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第505話 黒猫との会話
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「いや~楽しかったな勉強会。せっかく誘われたってのに、何であいつ断ったんだ。先約があってもこっちに来ると思ったんだが」
トウマは一人そんな事を思いながら廊下を歩いていた。
クリスたちとの勉強会も終わり、そのまま夕食をとったのちに解散となり今は自室へと戻る途中であった。
廊下を曲がろうとした時、その先から微かにルークの声が聞こえて来た。
誰かと話している感じであったが、何を話しているかはよく聞こえなかった。
「(誰と話してるんだ?)」
トウマはそのまま角を曲がりルークがいる廊下に顔を出すと、遠くでルークが開いた窓の方に向かって話している姿があった。
その姿を見て一瞬独り言かと思うが、少し除くような姿勢をとると開いた窓の所に黒猫がちょこんと座っているのが見える。
すると黒猫と目が合った直後、ルークもトウマの存在に気付き少し驚いた表情で視線を向けて来た。
「よ、よう」
「トウマ、お前いつから」
「え、いや、今っていうかちょっと前というか」
トウマはルークの見てはいけない一面を見てしまったと焦りながら答えていると、ルークの前にいた黒猫が鳴き声を上げその場から立ち去って行く。
あたふたするトウマの姿を見てルークは小さくため息をつくと、開けていた窓を閉じトウマの方へと近付いて行く。
「いや、これは偶然であってわざとじゃないんだぞ。信じてくれ。それに誰にも言わない」
「トウマ」
「大丈夫。最近色々あったし、癒しは大切だよな。俺は分かるぞ、よ~く分かる」
「おいトウマ」
「心配無用だぞ。つい、可愛い猫がいて話し掛けたくなる気持ちは分からなくないし、疲れている時はそんな事もしたくなるよな。うんうん」
「話を聞け、トウマ」
するとルークは、トウマの額目掛けデコピンを放つと額に激痛が走ったトウマは声を上げ、額を抑えた。
「いっって! 何するんだよ急に」
「お前が話を聞かないで、勝手に妄想を広げていくからだろうが」
「え、妄想? 誰が誰の?」
首を傾げるトウマにルークは誤解を解く様に話始める。
ルーク曰く確かに先程の黒猫相手に声を掛けていたが、それはずっとルークに対し鳴いて来るので何事かと窓を開け対応していたのだと説明する。
お腹が空いたのか、喉が渇いたのか、ただカマって欲しいだけなのか分からずこのまま変に目を付けられたままなのは嫌だったと語った。
「で、結局何だったんだあの黒猫に鳴かれた理由は」
「分からん。目についた人間にカマって欲しかっただけなのかもな。こうして立ち去ってるって事はよ」
「何だ、色々あって遂に猫に話し掛ける様になったのかと思ったが、そうじゃなかったって事か」
「そう言ってるだろ。変な勘違いするなよ」
「そう言うがな、あんな光景見たら誰でもそう思うぞ。俺だから良かったが、もしフェルトとかだったら今頃寮全体に噂が広まって手がつけられない状態になってるぞ」
「っ……容易に想像が出来て怖すぎるな。気をつけよう」
その後トウマの誤解も解けた所で、ルークはトウマに話があるといい自室へと向かう。
部屋に戻るとトウマはベッドに腰かけ、ルークは椅子に座った。
「にしても、ルークが猫と話しているとはね~意外過ぎたよな。猫好きなのか?」
「まだその話するのかよ。もういいだろ」
ルークはトウマから視線を外しながら答えると、トウマはニヤニヤしながらルークの方を見つめた。
「で、話ってなんだよルーク」
「ああ、クリスについてちょっとな」
そう切り出し、ルークは自分がいなかった間に復帰したクリスの事についてトウマに問いかけ始めた。
復帰してから変わった事、気になった事はないか? 以前と変わりがないかなどと、ここ数日クリスを見ておりクリスの事情を知っているトウマに問いかけたのだ。
トウマはクリスの怪我の事を心配して聞いてきているのだと思ったが、それならわざわざ自分ではなくクリスに対して聞けばいいのではないかと思いルークに訪ね返すのだった。
「それは、そうだが……本人より周りが見てどうかが、気になるんだ。あいつは、無理するタイプだしよ」
「なるほどな。本人が大丈夫って言ってても、周りから見たら違うってやつか。でもそれなら大丈夫だぞ。俺から見ても、他の奴らと話していても特に無理してる感じじゃなかったしな」
「そうか。何か以前と変わった所とかはあるか?」
「変わった所? 別にそんな変わってねえと思うが、何でそんな事聞くんだよルーク。あ、もしかして数日会えてなくてどんな風に今思われてるか気にしてるとかか?」
「……まあ、そんなところだ」
「おいおい、恥ずかしがり屋さんかよ。だから、あんな変な態度とってたのか」
そう言いながらトウマはここ数日でクリスに変化があったかと思い出し始める。
だが、特に変化という変化で思い当たる事はなく、それをルークに話すと「そうか」と口にした。
「今日の勉強会も普通だったしなーあっ」
「?」
「変わったちゃ変わった点なのかもしれないが、なんとなく前より柔らかくなったかな。雰囲気? っていうのか、その纏ってるオーラ的な感じがよ。話しかけやすい気がするし、向こうから話している感じが増えたかな。まあもうすぐ一年近くの付き合いになるし、自然な事なのかもしれないが」
ルークは「他に何か気になった所はあるか?」と聞こうとしたのか、何か口にするのを言い留めた表情をした後「そうか、ありがとう」と口にした。
それで話は終わりなのかルークは椅子から立ち上がり、夕食を食べて来ると言い残し扉の方へと向かう。
「こういうのもなんだが、気になる事があるなら本人に訊いた方が早く解決したりもするぞー」
トウマの言葉に対しルークは軽く片手を上げて返事をし、そのまま部屋を後にするのだった。
――翌朝
――オービン寮 リビング兼食堂にて
「ふぁぁ~~~ねっむ」
トウマが朝食を机の上に置いて大きなあくびをしていると、クリスが朝食を持って声を掛けて来る。
挨拶の後、そのままクリスはトウマの前に座り朝食を食べ始める。
「あれ、クリスって朝はトースト派じゃなかったけ? そんなガツガツする肉とか食べてたっけ?」
少し寝ボケながらトウマが訊ねると、クリスが手を止めて答える。
「リハビリの時から力が付くようなもの食べなさいって言われて。それから朝はいようにお腹が空くようになって、少しでも体力になるもの食べてるんだよ」
「あ~そういうこと」
そういいながらトウマも、似た様な朝食で肉を口に運ぶ。
そこへマックスが通りかかり、二人の朝食を目にし「うぷっ」と声を出す。
「何だよマックス今の」
「いや~朝からよくそんな脂っこいの食べられるなって思ってさ。しかもクリスまでさ」
「いいだろ人が好きで食べてるんだからよ」
「そうだね。悪かったよ」
すると後方からケビンが合流して来て、そのままいつもの定位置へと向かって行く。
二人が立ち去った後、クリスがふと食事の手を止めてトウマに問いかける。
「そういえば、ルークの姿がないけど一緒じゃないの?」
「朝起きたらもういなくてな。どっかで訓練でもしてるんじゃないかって思う。試験も近いしな」
「へ~一人でやってるの?」
「さあ? そこまでは分からないな。場所も寮でやってたり、学院のグラウンドでやってたりと様々だからな」
「ふーん、そっか」
そうクリスは返し再び朝食へと手をつけ始めると、二人の席の近くにヴァンがやって来るのだった。
トウマは一人そんな事を思いながら廊下を歩いていた。
クリスたちとの勉強会も終わり、そのまま夕食をとったのちに解散となり今は自室へと戻る途中であった。
廊下を曲がろうとした時、その先から微かにルークの声が聞こえて来た。
誰かと話している感じであったが、何を話しているかはよく聞こえなかった。
「(誰と話してるんだ?)」
トウマはそのまま角を曲がりルークがいる廊下に顔を出すと、遠くでルークが開いた窓の方に向かって話している姿があった。
その姿を見て一瞬独り言かと思うが、少し除くような姿勢をとると開いた窓の所に黒猫がちょこんと座っているのが見える。
すると黒猫と目が合った直後、ルークもトウマの存在に気付き少し驚いた表情で視線を向けて来た。
「よ、よう」
「トウマ、お前いつから」
「え、いや、今っていうかちょっと前というか」
トウマはルークの見てはいけない一面を見てしまったと焦りながら答えていると、ルークの前にいた黒猫が鳴き声を上げその場から立ち去って行く。
あたふたするトウマの姿を見てルークは小さくため息をつくと、開けていた窓を閉じトウマの方へと近付いて行く。
「いや、これは偶然であってわざとじゃないんだぞ。信じてくれ。それに誰にも言わない」
「トウマ」
「大丈夫。最近色々あったし、癒しは大切だよな。俺は分かるぞ、よ~く分かる」
「おいトウマ」
「心配無用だぞ。つい、可愛い猫がいて話し掛けたくなる気持ちは分からなくないし、疲れている時はそんな事もしたくなるよな。うんうん」
「話を聞け、トウマ」
するとルークは、トウマの額目掛けデコピンを放つと額に激痛が走ったトウマは声を上げ、額を抑えた。
「いっって! 何するんだよ急に」
「お前が話を聞かないで、勝手に妄想を広げていくからだろうが」
「え、妄想? 誰が誰の?」
首を傾げるトウマにルークは誤解を解く様に話始める。
ルーク曰く確かに先程の黒猫相手に声を掛けていたが、それはずっとルークに対し鳴いて来るので何事かと窓を開け対応していたのだと説明する。
お腹が空いたのか、喉が渇いたのか、ただカマって欲しいだけなのか分からずこのまま変に目を付けられたままなのは嫌だったと語った。
「で、結局何だったんだあの黒猫に鳴かれた理由は」
「分からん。目についた人間にカマって欲しかっただけなのかもな。こうして立ち去ってるって事はよ」
「何だ、色々あって遂に猫に話し掛ける様になったのかと思ったが、そうじゃなかったって事か」
「そう言ってるだろ。変な勘違いするなよ」
「そう言うがな、あんな光景見たら誰でもそう思うぞ。俺だから良かったが、もしフェルトとかだったら今頃寮全体に噂が広まって手がつけられない状態になってるぞ」
「っ……容易に想像が出来て怖すぎるな。気をつけよう」
その後トウマの誤解も解けた所で、ルークはトウマに話があるといい自室へと向かう。
部屋に戻るとトウマはベッドに腰かけ、ルークは椅子に座った。
「にしても、ルークが猫と話しているとはね~意外過ぎたよな。猫好きなのか?」
「まだその話するのかよ。もういいだろ」
ルークはトウマから視線を外しながら答えると、トウマはニヤニヤしながらルークの方を見つめた。
「で、話ってなんだよルーク」
「ああ、クリスについてちょっとな」
そう切り出し、ルークは自分がいなかった間に復帰したクリスの事についてトウマに問いかけ始めた。
復帰してから変わった事、気になった事はないか? 以前と変わりがないかなどと、ここ数日クリスを見ておりクリスの事情を知っているトウマに問いかけたのだ。
トウマはクリスの怪我の事を心配して聞いてきているのだと思ったが、それならわざわざ自分ではなくクリスに対して聞けばいいのではないかと思いルークに訪ね返すのだった。
「それは、そうだが……本人より周りが見てどうかが、気になるんだ。あいつは、無理するタイプだしよ」
「なるほどな。本人が大丈夫って言ってても、周りから見たら違うってやつか。でもそれなら大丈夫だぞ。俺から見ても、他の奴らと話していても特に無理してる感じじゃなかったしな」
「そうか。何か以前と変わった所とかはあるか?」
「変わった所? 別にそんな変わってねえと思うが、何でそんな事聞くんだよルーク。あ、もしかして数日会えてなくてどんな風に今思われてるか気にしてるとかか?」
「……まあ、そんなところだ」
「おいおい、恥ずかしがり屋さんかよ。だから、あんな変な態度とってたのか」
そう言いながらトウマはここ数日でクリスに変化があったかと思い出し始める。
だが、特に変化という変化で思い当たる事はなく、それをルークに話すと「そうか」と口にした。
「今日の勉強会も普通だったしなーあっ」
「?」
「変わったちゃ変わった点なのかもしれないが、なんとなく前より柔らかくなったかな。雰囲気? っていうのか、その纏ってるオーラ的な感じがよ。話しかけやすい気がするし、向こうから話している感じが増えたかな。まあもうすぐ一年近くの付き合いになるし、自然な事なのかもしれないが」
ルークは「他に何か気になった所はあるか?」と聞こうとしたのか、何か口にするのを言い留めた表情をした後「そうか、ありがとう」と口にした。
それで話は終わりなのかルークは椅子から立ち上がり、夕食を食べて来ると言い残し扉の方へと向かう。
「こういうのもなんだが、気になる事があるなら本人に訊いた方が早く解決したりもするぞー」
トウマの言葉に対しルークは軽く片手を上げて返事をし、そのまま部屋を後にするのだった。
――翌朝
――オービン寮 リビング兼食堂にて
「ふぁぁ~~~ねっむ」
トウマが朝食を机の上に置いて大きなあくびをしていると、クリスが朝食を持って声を掛けて来る。
挨拶の後、そのままクリスはトウマの前に座り朝食を食べ始める。
「あれ、クリスって朝はトースト派じゃなかったけ? そんなガツガツする肉とか食べてたっけ?」
少し寝ボケながらトウマが訊ねると、クリスが手を止めて答える。
「リハビリの時から力が付くようなもの食べなさいって言われて。それから朝はいようにお腹が空くようになって、少しでも体力になるもの食べてるんだよ」
「あ~そういうこと」
そういいながらトウマも、似た様な朝食で肉を口に運ぶ。
そこへマックスが通りかかり、二人の朝食を目にし「うぷっ」と声を出す。
「何だよマックス今の」
「いや~朝からよくそんな脂っこいの食べられるなって思ってさ。しかもクリスまでさ」
「いいだろ人が好きで食べてるんだからよ」
「そうだね。悪かったよ」
すると後方からケビンが合流して来て、そのままいつもの定位置へと向かって行く。
二人が立ち去った後、クリスがふと食事の手を止めてトウマに問いかける。
「そういえば、ルークの姿がないけど一緒じゃないの?」
「朝起きたらもういなくてな。どっかで訓練でもしてるんじゃないかって思う。試験も近いしな」
「へ~一人でやってるの?」
「さあ? そこまでは分からないな。場所も寮でやってたり、学院のグラウンドでやってたりと様々だからな」
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