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第391話 諦めたって訳じゃない

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「ル、ルーク!?」

 突然声を掛けて来たルークに、クリスは目を丸くした。
 レオンは黙ったままルークの方を見ていると、ルークはゆっくりと近付いて来てレオンを流し見た後、クリスへと視線を向けた。

「探したぞクリス。こんな所に居たんだな」
「ご、ごめん……」
「とりあえず見つかって良かった」

 ルークはそう口にすると、手首に巻き付けていたペンダントを握りしめて魔力を流した。
 すると握りしめた拳から少し光が漏れだし、何度か点滅し始めクリスは何をしているのかと見つめていた。
 そして暫くすると点滅もなくなり、ルークも握り拳を開いた。

「ルーク、今のは?」
「ああ、今のでシンやモーガンにクリスを見つけた事を連絡したんだ。このペンダントは魔道具で、簡単に言うと魔力を流してもう一方の同じペンダントに光で連絡をとれるんだ」
「へぇ~そんな物があるんだ」
「一応トウマと俺でお前を探していて、トウマとは今手分けしている所だ。後で合流予定だ」
「そっか、俺がはぐれたせいで皆に迷惑かけちゃったね。ごめん。それと、ありがとう」

 クリスはそこで頭を下げて謝罪と感謝を伝えると、ルークが直ぐに頭を上げさせた。

「俺だけに言うな。トウマにシン、モーガン全員がいる時に言うもんだ」
「……うん、そうだね」
「それと、口調と一人称ごちゃになってるぞ」
「え、本当!? あれ? ちょっと立て込んだ話してたからかな……」

 そう呟きクリスは独り言の様に話し方を確認し出した。
 ルークはそのままレオンへと視線を向けると、レオンもルークに視線を向けていた。

「で、お前はどうしてクリスと一緒に居るんだ? 足止めでもしてたのか?」
「まさか。本当にクリスとは偶然ここで会ったんだ。僕は君たちが探しているだろうと思って、どうすべきかクリスと話していただけだよ」
「そうなんだルーク。レオンとは俺がここでどうするか考えていた時に偶然会って、一緒にどうすれば合流出来るかを考えてくれていたんだ」
「……そうか」
「(やっぱり疑っちゃうよね。そりゃそうだよ。ついさっきまで、クリスに関しての話をしたばかりで、次に会った時は二人っきりだったんだからね)」

 レオンはルークが思っているだろう気持ちを何となく察していた。
 狙っていた訳ではなく、本当に偶然出会った事を自分がルークに説明したとしても、余計に変な風に思われてしまうんではないかと思い、特に現状については質問されない限りは口にしない事にするのだった。
 そんな中クリスがルークに対してはぐれた後の話をし始める。
 レオンはとりあえずクリスの状況は解決したので、自分は立ち去るべきだなと思い立ち上がろうとした時だった。
 そこへ遠くから声を掛けて近付いて来る人物がおり、全員がその方向へと顔を向ける。

「あ、いたいた! って、クリス居るじゃん! それにレオンもいる」
「トウマ」

 そこへ小走りでやって来たのはトウマであった。
 トウマはクリスに駆け寄り「合流出来てよかった~」と安堵の息をつく。

「合流予定はもう少し後じゃなかったかトウマ?」
「ああ、そうなんだけどさ。向う側でクリスを探している時に、人にクリスの特徴を伝えて見ていないかと訊いていたら、ここの公園にいるのを見たって人がいてさ。で、こっちに来て見たらルークもクリスもいたってわけ」
「そうだったのか」
「いや~これで一安心だな。シンたちに連絡はもうしたのか、ルーク?」
「当然もうやってある」
「流石。で、何でレオンも居るんだ?」

 トウマの問いかけにはクリスがいち早く答え始めた。
 そのままクリスはこれまでの状況を簡易的に伝えて、トウマに説明し始めるのだった。
 それを見たルークが少し離れてレオンにアイコンタクトをして、クリスとトウマから少しだけ離れ二人だけで話し始める。

