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第163話 決意から抜け殻へ

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 学院対抗戦1日目。
 開会式が始まり、各出場学院の代表生徒たちが会場へと入場してくる。
 そして学院を代表して、王都メルト魔法学院の学長であるマイナ・メルトが挨拶をし各学院の代表者1名ずつが前に出て、開会宣言をし開会式が終了する。
 選手たちは一度下がると会場では最初の競技準備が始まる。

 1日目は競技が10種で、全校同時に行われる競技が多くこれは各ランク戦ごとに行われる。
 各学院は、事前に通知された競技に指定人数のメンバーを選出する。
 今年の学院対抗戦の1日目はシニア10名、ミドル10名、ルーキー10名とそれぞれのランクで人数が決まっており、その人数を各学年から選び代表者としているのだ。
 そして各競技事に順位が発表され、ポイントが振り分けられ最終的に2日間で総ポイントが高い学院が優勝と言うのが学院対抗戦である。
 本日1日目の競技は、技術系の競技しかなく各ランクで力を合わせ競技に出場する競技がほとんどであり、チーム連携を試される日と呼ばれていたりする。
 あ~始まっちゃったよ……どうすんのよ、マリア。
 私何も分からないのに、出場なんて出来ないよ……
 不安に押しつぶされそうになりつつ、私は控室のベンチに座り俯いていた。

「アリス、本当にどうしたのよ? 何か昨日から変だよ?」
「そ、そうかな?」

 メイナに声を掛けられて私は、ゆっくりと顔を上げ答える。
 だが、言葉とは裏腹に私の表情は硬く、メイナも隣にいたジェイミと顔を見合わせていた。
 とりあえず、何とか競技前にはマリアと入れ替わらないといけないけど、競技中はあまり他の学院生とは会えないし、どうすれば……
 私が頭を悩ましていると、メイナとジェイミが私を挟む様に隣に座って来た。

「何か悩み事?」
「ずっと胸に抱えているのは、良くないよ」

 2人は優しく私に声を掛けて来てくれ、本当に心配してくれているのだと実感した。
 私はただこの場から逃げて、マリアと入れ替わろうとする事だけを考えていたが、それが急に2人を裏切る行動ではないか? 本当の私はここに居る私なのに逃げる事だけを考えていいのかと思ってしまう。

「アリス?」
「……」
「体調が悪いなら、無理はすべきではないよ」
「……うん。2人とも心配してくれてありがとう。2人の言葉で、気持ちが決まったよ!」

 私は立ち上がり、マリアと入れ替わるのではなくどうにかして私自身で乗り切ると覚悟を決め、拳を天に上げ「頑張るぞー!」と口に出した。
 すると2人は突然の私の行動に驚いていたが、すぐにメイナが話し掛けて来た。

「何かよく分からないけど、元気がでたなら良かった。でも、アリスの本番は明日なんだから、今日から気合入れて明日空回りしないでよ」
「……ん? 明日? 出番?」
「何故片言なんだ?」

 私は目を点にして、メイナとジェイミの顔を交互に見る様に顔を向けた。

「え~と……どう言う事?」
「何、もしかして勘違いでもしてたの? アリスは、2日目のミドルランクの代表者でしょ」
「えーー!?」

 その時、私の驚きの声と同時に会場では最初の競技が始まり、観客たちの熱狂する声が重なったのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 驚きの事実を知ってから、学院対抗戦1日目の半分の競技が終了し昼食時間を迎えていた。

「あ~……」

 私は抜け殻の様な状態で、メイナが持ってきてくれた昼食を外のテーブル席で見つめていた。

「もう、いつまでそんな状態なの? 買って来たお昼冷めちゃうよ」
「あんなに意気込んでいたのに、勘違いしてたのがショックなんだろ。少し放って置けば、元に戻るだろ」

 メイナとは反対にジェイミは、そこまで私の事は心配しておらず、時間が経てば元に戻ると考えていた。
 その言葉にメイナも、昼食を食べながら「そうかもだけどさ」と呟いた。
 あー……私が2日目の代表者? え? 私が? どうして? てか、どうやって?
 2人が昼食を食べている間、私はただただどうして代表者になっていたのかを考え続けていた。
 いやいや、さっきは頑張ろうと思ったけどそれが2日目とか無理よ。

 学院対抗戦2日目は、各学院の実力者たちが己の力を全力でぶつけ合い、一番盛り上がるメイン競技の日である。
 そこでは男女ごとに試合が行われ、そこの1人して私が知らないうちに私がクレイス魔法学院の代表者となっていたので現実を受けとめる事が出来ずにいたのだ。
 いやもう、これは私がどうこうすると言うより、マリアの力で選ばれたに決まってるんだからマリアにやってもらうしかない。
 ……でも、仮にマリアが私として出場したらどんな結果になるんだ? 本当にバレないのだろうか? こう言う場で替え玉的な事がバレないとかありえるのか?
 私はもうどうしていいか分からず、完全に思考が停止し始めていた。
 そんな時、昼食を食べる所に現れたのはまさかのマリアが扮する私とトウマであった。

「やぁ、姉さん。良かったら一緒にご飯食べない?」
「ク、クリス~!」

 私は現れたクリスに人目も気にせず、抱きついた。
 だがすぐにクリスに離され、クリスはメイナとジェイミに一緒に昼食をとってもいいかと確認する。
 メイナとジェイミは特に断る理由もなかったので、少し席を詰めてくれクリスとトウマはそこへと座った。
 トウマは初対面であったので、2人に挨拶している間に私はクリスに小声で話し掛けた。

「やっと、やっと会えた……もう私どうしていいか?」
「少し取り乱し過ぎですよ。しっかりして下さい」

 マリアの少し厳しい言葉に、私は一度小さく深呼吸して背筋を伸ばした。

「話や入れ替わりは、今日の終り頃にしましょう。皆の帰り時なら人に紛れられますし」
「分かった」

 そうマリアとの小声でのやり取りを終えると、トウマも2人への挨拶も終えていたので5人で改めて昼食を食べながら雑談をした。

「へぇ~トウマは第一王子のルークとルームメイトなんだ。で、クリスも一時期ルームメイトだったのか。凄いね」
「まぁ、うちの学院じゃ、そんな風に言われる事はないんだけどね。なぁ、クリス」
「あぁ。ルークはちょっと面倒な奴なんだよ」
「そうなの? ルームメイトだから知ってる素顔的なやつね? 気になるな~ジェイミもそう思わない?」
「そうね。少し興味があるわ」

 私たちがこの場に居ないルークの話で盛り上がりはじめていると、突然そこにシリウス学院の学院服を着た生徒が1人やって来て、トウマの真横に立った。
 え? 誰?
 その生徒は、じっとトウマの方を上から見下ろしていた。
 トウマはその視線に気付き、顔を上げると一気にトウマの顔が真っ青になった。

「……ラーウェン……」
「やぁ、楽しそうだね。トウマ
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