34 / 35
第34話
しおりを挟む
「……疲れた?」
颯斗に尋ねられ、花梨はゆるゆるとかぶりを振った。
「つ、かれてはいない、けど……。でも、いろいろと扉を開いてしまった感じが……」
知らなかった世界に第一歩を踏み出してしまったのは本当だ。まだほんの序盤とはいえ、セックスの快感の片鱗を味わってしまったから。
初めてなのにこんなに気持ちよくなってもいいのだろうかと、罪悪感すら湧いてくる。
彼女の言葉に颯斗はクスリと笑う。
「まぁ、確かに。でもまだ扉は残ってるからな、花梨」
そう宣言しながら、彼は次の段階への準備を進めている。花梨はすっと目を逸らした。恥ずかしくて凝視などできないからだ。
(こ、こういう時って、どういう反応したらいいんだろう……)
何もかもが初めてなので、場が保たない。
颯斗は自分のローブを脱いだ後、枕の下に忍ばせてあったらしい避妊具を育ちきった屹立にまとわせている。
その様子を気配で感じた花梨は、さりげなくベッドスプレッドをたぐり寄せて顔を半分隠した。乱れて火照った裸身をそのまま空気に晒したままでいるのは、あまりにも恥ずかしくて。
けれどすぐに颯斗がそれをそっと剥いできて。
「恥ずかしがって隠れている花梨も可愛いけど、次の扉を開いていい?」
とろけそうな笑顔で囁いた。
目の前に現れた均整の取れた上半身――思わず見とれてしまう。
颯斗は花梨の身体をきれいだと褒めてくれたけれど、彼の方こそとてもきれいだと、彼女は頬を染める。
「ぁ……はい……」
花梨の身体は緊張感を帯びたものの、怖くはなかった。颯斗にならすべてを任せられるから。
颯斗は花梨の脚を開き、身体を割り込ませる。彼女の秘部は先ほどの余韻を残し、未だ十分に潤んでいた。
「……っ」
熱い肉塊が蜜口に押し当てられ、ぬち……と、濡れた音を立てる。それは指とも舌とも違っていて――硬く、それでいて弾力がある、たとえようのない、不思議な感触だ。
颯斗の屹立は、花梨の浅瀬を滑るように往復する。行き来するたびにそれは徐々に両襞に埋まっていく。
時折、陰核を掠めてきて、そのたびに「ん……っ」と、鼻から色づいた呼気が漏れてしまう。
「力を抜いて……って言っても、無理だろうから、口で呼吸していて」
花梨はいっぱいいっぱいで、言葉を返すことができず、頬を上気させたまま、ただ何度もうなずいた。
熱杭は花梨の蜜口でひた、と止まると、こじ開けるように中へ入ってくる。熱さを植えつけるように隘路をゆっくりと少し進んだところで、彼女の眉が歪んだ。
「っ!」
わずかな痛みが訪れる。彼の言うとおり口での呼吸を繰り返すが、それでも身体には力が入ってしまう。花梨は思わず、頭の下に敷かれた枕をぎゅっと握りしめた。
「……痛い?」
「ま……だ、大丈夫……」
花梨がかろうじてそれだけを告げると、彼は眉尻を下げて彼女の頬を撫でた。そして――
「……ごめん」
そう言い残し、ぐっと腰を押し進めた。
「っ!!」
膣口の奥でぷつりと何かが弾けたような感覚がして、鋭い痛みが下肢を走る。身体は強張り、弓なりに反ってしまう。
あまりの痛みに、花梨のまなじりに雫がふくらんで、一筋流れ落ちた。
「……ぅ、ん……」
痛くて痛くて、図らずも唸るような声を漏らしてしまう。
「痛かったろ……ごめんな、花梨」
身体を花梨の上に落とした颯斗が、彼女の涙を親指で拭い、額や頬にキスをした。
「……は、やと、さん……」
「何?」
「痛かったじゃないよ……。今も痛いよ……?」
花梨は瞳を潤ませたまま、薄い笑みを浮かべた。
「そうか……ごめん」
「謝らないで。初めては、みんなこうなんでしょう……? それに、痛いけどつらくはないの。……幸せだなぁ、って。……初めてが颯斗さんでよかった」
それは紛れもなく、心の底からあふれ出す本心だ。
こんなに好きになった人は今までいなくて――その男性に、初めてを捧げられたことが、こんなにも内面を満たしてくれるとは思わなかった。
花梨の言葉に、颯斗が目を丸くした。数瞬後、その目をふにゃりと緩めた彼は、花梨にくちづけた。
「――俺も幸せだ……花梨」
颯斗に尋ねられ、花梨はゆるゆるとかぶりを振った。
