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アクオメガって何
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それから二十分ほどして、勢いよく保健室のドアが開いた。
「蒼ーーー!! あんた襲われたってほんとなの?!」
鬼も白旗掲げて逃げ出さんばかりの形相で、翆が駆け寄って来た。後から美穂子も、
「蒼~! 大丈夫?!」
と、蒼の身体をぺたぺた触ってきた。一番最後に入って来た充は蒼の姿を見てはぁ、とため息をついた。
「だ、大丈夫だから。鳴海が助けてくれたから」
蒼は隣にいた鳴海を指差した。
「あらぁ、みっちゃんよりもイケメンがいたのねぇ、この学校」
(母さん第一声がそれか! しかも充本人の前でそれを言うか! 空気読め!)
「母さん! お礼くらい言えよ!」
「あら、そうだったわね。蒼の母でございます。この度は息子がお世話になりまして……」
美穂子が鳴海と榊に深々とお辞儀をした。
「末永……くん、と同じクラスの鳴海です」
鳴海が礼儀正しく頭を下げながら応えた。
「ちょっと、鳴海くんとやら? 蒼を襲った馬鹿はどこの誰なの? 取り逃がしたわけ? ギッタギッタにしてやるから連れてらっしゃい!」
(あぁ……姉ちゃんの頭に角が見えるよ……)
「すみません、末永を襲ったのは俺の遠い親戚なんです。俺が末永の友達だと分かればもう何もしないと思いますが……もし警察に言うのであれば俺が証言します」
蒼は目を見開いた。
(あの人、鳴海の親戚だったのか。どうりで知り合いっぽいと思った)
「警察!? そんな甘っちょろいところに任せるわけないでしょ!? うちの可愛い蒼をこんな目に遭わせたのよ!? 私が抹殺してやるわ!」
「姉ちゃん! もういいよ。服をちょっと脱がされただけだし、鳴海がそう言ってるならもう大丈夫だと思うから」
興奮状態の翆をどうどう、と抑える。被害者本人と姉のテンションが反比例しており、苦笑せざるを得ない。
「――蒼、ごめん」
今までずっと黙っていた充が、ようやく重そうに口を開いた。
「何だよ充」
「おまえを一人にした俺のせいだ」
「ばーか、おまえのせいなわけないだろ? 気にすんなよ」
自分のせいではないのに、変に罪の意識を表して珍しくしおらしくシュンとしている充を見るのは、ちょっとだけ気持ちいい――蒼はそんな場違いなことを考えていた。もちろん、そんなことが充に知れたら絶対零度の視線でもって罵倒されるのが目に見えているので、決して口にはしない。
「お話し中すみません。お母さん、末永くんのことでお話ししたいことがあるのですが……」
榊が申し訳なさそうに割り込んできた。
「あ、じゃあ俺はこれで……」
と、鳴海が席を外そうとする。蒼は彼を呼び止めた。
「鳴海、ほんとにありがとう」
「……ううん。間に合って本当によかった」
「鳴海くん、本当にありがとうございました」
美穂子が蒼に続いて言った。
ほんのりと笑うと、鳴海は医務室を出て行った。
「俺も席外します」
鳴海の後を追うように充が出て行こうとすると、
「みっちゃんはここにいてちょうだい。ね?」
美穂子が充を引き止めた。彼はしばらく黙った後、
「――分かりました」
そう返事をし、室内にあるパイプ椅子を三つ持って来て、それぞれ美穂子と翆に渡し、最後の一つには自分が座った。美穂子と翆は神妙な面持ちで椅子に腰を下ろす。その二人の様子を見て榊は穏やかに切り出した。
「お母さんとお姉さんは薄々分かってらっしゃったのですか?」
その質問に二人は頷いた。これから話す内容が母も姉も分かっているらしく、蒼は何だか自分だけ置いてきぼりになってる気がした。
「お母さん、今ここで、末永くんの前でお話ししてしまってもかまいませんか?」
榊が念を押すように美穂子に尋ねる。
「いつか、こんなことになるかも知れないと思っていました。私からよりも、先生からお話しいただいた方が蒼も冷静に聞けると思いますので、よろしくお願いします」
美穂子が椅子に座ったまま頭を下げた。翆も一緒に下げていた。榊は蒼の方へ向き直り、
「分かりました。――末永くん、君は性種検査を受けたことがあるかい?」
そう尋ねた。
「はい、小学生の頃に受けてベータと言われました」
義務ではないのだが、小学生になると性種検査を受ける子供が多い。その頃には体内で性種がほぼ決まっているからだ。性質が顕著に表に現れるのはもっと先であるが。
蒼も小学生の時に両親に連れられて検査を受けている。その時、医師からはベータだと告げられた。両親ともにベータであったので、その結果に何の疑いも持つことなく今まで生きてきたのだ。
「そっか。知っているかも知れないけれど、ベータの中には、希少だけれど後天的にオメガに変わってしまう人がいるんだ。後天性(aquired)のオメガということで、アクオメガと呼ばれているんだけど。末永くん、君はアクオメガなんだと思う」
「俺が……オメガ……」
蒼は焦点の合わない目で呟いた。
心の片隅で何となく覚悟していたとはいえ、もたらされた事実は蒼にとって例えようもなくショックだった。十七年間ベータとして生きてきて、今さら自分がオメガだと告げられても、おいそれと受け入れられるはずもない。
「うん。直腸上部に子宮口らしきものが出来てきているのも見えたし、その付近から女性で言う膣分泌液に当たるものも出ているようだし。さっきの抑制剤もすぐに効いたし、間違いないと思うんだ」
榊が蒼の後孔を調べた時、確かに粘液のような音がしていた。それが分泌液だったのかと、蒼は納得した。
でもご家族と一緒にちゃんと病院行って検査してもらってね、と榊がつけ足した。彼は桜坂学園の養護教諭ではなく校医なので、医療行為を行うことも出来る。生徒の中にオメガという性種が存在しうるからには、今回のような突発的な発情期がいつ起こっても不思議はない。そういった事態に対応出来るよう、校内に医者を常勤させている学校は多い。しかし所詮学校なので検査設備も整っておらず、正式な検査を受けるには専門の病院に行かなくてはならない。
蒼は母と姉を見た。二人は何も言わずにじっと榊の話に耳を傾けていた。充も同様だった。
「後天的に変化する人は、元々オメガの因子を体内に保有しているんだけど、それが覚醒しないでベータとして一生を終える人も多いんだ。でも【運命の番】であるアルファが身近に現れてそのフェロモンを受け続けたり、番に求愛されたりすると体内のオメガ因子が呼応して覚醒することもあるんだ。覚醒するとまず体内にフェロモンの分泌腺が出来る、それから子宮が出来てくるんだ。子宮が形成され始めると同時に、ほんのわずかだけどフェロモンの分泌も始まるようだよ。最近、体臭が変わったとか言われたりしなかったかい?」
蒼は思わず首筋を押さえた。充たちに甘い匂いがすると言われ続けてきたが、それがフェロモンだったとは思いもしなかった。
【運命の番】とは、文字通り運命に定められた相手のことだ。アルファとオメガの間にのみ作用する本能でのつながりである。運命の相手同士が一度番の契りを交わしてしまえば、死ぬまで添い遂げることになると言われている。運命の番であるアルファとオメガが出会いを果たした場合、意思の疎通をしなくとも双方が己の番だということは本能で理解出来るようになっている。しかしこれが未覚醒のアクオメガともなると、ほぼベータと同じ体質であるが故に運命の相手と出会ったとしても自覚がまったくないのである。つまりこの時点ではアルファの一方通行状態なのだ。
「それから、子宮が出来始めてから何日かはお腹下す人が多いんだけど、末永くんは大丈夫だった?」
「――アイスの食い過ぎじゃなかったんだ……」
