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特別編 レイン・フィール
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日も沈み、秋の肌寒い風が吹く中で夜間の明りに照らされた屋外訓練場にて一人の男子生徒が魔法特訓を行っていた。
「はぁー、はぁー。まだこんなんじゃルーク副寮長に届かない」
ここは王都メルト魔法学院内の一施設であり、事前に申請をしていれば誰でも使用できる施設であった。
周りにはその生徒以外に誰もおらず独占状態だった。
男子の名前はレイン・フィール。今年王都メルト魔法学院に入学したばかりの第一学年である。
所属寮は通称オオカミ寮と呼ばれる、トウマ寮である。寮名は現在の寮長の名前で呼ばれている。
彼は第一学年の中でも抜き出て実力があり、入学以来すぐに頭角を現し第一学年の中でも有名な生徒になった。
また性格的にも強気で負けず嫌いな一面があり、自分の強さを示す為に上級生である第二学年に模擬戦を挑み勝っていた。
その後調子に乗り始め、各寮の中でも手を焼く存在になり始めるがそれを副寮長であるルークが鎮めたのであった。
ルークはレインを筆頭に力のある第一学年生をそれぞれ圧倒的な力でねじ伏せたのだ。
その力の前にレインらは全く歯も立たず実力差を知るのだった。
それ以来レインはルークに関して調べ始め、強さだけでなく学年一の成績者と知る。
レインはこれこそ自分の目指すべき人、憧れの人であり超えるべき目標としあまり力を入れてなかった勉学にも力を入れだす。
そしてことあるごとにルークに突っかかり勝負を挑むが、まともに相手にされずにいた。
「くそ、俺が一年だから相手にしてくれてないのか? それとも相手にするまでの奴じゃないってことか?」
そこで一週間前に行われた大運動会の出来事を思い出す。
上級生らとの勝負に自分の実力を示し、代表戦まで出て戦ったがまだまだ上級生には届かないと改めて自分の位置を理解した。
だがそんな中で一番記憶に残っていたのは、自分が出た競技ではなく特別試合のルークの試合であった。
あの日誰もが学年一の実力者同士の戦いを期待していたが、まさかのジュリルの辞退で全く知らない女子とルークとの対戦となった。
初めはこんなの見たかった試合じゃない、勝負にもならないと批判する者がいた。
レインも口には出さなかったが、内心では少しがっかりしていた。
しかし、一部の上級生らは何故か盛り上がっておりその意味が分からなかった。
そんな中で勝負が始まると、あの学年一の実力者であるルークにジュリルの代わりに立った女子が張り合っている姿に目を疑った。
最終的にはルークが勝って終了したが、競技場にいた誰もがその相手の姿と名前を覚えた。
「アリス・フォークロス。何者なんだ、あいつは」
女子側への転入者でありつつも、この学院に知り合いが多く他の寮長らも一目をおく存在だという事をレインは他の寮の一年から情報を得ていた。
「知り合いだかなんだか知らないが、ルーク副寮長に張り合えるわけない。あの日も少し動揺していたし、あの人に張り合える人なんて限られた人だけだ。ましてや転入者が同等なんてあり得ない、皆勝手に思い込んでいるだけだろう」
アリスという人物に関してはここの学院で全く情報がなく、どういう知り合いなのかも教えてくれる者はいなかった。
ルークもあれ以来アリスに関わることが多くなり、その姿をよく見かけていた。
その為レインはアリスが何故そこまで変に実力を認められているのか分からず、何か変なことでもして裏で手を回しているのではないかと疑っていた。
そして再び魔法の特訓を開始していると、そこへ突然来訪者が現れる。
「へぇ~ここが室外訓練場か。綺麗だな」
「誰だ」
「あ、ごめん。使用者いたのね、さすがに夜はいないと思って来たんだけど。君、凄いねこんな時間まで」
「お前はたしか、アリス・フォークロス」
レインの前に現れたのは学院のジャージを着たアリス一人であった。
突然フルネームで呼ばれ驚くアリス。
「(どうしてここにアリス・フォークロスが)」
「まさかフルネームで呼ばれるとは思わなったな。でも、私のこと知ってるんだね君」
「もちろんだ。大運動会の日に皆がお前のことを知った」
「なるほどね。たしかにあれは少しやり過ぎたと思うな。ジュリルにあの方が盛り上がるからと乗せられてしまったけど、やっぱやめとけばよかったな」
「で、ここに何の用だ? 今日は俺しか予約を入れてないが」
「ちょっと私も身体動かしたくて。でも予約制だとは知らなくて。まだ来たばかりで慣れてなくて」