「つ、かれてはいない、けど……。でも、いろいろと扉を開いてしまった感じが……」
知らなかった世界に第一歩を踏み出してしまったのは本当だ。まだほんの序盤とはいえ、セックスの快感の片鱗を味わってしまったから。
初めてなのにこんなに気持ちよくなってもいいのだろうかと、罪悪感すら湧いてくる。
彼女の言葉に颯斗はクスリと笑う。
「まぁ、確かに。でもまだ扉は残ってるからな、花梨」
そう宣言しながら、彼は次の段階への準備を進めている。花梨はすっと目を逸らした。恥ずかしくて凝視などできないからだ。
(こ、こういう時って、どういう反応したらいいんだろう……)
何もかもが初めてなので、場が保たない。
颯斗は自分のローブを脱いだ後、枕の下に忍ばせてあったらしい避妊具を育ちきった屹立にまとわせている。
その様子を気配で感じた花梨は、さりげなくベッドスプレッドをたぐり寄せて顔を半分隠した。乱れて火照った裸身をそのまま空気に晒したままでいるのは、あまりにも恥ずかしくて。
けれどすぐに颯斗がそれをそっと剥いできて。
「恥ずかしがって隠れている花梨も可愛いけど、次の扉を開いていい?」
とろけそうな笑顔で囁いた。
目の前に現れた均整の取れた上半身――思わず見とれてしまう。
颯斗は花梨の身体をきれいだと褒めてくれたけれど、彼の方こそとてもきれいだと、彼女は頬を染める。
「ぁ……はい……」
花梨の身体は緊張感を帯びたものの、怖くはなかった。颯斗にならすべてを任せられるから。
颯斗は花梨の脚を開き、身体を割り込ませる。彼女の秘部は先ほどの余韻を残し、未だ十分に潤んでいた。
「……っ」
熱い肉塊が蜜口に押し当てられ、ぬち……と、濡れた音を立てる。それは指とも舌とも違っていて――硬く、それでいて弾力がある、たとえようのない、不思議な感触だ。
颯斗の屹立は、花梨の浅瀬を滑るように往復する。行き来するたびにそれは徐々に両襞に埋まっていく。
時折、陰核を掠めてきて、そのたびに「ん……っ」と、鼻から色づいた呼気が漏れてしまう。
「力を抜いて……って言っても、無理だろうから、口で呼吸していて」
花梨はいっぱいいっぱいで、言葉を返すことができず、頬を上気させたまま、ただ何度もうなずいた。
熱杭は花梨の蜜口でひた、と止まると、こじ開けるように中へ入ってくる。熱さを植えつけるように隘路をゆっくりと少し進んだところで、彼女の眉が歪んだ。
「っ!」
わずかな痛みが訪れる。彼の言うとおり口での呼吸を繰り返すが、それでも身体には力が入ってしまう。花梨は思わず、頭の下に敷かれた枕をぎゅっと握りしめた。
「……痛い?」
「ま……だ、大丈夫……」
花梨がかろうじてそれだけを告げると、彼は眉尻を下げて彼女の頬を撫でた。そして――
「……ごめん」
そう言い残し、ぐっと腰を押し進めた。
「っ!!」
膣口の奥でぷつりと何かが弾けたような感覚がして、鋭い痛みが下肢を走る。身体は強張り、弓なりに反ってしまう。
あまりの痛みに、花梨のまなじりに雫がふくらんで、一筋流れ落ちた。
「……ぅ、ん……」
痛くて痛くて、図らずも唸るような声を漏らしてしまう。
「痛かったろ……ごめんな、花梨」
身体を花梨の上に落とした颯斗が、彼女の涙を親指で拭い、額や頬にキスをした。
「……は、やと、さん……」
「何?」
「痛かったじゃないよ……。今も痛いよ……?」
花梨は瞳を潤ませたまま、薄い笑みを浮かべた。
「そうか……ごめん」
「謝らないで。初めては、みんなこうなんでしょう……? それに、痛いけどつらくはないの。……幸せだなぁ、って。……初めてが颯斗さんでよかった」
それは紛れもなく、心の底からあふれ出す本心だ。
こんなに好きになった人は今までいなくて――その男性に、初めてを捧げられたことが、こんなにも内面を満たしてくれるとは思わなかった。
花梨の言葉に、颯斗が目を丸くした。数瞬後、その目をふにゃりと緩めた彼は、花梨にくちづけた。
「――俺も幸せだ……花梨」
0
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる