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第358話 ダイモン寮の次期寮長と副寮長

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「(他の者って……)」
「(名前知られてないのか)」

 と、シンリとシンが思っているとダンデはルークの問いかけに答え始めた。

「よくぞ聞いてくれた、ルーク!」
「(あ~何か面倒な奴に絡まられたな……)」

 ルークは小さくため息をつきつつ、呆れた顔をしていた。
 だがダンデはそんな事には気付かずに、軽く胸を張って気分がいい顔をしていた。
 そして意気揚々にダンデは勝手に話し始めた。

「よく聞けルーク。俺は遂に次期寮長になったぞ!」
「あーそうか。おめでとう」
「おい! もっとないのか! こう、驚きとか、予想外的な事はないのか!」
「ない。そもそもお前は次期寮長候補だったし、お前以外に立候補する奴なんていないだろ」
「ふふふ……それがいたんだな~知りたいか? 知りたいだろ?」
「いや別――」
「そこまで言うなら仕方ないなー! 特別に、特別に教えてやろう!」
「話くらい聞け、ダンデ」

 そのままダンデはルークの言葉を無視して、自分たちの次期寮長選挙について話し続けた。
 ルークは諦めて顔を逸らす。
 流れでその話を聞いた限り、ダイモン寮の次期寮長選挙は本当は明日の予定だったらしいが、うちの次期寮長選挙の盛り上がりに触発され繰上りで昨日実施したらしい。
 決め方は一対一の実力勝負対決らしく、次期寮長に立候補した者たちでのトーナメントを行ったとダンデは語った。
 ダイモン寮は代々一番力がある者や皆を一番前で引っ張っていける者が寮長として相応しいという考えがあり、対決という形で次期寮長を決めて来ているらしく今年もその形式に沿って行ったらしい。
 出場者はダンデ以外に三人いたらしく、二度の戦いで次期寮長が決まったが決勝戦は激戦だったとダンデは軽く頷きながら口にするのだった。

「で、その決勝では誰と戦ったんだよ」

 ルークは頬杖をしながら、早くダンデの話を終わらせようと急かした。

「レオンさ」
「え、レオン!? レオンが立候補したのか?」

 ルークよりも先に私が驚いてしまった。
 レオンはそんなタイプには見えなかったので、余計に信じられなかったのだ。

「いい反応だなクリス。そう、レオンが立候補して来たのは驚いたよ。まあ、最終的には僅差で俺が勝ったんだがな」
「レオンか。実力的に考えれば何もおかしくはないが、寮長になりたい様には見えなかったから確かに意外ではあるな」
「そうだろ、そうだろ」
「じゃ、ダンデが次期寮長で副寮長はもしかして、レオン?」

 私がたまらずダンデにそう問いかけると、そこへ話題のレオンが現れる。

「ダンデ大食堂にいたのか」
「おーレオン! いいタイミングで来たな。俺との激戦の事をルークたちに言ってやってくれ」
「ルークたち?」

 レオンは私たちの方へと近付いて来て、そこで私たちの存在をしり軽く挨拶をして来た。
 そして何となく状況を察するのだった。

「確かにダンデとは戦いましたが、それは必ずしも寮長になりたいからと言う訳ではないよ。今の自分の実力を改めて知りたいと思ったから、立候補したんだ」
「そうだったのか!?」

 その答えに一番驚いていたのはダンデであった。

「それじゃ、もしダンデに勝っていたらどうしたんだ? 辞退でもしたのか?」

 ルークからの問いかけにレオンは首を横に振った。

「勝っていたらそのまま寮長を受け入れたよ。ダンデや寮の実力者と全力でぶつかる機会は少ないからね、そこで自分の力を試したくなったから参加したんだ。まぁ、あんまり参加する人はいなかったけどね」
「そうだったんだ。それじゃやっぱり、ダンデの次に強い人って事で副寮長になったのか?」
「いや、ダンデから指名してもらったがそれは断ったよ。副寮長は仕事が多いし、僕には向かないからね」
「本当何で断ったんだよ」
「それはもう言わない約束だろ、ダンデ」
「あ、すまん。そうだったな」

