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第470話 作戦会議場

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「やっと学院が見えて来たぞ」
「何か人だかり出来てない?」
「とりあえず行けば分かるでしょ」
「急ぐぞ、諸君」

 そう口にしたのは、私たちの先頭を行くデイビッドであった。
 現在私たちは、デイビッドを含めルークたちと共にイベント会場ではなく学院近くまでやって来ていた。


 ――遡る事二十分前。


 私たちは舞台裏で、箱の中で縛られているデイビッドを見つけ、縛られていた箇所を解き箱の中から出す手伝いをし事情を訊いた。

「というと、デイビッド副学院長はマイナ学院長に拘束されて後に意識を失って、次に気付いたらその箱に閉じ込められてたと?」
「ええ、そうなりますね」

 デイビッド曰く、先程のバベッチの映像が始まった後にマイナの所へと向かった時に突然魔法で拘束され、意識を失ったと語った。
 意識を失う前にマイナが学院へ急がなければと口にしていたのは覚えており、これまでの状況も含めデイビッドは現状を把握するのならマイナに会いに学院へと向かい話を訊くのがいいと提案した。

「マイナ学院長がデイビッド副学院長にそんな事をした理由が分からないね」
「その行動からして学院長は、こうなる前にこんな状況になると分かっていた行動したという事じゃないか? デイビッド副学院長の件は分からないが」
「とりあえず、俺たちが置かれている状況もデイビッド副学院長の件もどっちも学院に行けば何かしらは分かるんじゃないか?」

 フェルトがそう皆の口にした事を簡単にまとめ、提案するとデイビッドが賛同する。

「諸君らの状況も理解している。だが、この場で散り散りになり行動するのは賛同できない。学院に関わる事であるならば、事態を見極める必要がある」
「デイビッド副学院長もこう言ってるし、とりあえず皆で学院に行こう」

 そこでトウマがそう告げると、ルークも「そうだな」と賛同しこの場で悩んでいるよりかは、事態解決の手掛かりにも状況把握も行える学院へと私たちは向かうことに決めたのだ。
 そうして私たちは急いで学院へと向かい、到着した。

「どういう事だよ、これ」

 学院の前には何故か教員たちや学院生たちが周囲に集まっており、更には学院全体に結界が張られており、中へと入れない状況であった。
 その光景に私たちは息を整えながら驚いていると、デイビッドだけは正門へと向かって生徒をかきわけて進んで行く。

「学院長は? マイナ学院長はいらっしゃるか?」

 生徒たちも含め教員たちがデイビッドの声に反応し、デイビッドの姿を見て数人の教員が驚く。

「デ、デイビッド副学院長!? どうしてこちらに?」
「学院内にいらっしゃるのでは?」
「何を言っているのだ。私は学院長と共にイベント会場にいたぞ。それより、マイナ学院長を見ていないか?」

 デイビッドの返答に困惑する教員たちの所に、学院の外周を回ってマイナと数人の教員が戻って来た。
 それを見つけデイビッドはマイナの元へと近付いて行くと、マイナの周囲にいた教員は驚いていた。

「マイナ学院長」
「っ、デイビッド副学院長」

 マイナは少し驚いた顔をしたが、遠くにルークたちの姿を目にしデイビッドがこの場にいる状況を理解する。
 するとマイナは周囲にいた教員に、正門の方にて警戒を続けるように指示すると教員たちは離れていく。

「私の件は後回しでいいですが、状況を教えていただけますか?」
「ええ。では、貴方と共に来た彼らも呼んで向こうで話しましょう」

 その後私たちの元にデイビッドがやって来ると、この場から少し離れた天幕内にてマイナから状況について説明してくれると伝えられ、私たちはその場から移動した。
 天幕はイベントの為に、荷物を一時的に置く様として作っていたものだったが、現状は作戦会議室の様になっていた。
 中は急きょスペースを確保したのか、荷物などが端にやられており中央部に机が置かれており、そこには王都の全体地図が広げられていた。

「マイナ学院長ここは?」

 トウマの問いかけにマイナは「作戦会議場ですよ」と答えた後、ルークが続けて口を開く。

「どういう状況なんですか?」

 そしてマイナが簡易的に、現在起きている学院の状況を話し始めた。
 現在学院の全体は何者かによって生成された結界に覆われており、中への侵入は不可。
 学院外周を確認し結界の抜け道なども数名で確認したが、それも現在見つかっておらず正門付近は教員により一時的に封鎖状態にしていた。
 学院生たちも既に異変には気付いているが、これも現在行われているゲリライベントの一環だと思っている者が大半だが、時間が経つにつれそうではなくなるだろうとマイナは口にする。
 内部では本日開催していた学院案内の参加者と数名の女子学院生が取り残されている事は確認できており、更にはそれまで共にいた教員の証言によるとデイビッドが裏切り者とし侵入者と共に内部にいると明かした。

「え? え? いや、デイビッド副学院長はここに」
「そうですよ、ここにいますよ。え?」

 とデイビッドも驚き反応に困っており同じ様に皆が混乱する中で私は、これはオービン誘拐事件に起きたタツミの偽者と同じなのではと思っていると、ルークも似た様に考えていたのか軽く目が合い頷いた。

「私たちの目の前にいるデイビッドは本物だ。中にいるのは、たぶんデイビッドの姿をした偽物だろう」

 そこでデイビッドは王都襲撃時に学院で戦闘したオービンの事を思い出し理解する。
 そのままマイナは、結界が張られる前まで学院内にいた教員の話を私たちに共有してくれた。

「気付いたら学院の外だったとか、何だよそれ」
「それじゃ、俺たちが見せられたあの学院内映像は嘘じゃなかったって事か?」
「おいおい、じゃ速くぶっ倒しに行かねえとやばいじゃないかよ!」
「どういう事? 学院内の状況を知っているの?」

 そこで私たちはマイナにルークたちが置かれている状況を改めて説明した。
 各所にて発生している結界と、王国軍隊長から解除コードを入手する事、更にはそのコードにて学院内部にて爆発物を付けられている皆を助けられると簡単にルークたちが説明した。

「バベッチの奴……何てことを」

 そうマイナが呟いた後、ルークたちの方に視線を向ける。
 内部にいた教員からの証言と合わせ、その可能性が濃厚だと判断したマイナは解除コード奪取の意志を決める。

「現状こちらは内部に入れませんが、あのカウントダウンは無視できなくなりました。バベッチがこれを仕組んでいるのなら、その発言通りルークさんたちにしかその資格はないのでしょう」
「それじゃ、彼らに」
「ええ、そうなりますデイビッド副学院長。本来は私たちが出向きたい所ですが」
「話の途中で申し訳ないのですが、いいですかマイナ学院長」

 と、マイナがそう口にしていると突然、天幕内に入って来て会話に割って入って来た人物がいた。
 その場の全員が声の主へと視線を向けるとそこにいたのは、タツミであった。
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