アリスは笑いながら答えた。
基本的にこの場所は予約が必須であり、予約がないものは使えないルールとなっていた。
本来であればレインはそのまま追い返せるのだが、今は誰も周りにおらずアリスに対しレイン自身が実力などに疑問を持っていたこともあり、ある提案を持ち掛ける。
「身体を動かしに来たって言ったな」
「そうだけど」
「なら、俺と模擬戦をしないか? してくれるなら俺が特別に連名で予約とった事にして、ここを一緒に使わせてやるぞ。予約をしてない奴は使えない場だからな」
「そうなのね。もしそれを断ったら?」
「すぐに帰ってくれ。俺は一日でも早くルーク副寮長に追い付きたいから、時間を無駄にしてられないんだよ」
「ふーん。ルーク副寮長、ね……分かったわ、模擬戦の申し入れ受け入れるわ」
その後レインはアリスに自分の名を名乗り、模擬戦のルールを決めた。
対人方式で制限は特になし、相手を場外に出すか戦闘に不能になりうる攻撃をした時点で終了。
「負けを認めても同様だ。ちなみに俺は大運動会時に代表戦も出てる」
「え、そうなの!? 凄いねレイン。でも私も貴方が目標としているルークに一度勝ったことがあるのよ」
「なっ! 嘘だ! そんなの信じられるか! この前の試合も結局負けてたじゃないか」
「あ~それを言われると何も言えなんだけど。言い訳するとまだ身体が本調子じゃなくてね、あはは……」
「(言い訳かよ。やっぱりこんな奴が皆に認められているだけの実力があるように思えない。俺がここで倒してそのメッキ剥がしてやる)」
気合いの入るレインに対し、アリスは準備運動を始める。身体を傷めないように全身を伸ばし温める。
そして互いに準備が終わりレインがカウントダウンが出来る魔道具を取り出し、開始のボタンを押す。
カウントダウンが始まりゼロになると同時に開始音が響き渡り、レインが速攻を仕掛ける。
魔法で逃げ場を誘導しそこに接近戦を仕掛けるが、アリスはレインの攻撃を防ぎ魔力創造でレインとの間に壁を創り出す。
直後、背後にゴーレムを創り出し攻撃するがレインはかわす。
しかし、ゴーレムから新たなゴーレムが創造されその攻撃を受けてしまう。
その後も吹き飛ばされた先にゴーレムが待ち伏せで創造され身体を掴まれ、そのまま場外に投げ飛ばされるのだった。
「はい。これで私の勝ち」
「ま、まだだ! 今のはちょっと油断しただけだ!」
「(あんな負け方で終わられるか!)」
そう駄々をこねるレインにアリスは優しく答える。
「いいよ。もう一戦やろうか」
その後もレインはアリスに向かって行くが、ことごとく場外負けをしてしまう。
どの戦いも強力な一撃を受けたという訳ではなく、放り出されたり自滅を誘われたりしていた。
「はぁー、はぁー、はぁー、何で勝てないんだ。俺の方が強いはずなのに」
「たしかに君の魔法はどれも凄いよ。でも、戦いはその魔法が凄いだけじゃ勝てい時もある」
「じゃあんたはどうやってルーク副寮長に勝ったんだよ? 戦略も必要なのは知ってるが、相手に勝つ為には強い力はどっちにしろ必要だろ」
「必要ないとは言ってないよ、どうそれを強くしていくかだよ。ルークに対抗した私の力特別に見せてあげるよ」
そういってアリスはもう一戦だけレインと模擬戦を始める。
すると大運動会の時には見せなかったゴーレム武装をレインの前で披露する。
その姿にレインは驚き、同時に凄さを直感的に理解する。
「これが私が皆から学び作り上げた力。一人じゃ絶対に出来なかった力よ」
直後アリスは瞬間的にレインとの距離を詰め、レインの顔の目の前で自らの拳を寸止めする。
その後訓練場内にある的に魔法を放ち、対象物に攻撃し攻撃力の高さや速さなどを見せつけた。
短時間だがゴーレム武装の力を見せ解除する。
「す、すげえ」
「そう? 久しぶりに褒められて嬉しいな」
その時見せたアリスの笑顔に急にレインは胸が締め付けられる。
「でもこれ、今調整中で使える時間短いのよね。だからあえて大運動会の時は使わなかったのよね」
「調整中って何をしてるんだ?」
「それはね……やっぱり秘密」
アリスの女子らしい秘密という仕草にレインの胸は高鳴る。
「(な、なんで気持ちが高鳴るんだ)」
「大丈夫レイン? 何か顔赤いけど」
覗き込んでくるアリスにレインは動揺しすぐに退く。
「だ、大丈夫だ。近付かなくてもいい」
「そう?」
その時また新しい人物が訓練場に現れる。
「こんな所に居たのねアリス」
「ジュリル」
「探したわよ。勝手に何処かに行かないでくれます?」
「ごめんごめん。待ちきれなくて先に来ちゃった」
「場所はここじゃないのですわよ」