榊は噛み砕くように優しい言葉で説明してくれているが、何もかもが蒼にとって初めてのことだったので、混乱を極めていた。
「お、俺はどうして、覚醒したんですか……」
「んー僕には分からないけど、もしかしたら君の近くにアルファの番がいるのかも知れないね」
蒼は固まった。榊の言葉を聞いた瞬間、真っ先に頭に思い浮かんだ人間がいたからだ。
「……」
その笑顔を思い出すと、今は心臓が少しだけ跳ねる。薬を飲む前とは明らかに種類を異にするものではあるが、確かに胸が締めつけられる。それなのに心の中がほんのり温かくなって、顔が自然と綻んでしまうのだ。
この気持ちは一体何という名前がつくのだろうか。
「……はぁ」
充が大げさに声を上げてため息をついた。
「どうしたの? みっちゃん」
美穂子が充の顔を覗き込んだ。
「……いえ。何事もなくてよかったと思って」
「蒼、みっちゃんに感謝しなさいよ。すごく心配そうに電話してきてくれたんだから」
「充、ほんとにありがと。ごめんな、心配かけて」
蒼は充相手にペコリと頭を下げた。充は眉尻を下げて蒼の頭をくしゃくしゃとかき撫でた。
「鳴海から電話がかかってきた時、心臓止まるかと思った」
「デート中だったんだろ? 彼女ほっておいてよかったのか?」
「気にするな。また埋め合わせすればいいし」
「っていうか、鳴海って充の電話番号知ってたんだな」
鳴海が充に電話をしたことを思い出した。すぐに連絡が取れたことを考えると、元から番号を知っていたに違いないと蒼は思ったのだ。あれほど「鳴海を信用するな」などと蒼に忠告しておきながら、充自身は鳴海に連絡先を教えていたということが不思議でならなかった。
「あー、おまえが鳴海と友達やる、って宣言した後に俺も鳴海と連絡先交換したんだよ。今回みたいなことがあったらすぐ連絡もらえるように。俺ってほんといい仕事するわ」
いつもの充が帰って来たな、と蒼は苦笑した。
「そうなんだ……」
(鳴海にも後でもっとちゃんとお礼言わないと)
蒼は安堵のため息をついた。
「蒼ーーー!! あんた襲われたってほんとなの?!」
鬼も白旗掲げて逃げ出さんばかりの形相で、翆が駆け寄って来た。後から美穂子も、
「蒼~! 大丈夫?!」
と、蒼の身体をぺたぺた触ってきた。一番最後に入って来た充は蒼の姿を見てはぁ、とため息をついた。
「だ、大丈夫だから。鳴海が助けてくれたから」
蒼は隣にいた鳴海を指差した。
「あらぁ、みっちゃんよりもイケメンがいたのねぇ、この学校」
(母さん第一声がそれか! しかも充本人の前でそれを言うか! 空気読め!)
「母さん! お礼くらい言えよ!」
「あら、そうだったわね。蒼の母でございます。この度は息子がお世話になりまして……」
美穂子が鳴海と榊に深々とお辞儀をした。
「末永……くん、と同じクラスの鳴海です」
鳴海が礼儀正しく頭を下げながら応えた。
「ちょっと、鳴海くんとやら? 蒼を襲った馬鹿はどこの誰なの? 取り逃がしたわけ? ギッタギッタにしてやるから連れてらっしゃい!」
(あぁ……姉ちゃんの頭に角が見えるよ……)
「すみません、末永を襲ったのは俺の遠い親戚なんです。俺が末永の友達だと分かればもう何もしないと思いますが……もし警察に言うのであれば俺が証言します」
蒼は目を見開いた。
(あの人、鳴海の親戚だったのか。どうりで知り合いっぽいと思った)
「警察!? そんな甘っちょろいところに任せるわけないでしょ!? うちの可愛い蒼をこんな目に遭わせたのよ!? 私が抹殺してやるわ!」
「姉ちゃん! もういいよ。服をちょっと脱がされただけだし、鳴海がそう言ってるならもう大丈夫だと思うから」
興奮状態の翆をどうどう、と抑える。被害者本人と姉のテンションが反比例しており、苦笑せざるを得ない。
「――蒼、ごめん」
今までずっと黙っていた充が、ようやく重そうに口を開いた。
