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第377話 城内観光

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「何でお前らここに?」

 ルークが驚きつつ訊ねると、ドウラが答え始めた。

「いや昨日の事がやっぱり心配でな。シンから今日の予定を聞いておいたんだ」
「まぁ、そういう訳だ」
「ごめんよルーク、僕の方でドウラにクリスの無事とかを教えるつもりで城の付近で待ち合わせをしていたんだ」

 シンはルークに事情を伝えていなかった事を謝る。
 ルークは「気にしなくていい」とシンを気遣った後、ラーウェンとドウラに対して自分の口からクリスの容体を改めて伝えた。

「そうか、何もなかったら良かった。真正面からぶつかってしまって心配してたんだ。本当に悪かった、クリス」
「あ、ああ。全然大丈夫」

 安堵するドウラに対して無表情のまま見つめて来るラーウェンに気付いたクリスは、目線を外し少し後ろへと下がった。
 するとそこへトウマが帰って来る。

「おーい、チケット貰ってき――って、何でお前らが居るんだ!?」

 すぐにシンが説明しようとすると、ルークが代わりに説明をするのだった。

「そうだったのか」
「ごめん。何か僕の勝手な行動で、こんな風になっちゃって」
「いやいや、そんな事ないから気にするなよシン。で、お前ら二人は平日なのにここに居ていいのかよ? 授業サボってるのか?」

 トウマは二人が在籍する、シリウス魔法学院がある都市ベンベルからここは離れている事を知っており、そう問いかけた。
 王都メルト魔法学院の学院生たちは修学旅行として来ているが、一般的には平日であるので普通の学院生なら授業が行われている日であるのだ。

「サボってはないぞ。うちの学院はこの前の休日に前倒しで授業をしてな、昨日今日と休みなんだ」
「学院の点検工事日程がズレた関係で、休みもズレたってだけさ」
「で、平日ならまだ好いているだろうと思って、気晴らしにちょうど催し物がやってるローデングスに来てたってわけさ」
「なるほど」

 ドウラとラーウェンの言葉にトウマが頷いて納得した。

「じゃ、クリスの用件の為だけにここまで来たってことだよな?」
「まぁそうなるな。でも、せっかく『ジュヴェリアヴァーベン城』まで行くなら、観光してから帰ろうかと話してこうして早めに会いに来たんだ」
「そうだよね。わざわざここまで来て、観光もしないで帰るのはもったいないよ」

 そう口にしたシンに、ドウラは「そうだよな」と返事をするとそのままラーウェンが観光に渋ってた話をし始めた。
 一方で、その話をトウマ、ルーク、シンの一歩後ろで来ていたモーガンは同じく後ろで聞いていたクリスへとふと視線を向けていた。
 モーガンは話を聞くクリスの態度がいつもと少し違って、どこか余所余所しい感じがして気になっていた。
 するとモーガンは癖でつい、右手を顔の近くまで持って行き、いつものポーズをして魔眼を使い魔力を覗こうとした。
 が、寸前で止まり許可もなく勝手に魔力を覗かない様に改めて心がけていたので、自制するのだった。
 その後、話の流れや雰囲気でドウラとラーウェンと共に『ジュヴェリアヴァーベン城』内の観光をする事になるのだった。

 城門を抜け、城内へと入ると広めの広場があり、そこから奥に遠目から見えていた『ジュヴェリアヴァーベン城』が目に入る。
 広場の周囲は城壁の様に囲われているが、そこにも窓も見え城の一部になっているのだった。
 そのまま広場から数段階段を上り、遂に『ジュヴェリアヴァーベン城』へと足を踏み入れると、左右にまずは道が分かれており進む順序は指定されていた為、左側へと進んで城内を周り始めた。
 戦争前はよく舞踏会などが開かれていた場所であったので、いくつもの客室があり、その数部屋は見れる様に解放されており、その当時の生活などが再現されていた。
 また、部屋ごとにランクもあったらしく豪華な部屋は広く置かれていた物などにも違いがあったのだと説明されていた。
 その後は、舞踏会が行われたとされる大部屋へと向かった。

 大部屋の天井には美しい紋様が書かれており、シャンデリアもつりさげれて、とても美しい部屋となっていた。
 だがこんな部屋でさえも、戦闘中には兵士が休めるようにいくつものベッドや治療する部屋として使われていたらしく、現在は当時の状況が書かれた本などから再現しているに過ぎないと立てかけられた看板に書かれていた。
 大部屋を見た後は、城の廊下を歩きつつ食堂や地下室、城の最上階にあった城主と思われる部屋などを回った。
 城主と思われるというのは、戦争中に攻撃された際に破壊されてしまった箇所であったので、そちらも大部屋同様に状況を元に再現したに過ぎなかった為である。
 ルークたちはそんな『ジュヴェリアヴァーベン城』の昔や戦争中の事が書かれた看板などを見て、実際に再現された場所を見て話をしたり、城内を一周するのだった。
 そんな中でドウラとラーウェンは『ジュヴェリアヴァーベン城』の過去の事や、戦争中の事を学院で学んでいたらしく、少し詳しかったのでルークたちはちょっとした豆知識的な感じで話をしてもらい、ガイド付きの様な観光をするのだった。

「ドウラとラーウェンのお陰で楽しく城内を見れたよ。ありがとう」
「ちょっとした事だけだけど、楽しめたなら良かったよ。俺たちも実際に見たのは今日が初めてだし、話を聞くのとはまた違った感じで良かったよ」

 城から出てから、ドウラとシンが城内の話をし始めて、そこにラーウェンもドウラに少し強引に引き込まれモーガンとトウマもその会話に混ざるのだった。
 その後ろでルークはクリスに声を掛けるのだった。

「楽しめたか、クリス?」
「うん! 凄く良かったよ! 一度教材で見た事はあったけど、実際に目で見ると感じ方が違うし、こう頭に残る感じ」

 クリスが楽し気に話す様子を見て、ルークは優しく微笑み「それなら良かった」と口にした。
 そのままクリスはルークに気になった所などを夢中で話し続け、ルークはそれを聞いて自分の感じた事を話していると、クリスが軽くつまずいて倒れそうになる。
 ルークはすぐにクリスに手を伸ばし、腕を掴んだ。
 そして軽く引き戻した時に、クリスもお礼を言おうと顔を振り向けた瞬間、ルークとの顔の距離が少し近くなる。
 その瞬間、短い頭痛がクリスを襲う。
 頭痛は直ぐに収まり、近付いていた顔も互いに離して謝るのだった。
 クリスは再び先に歩き始めるが、先程の急な頭痛が気になり軽く片手をこめかみ辺りに置いていたが、すぐに手を離しトウマたちの後を追い、ルークも遅れて歩き出しトウマたちに合流する。
 それからトウマたちは、時間も昼下がりになり始めていたので、そのまま城から出て坂道の途中にあった飲食店で少し遅めの昼食をとるのだった。
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