するとジュリルもレインの存在に気付く。
「貴方はたしか、トウマのところの」
レインはすぐに頭を軽く下げ挨拶する。
ジュリルはレインとアリスを交互に見つめた。
「で、二人はここで何をしてたの? もしかして、逢引?」
「ちち、違うよ! 何言ってるのさジュリル! ここに来て初めてあったの彼とは! で、ちょっと模擬戦してただけ」
「冗談ですわ。そんなことしないものね、ジュリルは。さあ、彼も特訓中なのですからもう邪魔をせずに行きますわよ」
そういいジュリルはすぐにその場を立ち去り始める。
アリスもジュリルの後を追いかけるが、一度立ち止まりレインの方を振り返る。
「君は強くなれる、ルークにも勝てるくらいにね。でもそれには、いいライバルがいるといいわね。上だけじゃなくて横もたまには見るといいわよ」
「横?」
レインは右を向くとアリスは「動作的なことじゃないわよ」と笑う。
「じゃまたね、レイン。あと、ルークの変な所を見習わなくでもう少し敬語も覚えなさいよ」
そう告げてアリスはジュリルと共に訓練場を後にするのだった。
レインはぼーっとしたままアリスの後ろ姿が見えなくなるまで眺めていた。
見えなくなった所でレインは小さくため息をつく。
「惚れたか?」
「っ!?」
突然背後からそう言葉を掛けられレインが勢いよく振り返ると、そこにはトウマがいた。
「ト、トウマ寮長!?」
「はぁ~その感じ惚れたな、お前」
「なな、何を言ってるんです。意味が分からないですけど」
レインは冷静を装いつつも胸の内はバクバクであった。
「隠しても分かるぞ。全部見てたからな。まさか、こんなことになるとはな」
「全部って全部ですか?」
「アリスが来たのは想定外だし、あそこまで付き合うとは思ってなかった。レオン、お前分かってて止めなかったんじゃないか?」
するとトウマの元にライオン寮内でも有名なレオンが姿を現す。
「何のことだいトウマ? 僕は何も知らないよ」
「ジュリルとアリスの夜間特訓だよ。今日ジュリルに会ってんだから、話くらい聞いてるだろ」
「変な濡れ衣着せないでくれよ。僕はただ夜間訓練をしている君のところの一年が無理をしないか心配で声を掛けただけさ」
「何か、白々しいな」
トウマはレオンに最近ハードワークになり過ぎているレインが倒れたりしたら大変じゃないかと声を掛け、今日の夜間訓練を見守りに来ていた。
邪魔するつもりはなく、もしものことがあった際には助けに入るつもりであった。
事前に注意はトウマからしていたが、それを聞くような相手ではなく強引に入っても逆効果だと思い見守ることにしたのだった。
だが、トウマも思いもしない展開にため息をつくしかなかった。
「で、あのアリスにお前は惚れたんだろ? 正直に言っちまえよ」
「惚れてない! 何で俺があんな奴に惚れるんだよ! あり得ない!」
「そう言いつつも、耳を赤くして視線を逸らすのは何故かな一年生?」
「ぐぅ……」
レオンから追求に黙ってしまうレインだったが、すぐにトウマに言い返す。
「というか、何でそんなこと聞くんだよ! どうでもいいだろ? あ、もしかしてトウマ寮長あの人に惚れてるのか?」
「ああ、好きだったよ。まあフラれたが。ちなみに、そっちのレオンもフラれてるぞ」
「ちょ! 何勝手に巻き込んでるんだトウマ」
「いいじゃないか別に」
トウマの態度に深くため息をつくレオン。
「惚れてしまったのは仕方ないが、ライバルは強いぞ。諦めるなら早い方がおススメだ」
「ライバル?」
「気になるってことは、やっぱり好きになったか」
「別にそういう訳じゃ」
「相手はな、お前がよく突っかかるルークだよ」
まさかの相手にレインは驚く。
「ルーク副寮長が?」
「そうそう。お前もずっと隠れてないで出て来いよルーク」
「え?」
トウマの声が周囲に響くが誰も現れず、トウマは少し焦る。
その姿にレオンが小さく笑う。
「あれ? ルーク? 居るんだろ? 出て来いって。これじゃ、俺が恥ずかしい奴じゃんよ。おーい」
「(やっぱり、何でこの人がうちの寮長やってるのかよく分からない)」
暫くするとようやくルークが姿を現しトウマはほっと安堵した。
本当に居るとは思わなかったレインもそれにまた驚く。
「あたふたするなよトウマ」
「いや、お前がさっと出てくれば良かっただけだろうが。変にカッコつけて恥ずかし目に遭ったわ」
「お前が勝手に人のプライバシーを漏らすからだ」
正論過ぎて何も言い返せないトウマ。
その後レオンとルークに対ししっかりと謝罪をするのであった。
「ルーク副寮長も、見ていたんですね」
「……ああ」
「あの人に負けたってのは事実ですか?」
