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第52話 チーム戦

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 シンの問題が一件落着して次の日、合同合宿7日目。
 6日目からは、チーム連携のカリキュラムが増え、基礎訓練と魔力分類の苦手分野特訓も今まで通りに行われた。
 私は未だに体力が戻らずに、直ぐに息切れをしてしまうが、何とかついていきメニューをこなした。
 その日のカリキュラム終了後、久しぶりに女子側のメンバーたちと合流し、教員たちから今後のカリキュラムについての話がされた。

「7日目のカリキュラムも無事に終了し、疲れている所集まってもらってたのは、明日以降のカリキュラムについてだ。残す所合同合宿も3日になった。そこで、明日からはチーム戦を行う」

 そこで教員が口にしたチーム戦とは、今のチームで各個々の力や助け合いを行ながらゴールを目指すというものであった。
 初日に事件があって以降このカリキュラムを行う為に、万全に調査を行い安全だと判断しての決定であるとも言っていた。
 そして詳しいチーム戦については明日話すと言われ、場所は近くの無人島で行う為、朝から移動すると言い渡されて解散となった。

「いや~まさか、チーム戦とかやるとはね。想像してなかったわ」
「俺は、付いて行けるか心配だよ。体力的に」
「大丈夫だって。俺もルークもいるしさ!」

 私の心配事にトウマは、励ますように言葉を掛けてくれた。
 するとそこに、アリス事マリアが私に声を掛けて来て、トウマが何かを察して先に帰ってるわと言って私から離れて行った。
 何も言っていないのに、どうしてトウマが離れて行ったのか不思議だったが、その後にマリアの話を聞いて納得した。

「な、なるほど……関係がある事を明かしたのね……」
「はい。勝手なまねをしてしまい、申し訳ありません。ただ、それ以上の事は特にありませんので、今ままで通りに過ごして下さい」
「まぁ、傷が治ってから特に変わった事も、マリアとの関係性とか深堀されることもなかったし、大丈夫かな」

 マリアその時は、タツミ先生との出来事は話さずにいた。
 とりあえず、クリスとアリスが家族であるとは知られたはしたが、特に支障はないという話になった。
 そして話はそれだけではなく、初日の魔物に関しての事についても報告された。
 内容は、以前聞いたルークのものとは異なり、魔物は自然発生したものではなく、何者かが持ち込んだものであると言われた。

 その証拠に、魔物がいた場所にマリアが向かった所、隈なく探したが、全く気配がなく魔物を小型化し運ぶことが出来る魔道具の痕跡が見つかったらしい。
 詳しい事は私には分からなかったが、何者かがこの島に魔物を持ち込み放っているので、明日以降も警戒して下さいとマリアに警戒するように言われた。
 その後マリアとも別れ、自身の宿泊施設へ戻り夕飯を皆と食べながらも、私はマリアから言われた事を考えていた。

 魔物を持ち運び、こんな所で放つ意味は何なの? あそこで私が出合った魔物の近くにあれを放った犯人がいたという事? だとしたら、誰が何の為にあんな事をしていたの?
 私は難しい顔をしつつ、夕飯を食べていたので近くにしたフェルトが、美味しくないのかと訊ねて来た。
 直ぐに私は、そんな事はないと言って夕飯に集中すると、そうかと言ってフェルトは自分の夕飯に戻って行った。
 その日の自由時間に、私はトウマと一緒にルークとシンの部屋を訪れた。
 何故ルークの部屋を訪れたかと言うと、初日の事件について話す為でもあり、あれからベンたちと何かあるか確認するためであった。

「そうか。あれから、呼び出しもいじめもピタリと止んだか。やり合ったかいがあったな、シン」
「うん。あざはまだ残ってるけど、後悔はないかな」
「にしても、シンが普通に話してるのが、まだ慣れないよ。頷いて会話する事に慣れ始めてたけど、今後は普通に話していくんだよね」

