上 下
1 / 572

第1話 スマホ依存症な俺

しおりを挟む
 携帯電話。それはビジネスマンだけではなく学生から主婦まで、多くの人に必要不可欠な携帯端末である。

 かつては一部の人間にしか持てないほど高価で、抱えるほどの大きなものだった。だが時代とともに進化を続け、小型になり、金額を気にせずに学生なども気軽に持てるようになった。

 しかしそんな携帯電話にある革命が起きた。
 それは今ではごくごく当たり前のスマートフォンだ。そんなスマートフォンも、販売当時はあんなものを買うのはバカだと周りは話していた。

 だが、販売からほんの数年で携帯電話機と言えばスマートフォンと言えるほどの知名度と認知度を上げた。
 今ではかつての携帯電話、通称ガラケーを持っている方が珍しい。

 しかしスマホが普及されてから、ただでさえ問題視されてきた携帯電話の平均使用時間が年々増え続けている。
 今ではスマホがなければ生きていけないという人間も多いだろう。
 かくいうこの俺、関谷道長もそんな部類の人間の一人だ。

 今では寝る時間も削り、食事のときでさえスマホをいじっている。
 正直、最後に本物の青空を見たのはいつかというほどスマホ以外のものを見た覚えがない。

 そんな俺は現在、スマホアプリのレビューやゲームの攻略法を調べ上げ、ホームページで紹介することによる広告費で暮らしている。

 正直人気はあるので生活に何ら問題はない。
 そんな俺は今日も新しいゲームを探し、それを片っ端から攻略、評価していく作業をこなしている。

「うーんこのゲームはダメだな。作り込みが甘いせいでバグが多い。おっと、スタミナがそろそろ貯まったから消費しないとな。」

 今日も日課のスタミナ消費をしなくては。
 完全に溜まると時間がもったいないからな。
 後、こっちのゲームはもうやることないしログインだけでいいだろ。
 あ、でもこれは今日からイベントだからやっとかないと。あぁ、今日も忙しいなぁ。

「あとなんか面白そうなゲームのレビューもしないと。もうすぐ水着イベントも近いから課金する資金を稼がないとな。はぁ…今回は10万以内で収まればいいんだけどなぁ…」

 人気アニメのスマホゲーなんだから、もっと排出率高くてもいいのに何でこうも出ないのかなぁ…。
 前回なんて結局30万は使ったしな。まあ、あの可愛さだったらそれだけの価値は十分にあったとは言える。

「さてさて…面白そうなゲームは……ん?これは…」

 あなたへのおすすめのところに出てきたこのアプリ。名前は全く読めない。
 どこの言語か気になるが、そんなことよりもこのアプリはまだ誰にも評価されていない。
 しかもリリースされたのは今日だ。これは良いネタになるだろう。

「早速ダウンロードだな…ってあっという間だな。容量少ないってことはあんまり期待できないかも。」

 ダウンロードまでは1秒もかからなかった。
 これだけ早いと容量が少なくて内容も薄いものが多く、正直期待できないかと思った。しかしアプリを起動してみると追加のダウンロードがあるのかしばらく時間がかかった。
 これなら少しは期待できるかもしれない。

 他のアプリのレビュー記事を書きながら待っていると、追加のダウンロードが終わり、画面が切り替わる。
 切り替わった画面には日本語でスタートと書かれている。

 アプリ名は読めないのにここは日本語かよ!けどレビューとして描くにはちょうどいい。ちょっとしたツッコミどころはレビューする際の良いネタになる。
 早速スタートボタンを押すと画面に文字が表示される。
 どうやらいくつかの質問があるようだ。

『ダウンロードしていただきありがとうございます。これからいくつかの質問をしますので正確に回答してください。これは今後に関わるのでしっかりと考えてください。』

「なるほどね。こういうタイプのアプリか。俺の回答によって主人公の能力とか性格や見た目が変わる奴だろうな。テレビゲームなんかにはあるけどスマホのアプリであるのは珍しいな。これは期待できる。」

