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第442話 呼び出した人物の正体

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 それから私たち第2学年全生徒は、学院長の話を聞く場所として指定された所へと集まった。
 指定された場所は最近では3年生お疲れ様会を行った円形状の建物であった。
 そこに男女全員が集まり、二階にも生徒が上がっていた。
 基本的には寮ごとにまとまる様に指示されており、周囲には教員たちもおりその中にはタツミの姿もあった。
 私も寮の皆と合流し学院長が来るのを軽く話ながら待っていた。
 周りもざわざわしていると、遂に学院長のマイナが副学院長のデイビッドと共にやって来る。
 そのまま舞台へと上がると集まった学院生が一斉に静まり返る。

「皆集まっているね。それじゃ、早速話を始めるよ」

 マイナはそう言って、まずは私たちも既に知らされた王都襲撃事件についてを簡易的に口にし始めた。
 その内容は修学旅行最終日に訊いた内容を分かりやすく、短くしたものであった。
 改めて皆の中でどういった事件であったかをマイナは王都の地図を映し出しながら説明する。
 そしてある程度話し終えた所で、今回の学院側としての被害などを口にし始めた。
 これに関しては私たちも初めて聞く話であり、何が起こっていたのかを知る機会となったがマイナが口にした内容に大半の皆は驚きを隠しきれていなかった。
 その時語られた内容は、オービンに化け全く見分けがつかず侵入された事や、その際にエメルやスニークが死にかけた話、そして現在入院している寮長や副寮長の理由に呼び出しされている者についてと、マイナは全てを話すのだった。

「私から皆に伝えられる話は以上だ。これが今の状況であるが、決して悪い状況ではないと断言はできる。王都も復興し始め、生徒の死者もいない。驚く事や整理出来ない事かもしれないが、これがすべてだ」

 マイナの言葉に皆は静まり返る。
 するとそこで副学院長のデイビッドが口を開く。

「何かこの場で質問等ある者はいるか? 寮やクラス事に意見をまとめて代表者が訊くでも構わない」

 デイビッドの言葉に皆はざわざわとし始めると、そこで一人手を上げた者がおり、デイビッドがその者の名を口にした。

「では、ルーク・フォークロス。質問を」

 その名が部屋中に響き、皆が一斉にルークの方を向き、私たちはまさかルークがここで質問するとは思わず驚いてしまう。
 ルークは周囲の視線など気にせず口を開く。

「どうして俺たちにまで全ての情報を開示したんですか? する必要は、なかったんじゃないんですか?」
「確かにそうだな。だが、仮に隠していても知られる事だ。ありのまま起こった事を伝える事で、皆の意識も変わるだろ。まぁ、いい事だけではないのは分かっているが、知るべきだと私が判断し皆にこうして話したんだよ。これで質問の答えになるかな?」
「……はい。ありがとうございます」
「では、他に質問がある者」

 と、デイビッドが口にすると新たに手を上げる生徒がいた。
 デイビッドはルークと同じ様にその生徒の名を口にすると、その者が質問を始めそれに対してマイナが答えるというやり取りが行われた。
 その後も同じ様に次々と出る質問に対し、打ち切る事はせずに全てに対しマイナは答え続けた。
 これから外出などはどうなるのか? 授業は通常通りに進むのか? また事件が起こる可能性は? 対策は何をしている? 入院している人の状態は? などなどの質問にマイナは全て答えたのだった。
 そして遂に質問が出なくなった所で、デイビッドがマイナの方を軽く見てマイナが頷くのを見て質問を受け付けるのを終了した。
 既にマイナが説明をした時間の倍は質問に答えている時間となっていた。

「ひとまずは安心や納得をしてくれたならばよかった。また何か訊きたい事がある場合は、各担当教員に相談して欲しい。これでこの集まりは終了とする。まだ修学旅行の疲れがある者はしっかりと休むように。明日から通常通り授業開始で、来月には最終期末試験もある。大変な時期だが、体調管理だけはしっかりするように。以上」