「そうだ。一度俺はアリスに負けてる」
「っ……そう、ですか」
「お前はどうして俺に勝ちたい?」
「俺は、貴方の様になりたいから。強くて凄い人に」
レインの言葉を聞き、ルークは小さく「そんな風に見えるか」と呟いた。
「俺はお前が思うような奴じゃない。我儘で独りよがりの奴、それで兄に嫉妬して友の言葉にもろくに耳をかさない嫌な奴さ」
「そんな風には見えません」
「元々はそうだったんだ。だが、ある奴が来てから変わったんだ。そいつはもういないが、初めて相手になる奴ライバルになる奴だと思えた。最初は自分の為に利用しようとしたが、どんどんとそれはなくなりそいつに負けない為に勝つ為にと変わったよ」
元々ルークがどういった人物かまでは知らないレインであったが、その言葉が嘘とは思えなかった。
誰だか分からないがその人と出会った事で、ルークは今に至っているとレインは理解した。
「その人に会ったから今の強さがあるんですか? それとも強さには関係ないんですか?」
「会えたから今の俺がいる。会ってなかったら、そうだな……どうしようもない奴になってたと思うぞ」
「競い合えたから成長できたか」
そうレインが独り言を口にすると何となく先程アリスから言われた言葉も分かって来た気がするのであった。
「(上だけじゃなく、横か。なるほど、そういう意味か)」
薄笑いを見せるレインを見たルークはその場から立ち去り始める。
「一人で特訓するのも、ほどほどにしとけよレイン」
「何をするにも身体は第一だよ。休息も自分を育てる一要因だと覚えた方がいい」
「おい、お前ら先輩らしいことを言って置いてくな。俺が言う事なくなるだろうが」
「お前は変にカッコつけないでいつも通りでいいよ。それが一番だ」
「そうそう、トウマは他の寮長らとは違うんだから」
「何だよそれ! てか、レオンまでそんなこと言うのかよ! あ、レイン続けるなら汗だくのままするなよ。風邪ひくからな」
「寮長っていうより、寮母だなそれ」
「俺は寮母じゃねぇ! 寮長だっての!」
三人の仲がいい姿をレインは見送りながら、自分もいつかはあんな友ができるだろうかと思うのであった。
そして立ち去るルークに対してレインは声を掛けると、ルークだけでなく全員が足を止めた。
「ルーク副寮長! 俺は必ず貴方に勝ちます! それとアリスさんのことも俺が先に射止めます!」
「なっ!?」
「え!?」
「凄い宣言……」
満面の笑みで告げられた言葉に三人は驚くとルークが来た道を戻りレインの前で足を止める。
「あ~遠くてよく聞こえなかったが、今なんて言ったんだ? アリスがどうとかと聞こえたが」
「聞こえんかったんですか? じゃあもう一度いいますけど、アリスさんを先に俺が落とします」
「アリスを落とす? お前が? はっ! 無理無理、アリスがお前に落ちる訳がない」
「そんなのやってみないと分からないじゃないですか。案外と年下好きかもしれないじゃないですか?」
「そんな訳ないだろ」
「何でそう言い切れるんですか? 確認したんですか?」
ルークとレインの言い合いに訓練場入口でトウマとレオンがそれを見守る。
「あ~あ、凄い展開になったねトウマ。行かなくていいのかい?」
「お前こそ入ってこいよレオン」
「僕はいいよ。にしても、まさかのライバルが増えたね」
「本当だよ。あの手のかかる後輩まで惚れさせるとか、アリスは厄介なことをしてくれたよ」
「そうだね。でも、ルークのあんな態度見れて少し楽しいかな」
「そこは同感。また騒がしくなりそうだ」
その間もルークとレインのマウント取り合いは続いていた。
「言っときますがルーク副寮長、俺はこれまで告白失敗した事ないんです。アリスさんも必ず落としてみせますよ」
「それが何だ、モテます自慢で付き合えると思ってるのか? それならやめとけ、アリスはお前なんか興味ないよ」
「それはどうですかね? 今日をキッカケに俺はアタックしますよ。知人から友人、そして彼氏候補まで上り詰めてチェックメイトです」
「よ~し分かった。一発模擬戦でお前の魅力のなさをしっかりと分からせてやる」
「申し出は嬉しいですが、断ります。俺はすぐに着替えてアリスさんたちと合同練習に混ぜてもらいに行くんで」
するとレインは荷物をすぐにまとめ、ルークを置いて訓練場を後にする。
まさかの後輩に模擬戦を断れるルークであったが、すぐにレインの後を追い始める。
「おい! それは抜け駆けだぞ!」
「恋愛にルールなんてないんですよ! 早いもん勝ちです!」
「あ! おいおいルーク訓練場外で魔法を打とうとするな! やめろー!」
「早速一大事だね」
「レオンお前も笑ってないでルーク止めろよ」
「はいはい」
そうして夜間にも関わらず、王都メルト魔法学院内に騒がしい声が辺りに響き渡るのであった。
「はぁー、はぁー。まだこんなんじゃルーク副寮長に届かない」
ここは王都メルト魔法学院内の一施設であり、事前に申請をしていれば誰でも使用できる施設であった。
周りにはその生徒以外に誰もおらず独占状態だった。
男子の名前はレイン・フィール。今年王都メルト魔法学院に入学したばかりの第一学年である。
所属寮は通称オオカミ寮と呼ばれる、トウマ寮である。寮名は現在の寮長の名前で呼ばれている。
彼は第一学年の中でも抜き出て実力があり、入学以来すぐに頭角を現し第一学年の中でも有名な生徒になった。
また性格的にも強気で負けず嫌いな一面があり、自分の強さを示す為に上級生である第二学年に模擬戦を挑み勝っていた。
その後調子に乗り始め、各寮の中でも手を焼く存在になり始めるがそれを副寮長であるルークが鎮めたのであった。
ルークはレインを筆頭に力のある第一学年生をそれぞれ圧倒的な力でねじ伏せたのだ。
その力の前にレインらは全く歯も立たず実力差を知るのだった。
それ以来レインはルークに関して調べ始め、強さだけでなく学年一の成績者と知る。
レインはこれこそ自分の目指すべき人、憧れの人であり超えるべき目標としあまり力を入れてなかった勉学にも力を入れだす。
そしてことあるごとにルークに突っかかり勝負を挑むが、まともに相手にされずにいた。
「くそ、俺が一年だから相手にしてくれてないのか? それとも相手にするまでの奴じゃないってことか?」
そこで一週間前に行われた大運動会の出来事を思い出す。
上級生らとの勝負に自分の実力を示し、代表戦まで出て戦ったがまだまだ上級生には届かないと改めて自分の位置を理解した。
だがそんな中で一番記憶に残っていたのは、自分が出た競技ではなく特別試合のルークの試合であった。
あの日誰もが学年一の実力者同士の戦いを期待していたが、まさかのジュリルの辞退で全く知らない女子とルークとの対戦となった。
初めはこんなの見たかった試合じゃない、勝負にもならないと批判する者がいた。
レインも口には出さなかったが、内心では少しがっかりしていた。
しかし、一部の上級生らは何故か盛り上がっておりその意味が分からなかった。
そんな中で勝負が始まると、あの学年一の実力者であるルークにジュリルの代わりに立った女子が張り合っている姿に目を疑った。
最終的にはルークが勝って終了したが、競技場にいた誰もがその相手の姿と名前を覚えた。
「アリス・フォークロス。何者なんだ、あいつは」
女子側への転入者でありつつも、この学院に知り合いが多く他の寮長らも一目をおく存在だという事をレインは他の寮の一年から情報を得ていた。
「知り合いだかなんだか知らないが、ルーク副寮長に張り合えるわけない。あの日も少し動揺していたし、あの人に張り合える人なんて限られた人だけだ。ましてや転入者が同等なんてあり得ない、皆勝手に思い込んでいるだけだろう」
アリスという人物に関してはここの学院で全く情報がなく、どういう知り合いなのかも教えてくれる者はいなかった。
ルークもあれ以来アリスに関わることが多くなり、その姿をよく見かけていた。
その為レインはアリスが何故そこまで変に実力を認められているのか分からず、何か変なことでもして裏で手を回しているのではないかと疑っていた。
そして再び魔法の特訓を開始していると、そこへ突然来訪者が現れる。
「へぇ~ここが室外訓練場か。綺麗だな」
「誰だ」
「あ、ごめん。使用者いたのね、さすがに夜はいないと思って来たんだけど。君、凄いねこんな時間まで」
「お前はたしか、アリス・フォークロス」
レインの前に現れたのは学院のジャージを着たアリス一人であった。
突然フルネームで呼ばれ驚くアリス。
「(どうしてここにアリス・フォークロスが)」
「まさかフルネームで呼ばれるとは思わなったな。でも、私のこと知ってるんだね君」
「もちろんだ。大運動会の日に皆がお前のことを知った」
「なるほどね。たしかにあれは少しやり過ぎたと思うな。ジュリルにあの方が盛り上がるからと乗せられてしまったけど、やっぱやめとけばよかったな」
「で、ここに何の用だ? 今日は俺しか予約を入れてないが」
「ちょっと私も身体動かしたくて。でも予約制だとは知らなくて。まだ来たばかりで慣れてなくて」
アリスは笑いながら答えた。
基本的にこの場所は予約が必須であり、予約がないものは使えないルールとなっていた。
本来であればレインはそのまま追い返せるのだが、今は誰も周りにおらずアリスに対しレイン自身が実力などに疑問を持っていたこともあり、ある提案を持ち掛ける。
