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第88話 大運動会⑧~金輪奈落~
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「ダイモンの奴、金輪奈落を使ったのか。絶対に使わないとか言っていたのに、気でも変わったのか?」
「ワイズ、ダイモンは何をしたんだ? と言うか、ダイモンから魔力が突然消えたのは関係あるのか?」
マルロスの問いかけに、ワイズが答えた。
そもそも、魔力と言うのはこの世界の人間に必ずしもあるものではない。
だが、魔法学院に通う人間ならば大抵は持っているものであり、無意識ならがも相手の魔力を感じ取れたりしているものだ。
その感じ取った魔力を元に、魔法などを放ったり場所を認識している者もおり魔法学院に通った事がある人からすれば、その生徒から魔力を一切感じないと言うのは異常なことである。
実際には、特に問題があるわけではないが、今までにそんな人がいないだけで魔力がなければ、ただ魔法が使えないというだけなのである。
つまり簡単にダイモンの今の状態を言うと、魔法が使えないただの一般人と認識されている状態なのだ。
「じゃなに、ダイモンは相手の第2学年との勝負を捨てたって事か?」
「いいや、それは違うんじゃないのかワイズ」
その話に割って入って来たのは、ミカロスであった。
ミカロスはダイモンの先程の行動を見て、何かに気付いていた。
「あれは、ダイモンから魔力が消えたんではなく、ダイモン自身が自分の魔力を周囲に放出したんじゃないのか。それに、ダイモン自身からは極小だが魔力を感じ取れる」
「ほぉ、流石だなミカロス。そこまであの一瞬で分かってしまうのか?」
「と言う事は、合っているという事だな」
ミカロスの言葉に、ワイズが頷いて答えるとそのまま話を続けた。
ダイモンは、元々魔力を持っていながら使える魔法がほとんどなかった。
その為、第1学年から凄い生徒と言う訳ではなく、ただ武術を身に付けている変わった生徒と言う認識であった。
また、寮長と言うものは前の寮長が認めた者が引き継いでなる制度であるが、代々ライオン寮の寮長は、寮内で一番強い者が寮長になると言う方針と取っている。
では、何故そんな生徒が寮長まで上り詰めたかと言うと、ダイモンは魔法を捨て武術を極めたのだ。
正確に言うと、武術を極め更にその先へ進む為に、魔力分類の技量と質量を特化させたのだとワイズは語った。
「そう言われると、ダイモンが魔法を使う所をほとんど見た事ないような」
「なるほど、今のダイモンの状態が正しく、その武術と魔力分類を極めた先に至った極限状態と言う事か」
「そう言う理解で合っているぞ、ミカロス」
その中で唯一マルロスだけが、理解するまで時間がかかるも何となく理解し始める。
「でもさ、ダイモンは魔法を捨てて魔力を自分の周りに放出したからって別に強くなった訳じゃなくないか? 逆に言ったら、弱体化してないか?」
「確かに普通に考えれば、今のダイモンは体内に魔力がほぼないから何も出来ない様に見えるが、自分の周りに放出した魔力は自身が操って放出しているから、今現時点でも操っているんだ」
「簡単に言えば、今までダイモンは体内から魔力を自身の内側から全身に纏わせて爆発的威力を出していたが、今は外側に直接魔力を纏わせられ、更に威力の高い攻撃が出来る状態ってことだ」
マルロスの問いかけに、ワイズとミカロスが説明する様に答えると何となく理解したのか、頷くも疑問が残っている様な感じだとミカロスは思い、補足する様に話し続けた。
魔力と言うのは、基本的には人の内部にあり、それを使用し魔力分類や魔法と言ったものを使っている。
なので、内部いわゆる内側にあればあるだけ強い魔力や魔法を使えたり出来るものだ。
一方で武術系などの接近戦をする際にも、魔力で威力を上げたりするが、その時も内側から外側いわゆる鎧の様に纏わせるイメージで使ったりする。
が、普通に魔法を使う際よりも、外側に出すと言う行為は難しく少しだが時間誤差も出て来る。
その為外側へ出せる魔力量も減ったりする事があるのだ。
イメージしやすくするならば、魔法と言うのは内から内で完成し後は放つだけであるが、魔力で外側の強化となると内から外に出し、そこで更にひと手間を加えて完成となるイメージである。
「そう言う事か、って事はだ。今のダイモンは、魔力自体を外側に出してるから1つ手間が消えて、武術の威力強化がしやすくなったって事か」
「俺がワイズの話と、ダイモンを見た感じではそう言う結論だ。実際どうなのかは、これからダイモンの動きで分かるはずだ」
「ミカロスは凄いよな。それを見て話を聞いただけで、そこまで理解するなんてさ」