「何度も疑って悪いが、話したばかりで次に会ったのがこういう状況だからな。どうしても気になるんだ」
「だろうね。そうじゃないかと思っていたよ。でも、ルークが変に疑う様な事はしてないよ。それよりか、関係性が元に戻ったと言ってもいいね」
「? どう言う事だ?」
「そのままの意味さ。含みのある言い方をした内容の件で、クリスの誤解を解いたって事。つまり、僕とクリスは今まで通りの関係性に戻ったんだよ」
「自分から明かしたのか?」
「いや、クリスの方から問い詰められてね。悪い男になりきれず、そのまま話したってだけさ」

 するとそこでクリスとトウマが、離れて話している二人に気付き声を掛けて来た。
 二人はそれに気付き振り返るとレオンが「ちょっと二人だけで話したい事があってね」と返事をした。

「何だよ二人だけで話したい事って?」
「それは言えないよ、トウマ。もう終わったし、そっちに行くよ」

 レオンはそのままルークの真横を通ってクリスとトウマの方へと歩き出した時だった。

「でも、諦めたって訳じゃないから」

 そう最後にルークとすれ違う時に耳元で発して、ルークから離れてクリスとトウマの元へと向かった。
 ルークはその場で立ったまま、レオンがクリスとトウマと会話している姿を見つめていた。

「(諦めないか……何だか、吹っ切れたような感じだったな。何を話していたか分からないが、何かしらの進展があったと考えるべきか? いや、相手の事など考える場合じゃないか)」
「おーい、ルーク。何そんな所で突っ立ってんだよ」
「ああ、今行く」

 トウマにそう声を掛けられ、ルークは近付いて行くのだった。
 その後クリスたちは、そこでレオンとは別れて待たせているシンとモーガンと合流するのだった。
 クリスは改めて皆に迷惑を掛けた事と探してくれた事を口にした。
 皆はそこまで気にしておらず、無事に合流出来た事に安堵した表情を見せていた。
 それから、再びトウマ班として残り時間で回れる範囲の観光を続け、自由観光終了時間が迫って来た所で、ホテルへと戻り始めるのだった。
 ホテルへと戻る途中では他の班とも遭遇し、今日の観光の話で盛り上がりながらホテルへと辿り着き、ロビーにて担当教員が最終点呼をとり始める。
 点呼が終了すると、これからの話をされ夕食まで暫く自由時間となる。
 そうして時間も過ぎて行き、夕食も終わり各寮事にお風呂の時間となり、その後は就寝まで再び自由時間となるのだった。
 そしてその自由時間にルークは、ロビーのソファーに座って一人で時間を過ごしていた。

「(アリスの記憶は少しずつだか戻り始めているか。タツミが言うには、その記憶も不完全な物らしいが。ひとまず順調に回復しているでいいのか? もし、このまま記憶を全て思い出した時アリスはどうなるんだ? それは以前のアリスなのか? それとも今のアリスが昔の記憶を思い出した状態になると言う事か? それは、以前のアリスと同一人物と言っていいのか?)」

 ルークはそこで深くため息をつく。
 考えても医学知識があまりないという理由で、どうなるのかなど考えても分からないと首を軽く振る。
 これまでの関係性が一度ゼロになり、記憶という物だけがその証拠と言われ、今のアリスがそれを思い出したとしてもそれは本当にその時に共に体験したアリスなのかと深くルークは考えてしまっていたのだった。

「(このまま失った記憶は取り戻して欲しいとは思っている。が、それら全てを取り戻した後は……いやこの修学旅行中に、取り戻せるとも限らないか……)」

 と、考え事をして再びため息をつくとホテルのロビーに次々に人がやって来た事に気付く。
 するとその集団から一人の人物がルークの元へとやって来て声を掛けたのだった。

「お久しぶりですわ、ルーク様」
「っ! ジュリル」
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