「身体を動かしに来たって言ったな」
「そうだけど」
「なら、俺と模擬戦をしないか? してくれるなら俺が特別に連名で予約とった事にして、ここを一緒に使わせてやるぞ。予約をしてない奴は使えない場だからな」
「そうなのね。もしそれを断ったら?」
「すぐに帰ってくれ。俺は一日でも早くルーク副寮長に追い付きたいから、時間を無駄にしてられないんだよ」
「ふーん。ルーク副寮長、ね……分かったわ、模擬戦の申し入れ受け入れるわ」
その後レインはアリスに自分の名を名乗り、模擬戦のルールを決めた。
対人方式で制限は特になし、相手を場外に出すか戦闘に不能になりうる攻撃をした時点で終了。
「負けを認めても同様だ。ちなみに俺は大運動会時に代表戦も出てる」
「え、そうなの!? 凄いねレイン。でも私も貴方が目標としているルークに一度勝ったことがあるのよ」
「なっ! 嘘だ! そんなの信じられるか! この前の試合も結局負けてたじゃないか」
「あ~それを言われると何も言えなんだけど。言い訳するとまだ身体が本調子じゃなくてね、あはは……」
「(言い訳かよ。やっぱりこんな奴が皆に認められているだけの実力があるように思えない。俺がここで倒してそのメッキ剥がしてやる)」
気合いの入るレインに対し、アリスは準備運動を始める。身体を傷めないように全身を伸ばし温める。
そして互いに準備が終わりレインがカウントダウンが出来る魔道具を取り出し、開始のボタンを押す。
カウントダウンが始まりゼロになると同時に開始音が響き渡り、レインが速攻を仕掛ける。
魔法で逃げ場を誘導しそこに接近戦を仕掛けるが、アリスはレインの攻撃を防ぎ魔力創造でレインとの間に壁を創り出す。
直後、背後にゴーレムを創り出し攻撃するがレインはかわす。
しかし、ゴーレムから新たなゴーレムが創造されその攻撃を受けてしまう。
その後も吹き飛ばされた先にゴーレムが待ち伏せで創造され身体を掴まれ、そのまま場外に投げ飛ばされるのだった。
「はい。これで私の勝ち」
「ま、まだだ! 今のはちょっと油断しただけだ!」
「(あんな負け方で終わられるか!)」
そう駄々をこねるレインにアリスは優しく答える。
「いいよ。もう一戦やろうか」
その後もレインはアリスに向かって行くが、ことごとく場外負けをしてしまう。
どの戦いも強力な一撃を受けたという訳ではなく、放り出されたり自滅を誘われたりしていた。
「はぁー、はぁー、はぁー、何で勝てないんだ。俺の方が強いはずなのに」
「たしかに君の魔法はどれも凄いよ。でも、戦いはその魔法が凄いだけじゃ勝てい時もある」
「じゃあんたはどうやってルーク副寮長に勝ったんだよ? 戦略も必要なのは知ってるが、相手に勝つ為には強い力はどっちにしろ必要だろ」
「必要ないとは言ってないよ、どうそれを強くしていくかだよ。ルークに対抗した私の力特別に見せてあげるよ」
そういってアリスはもう一戦だけレインと模擬戦を始める。
すると大運動会の時には見せなかったゴーレム武装をレインの前で披露する。
その姿にレインは驚き、同時に凄さを直感的に理解する。
「これが私が皆から学び作り上げた力。一人じゃ絶対に出来なかった力よ」
直後アリスは瞬間的にレインとの距離を詰め、レインの顔の目の前で自らの拳を寸止めする。
その後訓練場内にある的に魔法を放ち、対象物に攻撃し攻撃力の高さや速さなどを見せつけた。
短時間だがゴーレム武装の力を見せ解除する。
「す、すげえ」
「そう? 久しぶりに褒められて嬉しいな」
その時見せたアリスの笑顔に急にレインは胸が締め付けられる。
「でもこれ、今調整中で使える時間短いのよね。だからあえて大運動会の時は使わなかったのよね」
「調整中って何をしてるんだ?」
「それはね……やっぱり秘密」
アリスの女子らしい秘密という仕草にレインの胸は高鳴る。
「(な、なんで気持ちが高鳴るんだ)」
「大丈夫レイン? 何か顔赤いけど」
覗き込んでくるアリスにレインは動揺しすぐに退く。
「だ、大丈夫だ。近付かなくてもいい」
「そう?」
その時また新しい人物が訓練場に現れる。
「こんな所に居たのねアリス」
「ジュリル」
「探したわよ。勝手に何処かに行かないでくれます?」
「ごめんごめん。待ちきれなくて先に来ちゃった」
「場所はここじゃないのですわよ」
するとジュリルもレインの存在に気付く。
「貴方はたしか、トウマのところの」
レインはすぐに頭を軽く下げ挨拶する。
ジュリルはレインとアリスを交互に見つめた。
「で、二人はここで何をしてたの? もしかして、逢引?」