 そしてマイナはそのまま舞台から降りて行き、デイビッドも後を付いて行き教員と少し話した後二人はそこから立ち去って行った。
 その後教員が舞台の上から再度、本日の集まりの終了を告げ流れ解散となるのだった。
 皆不安もある一方で、学院長があそこまで全て答える姿に詳しく知れて良かったという者や、モヤモヤが解消したと口にする者もいた。
 私は皆と一緒に寮へと帰ろうと歩き始めるとトウマに軽く呼び止められる。

「どうしたんだ、トウマ?」
「ちょっと付き合ってくれるか?」

 するとトウマの近くにルークもやって来たのだ。
 何? 何に付き合わされるの私?
 私は何も分からず少し不安そうな顔をしていると、トウマが一度外に出ようと言い出し皆とは逆方向に向かって行く。
 とりあえず何か関係があるなのだろう思い、その後を付いて行く。
 建物から出て少し裏手に向かって行くとそこにはタツミが待っていたのだった。

「タツミ先生!?」

 私は驚いて大きな声を出してしまうが、トウマは直ぐに「しーっ!」と静かにする様にジェスチャーして来たので、私は両手で口を塞ぎ「ごめん」と小声で謝った。
 その姿にタツミは小さくため息をつくのだった。

「その驚き方、俺の事話してないなトウマ」
「っ……すいません。とりあえず連れて来る事で精一杯になってました」
「えっと、すいません。何で俺は呼ばれたんですか?」

 するとタツミが私の問いかけに答える前に一つ訪ねてきた。

「クリス、今日少し時間あるか?」
「特に予定はないですけど」
「ならこれから、オービンたちの所に行くから付き合え」
「……!? っ!?」

 私は驚き声を上げそうになったが、咄嗟に堪え顔だけで驚いた表情をしタツミやルークたちの方に視線を向けた。

「ルークは分かるけど、どうして俺まで? もしかして、トウマも行くのか?」
「何だかご指名らしんだよ」
「え? 指名?」

 トウマの言葉に首を傾げるとタツミが答え始める。

「病院に居る奴から、お前らに来て欲しいと言われてるんだよ。理由はそいつらから聞け。それじゃ時間も限られてるし、早速行くぞ」
「え、ちょ、ちょっと」

 タツミは私の言葉など気に留めずに歩き始める。
 その後をルークは付いて行き、私はトウマに「誰に呼ばれているか知ってるのか?」と訊ねるとトウマは首を横に振る。

「俺も分からんのよ。とりあえず、もう行ってみるしかないよ。何話されるのか分からなくて怖いけど……はぁー」

 トウマは軽くため息をついた後ルークたちの後を追って歩き始める。
 トウマも分からないのか。ルークは知ってるのかな? いや、あの感じだと知らないか? ……考えても仕方ないし、とりあえず、行くか。
 私も腹を決め急ぎ足でタツミたちの後を追った。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 あれから学院を出て王都の東側にある病院へと私たちは到着した。

「ここだ」

 タツミはすたすたと到着した病院へと入って行く。
 道中で誰に呼ばれているのかをタツミに再度訊いたが、自分の口からは言えないの一点張りで結局誰か分かる事はなかった。
 タツミの後を追い、私たちも病院へと入り病棟へと向かう。
 そして病棟三階に向かい、奥の一室前で足を止めた。

「ルークとトウマはこの部屋だ」
「あれ、俺は?」
「クリスは別の場所だ。俺はクリスの案内するから、二人はそのまま部屋に入っていいぞ。中であいつが待ってる」

 それだけ口にしタツミはその場から離れて行き、私は二人に「また後で」と声を掛けタツミの後を追った。
 ルークとトウマは私とタツミが去って行くのを見送るとルークが目の前の扉に手をかける。

「誰の部屋なんだ? いや、ルークがいる時点で何となく察せるが、何で俺もここ?」
「さぁな。部屋にいる本人に訊けばすぐ分かるだろ」
「そうだな。よし、開けていいぞ」
「お前に言われなくても開けるよ」

 そしてルークが扉を開け部屋に入ると、手前に一つベッドがあるがそこには誰もおらず、奥にカーテンで区切られている場所を見つける。
 二人はカーテンの奥へと向かって歩いて行き、カーテンから覗き込む様に顔を出すとそこにはオービンがベッドの上で身体を起こして待っていた。

「来たか、ルーク。それにトウマ君も」
「兄貴」
「オービン先輩! お久しぶりです。大丈夫なんですか?」

 トウマの心配する問いかけにオービンはにこやかに「今はもう大丈夫」と答えると、トウマは安堵の息をつく。
 その直後、その奥のカーテンからミカロスが現れトウマは驚く。

「ミミ、ミカロス先輩!?」
「そんなに驚くかい?」

 ミカロスは両腕を包帯で巻かれていたが、全く動かせないという状態ではなかった。

「ミカロス先輩は奥のベッドに居たんですか?」
「ああ、俺はオービンと同じ部屋でな。あともう一人いる予定だったが、色々あってここは二人だけなんだ」
「そうだったんですか。すいません、変に驚いてしまって」

 トウマが謝罪するとミカロスは「気にしなくていい」と口にして、近くの椅子に座った。

「とりあえず、立ち話もなんだし椅子に座りなよルーク、トウマ君」

 二人はそのままオービン横に置かれた椅子に腰をかける。

「さてと、修学旅行はどうだった?」
「え?」
「え? っじゃなくて、楽しかったかい? 寮の皆と旅行なんて一度きりだからね」
「それはもちろん楽しかったですけど……あの、今日呼ばれた理由ってこんな感じの話をするためですか?」

 トウマは恐る恐る訊ねると、オービンは「半分正解」と返す。
 するとそこでルークはなにやら四つ折りした紙を取り出し、それを広げてオービンに見せる。

「もう半分は、今回の事件についてだろ、兄貴?」
「……ああ、その通りだルーク」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 一方その頃私は、ルークとトウマと別れてタツミと病棟を一階上へと向かいとある個室の前へと案内された。
 その階にはほとんど人がおらず、少し不気味な雰囲気が漂っていた。

「あの~タツミ先生、何かこの階全然人いなくないですか?」
「この階は王国軍専用の病棟階だからな。負傷した者などは、ここで治療や入院をする場所になっているんだ」
「で、何でそんな所の一室に俺を案内するんですか?」

 タツミは私の問いかけに何故か無言で扉に手をかける。

「何で無視するんですか? 怖いんですけど! 誰に俺呼ばれるんですか? 大丈夫なんですか?」
「はぁー大丈夫だ。お前と話したい相手がここじゃないと出来ないだけだ」
「俺王国軍に知り合いとか……もしかしてお兄ちゃん?」

 と場所や状況からあり得そうだと思い、小さく口にするがタツミは「お前の兄貴ではないぞ」と口にし扉を開ける。
 部屋の中はカーテンで区切られており奥は手前のカーテンがかかっており誰がいるのかは、ここからでは分からなかった。
 タツミはそのまま奥へと進んで行くが、私は未だに部屋の前で止まっていると、タツミが「早く来い」と急かしてくる。
 私は怖さがありつつも、ゆっくりと部屋へと入り奥へと向かう。
 そしてカーテンを越え奥の所に座っている人物と窓の外を見ている人物の二人が目に入る。
 両方とも女性であり、先に座っている方の人物が私に声を掛けて来た。

「やっと来たね、クリス」

 一瞬誰だか分からず首を傾げると、その女性は「この姿じゃさすがに分からないか」とボソッと口にすると一瞬で姿が変わり、見た事のある特徴的な魔女帽子でその人物が誰だか分かった。

「リリエルさん?」
「そう。こないだぶり」

 私は改めてリリエルに挨拶してから、そっとまだ窓の外を見ている女性の方へと視線を向けた。

「ほら、いつまで外なんか見てるんだい? クリスも困っているぞ」

 するとその女性が「そうね、ごめんなさい」と口にし振り返り私の方を向いた。
 そこで私は目の前にいるまさかの人物に、自分の目を疑ってしまう。

「ティ、ティア女王様!?」
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