上 下
6 / 50
第一章

006 死再付与/不死救済

しおりを挟む
「俺のはどんな感じ?」
「拝見してもよろしいでしょうか」
「いいよいいよ、ぜひ見てくれ。何が書いてあるかも分からん」

 彼女に存分に見せてやるとした。
 ボードはよく見ると角へと歪に進む線があり、その他には樹齢のような模様が中心から広がっていた。線と模様で、密集している。

「こ、これほど濃密なボードを見たのは初めてでございます……」
「でもなんか見づらいな」

 電子回路が複雑にボードの中心から広がっているような感じだ。
 これを見せられても、何がなんだか分からない。
 ただ彼女のと比べるとボード全体に模様が広がっていて、確かに濃密。

「本来は本人の魔力によってボードの広がり方も違いますが、シマヅ様のは魔力を得たであろう状態から爆発的にボードも変化しおります」
「魔力を得た状態? あ~……さっき君が何か言ってたけど、もしかして死ぬたびに俺は魔力を得ていたりする?」
「先ほどの光景を見た限りでは、そうかと思われます。それがおそらくシマヅ様に備わっている固有魔法が関係しているかと……ああ、ありましたね。死再付与《デッドストック》……?」
「なんだそりゃ」
「上級の固有魔法でしょうか、聞いた事もありません」

 失礼します、と彼女は言って心臓に似た模様を指で触れる。
 すると見た事のない文字が浮かび上がった。

「ええっと、シマヅ様が死亡時に魔力が付与され、魔力の器もその分に合わせて大きくなるようです。ボードの角が多いのもこれが関係しているようです。今後また角が増えるかもしれません」
「へー……」
「は、反応が薄いですね……」

 いや、よく分からないもので。

「魔力といってもいっぱい貰ったとしても器が小さければ漏れてしまいます。漏れた分は当然定着しないのですが、シマヅ様の場合は死亡時に魔力が付与されたらその分だけ器も大きくなっていくのです! それでボードが変化しているのでしょうね」
「お得だ」
「お得以上のものですよ! さ、最強になれますよきっと!」
「そんなの目指してないしなあ」
「他には……うぅ、閲覧不可がかけられてますね……」

 彼女が端にある円の模様に触れるも、光るのみで文字は浮かんでこない。
 俺も同じように触れたり突いたりしてみるが同様だった。

「あっ、でも名称は出てきてますね」
「ん? これか?」

 何度か突いてみたら短い単語のようなものだけが出てきた、相変わらず読めないが。ここはハスに任せよう。

「不死救済《イモータリティー》?」
「……名前的に、俺が死ねないのはこれのせいか?」
「おそらくは……。詳細は閲覧ができないので分かりませんね、もはやこれは固有魔法というには、領域を越えております……。神の与えた奇跡の力です……」
「呪いの間違いじゃない?」

 不死救済で死んでも生き返り、その際に死再付与で魔力が付与されて魔力の器も大きくなる――コンボ技か何かかよ。
 妙なものを仕込まれたものだな、いくら神様でも人権というものを尊重して欲しいね。自殺した人間ってのは蔑ろにしていいって姿勢なのか?
 そんな事を思いながら自分のボードを眺めるとした。
 中心のものだけ線は色濃く、外側へと向かう線は途中から色は薄れて行っている。
 蜘蛛の巣のようでもあり、樹齢のようでもあり、はたまたちょっとした迷路みたいなものでもある。
 こんなよく分からない板っきれに自分の将来性がどうこうとか書かれているのか?

「このボードの初期段階はどんなものなんだ?」
「人それぞれですね。線や模様はこれよりも少なく、三角形だったり四角形だったり、私が知っている方では最初から五角形という子もおりました。五角形は今頃一流の訓練所に入って聖騎士を目指しているでしょう」

 聖騎士とは、これまたファンタジーだな。

「角の数は増えたりしないのか?」
「体を兎に角鍛えたり、魔力を蓄える器を鍛えたり、神に祈りを捧げたりすると角の数が増えてボード内にも変化が生じると言われております。私は未だに三角形ですが……」
「そうか……」

 俺の場合は死ぬ度にボードも変化していったのかな。
 だとしたらこれからも変化していくかもしれない。手あたり次第に死ぬ方法を試すつもりだからな。

「私はこれといった特技もないので、角が増える事――昇角と言いますが、昇角するよう神に祈るしかございません」

 鍛えるなり祈るなりすれば昇角するかもしれないとして、俺はそれを熱心に行うかどうか。
 ……一蹴してしまおうかと思ったものの、もしかしたら角を増やしてボードをすごい事にさせれば、死ねるスキルが手に入る可能性も……無きにしもならず?
 だとしても、祈る事だけはやめておこう。
 なんか……あんな神様に祈りたくないし。

「この中心を囲むようにある五つの丸は何?」
「これは基本属性です。赤が火、青が水、緑が風、茶が土、黄が雷、シマヅ様はどれも適性があるようですね」

 中心に触れてみると光の線がそれら五つの玉へと伸びていっていた。
 曰く、適性があるかどうかはこの発光で確認できるらしい。
 全てに適性がある、といっても……だ。

「どうやって魔法は使うんだ?」
「イメージする事と魔力が必要、との事です。私はろくに使えませんが、初めての発動となると訓練が必要でしょう」
「イメージと魔力ねえ?」

 試しに炎を想像して自分の人差し指をじっと見つめてみた。

「うおっ」

 ボンッ――! と一瞬だけ炎が上がった。
 ……成功、とは言い難い気がする。

「おおっ! 魔法名の詠唱無しで発動できるとは、素晴らしいです! 大抵は発動すらしないのですよ」
「訓練してみるか……。魔法についてはまた後で詳しく聞くとするよ」

 自爆できる魔法があるのならば取得してみたい。
 一先ずボードは閉じておく。
 個人情報みたいなものだから他人にはあまり見せないほうがいいんだとか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた

ふぉ
ファンタジー
突然の異世界召喚、ところが俺を召喚した奴はいつまで経っても姿を見せない。 召喚地点を誤爆でもしたのだろうか? ここは剣と魔法のファンタジー世界。 俺は剣も魔法も使えない、言葉だって分からない。 特技は数学とテレキネシス。 小さくて軽い物限定で、一度触れた物を動かすことが出来るだけの能力だ。 俺は能力を使って日銭を稼ぎ細々と生活するはずが、皇女を救い魔族と戦う英雄に。 そして皇女は死に戻りの能力者だった。 俺は魔神ギスケと呼ばれ、周辺諸国の陰謀に対処しながら魔族と戦うことになる。 気が付くと魔族よりヤバそうな敵が現れて、迎えるとんでもない事態。 元の世界に残してきた俺のソースコードがえらい事態を引き起こしているし、もう滅茶苦茶だ。 そんな最中、元の世界の知人と出会う。 一人は魔王の娘、そしてもう一人は先代魔王の息子だった。 どうなってるんだ、この世界は? --------- 同じ世界の魔王の息子側の話はこちらです。 《魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された》 http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/414067046/

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...