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第381話 秘密の関係性

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「少し二人っきりで話がしたいんだが、部屋に入っても?」
「は、話ってここじゃだめなのか?」
「ああ、ここでは話せない」

 そう言ってレオンは少し強引に、クリスへと迫る。
 クリスは近付くレオンに驚き少し後ろへと下がってしまう。

「入ってもいいか? 大切な話なんだ」
「……わ、分かった」

 クリスはレオンの押しと勢いに負けて、そのままレオンを部屋に招き入れる。
 そのまま部屋の奥へと行き、クリスが改めてレオンに「大切な話って何?」と少し眉をひそめながら訊ねる。

「クリス、いやここでは二人だけだからアリスでもいいのか」
「っ!? ちょ、何でその名前――あっ」

 突然自分の本当の名前を口にだされて動揺したアリスは、自分で墓穴を掘ってしまった事に気付き声を出し頭を抱えてしまう。
 そんなアリスを見てレオンは「やっぱり」と呟く。

「(あー何してるのよ私! 自分で自分の正体明かすような事言ってどうすんのよ! どうする、どうするの? 正体バレたらやばいし、この人他のクラスの人だし)」

 と、アリスはレオンに正体がバレてしまい一大事になると焦っているとレオンが話し掛けた。

「アリス、一度落ち着いて。僕は君の正体を知っている側の人だ」
「え!?」
「その反応だと、やっぱり僕の事や関係性を覚えてないのかい?」
「っ……」

 レオンからの問いかけにアリスはどう答えるべきか悩み、その場で固まってしまう。

「アリス確認だけど、どこまで覚えていて何を知っているの?」
「……」
「もしかして話せないのか? それとも、口止めされてる?」
「……」

 アリスはレオンの問いかけに答えずずっと黙り続けていた。
 不用意に答えて状況を悪くするのは良くないとアリスは考え、黙り続けていたのだった。
 またレオンという人物の事をあまり知らないということもあり、今の自分の事を話すべきではないと判断した行動であった。
 するとレオンは少し俯き何かを考えた後、アリスへと近付き始めた。
 アリスは近付いて来るレオンに対して後退し始めるが、レオンはそのままアリスへとゆっくりと近付き続けた。
 その結果、アリスは部屋の窓側の壁まで下がりきってしまい、レオンはそこで片手をゆっくりとアリスの後ろへと付くとアリスの顔に近付いた。
 思いもしない展開にアリスの鼓動は早くなり、声も出ずに耳が赤くなっていた。

「(何、何何何何何何何!? どどど、どういう状況なのーー!?)」

 暫くそのままレオンはアリスを見つめた後、口を開いた。

「アリス、僕との関係も忘れてしまったんだね」
「?」
「それじゃ先に僕から話そう……僕と君は、秘密の関係だったんだよ」
「!?」

 そう口にするとレオンはゆっくりとアリスから離れた。
 直後、アリスは思わずレオンに問いかけていた。

「ひ、秘密の関係って?」
「秘密の関係は、秘密の関係さ。僕が君の正体を知っているのも、君が男装をして学院に居る事も知っているのもそんな秘密の関係だからさ」
「で、でも! そんなのルークやトウマは言ってなか――あっ……また私は」
「(なるほど、ルークとトウマはこの状況を知っていたのか。それであの日、変に庇った様子だったのか)」

 再び墓穴を掘った事に後悔するアリスを見つつ、レオンはアリスの様子が変だった事が気のせいではないと確信したのと同時に、そんなアリスを守っていた存在も知るのだった。

「今のアリスは以前とは違うって事で合ってるかい?」
「……はぁ~もうここまで自分で墓穴掘っちゃったし隠しても意味ないね。そうよ、今の私は記憶喪失らしいわ」
「記憶喪失……そうか」

 レオンはそれだけ口にして、暫く黙ってしまうが再び口を開いた。

「ルークやトウマが僕との関係性を今のアリスに教えていないのは当然さ。なんせ、誰も僕たちの関係性を知らないのだから」
「誰も知らないって、私と貴方はどんな秘密の関係だったの?」
「……そんなの男子と女子の秘密の関係なのだから、想像はつくだろ?」

 アリスはその言葉で何となく察して、顔が急に赤くなり視線を直ぐに逸らした。

「(えっ……えーー!? 嘘、本当に? そんなのってあり得るの? 私が? この人と!? そういう関係を持っていたのー!?)」

 その瞬間再び頭痛がアリスを襲う。
 更には今までで、知らない記憶が頭の中に浮かび上がった。
 それはどこか薄暗い場所で自分と誰かが向かって、告白の様な事をされている記憶だった。
 アリスはその記憶を見て、顔までは靄が掛かった感じで分からなかったが、もしかして目の前のレオンが自分に告白をして、それを自分が受け入れた記憶なんじゃないかと結び付けたのだった。

「アリス大丈夫かい? 頭が痛むのか?」
「う、うん。でも、もう大丈夫」
「タツミ先生の所に行くかい?」
「いや本当にちょっとした頭痛だから大丈夫。それより、今は貴方と私の関係についてよ。本当に私は貴方と、その、秘密の関係だったの?」

 アリスは最後の方だけ少し口をもごつかせてレオンに訊ねた。
 レオンは少し耳を赤くして俯くアリスを見て、そっと手をアリスの顎へと添えると、そのままゆっくりと自分の方へと顔を向けさせた。

「そうだよアリス。僕と君は秘密の関係だったんだ。でも、今の君に以前の様な秘密の関係性を強要はしない」
「え?」
「ただ僕は、今の君の助けになればと思って記憶を失う前のアリスとの関係性を口にしただけさ。自分の知らない自分の存在にどうしていいか分からず混乱してるんじゃないか?」
「……それは」
「僕も変に混乱させるような事はやるべきじゃないとも思ったけど、記憶が戻る一手段として昔の事を知れば、今のアリスも少しは楽になると思ってこうして二人っきりで話をしたんだ」

 アリスはレオンが自分の事を心配して取ってくれた行動だと思い、レオンもルークやトウマにタツミと同じ様に頼れる人だと思うのだった。

「アリス、でもこれだけは約束してくれ。ルークやトウマにはこの事は内緒にしてくれ」
「どうして? レオンも私の為に行動してくれたのに?」
「うん。以前のアリスと秘密の関係だと二人も知らないし、変に状況をややこしくしたくないんだ。これからはアリスと僕は、仲がいい学友だ。何か知りたい事があれば何でも聞いてくれ。君の事も教えられる事は教えるからさ」
「……分かったわ。本当は二人とも協力してくれるのが一番だけど、私の知らない以前の私とその、秘密の関係だったみたいだし、貴方にも少し頼らせてもらうわ」
「ごめんよ。こんな変なやり方になってしまって」

 そう言ってレオンはアリスに頭を下げて謝罪をした。

「頭なんて下げなくていいって。もう、今日こんなのばっか」
「似た様な事があったんだね。少し不快にさせちゃったかな。それじゃ今日はそろそろ僕は帰るよ。この状況を誰かに見られたら大変だしね」
「そ、そうね」

 そのままレオンは部屋の扉へと向かって行き、クリスは少し遅れてその後を追った。
 そしてレオンが扉に手をかけようとした時だった、扉が先に開きレオンの目の前にシンと何故かルークが一緒に居たのだった。

「「!?」」

 直後その場にいた全員が驚きの顔をしてから、一番最初に口を開いたのはルークだった。

「レオン、お前ここで何してるんだ?」
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