 私の問いかけに、シンは極力そうしていくよと答えた。
 元々、いじめも要因の一つで話さずにいたらしいが、それも変えて行こうと決めたらしい。
 するとそこに、扉がノックされる。
 ルークが返事をすると、入って来たのは、ガードルでありルークが呼び出したのであった。
 そして、簡単に初日の事件について振り返りつつ、ルークの調査した内容を共有した。

「さすがは、ルークだな。常駐している王国兵士から話を聞くとは」
「いらない事を言うなトウマ。話を戻すぞ。それでシン、あの時急にいなくなったのは、ベンたちに連れて行かれたからか?」
「うん、そうだよ。突然口を塞がれて、足を止めるように言われたんだ……そう言えばあの時、マイクが何かしてたような」

 シンの言葉に私たちが反応するも、それ以上の事が分かる事はなく解散となった。
 ひとまず、明日は安全であると言われた別の島に行くが、今回の様な事が無いとは言い切れないため、単独行動が無い様にとルークが最後に言った。
 そして自室に戻り、私はトウマにルークの事について聞いた。

「なぁ、ルークの奴やけに事件の事について調べてないか? あそこまで調べてるとは思わなかったんだけどよ」
「ん~たぶん、魔物が絡んでいるから興味を持ったのかもな」
「なるほど、興味を持つと知りたくなる変な癖のせいか」

 一瞬、私が怪我をしたから、シンの時みたいに心配してやってるんじゃないのかと思ってしまう。
 いやいやいや、何考えてんだ私! あいつがそんな事するわけないだろ! それをしてくれてるのは、マリアなんだから混同させるな!
 私は心の中で、マリアと行動が被っていたので勝手に合わせていた事をかき消した。

「後は、あいつの兄貴が単独で魔物を倒した事も関係してるのかもな」
「お兄さん? あ~第一王子の。顔はちょっとうる覚えだけど……」

 私はそこで、ルークに兄がいた事を思い出す。
 トウマが言うにはルークは、兄に対してコンプレックスがあるらしい。
 そう言い終わると、トウマはこの事は絶対にルークに言うなよと念を押される様に言われた。
 ルークは兄の事になると、めちゃくちゃ機嫌が悪くなるからと知り、それだけは絶対に言わないでおこうと決めた。

 そして次の日、私たちは宿泊施設前に全員集合した後、担当教員たちを先頭に港に移動した。
 そこから船に乗り、少し離れた無人島に到着した。
 船から降りた私たちは、女子たちとも合流し港にある施設内で担当教員たちから、チーム戦についての説明を受けていた。

「では、合同合宿8日目は前日に話した通り、チーム戦を行う。このチーム戦は、男女入り混じっての対戦方式で行う」

 チーム戦は、この無人島に各2チームずつ対角線上に配置され、浜辺から山の頂上を目指すものであった。
 道ながら、試練があるのでクリアし、チェックポイントを通過しつつ先に頂上を目指すゲーム的な内容であり、2日間かけて全チームと対戦してもらうと言い渡された。
 男子同士だけでなく、女子とも対戦すると伝えられた。

 説明が終了すると、事前にいくつかのルートを案内するとされ、チームごとに集まり何班かに分け、教員たちに案内をされた。
 これも安全を期してことであり、危ない箇所や立ち入らない場所を説明してくれた。
 案内も終わり、施設に戻って来ると対戦順が発表され、私たちの初戦はノルマ、ガードル、ピース、マックスがいるグループとなった。

「意外と色々なルートがあったな。後は試練がどんなものによるな」
「そうだな」
「まぁ、うちにはルークもいるし、サクッと行けちゃうかもな」
「楽しようとするな、トウマ。俺は極力試練はやらないぞ、出来る奴が全部やったら意味ないだろ」
「えー、けちいなルーク。お前たちもそう思わないか」

 トウマは、ルークから同じチームのクレイス魔法学院の男子たちに絡みに行った。
 私はそれを、ちょっと面倒な絡み方だなと見ながら思っていると、合同合宿8日目のチーム戦初戦が開始された。
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