上 下
468 / 564

第467話 箱の中身

しおりを挟む
「何なんだよアイツは! 好き勝手言いやがって!」

 ダンデが離れた場所で近くの大きめな箱を力強く殴りつけると箱の上に積んであった荷物が、殴った衝撃でいくつか地面に落ちる。
 黙り込んでいたルークたちの方を見てダンデは声を掛ける。

「何黙ってるんだよ、お前ら。もうやる事は決まってるだろ? アイツに一泡吹かせに行くぞ」
「ダンデ何処に?」
「何処って決まってるだろスザク、結界張られている所見つけて隊長倒すんだよ!」
「いやいや、こういうのは王国軍に任せるべきだろ」
「その王国軍の隊長が協力してるんだぞ? 任せるもなにもないだろうが!」

 スザクの発言にダンデは止まらずにその場から立ち去ろうとしたが、ルークがダンデを呼び止める。

「何だよルーク」
「少し落ち着け、ダンデ」

 ダンデはその場で振り返りルークの方へと近付いて行き、胸ぐらを掴んだ。

「落ち着け? 落ち着いてどうなるんだよルーク! お前も見たろあの映像。俺たちの行動に人の命が掛かってるんだぞ! 時間も限られてるんだ、悠長にしてる暇はねえだろうが!」

 ルークはダンデに捕まれながらも慌てる様子はなく言葉を聞いていたが、周りはダンデがこのままルークに殴り掛かるのではないかとダンデを離そうと間に入ったりし始めるとルークが口を開く。

「ダンデ、そもそもさっきの映像が本当かどうかも俺たちには分からないんだ」
「あれが嘘だっていうのかよ!」
「その可能性もあるっ話だ。そもそも、あのバベッチと名乗った相手が特にこだわりもない俺たちにこんな事をさせる?」
「そんなのアイツの気まぐれだろうが! そんな口ぶりだったしな」
「それに王国軍があんな奴と協力してるとは思えないし、判断材料の情報が足りてない。まずは状況を把握するのが――」
「だから! そんな事してる間に、誰かに何かあったらどうするんだよ!」
「事態を把握して動いた方が、むやみに動くよりもましだろ!」
「とりあえず何処かにいる隊長を倒して、あの時間を止めるべきだろ! それから事態把握してもいいだろが!」
「お前な王国軍の隊長がどれだけ強いか分かってるのか? 俺たち学院生が相手になる訳ないだろうが!」
「そんなのやってみないと分からないだろうがよ!」
「相手は、日々訓練しているんだぞ? 俺たちとは環境が違うんだ! そこでまずは判断出来るだろうが!」

 ルークとダンデは互いに止められながらも、言い合いをし始めてしまい皆も「止めろ」と二人を落ち着かせようとするが一向に落ち着く気配がなかった。
 ちょっと、ちょっと、こんな所で言い合いしてる場合じゃないんじゃないの?
 私もどうしていいか分からないものの、ひとまずは二人を止めるべきだと思い皆と同じ様に間に入った時だった。

「お前らうるせーーー!」

 そこで急に大声を出したのは、トウマだった。
 思わぬ出来事に私たちも含めルークとダンデも驚きトウマの方へと視線を向けた。

「はぁー、はぁー、もう分けわかんねえよ、これ」
「ト、トウマ?」

 私が声を掛けると、トウマは両手で自身の髪をぐちゃぐちゃにした。

「分けわかんねえ上に喧嘩までするなよ、お前ら……俺は頭もキレないし、力も凄くない。でもよ、ここにはそれぞれに凄い奴が揃ってるんだ。反発するより合わさった方がもっと凄くなるだろ? だから、そのだな、えーと……」
「皆でどうするべきか、話し合いましょうって事でしょ?」
「その上で、この人数なら分担して多くの事は出来るだろうね。そういうことだろ、トウマ?」

 言葉に詰まったトウマにスバンとロムロスが続けてトウマに訊ね返す。

「え、あ、ああ。そう! そういうことよ! うん」

 トウマは慌てて二人に話を合わせるように返事をすると、二人は小さく笑う。
 ダンデは「何かそれ、言わされてないか?」と呟きルークはその間に大きく深呼吸をしていた。

「ち、ちげえよ! 俺もそういう事がいいたかったんだ!」
「そういう事って、お前な……いや、何か今の事で気が抜けたわ。頭に血が上り過ぎてたかもしれない。ルーク、つっかかって悪かった」

 トウマがキッカケでダンデが落ち着きルークに対して謝罪すると、ルークも「俺もあんな事を言いながら冷静じゃなかった」と口にし謝罪するのだった。
 その後リーガとライラックがトウマを軽く肘で突き「やるじゃん」などと声を掛けたり、シンリたちもルークとダンデが落ち着いた事に安堵の息をつく。
 だが、私たちが置かれている状況が変わった訳ではないので改めて、どうするべきなのかの話し合いを始めようとすると先程ダンデが殴りつけた箱がガタガタと動き始める。
 突然動き始めた箱に、私たちは少し体を引いて見つめていると動きが大きくなり私の方へと倒れて来た。

「うぁ!? 倒れたぞ!」
「もしかして何か凶悪な動物とか入ってたりするんじゃねぇか?」
「これも、あのバベッチとかいう奴の仕業だったりして……」

 シンリたちが後ろで慌てていると、倒れた箱のふたが取れ中身が見えて私たちは目を疑うとトウマが最初に驚きの声を上げた。

「デ、デイビッド副学院長!?」

 なんと箱の中には、何故か口と両手足首を縛られたデイビッドが私たちに何かを訴える様な目をして、箱の中でもぞもぞとしていたのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「思ったり飛び散ったな」

 そうバベッチは口にしながら、服についたデイビッドであった物を払った。
 一方でジュリルたちは、目の前でデイビッドが爆散した光景を目の当たりにし完全に硬直してしまっていた。

「(何ですの? ……今デイビッドが破裂しましたわよね?)」
「(え、何? 何が起きてるの?)」
「(デイビッド副学院長が……爆発した……)」

 するとミュルテが自身の近くまで飛んで来て、地面に落ちていた物体を見つめていると、とある変化に気付く。

「(……あれ、何か動いて、る?)」

 直後周囲に大小とバラバラに飛び散った物体の色が、突然色あせ始める。
 そして生き物の様に一点の場所に向かって、動き始めるのだった。
 モランはその光景を目にすると、気味悪くなり一歩下がり手で口元を覆う。

「何なの、何なのよこれ」

 ジュリルたちも目を疑いながら、その光景をただ見てると物体がバベッチの真横に集まり始め、一つの塊になって行く。
 その段階で先程までの物体は泥の様に変わっており、塊が大きくなるにつて形が上に伸びて行き人の形へと変わり始める。
 そして、完全に人の形になると泥の塊が一気に剥がれ落ち中から爆発により弾け散ったデイビッドが無傷の状態で姿を現すのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~

平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。 しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。 このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。 教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

せいめ
恋愛
 婚約者の不貞現場を見た私は、ショックを受けて前世の記憶を思い出す。  そうだ!私は日本のアラサー社畜だった。  前世の記憶が戻って思うのは、こんな婚約者要らないよね!浮気症は治らないだろうし、家族ともそこまで仲良くないから、こんな家にいる必要もないよね。  そうだ!家を出よう。  しかし、二階から逃げようとした私は失敗し、バルコニーから落ちてしまう。  目覚めた私は、今世の記憶がない!あれ?何を悩んでいたんだっけ?何かしようとしていた?  豪華な部屋に沢山のメイド達。そして、カッコいいお兄様。    金持ちの家に生まれて、美少女だなんてラッキー!ふふっ!今世では楽しい人生を送るぞー!  しかし。…婚約者がいたの?しかも、全く愛されてなくて、相手にもされてなかったの?  えっ?私が記憶喪失になった理由?お兄様教えてー!  ご都合主義です。内容も緩いです。  誤字脱字お許しください。  義兄の話が多いです。  閑話も多いです。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...