくなかったのですが、皆さんの目が怖かったもので…あ、これは他言無用でお願いしますよ。皆さんを信用したからこそこうして見せたわけですから。」

「大丈夫です。いいですか、今のことは絶対に人に話してはいけません。それは私の白幻の名において命じます。」

「了解した、隊長殿。」

 全員が納得してくれたようだ。世界最強クラスの人の言葉だから、誰も異論はないらしい。この人たちが味方で本当に良かった。下手に敵対していたらスマホ奪われて殺されていただろう。

「じゃがそれは本当にお主以外の誰にも使えないのか?そこもにわかには信じられん。試しに使わせてみてはくれんか?」

「私も試したことがないのでなんとも…では試しにやってみますか?」

 正直俺以外の誰にも使えないというところは正直怪しい。俺が勝手にそう思っているだけだ。なんせ誰にも触らせたことはなかったからな。実験がてらちょうどいいだろ。

「ええっとですね、ここの部分を押すとものが出てきます。今は鰻が出るようになってますよ。」

「よし、ここだな……お、本当に反応せん。嘘ではなかったか。」

 ファルードン伯爵が試しても本当に出てこなかった。正直俺も驚いている。そういや、初めのアンケートみたいなので、持ち主以外の誰にも使えないとか書いておいたな。あれがちゃんと反映されているみたいだ。

「おい、わしにも試させろ。」

「次はわしだ。少し待ってろ。」

 なんか大盛り上がりしているな。結局その場にいた全員が試したが誰も取り出すことはできなかった。最後に本当にこれで出てくるのかと怪しまれたので、俺がうなぎを取り出してやった。すると全員から歓声が上がる。ちょっと楽しい。

「ふむ、疑って悪かったな。詫びの代わりにわしの持っている流通制限金貨をくれてやりたいところだが、貴族の所有する流通制限金貨を他者に譲渡する場合、国に報告の義務がある。そこからこのことがバレると大きな問題になる。使えないとわかっていても、奪いにくるやつも大勢いるだろう。」

「それは勘弁してほしいです。」

 そんな毎日暗殺者に追われる日々は勘弁してほしい。俺は穏やかに引きこもってスマホをいじるだけの人生を謳歌したいんだ。できることなら地球に戻ってバックアップデータから復元したい。あ、けどこのスマホは取っておきたいから新しいスマホを買ってそっちで復元しよう。

「ではミチナガくん。私も疑ってしまいましたから、私から何か差し上げましょう。何か欲しいものはありませんか?」

「欲しいものですか…珍しいものがいいです。何かの種とかありませんか。そういうものに目がなくて。」

 育てられるものなら増やすこともできるしありがたい。珍しいものなら本来かなり高い購入金額もかけずに済むことになる。魔帝と呼ばれるほどすごい人なら何かあるんじゃないか?

「種ですか…私もエルフなのでそういったものはいくつもありますよ。いくつかの種を差し上げましょう。それで今回の件は水に流してください。」

 ルシュール辺境伯は何もない空間に手を突っ込んだかと思うと、大きな皮袋を取り出した。その大きな皮袋を開けると中からはまた小さな皮袋がいくつも出てきた。

「この皮袋の中の種はどれも珍しいものですよ。さすがに全てというわけにはいかないのでいくつか選んでください。ああ、どんな種が良いか希望はありますか?」

「そうですね…どうせなら有用なものがいいです。薬の材料や食べられる実などはないですか?」

「そうですね…ではリリアルなんてどうですか?」

「リリアル!もしやリリアルの涙ですか!先生!これはすごいものですよ。A級クラスのモンスターが蔓延る森の最深部でしか発見されていないものです。花から出た蜜は薬としても甘味としても最高級です。一滴で金貨50枚はくだらない代物ですよ。」

 説明ご苦労様アンドリュー子爵。しかし初めからすごいのがきたな。けど、そんなにすごいものだとこのスマホの中で育てられるかな?まあ試してみる価値は十分あるだろ。

「ではそれでお願いします。種はできれば10粒ほどあると助かるのですが…」

「問題ありませんよ。私はそこの森に時々行くので、いくらでも手に入ります。では次のものに移りましょう。他はどれがいいですかね…」

「お、面白そうなやつがあったぞ。これをもらっとけ。」

 ファルードン伯爵が渡してきた皮袋には、何か名前が書かれていたが俺には読めなかった。翻訳アプリがあるのにおかしい。もしかしたら対応できていない言語か?

「すみません。読めないのですが…」

「ああ、これは古代エルフ文字だからな。わしも少ししか読めん。これは生命の実、エルフの中でも育てられるものはいないとされている禁断の果実じゃ。」

「な!ファルードン!あなたそれをどこで知ったのですか!」

「ん?お主が酔った時に何度か話しておったぞ。自分はいつかこの種から花咲かせてみせると豪語しておったからな。みんなも聞いたことあるじゃろ?」

「「「おう。耳にタコができるほどな。」」」

 なんか重要なことみたいだけどなんだかなぁ。意外とルシュール辺境伯って抜けているんだな。あ、自己嫌悪に陥っているし。

「し、しかしですね。この種を育てるためには、他にも複数の種を育てることが必要ですので、さすがにこれは…」

「ケチなことを言うんじゃない。なら必要なもん全部くれてやれ。やれないならそんなものここに出すな。」

「こ、これはエルフの秘宝で…数少ない…ああ、もう分かりましたよ。では一式どうぞ。あと説明書もつけておきます。まあ人では育成が不可能な植物ですのでゴミにしないでくださいよ。あ、人に売るのもなしです。いつでも返しにきていいですからね。」

 なんか場の勢いでそのまま貰っちゃったな。秘宝とか言っていたけどいいのかな?まあ絶対に手に入らないものだし、かなり嬉しいんだけどね。

「ありがとうございます。しかしそんなにも難しいものなのですか?」

「エルフの中でも、植物の育成に長けた能力を持つものがいます。そんな彼らが500年かけても芽も出ないほどの難しさです。私の師匠もその一人なのですが、師匠でさえも芽が生えたところで枯れてしまいましたから。」

「師匠?魔帝と呼ばれているルシュール辺境伯の師匠ですか?それは凄そうな人物ですね。」

「すごいですよ。称号は私と同じ魔帝ですが、その中でも準魔神級と言われている人です。私ではとてもじゃないですが勝てません。霧の魔帝と呼ばれています。運が良ければ会えるかもしれませんね。」

 会ってみたいような、会いたくないような。なんとも言えないなぁ。

「もうこれでお終いです。結局数種類のつもりが数十種類になってしまいましたよ。」

「え、そんなにですか?」

「生命の実を育てるためにはそれだけ他の種類の種が必要なんですよ。どれも栽培が困難なものなのでまあ頑張ってください。さて、夜も深けてきました。明日は釣りに行くのでしょう?早く寝ましょう。」

 なんだか色々あった夕食だったが、結果的には大儲けだな。さて、では俺も早速お楽しみの課金アンドゲーム時間の始まりだ!

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