「ちち、違うよ! 何言ってるのさジュリル! ここに来て初めてあったの彼とは! で、ちょっと模擬戦してただけ」
「冗談ですわ。そんなことしないものね、ジュリルは。さあ、彼も特訓中なのですからもう邪魔をせずに行きますわよ」
そういいジュリルはすぐにその場を立ち去り始める。
アリスもジュリルの後を追いかけるが、一度立ち止まりレインの方を振り返る。
「君は強くなれる、ルークにも勝てるくらいにね。でもそれには、いいライバルがいるといいわね。上だけじゃなくて横もたまには見るといいわよ」
「横?」
レインは右を向くとアリスは「動作的なことじゃないわよ」と笑う。
「じゃまたね、レイン。あと、ルークの変な所を見習わなくでもう少し敬語も覚えなさいよ」
そう告げてアリスはジュリルと共に訓練場を後にするのだった。
レインはぼーっとしたままアリスの後ろ姿が見えなくなるまで眺めていた。
見えなくなった所でレインは小さくため息をつく。
「惚れたか?」
「っ!?」
突然背後からそう言葉を掛けられレインが勢いよく振り返ると、そこにはトウマがいた。
「ト、トウマ寮長!?」
「はぁ~その感じ惚れたな、お前」
「なな、何を言ってるんです。意味が分からないですけど」
レインは冷静を装いつつも胸の内はバクバクであった。
「隠しても分かるぞ。全部見てたからな。まさか、こんなことになるとはな」
「全部って全部ですか?」
「アリスが来たのは想定外だし、あそこまで付き合うとは思ってなかった。レオン、お前分かってて止めなかったんじゃないか?」
するとトウマの元にライオン寮内でも有名なレオンが姿を現す。
「何のことだいトウマ? 僕は何も知らないよ」
「ジュリルとアリスの夜間特訓だよ。今日ジュリルに会ってんだから、話くらい聞いてるだろ」
「変な濡れ衣着せないでくれよ。僕はただ夜間訓練をしている君のところの一年が無理をしないか心配で声を掛けただけさ」
「何か、白々しいな」
トウマはレオンに最近ハードワークになり過ぎているレインが倒れたりしたら大変じゃないかと声を掛け、今日の夜間訓練を見守りに来ていた。
邪魔するつもりはなく、もしものことがあった際には助けに入るつもりであった。
事前に注意はトウマからしていたが、それを聞くような相手ではなく強引に入っても逆効果だと思い見守ることにしたのだった。
だが、トウマも思いもしない展開にため息をつくしかなかった。
「で、あのアリスにお前は惚れたんだろ? 正直に言っちまえよ」
「惚れてない! 何で俺があんな奴に惚れるんだよ! あり得ない!」
「そう言いつつも、耳を赤くして視線を逸らすのは何故かな一年生?」
「ぐぅ……」
レオンから追求に黙ってしまうレインだったが、すぐにトウマに言い返す。
「というか、何でそんなこと聞くんだよ! どうでもいいだろ? あ、もしかしてトウマ寮長あの人に惚れてるのか?」
「ああ、好きだったよ。まあフラれたが。ちなみに、そっちのレオンもフラれてるぞ」
「ちょ! 何勝手に巻き込んでるんだトウマ」
「いいじゃないか別に」
トウマの態度に深くため息をつくレオン。
「惚れてしまったのは仕方ないが、ライバルは強いぞ。諦めるなら早い方がおススメだ」
「ライバル?」
「気になるってことは、やっぱり好きになったか」
「別にそういう訳じゃ」
「相手はな、お前がよく突っかかるルークだよ」
まさかの相手にレインは驚く。
「ルーク副寮長が?」
「そうそう。お前もずっと隠れてないで出て来いよルーク」
「え?」
トウマの声が周囲に響くが誰も現れず、トウマは少し焦る。
その姿にレオンが小さく笑う。
「あれ? ルーク? 居るんだろ? 出て来いって。これじゃ、俺が恥ずかしい奴じゃんよ。おーい」
「(やっぱり、何でこの人がうちの寮長やってるのかよく分からない)」
暫くするとようやくルークが姿を現しトウマはほっと安堵した。
本当に居るとは思わなかったレインもそれにまた驚く。
「あたふたするなよトウマ」
「いや、お前がさっと出てくれば良かっただけだろうが。変にカッコつけて恥ずかし目に遭ったわ」
「お前が勝手に人のプライバシーを漏らすからだ」
正論過ぎて何も言い返せないトウマ。
その後レオンとルークに対ししっかりと謝罪をするのであった。
「ルーク副寮長も、見ていたんですね」
「……ああ」
「あの人に負けたってのは事実ですか?」
「そうだ。一度俺はアリスに負けてる」
「っ……そう、ですか」
「お前はどうして俺に勝ちたい?」
「俺は、貴方の様になりたいから。強くて凄い人に」
レインの言葉を聞き、ルークは小さく「そんな風に見えるか」と呟いた。