『第1問、あなたの年齢と性別を教えてください。』

「この辺は主人公にそのまま反映されそうな部分だな。性別を変えても面白そうだけど、ここは正直にいくか。26歳…男っと。」

 それから数問ほど俺の身長や体重、性格といった街頭インタビューのような質問が続いた。
 答えていくにつれてどうやらここまではこのアプリの作成者が、どんな人間にこのアプリを使ってもらえているかのアンケート調査のように感じた。

『第28問、あなたが最も欲しいものを教えてください。答えは非現実的なものでも構いません。』

「お、なんかやっとそれっぽいのがきたな。非現実的なものでもいいのかぁ…小さい頃なら魔法とか、どこでもドアとか言ってたかも知んないけど、悲しいことにもうそんな歳でもないからなぁ…。けど、どうせなら現実的なものじゃない方がいいかも……。誰も持っていない超高性能のスマホだな。」

 なんか逆に子供っぽい答えになった気がする。
 どんな奴でも倒せる剣とかそう言った類の答えになった気がするな。

 だけど正直俺の頭だとこれ以上のものは浮かびそうにない。
 それに誰も持っていない超高性能だぞ?夢あるじゃんか。……あるよな?

『第29問、あなたは変化を求めますか?』

「変化かぁ…まだ歳だからそういうのはいいやっていう歳でもないからな。むしろ時代の変化って面白いからな。答えはイエスだろ。」

『第30問、死よりも恐ろしいことはありますか?』

「死よりかぁ…流石に死ぬのは嫌だなぁ。それ以上嫌なことって何だろ……。うーん…ないような気がするなぁ…。あ、でもスマホのない世界って…死ぬより恐ろしいかも。うん、死ぬより怖いものあったわ。じゃあこの答えもイエスか。」

『回答いただきありがとうございましたではこれより…』

 文字の表示が途中で止まった。
 何とももったいぶった感じがして、続きが気になるのだがなかなか動かない。
 もしかしたらフリーズしたのかと思い一度アプリを閉じようとしたところで画面が切り替わる。

『あなたにだけ質問です。誰も持っていない超高性能のスマホとは何ですか?』

「…なにこれ。もしかして作成者が覗けるようにしてあるとか?それで気になったから聞きにきたとかそういうことなのかな。けど超高性能って言ったら…何だろ?どこでも電波が受信できて電池切れがなくて画面とか本体に傷が絶対につかなくて…」

 回答の打ち込みには文字制限がないのでどんどん書いていく。
 大きさを変えることができるとか、細かい操作も可能とか、落としてもすぐに手元に戻ってくるとか、温度変化しても耐えられるとか、どれだけ水の中に沈めても壊れないとか、絶対に壊れないとか、充電いらずとか、なんだか小学生みたいなことを書き込んでいった。

 しかし書いている途中で本体のことばかり書き込みすぎて、内容のことを考えていなかったことに気がつく。
 本体がどんなに良くても使っているOSや内蔵されているアプリがクソなら意味はない。

 そんなことを書いているといつのまにか数時間が経過していたらしく、文字数も半端ないことになっている。
 しかし自分の言いたいことは言い切った気がする。これは会心の出来だ。
 その回答を送信すると再び画面が切り替わりロードをしだした。

 そのロード画面を見る限り、ロードにはしばらく時間がかかりそうだ。
 なので風呂に入り飯を食べていると数時間後、ようやく画面が切り替わった。

『長ったらしくて今読み切るのが面倒なので、少しずつ改良していきます。では遅れましたがいってらっしゃい。』

「は?なにが」

 その瞬間。地球上から関谷道長という人間は消え去った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

どーも、反逆のオッサンです

わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

ドグラマ3

小松菜
ファンタジー
悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。 異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。 *前作ドグラマ2の続編です。 毎日更新を目指しています。 ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。

蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-

星井柚乃(旧名:星里有乃)
ファンタジー
 旧タイトル『美少女ハーレムRPGの勇者に異世界転生したけど俺、女アレルギーなんだよね。』『アースプラネットクロニクル』  高校生の結崎イクトは、人気スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』のハーレム勇者として異世界転生してしまう。だが、イクトは女アレルギーという呪われし体質だ。しかも、与えられたチートスキルは女にモテまくる『モテチート』だった。 * 挿絵も作者本人が描いております。 * 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。 * 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。  この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

処理中です...