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第290話 さぷらぁ~いず

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「ダ、ダイモン寮長!?」

 トウマはまさかの人物の登場に、マイクを通して声を出していた。
 それはその場にいた皆が思った事でもあり、周囲はざわついていた。

「何でダイモン寮長?」
「誰か呼んだのか?」
「まさか、本当に乱入しに来たんじゃ」

 皆がざわついていると、ダイモンが中へと入って来た。

「おいおい、何だよこの雰囲気。俺様が来たんだぞ、もっと盛り上がるだろ?」

 と、ダイモンは何故が疑問がって首を傾げていると、後方から慌ててワイズがやって来る。

「ちょっ、ダイモン! 何勝手にやっているんだ」
「お~ワイズ、いい所に来た」
「いい所に来たじゃない。見て見ろ周りを! ダイモンが急にあんな事をするから皆が驚いているだろ」
「何故だ?」
「何故だじゃない!」

 急に現れたダイモンとワイズが言い合いを始めてしまい、私たちは何が何だか分からずただ見守っているとトウマが問いかけた。

「あ、あの~ダイモン寮長にワイズ副寮長。どうしてここに?」

 すると2人は言い合いを止め、ダイモンが答えた。

「もちろん! ここで祭りが行われると聞いたからだ! 俺様たちも参加する為に来た!」
「え? ……ダイモン寮長とワイズ副寮長も、俺たちの寮の先輩たちお疲れ様会に参加するんですか?」
「名称は分からんが、今言ってくれた意味でほぼ間違いはない」

 え!? 本当に参加するの?
 私は他寮のしかも、寮長と副寮長が参加する事に普通に驚いていると、周りの皆も同じ様に驚いていた。
 直後、何やら外の方が騒がしくなり始めると、ダイモンとワイズが入って来た入口から何故かダイモン寮の生徒たちが押し寄せて来たのだった。

「先程我輩がほぼ間違いないと言ったのは、これに参加するのは我輩とダイモンだけでなく、ダイモン寮全員だ」

 ワイズの言葉の後、背後に集まったダイモン寮生徒たちが野太い声で「おー!」と叫ぶ。
 するとそこの軍勢から前に出て来てトウマに声を掛ける人物がいた。

「お~トウマ! 何か面白そうな事やってるなー!」
「げぇ、ダンデ」
「何だ、その言い方!」
「いや~特に意味はなくてだな、つい出てしまったと言うか、現状を受けとめられずに言ってしまった的な……」

 トウマがダンデの対応に少し困っていると、ワイズがダンデに軽くチョップをして止めた。

「こら、お前も状況をややこしくするな」
「す、すいません」

 ダンデがワイズに謝った直後、ダイモンが誰かを見つけ声を上げる。

「おい、オービン! 話が違うじゃねぇか!」

 オービン先輩が関わってるの? どう言う事?
 私は直ぐにダイモンの視線の先を見つめ、オービンを見るが笑ったままダイモンの方を見るだけで何も答えずにいた。
 なので私は近くにしたルークの方を向くと、ルークも戸惑った顔をしていたのでオービンから何か聞いてはいないと思い再びオービンの方へと視線を向けた。
 もー何なの? 何が起きてるのよ!?
 会場がざわついていると、突然2階の扉が勢いよく開き聞いた事のある声が会場に響き渡る。

「話が違うのはこちらだ! お前こそ、何を勝手な事をしているんだダイモン!」
「あぁ?」

 次は何事よ!?
 会場にいた皆が2階へと視線を向けると、そこに居たのはエメル寮の副寮長であるスニークであった。

「ダイモン、お前が勝手な事をして目立ったせいで、寮長が目立たないだろう! どう責任とるつもりなんだ、ダイモン!」

 するとスニークの背後から、エメル寮の生徒たちが続々と現れて来る。

「そんなの知るか! つうか、それはお前が勝手に思ってるだけだろうが!」
「なっ! そんな訳ないだろうが! 寮長はお前より凄いんだから、目立って当然なんだよ」
「何だと!? だったら、何が凄いか言って見ろスニーク!」
「いいだろう。当方がこの場に居る皆に、寮長の素晴らしさを叩き込んであげよう。ではまず――」
「そんな事やるな」

 暴走しかけるスニークの顔を手の平で押して止めたのは、寮長であるエメルであった。
 エメルはため息をつきながら、頭を抱えた。
 それと同時に下ではワイズがダイモンを止め、注意をして熱を冷まさせていた。

「スニークお前、次同じ様な事したら副寮長、クビな」
「!? そ、そそそ、それだけはご勘弁を! 申し訳ありません、寮長。次からはこの様な事は絶対にしないと誓います! ですから、クビだけはご勘弁を」
「はぁ~たっく、余計にややこしなってんじゃねぇかよ。お前らも、招かれた宴だからって羽目を外し過ぎだ。少しは自重しろ」

 エメルの言葉に、寮の生徒たちは反省したのか「はい」と返事を返していた。
 そしてエメルは2階からオービンに向けて声を掛ける。

「悪いオービン。スニークたちが迷惑かけた」

 それにオービンは何も言わずに、表情を変えず首を軽く横に振った。
 するとすかさずトウマがオービンに問いかける。

「もう、どう言う事ですかオービン先輩! 教えて下さいよ!」
「え? 何? もう始まってるの?」
「な、何!?」

 直後、トウマの足元の舞台の一部が開き、そこから何故かイルダ寮の寮長であるイルダが寝ボケた顔で現れる。

「イルダ寮長!?」
「ん? あ、はい。イルダです……」
「あー……違うと言ったのに。でも、他の寮も出ているし、いいよね」

 そう言ってイルダ同様に舞台下から床の一部を開けるように顔を出したのは、イルダ寮副寮長であるマルロスであった。
 その後、舞台下や床下屋根裏と言ったあらゆる所からイルダ寮の生徒たちが現れる。
 マルロスは舞台に上がると、未だに寝ボケているイルダを同じ寮の生徒と引っ張り上げる。

「どどど、どうして下から出て来るんですか!?」
「ん? どうしてって、隠れやすいからだよ」
「え?」
「ん?」

 問いかけたトウマと答えたマルロスは、同時に首を傾げた。

「ちょっ、オービン先輩! 何なんすか、これ!?」

 トウマは振り返りオービンの方を向くと、オービンの近くにいたミカロスが頭を抱えてため息をつく。
 そしてオービンは、苦笑いしながら片手で頬をかきながら答えた。

「あ~いや~何と言うか、こんな感じになる予定じゃなかったんだけど……」
「だから、あれほど言ったろ。これをサプライズにするのは無理だと」
「あははは……すまん、俺のミスです。ですから、どうか手を貸してくださいミカロスさん」
「全く、この後しっかり反省してもらうぞ。とりあえず、先に皆に説明からだ」
「はい……」

 その後、ミカロスが一度皆のざわつきを止めてから、オービンから直々に説明が行われたのだった。
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