「俺はお前が思うような奴じゃない。我儘で独りよがりの奴、それで兄に嫉妬して友の言葉にもろくに耳をかさない嫌な奴さ」
「そんな風には見えません」
「元々はそうだったんだ。だが、ある奴が来てから変わったんだ。そいつはもういないが、初めて相手になる奴ライバルになる奴だと思えた。最初は自分の為に利用しようとしたが、どんどんとそれはなくなりそいつに負けない為に勝つ為にと変わったよ」
元々ルークがどういった人物かまでは知らないレインであったが、その言葉が嘘とは思えなかった。
誰だか分からないがその人と出会った事で、ルークは今に至っているとレインは理解した。
「その人に会ったから今の強さがあるんですか? それとも強さには関係ないんですか?」
「会えたから今の俺がいる。会ってなかったら、そうだな……どうしようもない奴になってたと思うぞ」
「競い合えたから成長できたか」
そうレインが独り言を口にすると何となく先程アリスから言われた言葉も分かって来た気がするのであった。
「(上だけじゃなく、横か。なるほど、そういう意味か)」
薄笑いを見せるレインを見たルークはその場から立ち去り始める。
「一人で特訓するのも、ほどほどにしとけよレイン」
「何をするにも身体は第一だよ。休息も自分を育てる一要因だと覚えた方がいい」
「おい、お前ら先輩らしいことを言って置いてくな。俺が言う事なくなるだろうが」
「お前は変にカッコつけないでいつも通りでいいよ。それが一番だ」
「そうそう、トウマは他の寮長らとは違うんだから」
「何だよそれ! てか、レオンまでそんなこと言うのかよ! あ、レイン続けるなら汗だくのままするなよ。風邪ひくからな」
「寮長っていうより、寮母だなそれ」
「俺は寮母じゃねぇ! 寮長だっての!」
三人の仲がいい姿をレインは見送りながら、自分もいつかはあんな友ができるだろうかと思うのであった。
そして立ち去るルークに対してレインは声を掛けると、ルークだけでなく全員が足を止めた。
「ルーク副寮長! 俺は必ず貴方に勝ちます! それとアリスさんのことも俺が先に射止めます!」
「なっ!?」
「え!?」
「凄い宣言……」
満面の笑みで告げられた言葉に三人は驚くとルークが来た道を戻りレインの前で足を止める。
「あ~遠くてよく聞こえなかったが、今なんて言ったんだ? アリスがどうとかと聞こえたが」
「聞こえんかったんですか? じゃあもう一度いいますけど、アリスさんを先に俺が落とします」
「アリスを落とす? お前が? はっ! 無理無理、アリスがお前に落ちる訳がない」
「そんなのやってみないと分からないじゃないですか。案外と年下好きかもしれないじゃないですか?」
「そんな訳ないだろ」
「何でそう言い切れるんですか? 確認したんですか?」
ルークとレインの言い合いに訓練場入口でトウマとレオンがそれを見守る。
「あ~あ、凄い展開になったねトウマ。行かなくていいのかい?」
「お前こそ入ってこいよレオン」
「僕はいいよ。にしても、まさかのライバルが増えたね」
「本当だよ。あの手のかかる後輩まで惚れさせるとか、アリスは厄介なことをしてくれたよ」
「そうだね。でも、ルークのあんな態度見れて少し楽しいかな」
「そこは同感。また騒がしくなりそうだ」
その間もルークとレインのマウント取り合いは続いていた。
「言っときますがルーク副寮長、俺はこれまで告白失敗した事ないんです。アリスさんも必ず落としてみせますよ」
「それが何だ、モテます自慢で付き合えると思ってるのか? それならやめとけ、アリスはお前なんか興味ないよ」
「それはどうですかね? 今日をキッカケに俺はアタックしますよ。知人から友人、そして彼氏候補まで上り詰めてチェックメイトです」
「よ~し分かった。一発模擬戦でお前の魅力のなさをしっかりと分からせてやる」
「申し出は嬉しいですが、断ります。俺はすぐに着替えてアリスさんたちと合同練習に混ぜてもらいに行くんで」
するとレインは荷物をすぐにまとめ、ルークを置いて訓練場を後にする。
まさかの後輩に模擬戦を断れるルークであったが、すぐにレインの後を追い始める。
「おい! それは抜け駆けだぞ!」
「恋愛にルールなんてないんですよ! 早いもん勝ちです!」
「あ! おいおいルーク訓練場外で魔法を打とうとするな! やめろー!」
「早速一大事だね」
「レオンお前も笑ってないでルーク止めろよ」
「はいはい」
そうして夜間にも関わらず、王都メルト魔法学院内に騒がしい声が辺りに響き渡るのであった。
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