44 / 48
わたしの元にお越しください
しおりを挟む
腿を撫で摘み、内腿に指を這わせながら、趙武が首筋を噛み、舐め、顎を口づける。舌を出して唇を舐めてきたため、士匄も舌を出してそのまま絡めた。空をつばがわずかに飛び、唾液が落ちていく。それを舐め取るように舌を踊らせたあと、趙武が士匄の口を吸った。
記憶にある、一生懸命だった趙武より格段と上手くなっており、いっそ遊びのようなものさえあった。士匄は、そういった技術が大好物であり、負けずと貪る。これだけなら、一抹の虚しさがよぎったであろうが、趙武の心はぴったりと添い、粘性をもって内腿をいじる。
一度、腿から手を離し、上乗りになると、趙武が身を乗り出して士匄の顔を固定した。
麗しいご面相が悦にまかせて口を開き舌を出して、よだれを流す姿は、淫蕩でしかない。長いまつげに彩られた目に愛欲が確かに見える。士匄は十年以上訪れなかった、腹の奥に疼きを感じながら、趙武の落とす唾液を口で受け止め舐め取り、嚥下した。
「少し触られて、私の唾液を飲むだけで、こんな、こんないやらしいお顔をされて……」
趙武が上気しながらも困惑した顔をする。その細く美しいまま、少し男性的にもなった指で士匄の唇を撫でた。あ、と思わず口を開け、士匄は趙武の指を舐める。趙武がますます苦笑しながら、二本の指で士匄の舌先を挟んで揉み、こすった。
「っ、ぉあ」
士匄が喉奥から声を出し、くちはしからよだれを垂れ流す。趙武の両肩を強くつかんで、身をよじり、腰を揺らした。趙武以外が本当に手を出していないのか、悩みたくなる好色だった。
「……今日、晴れてあなたは私の嫁です。何も苦労させません。我が領地へ……温にお越し下さい。あなた好みの豪勢な館を建てましょう。歌舞音曲はもちろん、ありとあらゆる贅沢をご用意します。……そういえば。あなた、小国の大臣でいたく気に入ってる若造おりませんでしたっけ? あれを捕まえて去勢して、侍らせましょう。頭がよい奴隷がお好きですからね。さ、このあと温へ行きましょう。なんの苦労もさせません、辛いことなんてない、あなたは楽しいことだけ考えて、生きるんですよ」
士匄の目は理性がまだあった。舌をなぞられ、口蓋をこすられ、快楽に酔いながらも理性はあった。にもかかわらず、彼は一瞬考えた。即座に怒り、断らなかった。
趙武は士匄が何かを言い出す前に
「冗談です。あなたはあなたの責を。私はその支えとなりましょう」
と、バカバカしい夢想を打ち切った。口から指を抜かれ、士匄は趙武の肩に己の頭をこすりつけた。
「まいった。わたしは思った以上に参っているようだ。ここまで、ここまで無様をさらすとは、笑え趙孟。わたしはお前に甘えに来た無様さにくわえ、愛玩物に成り果てたいとまで考えたぞ、なんたる惰弱さだ」
「ここに来るまで甘えることだけお考えと。呆れる限りですよ。あなた、ひどい顔でした。あんなにご自身で己を打ちのめしてもお立ちになる姿は惨めながらかっこよかったです。そのいびつな固さと柔らかさ、范叔の熟れ、ということにしておきましょう」
趙武はそう言うと、肩に頭をこすりつける士匄に、頬ずりした。
さて、貴族同士の初夜のために用意された部屋である。敷布もなかなかに良い。毛皮以外に、絹を叩いて綿状にした敷布もあった。相変わらず、丁寧な仕事を好む男だと、士匄は思った。
そして、ムッツリだと、思い知らされた。趙武がいそいそと部屋の隅から持ってきたいくつもの壺の中身がなかなかに最悪だった。
「なんだそれ」
士匄は思わずうめいた。
「潤滑の膏薬です」
「ぅえ、なんで、そんなに」
一つ二つではない種類の潤滑剤を取り出し、趙武が首を傾げた。色味も植物らしい青緑に近いものあれば、水飴のように少し薄荷色に近い透明もあり、何で出来てるかわからんような色もあり。泥じゃないのか、というのも、あり。
「女性によってはなかなか濡れないこともありますでしょう。長々といそしんでたら逆に怯えられても困りますので、手っ取り早く。実際、良さそうなんです」
年を経ても花がほころぶような笑みに変わりはない。変わりはないが、士匄の問いに全く答えていない。つまりなんだ、相手によって新たに作らせているというのか。いや、絶対に違う。――これはムッツリスケベだし、昔、時々変態くさかった。士匄はおぼろげな記憶を掘り起こす。
士匄はそういったものを用意しようとも思わない。己の手管で慣れぬ女を淫奔の渦に叩き込むのがいっそ楽しい。趙武は全く違うらしい。そういえば、初めては薬を盛られたことを思い出した。
「これらには変なものは入ってないですよ」
そう言うと、趙武が士匄の腕を取って膝立ちさせる。士匄はそのまま趙武の肩にそっと腕を置いた。趙武の濡れた指が士匄の肛門をつつく。もう、長い間、性的に使っていないそこは、外からの客を追い返すように固い。
趙武の指の腹が、和らげるように膏薬を塗っては揉み撫でた。独特のむず痒さに、士匄はため息をつく。息の熱さはとっくに自覚していた。
