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第17話 釣り具作成
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昼を少し過ぎたあたりでお客さんもいなくなったところで調理場を見るのを終えた。
昼にお客さんがたくさん来てくれたおかげでかなりの量のレシピを入手することができた。
店長には今度子爵様に紹介しとくというなんともあてにならない返事だけをして店を出た。
今日はもうレシピ入手はとりあえずいいだろう。
今日もう一つやりたかった釣具づくりをやってしまおう。しかし良さげなお店に心当たりがない。
作ってくれそうなお店があれば良いのだが城壁内ではそうそうないだろう。
とりあえず今交流のある商店といえば一つしかない。
そこでできなくてもなんかしらの情報は入るだろう。移動していくとどんどんと人通りが多くなっていく。
やはりこの辺りはいつでも大賑わいのようだ。
俺は早速お目当の商会、シンドバル商会の中に入る。
やはり中も随分と賑わっている。俺に気がついた店員の一人がやって来て相手をしてくれるそうだ。
店はすべての客に一人づつ案内人がつくようだ。前の時はすぐに奥の部屋に通されてしまって商品をまともに見ることはできなかった。
今日はゆっくりと商品を見ることができたがどれも目玉が飛び出そうなほど高い。
その中にいくつかきになる表示があった。
「この値段の表記は初めて見ましたが…これは?」
「大金貨と白金貨ですか。どちらも一般には普及していませんからね。王都では毎日多くの金貨が動くのですが金貨でも量が多くて持ち運びが不便だということでこれらの硬貨が使われることが時折あります。大金貨は金貨100枚分、白金貨は大金貨100枚分ということになっております。」
それって金貨1万枚で白金貨一枚ってことか。
ものすごい額だけどそれくらいの値段のする商品この店で取り扱っているのかよ。
そもそもそれを買う客もいるのか?目の前にショーケースの中に飾られている服があるけどこれ白金貨2枚もするぞ。
「これはなんですか?」
「こちらは炎龍の鱗とその下にある外皮から作られたマントです。炎龍の鱗を細かくしてマントに隙間なく敷き詰めたことによって炎に対する絶対的な防御を得られます。もちろん強度もあるので矢や鉄剣くらいなら軽く弾いてしまいます。」
炎龍…そんなのまでいんのかよ。
もうゴブリンやあのフォレストグリズリーだけでも俺はどうしようもないっていうのにそれ以上の敵が出て来たらなすすべもなく死ぬだけだ。
それから色々見させてもらったがどれも桁の違う商品ばかりで買う気も起きない。
するとそんな様子を察した店員が別室に案内してくれた。
そこにも多くの商品が並んでいるがどれも先ほどまでと比べてかなり安い。しかしこれは商品というよりも…
「こちらは見習いの作った商品や商品にする前の段階の素材の多くです。珍しいものを扱っているので時折冒険者や他の職人の方が買い求めに来るんですよ。」
いわゆるアウトレットみたいなものだろう。これは安くてありがたい。
どれも見たことのないものや何に使うかもわからない商品ばかりだ。
その中でいくつか良さげなものを見つけた。しかもそれに対して店員が説明までしてくれるという親切さまである。
「この糸はアーススパイダーの糸です。粘着性は取り除かれているので細くて丈夫な糸ですよ。一本で人一人持ち上げることも可能です。それは発火石で硬いもので擦ると火が出ます。なんども使えるので便利ですよ。それはただの矢尻です。ですが純度も強度もしっかりしているので何度でも使いまわせますよ。」
「この矢尻は綺麗ですね。ここで作っているのですか?」
「見習いのうちは細かいもので腕を磨くんですよ。気になるのでしたら見に行きますか?」
これはありがたい申し出だ。あの矢尻を作るのだったら加工技術はそれなりにある。
ルアーを作るのも簡単だろう。案内についていくと店の裏手に出た。どうやらここが工房らしい。
「あちら側はうちの新商品の開発をしているので見せられませんがこちらは見習いの工房なのでお見せしても問題ないんです。どうぞ。」
なるほど、そういうことならいけないものを見てしまったという心配は起きないだろう。
工房に入ると熱気がむんむんとくるが少し違うところがある。俺は炎の熱気でものすごいことになっていると思った。しかしこの熱気は人の熱気だ。
窓がついて換気はされているがそれでもそこにいる人々の熱気の方が強い。
この工房はおそらく皮製品などの火を使わないものの加工場だ。
そう思い作業を見て見ると職人の手には鉄の塊がありそれを手で粘土のように加工している。
ただの鉄の塊が手作業で釘や矢尻などの製品に変わっていくのだ。
「ここは魔法錬金の職人見習いの作業場です。今はまだ鉄などの一般にも出回る鉱石の変質しかできませんがうちのトップにもなるとオリハルコンやミスリルなんかもたやすく加工してくれますよ。もちろんそれ以上のものもね。」
にっこりと微笑む店員に俺は動揺を隠しきれない。
この世界はこんなにも簡単に鉄を加工することができるのか。
これだけの技術があればものすごいものを発明していそうだが魔法が中心のため科学的なものはあまり発達していないのかもしれない。
「見事ですね。しばらく見ていても良いですか?」
「もちろんですよ。どうぞ。」
俺はしばらくの間その異様な光景に目を奪われていた。
こんなにも簡単そうに鉄の形を変えるところなど見たこともない。
それと誰にも見られないようにこっそりとスマホで動画を撮影しておいた。これももしかしたら何かの役に立つかもしれない。
「すみません。もしもなんですけどちょっとした加工をお願いできませんか?」
「加工の度合いによりますけど簡単なものなら構いませんよ。お代はいただきますが。」
「本当に簡単なものなんですよ。鉄をこんな形とこんな形にしてもらうだけなんです。あ、水の中に入れるので錆びない金属の方が良いかも…そんな感じでお願いできませんか?」
「ただの鉄の板と棒にしか見えませんね。そんなものでしたら構いませんよ。おい君、やってあげてくれ。」
指示を出された職人は一瞬ギョッとしたがすぐに作業に取り掛かってくれた。
ものの数分で数十個の大きさの違うものを作り上げてくれた。
その際、隣で木材の加工をしている人もいたので魚の形に削ってもらうのもお願いしておいた。
これでスプーン、メタルジグ、ミノーの3種類が完成した。
あとは塗装だがそれくらいなら俺でもなんとかなるだろう。塗料さえあればだが。
「失礼ですがこんなものを何に使うんですか?」
「釣りですよ。釣り好きの子爵様のところでお世話になっているのでそのためのものです。商売には…なりそうにないですけど、まあ趣味みたいなものです。」
その後簡単な説明をするとすぐに興味をなくしていた。
露骨にというわけではないがなんとなく興味ないだろうなぁとわかる程度だ。
まあルアーなんて釣り好きにしか興味ないだろう。それに単価も安い。商売としては成り立たない。
それから釣竿とリールの作成もお願いできないか相談してみるとその程度ならすぐに作れるとその場で作り始めてくれた。
手持ちも少ないので金額が気になったが特に高いものも使っていないので随分安く抑えられそうだ。
念のために5本ほど作っておいてもらった。糸にはアーススパイダーの柔軟で強度の高いものを使用した。
発火石や塗料、釣り針などいくつか買ったというのに金貨5枚で済んだ。
これはお安い、と思ったが金貨がかかる時点でかなりの値段だというのを忘れていた。
アプリは高いしこの店の商品も基本的に高いのですっかり金銭感覚が狂ってしまったようだ。
屋敷に帰る頃には随分と暗くなってしまい屋敷に着いた時には執事さんに心配されてしまった。
今日も子爵と伯爵は他の貴族とのパーティということで一人寂しく食事になった。
メイドさんたちも一緒に食べてくれればいいのに俺がお客さんということで別々に食べることになった。
その夜、いつものようにスマホをいじり釣りをしようとするとルアーなどが追加されたことによって釣りバカ野郎がアップデートされていた。
このアップデートによって細かい操作も可能になりルアーを自在に使うことができるようになっていた。
こうなると釣り場所を色々とアンロックしたいがまだ金が足りない。
ここは初期の川だけで我慢しよう。そういえばさらっと流したがアップデートなんて初めての経験だ。
もしかしたら他のアプリでもアップデートがあるのかもしれない。
料理もレシピが大量に手に入ったし、お金がなくてもやれることは色々ありそうだ。
今度何か必要なものが出てきたらまたシンドバル商会に頼みに行こう。
今日の店員も親切だったしあの商会はやはり頼りになるな。
~~~~~~~~~~~~~~
「失礼します。お呼びでしょうかお爺様。」
「ここでは執事長ですよ。まあ今はいいでしょう。それで?彼の感想を聞かせてください。」
「そうですね。正直ご子息様が気にかけるほどのものでもないかと。確かに色々と発想力はありますが商売としてはイマイチですかね。」
「ふむ。やはりそうですか。私の方でも調べて見ましたがこの街に来てから大したことはしていません。魚を買ったり、今日は調理場を見ていたという話ですし。しかし坊っちゃまが気にかけるのは事実。何か尻尾を見せるまではゆっくりと観察することにしましょう。」