マルロスは、ミカロスを褒めるように言うが、ミカロスは「俺なんて大したことないさ。本当に凄いのは、それを体現しているダイモンさ」と言って、ミカロスはダイモンの方へと視線を向けた。
それを聞いたマルロスは「それでも自分からしたら、十分だけど」と呟いて、同じようにダイモンの方へと視線を向けた。
そして中央の競技スペース上では、ダンデが震える手を抑えつつ、まだ勝負を諦めていない目をしていた。
「(どう言う事か全く分からないが、ダイモン寮長は今魔力がゼロ。つまり、魔法も武術強化も出来ないって事のはずだ……だが、ダイモン寮長からあふれ出る、あの妙な感じが俺の本能的に危険を伝えて来て震えているのは、無視できない)」
「……」
ダイモンとダンデは、その場から一歩も動かず互いに相手から視線をずらすことなく見ていた。
そして先に仕掛けたのは、ダンデであった。
「『バースト』!」
ダンデは、今のダイモンならば少なからずダメージを与えられると踏み、魔法を放つとダイモンが軽く前に体重を乗せた、次の瞬間だった。
放った魔法は、ダイモンの後方へと弾かれダンデの目の前にダイモンが突然現れた様な状況になる。
誰もがその瞬間、ダンデがやられると思ったが、ダンデはこんな状況になると想定していたのか驚くことなく、右拳を突き出し始めていた。
「直感は信じるもんですね!」
「っ!」
そして、ダンデの右拳がダイモンの顔面にぶつかろうかとした寸前だった、ダイモンの顔の前で何かに強制的に右拳が曲げられてしまう。
何が起きたのか分からないまま、ダンデは逆にダイモンの強力な一撃である右拳を、腹部にねじ込まれる様に叩き込まれそのまま場外へと吹き飛ばされてしまう。
ダンデは場外へと殴り飛ばされた後、体中の痛みに耐えつつも立ち上がり、無意識のままダイモンがいる競技スペースへと歩くも、途中で意識が完全に飛び前から地面に倒れた。
それを見ていたダイモンは、周囲に放出していた魔力を自分へと戻し、元の状態になって小さく呟いた。
「これで分かっただろ、ダンデ。お前は俺様にはなれないんだ」
ダイモンはそれだけ言い残し、中央の競技スペースから降りて行った。
大運動会第10競技『代表戦』
第1戦目 勝者 第3学年 ダイモン
競技場内の空中に大きく勝者の名前が表示され、第1戦目はダイモンの勝利で終わった。
一方負けてしまったダンデは、すぐさまタツミ先生の指示の下、競技場内の医務室へと運ばれ治療が行われた。
そして、中央の競技スペースが整備された後に第2戦目の対戦相手が発表になった。
大運動会第10競技『代表戦』
第2戦目 第2学年 ロムロス VS 第3学年 イルダ
「ワイズ、ダイモンは何をしたんだ? と言うか、ダイモンから魔力が突然消えたのは関係あるのか?」
マルロスの問いかけに、ワイズが答えた。
そもそも、魔力と言うのはこの世界の人間に必ずしもあるものではない。
だが、魔法学院に通う人間ならば大抵は持っているものであり、無意識ならがも相手の魔力を感じ取れたりしているものだ。
その感じ取った魔力を元に、魔法などを放ったり場所を認識している者もおり魔法学院に通った事がある人からすれば、その生徒から魔力を一切感じないと言うのは異常なことである。
実際には、特に問題があるわけではないが、今までにそんな人がいないだけで魔力がなければ、ただ魔法が使えないというだけなのである。
つまり簡単にダイモンの今の状態を言うと、魔法が使えないただの一般人と認識されている状態なのだ。
「じゃなに、ダイモンは相手の第2学年との勝負を捨てたって事か?」
「いいや、それは違うんじゃないのかワイズ」
その話に割って入って来たのは、ミカロスであった。
ミカロスはダイモンの先程の行動を見て、何かに気付いていた。
「あれは、ダイモンから魔力が消えたんではなく、ダイモン自身が自分の魔力を周囲に放出したんじゃないのか。それに、ダイモン自身からは極小だが魔力を感じ取れる」
「ほぉ、流石だなミカロス。そこまであの一瞬で分かってしまうのか?」
「と言う事は、合っているという事だな」
ミカロスの言葉に、ワイズが頷いて答えるとそのまま話を続けた。
ダイモンは、元々魔力を持っていながら使える魔法がほとんどなかった。
その為、第1学年から凄い生徒と言う訳ではなく、ただ武術を身に付けている変わった生徒と言う認識であった。
また、寮長と言うものは前の寮長が認めた者が引き継いでなる制度であるが、代々ライオン寮の寮長は、寮内で一番強い者が寮長になると言う方針と取っている。
では、何故そんな生徒が寮長まで上り詰めたかと言うと、ダイモンは魔法を捨て武術を極めたのだ。
正確に言うと、武術を極め更にその先へ進む為に、魔力分類の技量と質量を特化させたのだとワイズは語った。
「そう言われると、ダイモンが魔法を使う所をほとんど見た事ないような」
