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第155話 服装で他人からの見え方も雰囲気も変わる

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 遡る事、数時間前。
 ルークが朝目を覚ますと、物凄い剣幕をしたトウマが真横にいてルークは眠気が一気に覚める。

「ト、トウマ……何だよ朝からその顔は?」
「冷静に聞けルーク。今日クリス、いやアリスが誰かとデートをするらしい」
「……はぁ? クリスがデート? 何言ってんだお前」
「冗談だと思ってるのか、ルーク? 残念ながら確かな情報源から聞いた事だから、本当だ」

 するとルークはベッドから完全に起き上がった。

「……馬鹿馬鹿しい、どうせあいつの事だ。何か家の事情とかそう言う関係だろ」
「いいや、今回はガチのデートらしい。なんせ、事前に何度も街でデートコースの下見とか、おススメ場所を聞いて回っていたらしいからな。更には、今日の予定を色んな人に聞いていた姿をも目撃されているんだ。ちなみに、俺も聞かれたぞ」
「それは俺も聞かれたぞ」
「そうか、やっぱりな」

 トウマはその言葉を聞くと、何故か納得した様な表情をしていた。
 ルークは何に納得したのか分からず首を傾げていると、トウマは自信満々に語り始めた。

「現時点で、クリスのデート相手は俺でもルークでもない。更には皆に今日の予定を聞いていたとなれば、これは極秘のデート。誰にもバレたくないと言う、クリスの考えもしくは、その相手に考慮したデートと言う事だ」

 と、トウマは何故か物凄く決め顔でルークの方を向いて語るが、ルークはその顔をただ黙ってじっと見ていた。
 そのままトウマも黙ったままルークを見ていたが、遂に耐え切れず軽くため息をつく。

「おいルーク、何でそんな無反応なんだよ。お前だって気になるだろ、クリスのデート相手」
「別に気になんねぇよ、仮の相手なんて」

 そう言うとルークはトウマに背を向けて背伸びし出す。
 ルーク自身、トウマの言葉を真に受けていない訳ではなく、どうせクリスの事だし家の事情だろうと自分の中で決め込んでいた為であった。
 しかし、全く気になっていない訳ではなかった。

「(にしてもあいつは、俺たち以外の誰を頼ったんだよ……)」

 そんな事を思いつつも、ルークは着替えようと上着を脱ぎ始めた時、トウマの呟きに動きを止めてしまう。

「何だか気にしてない態度をとってるが、いいのかルーク? 噂じゃ、相手はレオンらしいぞ。昨日2人きりで医務室に居たらしいしな」
「っ……」
「でもレオンは今日から病院。となると、次の相手はタツミ先生って話だ」
「なっ! タツミだと!?」

 その言葉にルークは勢いよく振り返った。
 思いもしなかった反応の良さにトウマは少しのけ反るが、やっと話に食い付いて来たのでずいっとルークに近付きある提案をし出す。

「そんなルークに提案だが、今日のクリスを尾行してその相手と、本当にデートなのかを確かめてみないか?」
「尾行?」
「な~に、心配するなよ。バレなきゃいいだけだし、もしバレたら偶然を装えば問題ねぇよ」
「どの口が言うんだよ。お前、前に俺とクリスで外出した時にも尾行してたろ」

 ルークは第1期期末試験後の外出時の話を持ち出すも、トウマはそっぽを向いて口笛を吹いて誤魔化した。
 その態度にルークは、軽くため息をつきトウマの提案を断り、「タツミに直接聞けばいい事だ」と言ってトウマから離れ着替え始める。
 だがトウマは諦めなかった。

「おいおい、タツミ先生が本当にデート相手だったら答えると思うのか? それこそ、あり得ないな」
「話さないなら、話してもらうまでだ」
「そんなことしたら、クリスにも嫌われるぞ。それでもいいのかよ?」
「っう……なら尾行は良いってのかよ」
「良いとは言ってないぞ。相手にバレずに相手を知る1つの手段ってだけだ。で、どうするよルーク? やるかい、俺と?」

 その後、ルークは暫く長考した後トウマの案に乗るのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なぁ、ルーク。今更何だか聞いてもいいか?」
「何だよトウマ」
「いやな、ずっと思ってたんだが俺らの前にいるあの男誰だ? 見る感じ、俺らと同じ様にクリスとオービンを尾行してるみたいだが」
「俺が聞きてぇよ。でも、うちの学院生じゃなさそうだ。やけに周囲をキョロキョロとしてて、初めて来たって感じだ」

 トウマはルークの推理に「確かに」と呟き頷く。
 するとトウマがある事に気付く。

「もしかしてあの男、クリスのあの姿に一目ぼれしたとかじゃ」
「あまり自分の妄想を口に出すもんじゃないぞ、トウマ。後、今更だが今のあいつをクリスと呼ばない方がいいかもな。誰かに怪しまれたら面倒だ」
「確かに。それじゃ、アリス呼びか。……ん? 勝手にその名前を呼んで良かったんだっけ?」
「大丈夫だろ。あいつがクリスって怪しまれるより、ましなはずだ」

 そんな会話をしていると、アリスとオービンが入った洋服屋から2人が出て来る。
 オービンの格好ががらりと変わっており、髪型と伊達メガネはそのままであったがシックなジャケットのコーデに変わっており、がらりと雰囲気が変わっていたのだった。

「うん。やっぱり、その方が似合いますよオービン先輩」
「そうかい? アリス君がそう言うなら、間違いないね。それじゃ、デートと行こうか」
「あっ、そうでした……あの、本当にやるんですか?」
「俺じゃ、君に不釣り合いかい? それとも、俺とじゃデートは出来ないかい?」
「い、いえ! そんな事はありませんが……」

 するとオービンは突然私の手を優しく握って来て、引っ張って歩き出した。

「ちょっ、オービン先輩!?」
「せっかく今日の為に色々と準備したんだろ? なら、それを無駄にするのは勿体ないだろ、アリス君。色々と案内してくれよ」

 優しく微笑みかけて来たオービンの表情を見て、私は何故か恥ずかしくなり少し視線をずらしてしまった。
 そのまま私はオービンに手を引かれるまま付いて行った。
 その姿を、クレイス魔法学院の男子は動揺を隠しつつも後を追って行った。
 またルークとトウマはと言うと、オービンの積極的な行動に度肝を抜かれていた。

「これは、マジのやつじゃないのかルーク? まさかオービン先輩だとはね……」
「いや、まだ決まった訳じゃないだろ。行くぞトウマ」

 と、ルークは目の色を変えてトウマよりも尾行に本気になり始めた。

「(まぁ、そうなるよね~)」

 トウマはそう心の中で思いつつ、ルークと共に尾行を続けるのだった。
 そんな彼らの後ろ姿を、胸に獅子が剣を銜えたマークが付いているのが特徴の学院生服を着た、2人組が通り1人が足を止める。

「ん? あれは……」
「どうしたんだ、ラーウェン」
「……いや、気のせいか。何でもない、ドウラ」
「そうか。なら、早く調整しに行くぞ。学院対抗戦まで時間もないんだからな」
「分かってる」

 そう言って2人はその場から離れて行った。
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