 私はダンデの少し暴走気味な手綱を握っている様な姿に、副寮長にはピッタリだと思ったがジュリルの従者と言う事もあって断ったんだろうなと勝手に想像した。
 でも、もし本当に寮長にでもなっていたらどうしたんだろうか?
 そう考えだしたら、逆にレオンが寮長だった場合が気になってしまった。

「それじゃ副寮長は誰になったんだ?」
「うちの副寮長は、スザクに決まったよ」
「スザク?」

 ルークが軽く首を傾げていると、シンリが小声で羽根の耳飾りを右耳に付けているのが特徴と教え、ダイモン寮では自称ダンデの右腕と呼ばれている人物だと教える。
 それを聞きルークは何となく姿を思い出した表情をしていた。
 私も何となくだがぼやっとした感じでスザクを思い出していた。

「あ、そうそう。ダンデ、スザクが探していたぞ。今日の午後からダイモン寮長とワイズ副寮長との引き継ぎで確認しておきたい事があるらしいぞ」
「確認? そんな事言っていたかな?」
「教室で言ってたが、ダンデがすぐに出て行くから聞いてなかっただけなんじゃないのか?」
「そう言われるとそうかもしれないな……分かった。伝えてくれてありがとうな、レオン。と言う訳で、またなルーク、クリス、他の者たちも!」

 そう言ってすぐさまその場から立ち去って行くが、再び戻って来た。

「で、スザクの奴は今何処に?」
「寮で待っているって」
「サンキュー!」

 ダンデは急いで寮へと向かって行くのだった。

「全く、人騒がせな奴だあいつは」
「少し浮かれているだけさ。大目に見てくれよ、ルーク」
「そう言うセリフは副寮長が言うもんだぞ、レオン」

 レオンは小さく笑うと視線を私の方へと向けて来た。

「クリス、もしよければ僕とも今度昼食をどうだい?」
「っ!」
「え~と……」

 私が戸惑っているとレオンは「たまには別の寮での交流もいいかなと思ってさ」とルークに向けるように口にする。
 ルークは私の方へと視線を向けていたが、直ぐにレオンへと向けるのだった。

「急に誘ってごめよ、クリス。でも考えておいてくれるかい? 僕との昼食」
「わ、分かったよ」

 そう答えるとレオンは「それじゃ」と言って笑顔でその場から立ち去って行った。
 ルークはレオンの後ろ姿を軽く睨む一方で、私はシンに話し掛けられた。

「クリスは人気者だね」
「そうかな? あまり実感はないけど」
「僕からしたらそうだよ。他の寮の人とも仲がいいし、さっきみたいに昼食も誘われるくらいだし」
「でもあんな事は初めてだよ? 驚いてどうしていいか分からなかったよ」

 その後私は大運動会以降から、他の寮生同士で食事をとっていたり会話している姿が増えている話をシンやシンリから聞いたりして先程の誘いをどうすかを考えた。
 そうしているうちに午後の授業の時間も迫って来ていたので、私たちは食器などを片付けて教室へと戻るのだった。
 午後の授業が始まり通常通りに授業を受け続け、その日最後の授業が終了し私たちは教室で担当教員の到着を待ちながら雑談をしていると、担当教員が教室へとやって来て帰りの連絡事項を始めた。

「それじゃ始めるぞ。今日はお前らお楽しみの例の件について、ようやく決まったからその連絡だ」

 例の件? 何の事?
 私は直ぐに分からずに疑問に思っていたが、皆は担当教員の言葉を聞き一気に盛り上がった。
 そして遅れて私もようやく何の事か理解し、今の盛り上がりに納得出来たのだ。

「早速来週末に決まった、冬の修学旅行についての連絡を始めるぞ!」
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