「何だよ充」
「おまえを一人にした俺のせいだ」
「ばーか、おまえのせいなわけないだろ? 気にすんなよ」
自分のせいではないのに、変に罪の意識を表して珍しくしおらしくシュンとしている充を見るのは、ちょっとだけ気持ちいい――蒼はそんな場違いなことを考えていた。もちろん、そんなことが充に知れたら絶対零度の視線でもって罵倒されるのが目に見えているので、決して口にはしない。
「お話し中すみません。お母さん、末永くんのことでお話ししたいことがあるのですが……」
榊が申し訳なさそうに割り込んできた。
「あ、じゃあ俺はこれで……」
と、鳴海が席を外そうとする。蒼は彼を呼び止めた。
「鳴海、ほんとにありがとう」
「……ううん。間に合って本当によかった」
「鳴海くん、本当にありがとうございました」
美穂子が蒼に続いて言った。
ほんのりと笑うと、鳴海は医務室を出て行った。
「俺も席外します」
鳴海の後を追うように充が出て行こうとすると、
「みっちゃんはここにいてちょうだい。ね?」
美穂子が充を引き止めた。彼はしばらく黙った後、
「――分かりました」
そう返事をし、室内にあるパイプ椅子を三つ持って来て、それぞれ美穂子と翆に渡し、最後の一つには自分が座った。美穂子と翆は神妙な面持ちで椅子に腰を下ろす。その二人の様子を見て榊は穏やかに切り出した。
「お母さんとお姉さんは薄々分かってらっしゃったのですか?」
その質問に二人は頷いた。これから話す内容が母も姉も分かっているらしく、蒼は何だか自分だけ置いてきぼりになってる気がした。
「お母さん、今ここで、末永くんの前でお話ししてしまってもかまいませんか?」
榊が念を押すように美穂子に尋ねる。
「いつか、こんなことになるかも知れないと思っていました。私からよりも、先生からお話しいただいた方が蒼も冷静に聞けると思いますので、よろしくお願いします」
美穂子が椅子に座ったまま頭を下げた。翆も一緒に下げていた。榊は蒼の方へ向き直り、
「分かりました。――末永くん、君は性種検査を受けたことがあるかい?」
そう尋ねた。
「はい、小学生の頃に受けてベータと言われました」
義務ではないのだが、小学生になると性種検査を受ける子供が多い。その頃には体内で性種がほぼ決まっているからだ。性質が顕著に表に現れるのはもっと先であるが。
蒼も小学生の時に両親に連れられて検査を受けている。その時、医師からはベータだと告げられた。両親ともにベータであったので、その結果に何の疑いも持つことなく今まで生きてきたのだ。
「そっか。知っているかも知れないけれど、ベータの中には、希少だけれど後天的にオメガに変わってしまう人がいるんだ。後天性(aquired)のオメガということで、アクオメガと呼ばれているんだけど。末永くん、君はアクオメガなんだと思う」
「俺が……オメガ……」
蒼は焦点の合わない目で呟いた。
心の片隅で何となく覚悟していたとはいえ、もたらされた事実は蒼にとって例えようもなくショックだった。十七年間ベータとして生きてきて、今さら自分がオメガだと告げられても、おいそれと受け入れられるはずもない。
「うん。直腸上部に子宮口らしきものが出来てきているのも見えたし、その付近から女性で言う膣分泌液に当たるものも出ているようだし。さっきの抑制剤もすぐに効いたし、間違いないと思うんだ」
榊が蒼の後孔を調べた時、確かに粘液のような音がしていた。それが分泌液だったのかと、蒼は納得した。
でもご家族と一緒にちゃんと病院行って検査してもらってね、と榊がつけ足した。彼は桜坂学園の養護教諭ではなく校医なので、医療行為を行うことも出来る。生徒の中にオメガという性種が存在しうるからには、今回のような突発的な発情期がいつ起こっても不思議はない。そういった事態に対応出来るよう、校内に医者を常勤させている学校は多い。しかし所詮学校なので検査設備も整っておらず、正式な検査を受けるには専門の病院に行かなくてはならない。
