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第411話 地元のことは地元の人に訊け

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「え、リーベストって、あのシリウス魔法学院のリーベスト・ドラルド!?」
「おう、よく知ってるなお前。えーと、名前が分からなくて申し訳ないが、その通り。俺があのシリウス魔法学院で有名なリーベストだ」

 トウマの驚きに対して、リーベストは胸を張って答える。
 それ以外の皆もまさかの人物に驚いてしまい、声が出ずにいた。
 そこへ先程遠くから声を掛けて来た、同じ学院でリーベストのペアでもある二コルがやって来る。

「リーベストお前な、あんな所で変に飛び上がるな。驚くだろうが」
「悪い、悪い。でもそれよりよ、見ろよ二コル。ルークだぞ、オービンの弟がここにいるんだぞ! 凄いぞ! テンション上がるんだが!」

 二コルはそこで初めて、私たちの存在に気付き声を掛けてくれる。

「ルークにクリスは、久しぶりだな。対抗戦以来だな。他の皆は初めましてかな。俺は二コル・ノーザンって、悠長に挨拶してる場合じゃなかった」

 すると突然二コルは背後を振り返ると、先程の人だかりがこっちに向かって来るのが目に入る。

「リーベストにルークたちも巻き込んですまないが、とりあえず今はこの場から離れるから付いて来てく――」

 そう二コルが言いかけた次の瞬間、リーベストが私の腕を急に掴みヴァデック塔の上る入口へと向かって走り出したのだ。

「!?」
「とりあえず細かい話や積もる話は、登ってからにしようか! それじゃ行こうか! クリス! 先に行くぞ、二コル。それにルークたちも!」
「え、あっちょ、ちょっと!」

 私はそのままリーベストに引っ張れるままに、ヴァデック塔を上る入口へと向かう。
 ヴァデック塔は基本的に上るにはチケットを購入しないと、内部には入れない様になっているのだが、未だ私たちはチケット購入はしてない為、このままでは入れないのだ。

「あ、あの! まだ俺たちチケット買ってないんですけど!」
「あーそれなら大丈夫。俺チケット沢山持ってるから」
「え、どういう事ですか!?」
「話せば長いんだけど、先週街でくじ引きがやっててさ、それが無性にやりたくなって街で色々と買い物してたわけさ。で、買い物してくじ引き券を沢山集めて二コルと一緒にくじ引き会場回ったんだよ。そしたら行く所、行く所でヴァデック塔の入場チケットがあったんだよ。まあ嬉しんよ、嬉しんだけど同じのばかりで消費するのも大変でさ、有効期限もあったしここ数日毎日ヴァデック塔に来てるって訳」

 本当に話が長かった。でもチケットを沢山持ってる理由は分かった。
 そしてあっという間に入口に到着すると、リーベストは持っていたチケットを全て取り出して係りの者に渡す。
 係りの者も急に沢山のチケットを出されて焦りつつも、全て受け取る。

「えーと、俺とこいつで2枚で。後は、あっちから来る二コルにルーク、後3人いたで合ってるか?」
「俺、ルーク、トウマにシン、モーガンだから……合ってはいます」
「よし! じゃ7枚はあるよな。いやーここで一気に消費出来るのは嬉しいね。無駄にしなくて済むし。さすがに、もう二コルと二人だけで来るのに飽きてた所だったんだよね」

 そうなりますよね、ここ数日毎日来ていれば。
 そこへ遅れてルークたちが追い付いて来る。

「リーベストさん! 急にうちのクリスを引っ張って行かないでくださいよ!」
「はぁー、はぁー、まさか急に走る事になるとは想定外過ぎる」
「思い付きで動くな、リーベスト。こっちが巻き込んでいるんだぞ」

 するとそのタイミングで、係りの者がチケットの枚数確認を終え半券を渡すと、リーベストが先に入って行き私も再び連れられて行く。

「早く行くぞ、お前ら! 遅れるなよ!」

 そんなリーベストの言葉に、開いた口が塞がらない状態になってしまう。
 二コルは小さくため息をついた後、ルークたちに謝罪し「とりあえず付いて来てくれるか?」と問いかけ、ルークたちはここでクリスを置いて行く訳にはいかないので頷き二コルと共にリーベストの後を追うのだった。
 その後ろからやって来た人だかりは、その入口を通れるチケットを持っていなかった為、結果的に逃げ切る事に成功するのだった。
 私たちはというと、ガイドレールに沿って魔力を流して上下に垂直方向に動くかご事、魔力式昇降機に乗り込みゆっくりと上へと向かっていた。
 魔力式昇降機は、落ちない様に箱状になっており外も見えるようにということで一部目線の高さがガラス張りになっている。

「うおお!? すげぇ! 自動で動いてるぞ!」
「君は魔力式昇降機に乗るのは初めてだね」
「あ、はい!」
「これはね、自動ではないんだよ。地上と上階、それに各中間層で魔力の流れを管理する者や、魔力調整に優れた者などが安全に動かしているんだ」

 トウマに対してモランが丁寧に魔力式昇降機について説明をし始めた。
 そもそも魔力式昇降機自体珍しいもので、王都には未だない。
 理由としてはその専門家が多くない事や未だ新開発されてた物であるという面がある為であった。
 現状、ベンベルにもこの一機しかなく安全に運用出来ているから使われているが、基本的には一部の者しか乗れないのである。
 ちなみにこの中でリーベストは、くじ引きで当てたチケット全てがこの魔力式昇降機に無料で乗れるチケットである事を明かした。
 更には、魔力式昇降機側で上ったヴァデック塔は、一般でチケットを購入して上って来る人が来れない場所でゆっくりと過ごせ、ベンベルの街を一望出来ると教えてくれる。
 その話を聞き、シンがそんな凄い物を勝手に使って良かったのかと訊ねると、持て余してた所だったとリーベストが答え、二コルが変な騒動に巻き込んでしまったお詫びと答えた。

「それで、どうしてリーベストさんと二コルさんは、あんな風に人に囲まれてたんだ?」

 トウマが改めてその話題を切り出すと、リーベストが話し出そうとした所を二コルが間に割り込む様に説明し始めてくれた。
 元々ここへは、数日間通い続けておりその理由は、リーベストがくじ引きでチケットを当てただと話す。
 そして新年初めに、学院として街との交流の一環で催し物を行った事や、元々学院の人気は高い事から街の人から話し掛けられたりと、街を歩くとあんな風になっていると明かしてくれる。
 更にはリーベストはシリウス魔法学院内でトップであり顔的な存在である為、余計に人気があり人だかりが出来てしまうのだった。
 一応変装をして出ていたが、リーベストが面倒だと言って今日はして来なかった為、あんな風になっていたのだと二コルは説明してくれた。

「だって変装とか面倒だし、俺はただ自由に街を歩きたいだけだし、来たらとりあえず対応すれば何とかなると思ってたんだよ。それか、二コルが何とかしてくれるとかな」
「そういう所だ。人任せだし、後先考えてない。立場を理解しろ、リーベスト」

 反省しているのか分からないが、リーベストは「は~い」と返事をしつつガラス張りの所から外の景色を眺めていた。
 その後上層階へと到着するまでの間に、自己紹介を改めて行った。

「おおー! たけぇ~」
「ここは何回来てもいいな。二コルもそう思うだろ? ペリック門も見えるし、デューラン川も見える。それにリンダリック大通りもバッチリだ! 学院は遠くて見えないのが残念だが」

 トウマはリーベストと共に街の景色を堪能し、シンとモーガンもその後を付いて行き上層階からの景色を堪能する。

「改めて悪かったね、急に巻き込んでしまって」

 そう二コルが改めて謝罪して来たので、私は「いえいえ、こんな所まで無料で来させてもらったので」と返事をする。

「リーベストさんは、変わってませんね」
「ああ。学院生活が少なくなって来て、より自由奔放になりつつあって困ってるよ。そう言えば、ドウラに訊いたけどローデングスで会ったんだってね」
「はい。ラーウェンとドウラにはそこで偶然会い、案内を少ししてくれました」
「そうか。修学旅行でベンベルか。俺たちからすると俺たちが王都に行くような感じかな」

 二コルはそう口にした直後、何か思いついたのか私たちの方へと視線を向けて来た。

「ここで会ったのも何かの縁だし、ガイドでもしてあげようか? 穴場スポットとか教えてあげられるぞ。俺たちもこの後、街をふらつくだけの予定だったし」
「いいなそれ! ナイスアイデアじゃん二コル! せっかくの修学旅行なんだから、面白い所とか教えてあげるぞ! 地元のことは地元の人間に訊くのが一番って言うしな。どうだ、最高のガイドじゃないか?」

 急にリーベストも現れて、ガイド役を引き受けると提案される。
 私はどうするべきか分からずルークの方を見ると、ルークも私の方を見た後にトウマに声を掛けて判断を求めた。

「え! ガイドやってくれるんですか! それは嬉しいですけど、俺たちに付き合わせてしまって申し訳ないんですけど……」
「そんな事気にするな! 同じ学院生同士じゃないか。学年は違うが、せっかくベンベルに来てくれてるんだ、満喫してもらえるのが一番だ。別に二コルの言う通り、俺たちは急ぎの用事はないしな」
「リーベストさん、二コルさん」

 そしてトウマが私たちにもガイド役を頼んでいいかを確認してから、やっていただけるならお願いしてもいいという事になり、トウマが改めてガイドをお願いするのだった。
 こうして、私たちの班に強力なガイド役が加入するのだった。
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