「なるほど、今のダイモンの状態が正しく、その武術と魔力分類を極めた先に至った極限状態と言う事か」
「そう言う理解で合っているぞ、ミカロス」
その中で唯一マルロスだけが、理解するまで時間がかかるも何となく理解し始める。
「でもさ、ダイモンは魔法を捨てて魔力を自分の周りに放出したからって別に強くなった訳じゃなくないか? 逆に言ったら、弱体化してないか?」
「確かに普通に考えれば、今のダイモンは体内に魔力がほぼないから何も出来ない様に見えるが、自分の周りに放出した魔力は自身が操って放出しているから、今現時点でも操っているんだ」
「簡単に言えば、今までダイモンは体内から魔力を自身の内側から全身に纏わせて爆発的威力を出していたが、今は外側に直接魔力を纏わせられ、更に威力の高い攻撃が出来る状態ってことだ」
マルロスの問いかけに、ワイズとミカロスが説明する様に答えると何となく理解したのか、頷くも疑問が残っている様な感じだとミカロスは思い、補足する様に話し続けた。
魔力と言うのは、基本的には人の内部にあり、それを使用し魔力分類や魔法と言ったものを使っている。
なので、内部いわゆる内側にあればあるだけ強い魔力や魔法を使えたり出来るものだ。
一方で武術系などの接近戦をする際にも、魔力で威力を上げたりするが、その時も内側から外側いわゆる鎧の様に纏わせるイメージで使ったりする。
が、普通に魔法を使う際よりも、外側に出すと言う行為は難しく少しだが時間誤差も出て来る。
その為外側へ出せる魔力量も減ったりする事があるのだ。
イメージしやすくするならば、魔法と言うのは内から内で完成し後は放つだけであるが、魔力で外側の強化となると内から外に出し、そこで更にひと手間を加えて完成となるイメージである。
「そう言う事か、って事はだ。今のダイモンは、魔力自体を外側に出してるから1つ手間が消えて、武術の威力強化がしやすくなったって事か」
「俺がワイズの話と、ダイモンを見た感じではそう言う結論だ。実際どうなのかは、これからダイモンの動きで分かるはずだ」
「ミカロスは凄いよな。それを見て話を聞いただけで、そこまで理解するなんてさ」
マルロスは、ミカロスを褒めるように言うが、ミカロスは「俺なんて大したことないさ。本当に凄いのは、それを体現しているダイモンさ」と言って、ミカロスはダイモンの方へと視線を向けた。
それを聞いたマルロスは「それでも自分からしたら、十分だけど」と呟いて、同じようにダイモンの方へと視線を向けた。
そして中央の競技スペース上では、ダンデが震える手を抑えつつ、まだ勝負を諦めていない目をしていた。
「(どう言う事か全く分からないが、ダイモン寮長は今魔力がゼロ。つまり、魔法も武術強化も出来ないって事のはずだ……だが、ダイモン寮長からあふれ出る、あの妙な感じが俺の本能的に危険を伝えて来て震えているのは、無視できない)」
「……」
ダイモンとダンデは、その場から一歩も動かず互いに相手から視線をずらすことなく見ていた。
そして先に仕掛けたのは、ダンデであった。
「『バースト』!」
ダンデは、今のダイモンならば少なからずダメージを与えられると踏み、魔法を放つとダイモンが軽く前に体重を乗せた、次の瞬間だった。
放った魔法は、ダイモンの後方へと弾かれダンデの目の前にダイモンが突然現れた様な状況になる。
誰もがその瞬間、ダンデがやられると思ったが、ダンデはこんな状況になると想定していたのか驚くことなく、右拳を突き出し始めていた。
「直感は信じるもんですね!」
「っ!」
そして、ダンデの右拳がダイモンの顔面にぶつかろうかとした寸前だった、ダイモンの顔の前で何かに強制的に右拳が曲げられてしまう。
何が起きたのか分からないまま、ダンデは逆にダイモンの強力な一撃である右拳を、腹部にねじ込まれる様に叩き込まれそのまま場外へと吹き飛ばされてしまう。
ダンデは場外へと殴り飛ばされた後、体中の痛みに耐えつつも立ち上がり、無意識のままダイモンがいる競技スペースへと歩くも、途中で意識が完全に飛び前から地面に倒れた。
それを見ていたダイモンは、周囲に放出していた魔力を自分へと戻し、元の状態になって小さく呟いた。
「これで分かっただろ、ダンデ。お前は俺様にはなれないんだ」
ダイモンはそれだけ言い残し、中央の競技スペースから降りて行った。
大運動会第10競技『代表戦』
第1戦目 勝者 第3学年 ダイモン
競技場内の空中に大きく勝者の名前が表示され、第1戦目はダイモンの勝利で終わった。
一方負けてしまったダンデは、すぐさまタツミ先生の指示の下、競技場内の医務室へと運ばれ治療が行われた。
そして、中央の競技スペースが整備された後に第2戦目の対戦相手が発表になった。
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