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第325話 年初めの来訪者

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 この世界では新年を迎えた朝には、家族や親友たちなどと朝日を見ると言う習慣が昔からある。
 それはかなり昔からあるらしく、何故か詳しく言い伝えは残っていない。
 だけども、新しい一年を朝日を見ると新鮮な気持ちになるし、引き締まる感じもあって私は悪い感じはしない。
 いつから誰がこれを始め皆に伝わる様な習慣にしたのかと言うのは気にはなるが、知るすべがないのであれば仕方ない事だ。
 私はお母様たちと共に屋敷の外で昇る朝日を見つめながら、そんな事を考えていた。
 その後、私たちは屋敷に戻り使用人たちは新年に相応しい料理と仕度をし始めた。
 私は時間を忘れて朝方近くまでお母様と話をしていたので少し眠さがあったが、目を覚ます為にシャワーを浴び服装も変えた。
 それからは準備が出来るまで、自室の椅子にもたれ掛かりながらボーっと外を見つめていたが、途中からうとうとしてしまいそのまま眠りについてしまった。

「……ま……お嬢様」
「っん……マリア?」

 私はマリアの呼び掛けで目を覚ました。

「おはようございます、アリスお嬢様」
「おはよう、マリア……っあ! 私寝ちゃってた!」

 寝ボケていた私は直ぐに立ち上がり、時間を確認するとシャワーを浴び自室に戻って来てからて既に一時間半は経過していた。

「アリスお嬢様、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。つい先ほど準備が出来た所ですので」
「そ、そうなの?」
「はい。朝方近くまでリーリア様とお話されていましたから、寝てしまうのも仕方ない事ですよ」
「目覚ましのつもりでシャワーを浴びたんだけど、座ったら眠くなっちゃって……」
「気にしなくて良いのですよ。さぁ、新年初めの朝食の準備が出来ましたので、参りましょうアリスお嬢様」

 マリアはそう言って部屋の扉の方へと向かって行き、扉の前に立ち私を待つ。
 私は近くの鏡で軽く身なりを整えた後マリアの方へと向かって行くと、マリアは扉を開けてくれ共にリビングへと向かった。
 それからは家族で新年の朝食を食べ終え、私は徐々に眠さが襲って来たので自室にてひと眠りする事にした。
 次に私が目を覚ました時には昼下がりであった。
 その後私は目覚まし代わりに再びシャワーを浴び、屋敷内をゆっくりを歩き回った。
 新年初めの日である為、使用人たちもゆっくりとした時間を過ごしており、休憩していたイェレナとジェシカと軽く雑談をした。
 雑談を終えてから中庭に向かうとそこでは、ウィルソンとジャックとリックが鍛錬をしている所を目撃し話し掛けた。
 2人はリックの鍛錬に付き合っていたらしく、私も何となくその様子を見ていると自分も体を動かしたくなり、直ぐに着替えた後鍛錬に混じり共に体を動かしたのだった。
 鍛錬を終える頃には夕暮れとなっており、執事長のレジバルドがウィルソンたちを呼びに来て私はそこで別れ汗を流した後、書庫へと向かい気になった本を手に取り読み始めた。
 そのまま本の虫になった様に次から次へと本を漁っていると、シェラが声を掛けて来てそこで私は手を止めてた。

「失礼します、アリスお嬢様。まもなく晩御飯の時間となりますので、お呼びに参りました」
「え、もうそんな時間?」

 私はそう言われ直ぐに本をしまい、シェラと共に書庫を出てリビングへと向かい、遅刻する事無く晩御飯を家族でとった。
 そして晩御飯を終え、アフターディナーティーをリビングでしていると屋敷の門のベルが鳴らされた合図が聞こえて来た。
 するとすぐに執事長レジバルドとマリアがリビングから出て行き屋敷の門へと向かって行った。
 私は紅茶を飲みながら、新年そうそう誰が訊ねに来たのだろうと思っていると、お兄ちゃんも同じ風に思っていたのかそれを口に出していた。

「誰ですかね、新年に訊ねに来た人は」
「そうね~誰かしらね~」
「うん。予想はつくけど違う場合もあり得るからね」
「お父様、お母様。その態度は、誰か来ると知っていたのですか?」

 お兄ちゃんの問い詰めに、私も少し前のめりにお父様とお母様に視線を向けた。

「あら、アバンとアリスには以前話しているはずだから、何となく察しがついていると思ったのだけど」
「?」
「……もしかしてあの件ですか?」
「たぶんアバンが思っている事で合っていると思うよ」
「??」

 私は全く見当がつかずにハテナマークだけが増え続けていると、お兄ちゃんが小声て話し掛けて来た。

「忘れたのか、アリス? ほら、俺たちが帰って来た日にお母様から話された例の事だよ」

 え~と……全然分からないんだけどな……あの日は試験結果をバラされるとかで頭が一杯で何か話された気はしてるけど、内容が全然思い出せない。
 私は何とかしてその日の記憶を思い出そうとしていると、屋敷の門へと向かったはずのレジバルドが戻ってお父様の元へと近付き、耳打ちをした。

「分かった。通して問題ない」
「はっ。では、直ぐにマリアに案内をさせます」
「あぁ、よろしく頼むよ」

 するとレジバルドは再びリビングから立ち去って行った。

「どうやら、訪問者は私の予想通りの方だったよ。レジバルドに通すように伝えたから、時期にここへ来るよ」
「そう。思っていたより来るのが早かったですわね」
「俺も直接会うのは初めてかもしれないな」

 え、え? 皆誰が今ここに来るか分かってるの? やばい、私全然ついて行けてないし、こういう時にマリアも居ないからこっそりと聞けない。
 とりあえず、分かっている振りしてれば大丈夫よね? たぶんお兄ちゃんの口ぶりからして、私も初対面の人ぽいし礼儀正しくしてれば大丈夫……たぶん。
 そう考えて私は気を引き締めた表情をすると、お母様に何故か笑われてしまった。

「貴方がどうして、そんなに緊張した顔をしているのよ」
「え、いや、失礼がない様にと思いまして」
「何をそんな事を今更言っているのよ。あんな事をしておいて」
「え? 私もうその人に失礼な事してるんですか!?」

 その発言で、お母様たちは私が誰が来るのか分かっていないと察した時だった、リビングの扉がノックされお父様が返事をするとレジバルドとマリアが扉を開けた。
 私が開かれた扉の方を見ると、そこに立っていた人物に目を疑い誰よりも先に声を出してしまった。

「ジュ、ジュリル!?」
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