奴隷少女の孤独な革命

大和ラカ

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第1章 奴隷少女の奴隷生活

奴隷少女と拷問

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 翌朝。
 目を覚ました私はいつもでは感じたことの無い気怠さを覚えていた。
 うっすら目を開けてみると、視界に入ったのは見覚えのない天井。辺りを少し見ると檻の中。

「……そうだった。私、昨日ここに入れられたんだ……」

 思い出したくもない昨日のことを思い出し、気持ち悪くなり吐き気を催す。
 咄嗟に手で口を塞ぎ、混みあがってくるものを抑え込む。
 今までで一番目覚めが悪いと思う。

 あの夜の出来事など記憶から消したりたい。
 人生で味わったことの無いほどの苦痛だった。
 そして、今まで感じたことのない悔しさや屈辱、憤りを覚えた。

 身体をゆっくりと起こすと自分が衣服を纏ってないことに気がつく。
 昨日されるがままにされたあと、そのまま意識を失っていたのだ。
 近くに捨てられていた麻の布切れを改めて身にまとい、壁にもたれ掛かる。

 しばらくボーッと窓の外を眺めていると部屋の扉が開かれる。
 誰が来たのだろう?
 そこには使用人と思わしき男性が袋を持って中に入ってきた。

「この子がご主人様が言ってた奴隷か……」

 使用人の人は眉を下げ、どこか軽蔑するような目で私を見ていた。
 奴隷を見る目などそのようなものだろう。
 そして、持っていた袋を檻の前に置き、私に語りかけてくる。

「こちらはご主人様に頼まれて用意した朝食です。朝と夜の2回お届けに来ます」

 それだけ言うと使用人の人は部屋を後にした。
 私はゆっくりと袋に近づき、手に取って中を確認すると中にはパンが入っている。
 といってもそのパンはカピカピに乾いており、普通では食べることの無い乾いたパンだった。

 奴隷に食べさせるものなどこの程度でいいということなんだろう。
 私は小さくため息をつき、悲しみに耽りながらパンを口にした。
 硬く、パサパサで私の知るパンのような美味しさはない。一言で言ってしまえばとても不味い。ただ飢えを凌ぐには食べるしかないだろう。

 食べなければ死んでしまう。死ぬのはやっぱり嫌だった。
 色んな気持ちを抱きながら私はパンを噛み締める。

 その後、しばらくは誰もここに訪れなかった。
 部屋には私1人、檻の中にはにもない。辺りで目につくとしたら柵のついた大きな窓くらい。
 やることの無い私はそこから窓の外を眺めるくらいしかやることがなかった。

 ただ、眺めている間にひとつの疑問を抱いた。
 それはなぜ私を奴隷として買ったのか。
 奴隷なら無理やりにでも仕事をさせたりするものだと思っていたがこの家の人はそんな素振りがない。

 昨日あの人が言っていた精霊魔法というものが目的なのだろうか?

 でも私はそんなもの知りもしないし使ったこともない。
 どうしてそのような話になっているのか検討もつかなかった。
 いや、売られる直前に両親が何か話していたような気がするが、どうしてそう思ったのだろうか。
 話をしていたことが、精霊を扱っていることにつながるのだろうか?

 そのようなことを考えていると部屋の扉が開かれ、ヘンリーと魔術師のような人、使用人合わせて3人が部屋に入ってきた。

「やあ小娘、精霊を出す気にはなったか?」

 開口一番にそう言ってくるが私は黙ったままヘンリーを見る。
 その態度が気に食わなかったようでヘンリーの表情があからさまに不機嫌になった。

「生意気な。そんなに出す気がないなら出したくなるようにさせてやる。お前ら、やれ」

 ヘンリーの指示に魔術師と使用人が檻の中に入ってくる。
 何をする気なのだろうかと様子を見ていると魔術師の足元に魔法陣が現れる。
 そして次の瞬間私の身体が地面に押し付けられた。

「ぐぅ……あが……」

 身体がとても重く、地面に吸い寄せられているような感覚が襲いかかる。
 苦しい……身体が痛い……
 抵抗もできずただ押し付けられ呻くことしか出来ない。

「重力魔法は苦しいだろう。その苦しさから逃れたいなら精霊魔法を出すんだな」

 そう言ってヘンリーは私のことを睨みつける。
 しかし、私は精霊魔法なんて知らない。出せる訳が無いのだ。
 つまり、この重力魔法を受け続けることしか出来ない。
 そもそもあまりの苦しさに言葉を発することもままならないためどうすることもできず、ただ呻き声をあげることしか出来なかった。

 しばらくして魔法を解除して貰えたが起き上がることができず地に伏せたままぐったりしている。
 すると使用人に無理やり起こされ、手足につけられている枷を壁の金具に繋げ、貼り付けにされる形にされた。
 そして2人が部屋の外に出ると再びヘンリーが私に語りかけてくる。

「精霊魔法を使え!」

「し、知らない……分からない……」

「ふざけるな! 知らない訳がない、お前が使ったという話を聞いたというのに!」

 一体誰がそんなことを……
 精霊とおしゃべりしていたけどそれの事なのだろうか?
 何が何だか分からずおどおどしていたがイラついたヘンリーが壁に出ている突起している石に触れた。
 その瞬間私の身体に電気が走ったように全身に痺れをかんじる。

「があぁぁぁ……ガハッ……ハァッ……」

 さっき以上の苦しさが全身を襲う。
 電流が止まると私は鎖に身体を預けたまま崩れ落ちた。
 霞む視界にヘンリーの姿を捉えるも、ヘンリーは不満そうな表情を浮かべたままだ。

 どうしてこんなことするんだろう……

 再び身体中を電気が走り、叫び声をあげると私はそのまま意識を手放した。
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