「わかりましたハロルド執事長。尻尾を出すまではゆっくりと調べましょう。」
昼にお客さんがたくさん来てくれたおかげでかなりの量のレシピを入手することができた。
店長には今度子爵様に紹介しとくというなんともあてにならない返事だけをして店を出た。
今日はもうレシピ入手はとりあえずいいだろう。
今日もう一つやりたかった釣具づくりをやってしまおう。しかし良さげなお店に心当たりがない。
作ってくれそうなお店があれば良いのだが城壁内ではそうそうないだろう。
とりあえず今交流のある商店といえば一つしかない。
そこでできなくてもなんかしらの情報は入るだろう。移動していくとどんどんと人通りが多くなっていく。
やはりこの辺りはいつでも大賑わいのようだ。
俺は早速お目当の商会、シンドバル商会の中に入る。
やはり中も随分と賑わっている。俺に気がついた店員の一人がやって来て相手をしてくれるそうだ。
店はすべての客に一人づつ案内人がつくようだ。前の時はすぐに奥の部屋に通されてしまって商品をまともに見ることはできなかった。
今日はゆっくりと商品を見ることができたがどれも目玉が飛び出そうなほど高い。
その中にいくつかきになる表示があった。
「この値段の表記は初めて見ましたが…これは?」
「大金貨と白金貨ですか。どちらも一般には普及していませんからね。王都では毎日多くの金貨が動くのですが金貨でも量が多くて持ち運びが不便だということでこれらの硬貨が使われることが時折あります。大金貨は金貨100枚分、白金貨は大金貨100枚分ということになっております。」
それって金貨1万枚で白金貨一枚ってことか。
ものすごい額だけどそれくらいの値段のする商品この店で取り扱っているのかよ。
そもそもそれを買う客もいるのか?目の前にショーケースの中に飾られている服があるけどこれ白金貨2枚もするぞ。
「これはなんですか?」
「こちらは炎龍の鱗とその下にある外皮から作られたマントです。炎龍の鱗を細かくしてマントに隙間なく敷き詰めたことによって炎に対する絶対的な防御を得られます。もちろん強度もあるので矢や鉄剣くらいなら軽く弾いてしまいます。」
炎龍…そんなのまでいんのかよ。
もうゴブリンやあのフォレストグリズリーだけでも俺はどうしようもないっていうのにそれ以上の敵が出て来たらなすすべもなく死ぬだけだ。
それから色々見させてもらったがどれも桁の違う商品ばかりで買う気も起きない。
するとそんな様子を察した店員が別室に案内してくれた。
そこにも多くの商品が並んでいるがどれも先ほどまでと比べてかなり安い。しかしこれは商品というよりも…
「こちらは見習いの作った商品や商品にする前の段階の素材の多くです。珍しいものを扱っているので時折冒険者や他の職人の方が買い求めに来るんですよ。」
いわゆるアウトレットみたいなものだろう。これは安くてありがたい。
どれも見たことのないものや何に使うかもわからない商品ばかりだ。
その中でいくつか良さげなものを見つけた。しかもそれに対して店員が説明までしてくれるという親切さまである。
「この糸はアーススパイダーの糸です。粘着性は取り除かれているので細くて丈夫な糸ですよ。一本で人一人持ち上げることも可能です。それは発火石で硬いもので擦ると火が出ます。なんども使えるので便利ですよ。それはただの矢尻です。ですが純度も強度もしっかりしているので何度でも使いまわせますよ。」
「この矢尻は綺麗ですね。ここで作っているのですか?」
「見習いのうちは細かいもので腕を磨くんですよ。気になるのでしたら見に行きますか?」
これはありがたい申し出だ。あの矢尻を作るのだったら加工技術はそれなりにある。
ルアーを作るのも簡単だろう。案内についていくと店の裏手に出た。どうやらここが工房らしい。
「あちら側はうちの新商品の開発をしているので見せられませんがこちらは見習いの工房なのでお見せしても問題ないんです。どうぞ。」
なるほど、そういうことならいけないものを見てしまったという心配は起きないだろう。
工房に入ると熱気がむんむんとくるが少し違うところがある。俺は炎の熱気でものすごいことになっていると思った。しかしこの熱気は人の熱気だ。
窓がついて換気はされているがそれでもそこにいる人々の熱気の方が強い。
この工房はおそらく皮製品などの火を使わないものの加工場だ。
そう思い作業を見て見ると職人の手には鉄の塊がありそれを手で粘土のように加工している。
ただの鉄の塊が手作業で釘や矢尻などの製品に変わっていくのだ。
「ここは魔法錬金の職人見習いの作業場です。今はまだ鉄などの一般にも出回る鉱石の変質しかできませんがうちのトップにもなるとオリハルコンやミスリルなんかもたやすく加工してくれますよ。もちろんそれ以上のものもね。」
にっこりと微笑む店員に俺は動揺を隠しきれない。
この世界はこんなにも簡単に鉄を加工することができるのか。
これだけの技術があればものすごいものを発明していそうだが魔法が中心のため科学的なものはあまり発達していないのかもしれない。
「見事ですね。しばらく見ていても良いですか?」
「もちろんですよ。どうぞ。」
俺はしばらくの間その異様な光景に目を奪われていた。
こんなにも簡単そうに鉄の形を変えるところなど見たこともない。
それと誰にも見られないようにこっそりとスマホで動画を撮影しておいた。これももしかしたら何かの役に立つかもしれない。
「すみません。もしもなんですけどちょっとした加工をお願いできませんか?」
「加工の度合いによりますけど簡単なものなら構いませんよ。お代はいただきますが。」
「本当に簡単なものなんですよ。鉄をこんな形とこんな形にしてもらうだけなんです。あ、水の中に入れるので錆びない金属の方が良いかも…そんな感じでお願いできませんか?」
「ただの鉄の板と棒にしか見えませんね。そんなものでしたら構いませんよ。おい君、やってあげてくれ。」
指示を出された職人は一瞬ギョッとしたがすぐに作業に取り掛かってくれた。
ものの数分で数十個の大きさの違うものを作り上げてくれた。
その際、隣で木材の加工をしている人もいたので魚の形に削ってもらうのもお願いしておいた。
これでスプーン、メタルジグ、ミノーの3種類が完成した。
あとは塗装だがそれくらいなら俺でもなんとかなるだろう。塗料さえあればだが。
「失礼ですがこんなものを何に使うんですか?」
「釣りですよ。釣り好きの子爵様のところでお世話になっているのでそのためのものです。商売には…なりそうにないですけど、まあ趣味みたいなものです。」
その後簡単な説明をするとすぐに興味をなくしていた。
露骨にというわけではないがなんとなく興味ないだろうなぁとわかる程度だ。
まあルアーなんて釣り好きにしか興味ないだろう。それに単価も安い。商売としては成り立たない。
それから釣竿とリールの作成もお願いできないか相談してみるとその程度ならすぐに作れるとその場で作り始めてくれた。
手持ちも少ないので金額が気になったが特に高いものも使っていないので随分安く抑えられそうだ。
念のために5本ほど作っておいてもらった。糸にはアーススパイダーの柔軟で強度の高いものを使用した。
発火石や塗料、釣り針などいくつか買ったというのに金貨5枚で済んだ。
これはお安い、と思ったが金貨がかかる時点でかなりの値段だというのを忘れていた。
アプリは高いしこの店の商品も基本的に高いのですっかり金銭感覚が狂ってしまったようだ。
屋敷に帰る頃には随分と暗くなってしまい屋敷に着いた時には執事さんに心配されてしまった。
今日も子爵と伯爵は他の貴族とのパーティということで一人寂しく食事になった。
メイドさんたちも一緒に食べてくれればいいのに俺がお客さんということで別々に食べることになった。
その夜、いつものようにスマホをいじり釣りをしようとするとルアーなどが追加されたことによって釣りバカ野郎がアップデートされていた。
このアップデートによって細かい操作も可能になりルアーを自在に使うことができるようになっていた。
こうなると釣り場所を色々とアンロックしたいがまだ金が足りない。
ここは初期の川だけで我慢しよう。そういえばさらっと流したがアップデートなんて初めての経験だ。
もしかしたら他のアプリでもアップデートがあるのかもしれない。
料理もレシピが大量に手に入ったし、お金がなくてもやれることは色々ありそうだ。
今度何か必要なものが出てきたらまたシンドバル商会に頼みに行こう。
今日の店員も親切だったしあの商会はやはり頼りになるな。
~~~~~~~~~~~~~~
「失礼します。お呼びでしょうかお爺様。」
「ここでは執事長ですよ。まあ今はいいでしょう。それで?彼の感想を聞かせてください。」
「そうですね。正直ご子息様が気にかけるほどのものでもないかと。確かに色々と発想力はありますが商売としてはイマイチですかね。」
「ふむ。やはりそうですか。私の方でも調べて見ましたがこの街に来てから大したことはしていません。魚を買ったり、今日は調理場を見ていたという話ですし。しかし坊っちゃまが気にかけるのは事実。何か尻尾を見せるまではゆっくりと観察することにしましょう。」
「わかりましたハロルド執事長。尻尾を出すまではゆっくりと調べましょう。」
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