蒼は母と姉を見た。二人は何も言わずにじっと榊の話に耳を傾けていた。充も同様だった。
「後天的に変化する人は、元々オメガの因子を体内に保有しているんだけど、それが覚醒しないでベータとして一生を終える人も多いんだ。でも【運命の番】であるアルファが身近に現れてそのフェロモンを受け続けたり、番に求愛されたりすると体内のオメガ因子が呼応して覚醒することもあるんだ。覚醒するとまず体内にフェロモンの分泌腺が出来る、それから子宮が出来てくるんだ。子宮が形成され始めると同時に、ほんのわずかだけどフェロモンの分泌も始まるようだよ。最近、体臭が変わったとか言われたりしなかったかい?」
蒼は思わず首筋を押さえた。充たちに甘い匂いがすると言われ続けてきたが、それがフェロモンだったとは思いもしなかった。
【運命の番】とは、文字通り運命に定められた相手のことだ。アルファとオメガの間にのみ作用する本能でのつながりである。運命の相手同士が一度番の契りを交わしてしまえば、死ぬまで添い遂げることになると言われている。運命の番であるアルファとオメガが出会いを果たした場合、意思の疎通をしなくとも双方が己の番だということは本能で理解出来るようになっている。しかしこれが未覚醒のアクオメガともなると、ほぼベータと同じ体質であるが故に運命の相手と出会ったとしても自覚がまったくないのである。つまりこの時点ではアルファの一方通行状態なのだ。
「それから、子宮が出来始めてから何日かはお腹下す人が多いんだけど、末永くんは大丈夫だった?」
「――アイスの食い過ぎじゃなかったんだ……」
榊は噛み砕くように優しい言葉で説明してくれているが、何もかもが蒼にとって初めてのことだったので、混乱を極めていた。
「お、俺はどうして、覚醒したんですか……」
「んー僕には分からないけど、もしかしたら君の近くにアルファの番がいるのかも知れないね」
蒼は固まった。榊の言葉を聞いた瞬間、真っ先に頭に思い浮かんだ人間がいたからだ。
「……」
その笑顔を思い出すと、今は心臓が少しだけ跳ねる。薬を飲む前とは明らかに種類を異にするものではあるが、確かに胸が締めつけられる。それなのに心の中がほんのり温かくなって、顔が自然と綻んでしまうのだ。
この気持ちは一体何という名前がつくのだろうか。
「……はぁ」
充が大げさに声を上げてため息をついた。
「どうしたの? みっちゃん」
美穂子が充の顔を覗き込んだ。
「……いえ。何事もなくてよかったと思って」
「蒼、みっちゃんに感謝しなさいよ。すごく心配そうに電話してきてくれたんだから」
「充、ほんとにありがと。ごめんな、心配かけて」
蒼は充相手にペコリと頭を下げた。充は眉尻を下げて蒼の頭をくしゃくしゃとかき撫でた。
「鳴海から電話がかかってきた時、心臓止まるかと思った」
「デート中だったんだろ? 彼女ほっておいてよかったのか?」
「気にするな。また埋め合わせすればいいし」
「っていうか、鳴海って充の電話番号知ってたんだな」
鳴海が充に電話をしたことを思い出した。すぐに連絡が取れたことを考えると、元から番号を知っていたに違いないと蒼は思ったのだ。あれほど「鳴海を信用するな」などと蒼に忠告しておきながら、充自身は鳴海に連絡先を教えていたということが不思議でならなかった。
「あー、おまえが鳴海と友達やる、って宣言した後に俺も鳴海と連絡先交換したんだよ。今回みたいなことがあったらすぐ連絡もらえるように。俺ってほんといい仕事するわ」
いつもの充が帰って来たな、と蒼は苦笑した。
「そうなんだ……」
(鳴海にも後でもっとちゃんとお礼言わないと)
蒼は安堵のため息をついた。
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