記憶にある、一生懸命だった趙武より格段と上手くなっており、いっそ遊びのようなものさえあった。士匄は、そういった技術が大好物であり、負けずと貪る。これだけなら、一抹の虚しさがよぎったであろうが、趙武の心はぴったりと添い、粘性をもって内腿をいじる。
一度、腿から手を離し、上乗りになると、趙武が身を乗り出して士匄の顔を固定した。
麗しいご面相が悦にまかせて口を開き舌を出して、よだれを流す姿は、淫蕩でしかない。長いまつげに彩られた目に愛欲が確かに見える。士匄は十年以上訪れなかった、腹の奥に疼きを感じながら、趙武の落とす唾液を口で受け止め舐め取り、嚥下した。
「少し触られて、私の唾液を飲むだけで、こんな、こんないやらしいお顔をされて……」
趙武が上気しながらも困惑した顔をする。その細く美しいまま、少し男性的にもなった指で士匄の唇を撫でた。あ、と思わず口を開け、士匄は趙武の指を舐める。趙武がますます苦笑しながら、二本の指で士匄の舌先を挟んで揉み、こすった。
「っ、ぉあ」
士匄が喉奥から声を出し、くちはしからよだれを垂れ流す。趙武の両肩を強くつかんで、身をよじり、腰を揺らした。趙武以外が本当に手を出していないのか、悩みたくなる好色だった。
「……今日、晴れてあなたは私の嫁です。何も苦労させません。我が領地へ……温にお越し下さい。あなた好みの豪勢な館を建てましょう。歌舞音曲はもちろん、ありとあらゆる贅沢をご用意します。……そういえば。あなた、小国の大臣でいたく気に入ってる若造おりませんでしたっけ? あれを捕まえて去勢して、侍らせましょう。頭がよい奴隷がお好きですからね。さ、このあと温へ行きましょう。なんの苦労もさせません、辛いことなんてない、あなたは楽しいことだけ考えて、生きるんですよ」
士匄の目は理性がまだあった。舌をなぞられ、口蓋をこすられ、快楽に酔いながらも理性はあった。にもかかわらず、彼は一瞬考えた。即座に怒り、断らなかった。
趙武は士匄が何かを言い出す前に
「冗談です。あなたはあなたの責を。私はその支えとなりましょう」
と、バカバカしい夢想を打ち切った。口から指を抜かれ、士匄は趙武の肩に己の頭をこすりつけた。
「まいった。わたしは思った以上に参っているようだ。ここまで、ここまで無様をさらすとは、笑え趙孟。わたしはお前に甘えに来た無様さにくわえ、愛玩物に成り果てたいとまで考えたぞ、なんたる惰弱さだ」
「ここに来るまで甘えることだけお考えと。呆れる限りですよ。あなた、ひどい顔でした。あんなにご自身で己を打ちのめしてもお立ちになる姿は惨めながらかっこよかったです。そのいびつな固さと柔らかさ、范叔の熟れ、ということにしておきましょう」
趙武はそう言うと、肩に頭をこすりつける士匄に、頬ずりした。
さて、貴族同士の初夜のために用意された部屋である。敷布もなかなかに良い。毛皮以外に、絹を叩いて綿状にした敷布もあった。相変わらず、丁寧な仕事を好む男だと、士匄は思った。
そして、ムッツリだと、思い知らされた。趙武がいそいそと部屋の隅から持ってきたいくつもの壺の中身がなかなかに最悪だった。
「なんだそれ」
士匄は思わずうめいた。
「潤滑の膏薬です」
「ぅえ、なんで、そんなに」
一つ二つではない種類の潤滑剤を取り出し、趙武が首を傾げた。色味も植物らしい青緑に近いものあれば、水飴のように少し薄荷色に近い透明もあり、何で出来てるかわからんような色もあり。泥じゃないのか、というのも、あり。
「女性によってはなかなか濡れないこともありますでしょう。長々といそしんでたら逆に怯えられても困りますので、手っ取り早く。実際、良さそうなんです」
年を経ても花がほころぶような笑みに変わりはない。変わりはないが、士匄の問いに全く答えていない。つまりなんだ、相手によって新たに作らせているというのか。いや、絶対に違う。――これはムッツリスケベだし、昔、時々変態くさかった。士匄はおぼろげな記憶を掘り起こす。
士匄はそういったものを用意しようとも思わない。己の手管で慣れぬ女を淫奔の渦に叩き込むのがいっそ楽しい。趙武は全く違うらしい。そういえば、初めては薬を盛られたことを思い出した。
「これらには変なものは入ってないですよ」
そう言うと、趙武が士匄の腕を取って膝立ちさせる。士匄はそのまま趙武の肩にそっと腕を置いた。趙武の濡れた指が士匄の肛門をつつく。もう、長い間、性的に使っていないそこは、外からの客を追い返すように固い。
趙武の指の腹が、和らげるように膏薬を塗っては揉み撫でた。独特のむず痒さに、士匄はため息をつく。息の熱さはとっくに自覚していた。
10
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ああ、異世界転生なんて碌なもんじゃない
深海めだか
BL
執着美形王子×転生平凡
いきなり異世界に飛ばされて一生懸命働いてたのに顔のいい男のせいで台無しにされる話。安定で主人公が可哀想です。
⚠︎以下注意⚠︎
結腸責め/男性妊娠可能な世界線/無理やり表現
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる