グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅴ

第232話 新キョウト都市奪還戦争 Ⅰ-⑩ 攻防

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「やった!!」

 オレの渾身の一撃でSS級グールの1体を倒せた。
 既に欄島たちの攻撃で手負いだったのが効いた。

「うむ! やるな佐々木! 一撃でこのグールを倒すとはな!!」

 オレを褒めてくれる千城を見ると、グール4体に囲まれてすでに血だらけでかなり傷だらけだ。

「せ、千城さん! そんなこと言ってる場合ですか!!」

 オレは銃撃を放って千城の援護をした。

「大丈夫だ!」

(いや、どう見ても大丈夫じゃない!)

二重超新星弾散弾クリアスノヴァショット!!!」

ドドドオオオオオウウウ!!!!

 これで何とかグールたちを千城から引き離すことができた。
 欄島も雨のような弾丸をずっと連射し続けて援護を続けている。

「千城さん!」

「大丈夫だと言っている! お前も攻撃しろ!」

 オレは千城の体から不自然に蒸気が上がっていることに気付いた。

(これは……? 回復している?)

「うむ! 闘衣纏身、闘脈潮身、闘骨結身を極め、オレは超回復能力を獲得した! だから大丈夫だ! 行くぞ!!」

 千城はそう言ってグールに向かって行ってしまった。

「あ! ちょっと!!」

(あ、相変わらずだな……)

「おおお! 二重究極飛拳ダイセオソニック!!」

ドドオオオン!!

 千城の攻撃が決まり、1体のグールが吹き飛んだ。

「よし!」

 しかし、まだ周囲には3体ものSS級グールがいる。

(よしじゃないだろ!)

「任せてー。七毛秒連弾ダブルオーセブンセコンド!!」

バルルルルル!!!!

 欄島の軽い声と共に、打ち出される弾丸の密度が一気に増した。

ガアアアア!!!

 一発一発はそこまでの威力は無いが、高密度で何十も同時に攻撃を受けたグールたちは雄叫びを上げて苦しんだ。

「おお! よし、今だ! 三重電磁加速天輪弾ルミナスレールガンイーリオス!!」

ギャウウウウウ!!!

 オレの攻撃で2体の背光陣を打ち砕いた。
 そしてオレは激しい銃弾の雨の中、千城が魔素を練り上げて攻撃の準備をしていることを知っていた。

(間違いない! 千城さんは欄島さんをの弾丸を受けた分ケガと魔素が回復している!!)

三重究極飛拳トライセオソニック!!!」

ドオオオオオ!!!

 千城の攻撃をまともに受けた背光陣を失ったグールの1体がバラバラになり吹き飛んだ。

「やった!! あと3体だ!!」

ゴアアアアア!!!

 グールたちが咆哮を上げている。
 怒りもあるのだろうが、数が減り、欄島からの射撃の密度が更に増したことが大きい。
 少しずつだが、確実にダメージを蓄積させている。

「うむ! もう1体もオレが倒すぞ!!」

 千城がそう言ってグールに向かった。

「え!? ちょっと!!」

 確かに背光陣を失ったSS級グールならば千城の攻撃も致命傷にまで届かせることができる。
 しかし、SS級隊員のオレがいるのにわざわざS+級の千城が先陣を切らなくてもいい。

「ああもう! 援護します! 平方第12励起レゾナンシアスクエアトゥエルブ!! 天狼征軍弾セイリオスクルセイズ!!!」

 オレは新たに開発した144発の同時弾丸発射を使い一気に敵を削った。

グオオオオオォォォ!!!!

 背光陣の無いグールは他の2体のグールの背中に回り込み、弾幕から身を守った。
 しかし矢面に立った2体のうち、1体の背光陣も砕くことが出来た。もう1体のものにもヒビが入っている。

究極爆風飛拳セオブラストソニック!! 二連ツーフォルド!!!」

ズズオオオオンンン!!!

 千城の激しい攻撃を受けたグールはとうとう3体とも光の法陣を失い、防御が遅れたグールは激しく体を損傷した。

 しかし。

(致命傷には届いてない!!)

ドオオオオオン!!!

「千城さん!!」

 グールの反撃を至近距離で受けた千城が吹き飛んだ。
 
 グールたちは揃って千城に追い打ちを掛けようと空中を駆けた。
 だが欄島が高速機動でその間に立ちはだかった。

「させないよ。八集拡大収束密集魔弾丸オクタソニッククロウドレールバレット!!」

ドオオウウウ!!!

 欄島の強力な一撃で2体のグールが吹き飛んだ。
 しかし最後の1体が血だらけのまま欄島へと迫った。

ドオン!!

 この攻撃は、オレがなんとか受けきった。

「くう! 痛え! だけどこれで終わりだ! 平方第11励起レゾナンシアスクエアイレブン!! 鼓星麦星征軍激リゲルアークトルスクルセイズ!!!」

ドドドドドオオオウウウウ!!!

 オレの連続攻撃で最後のSS級グールは完全に絶命した。

「おおー! やった!」

 欄島も消耗は激しいはずだが、声は普段通りだ。

「ら、欄島さん! 千城さんは無事ですか!?」

 オレは欄島に抱えられている千城を見た。
 しかし弾けるように欄島の手を離れ千城が空中に浮かんだ。

「よくやってくれた! 佐々木! オレはなんともないぞ!! それより! 油断するな!!」

(なに?)

ドオオウウウ!!!

「ぐああ!」

 突如、オレの背中に激しい爆発が起こった。

(こ、これは!? 倒しきれてなかったのか!)

 さっき欄島に吹き飛ばされた2体が、手足を失いながらも攻撃を仕掛けて来ていた。
 オレは爆発でかなり引き離されてしまったが、すでに欄島と千城が2体のグールを相手取っていた。

(千城さんはまだあまり動けない! 早く援護しないと!!)

 オレはジェットブーツに魔素を流し込み、2人の元へと空を駆けた。

「欄島さん! 千城さん!」

「おおー! 佐々木くん! そんな軽傷で済むとはすごいね!」

 欄島はどんな状況でも緊張感というものを感じない。

「行きます! 超新星弾散弾ノヴァショット!!」

 オレの弾丸を2体のグールが身を捩ってかわそうとしているが、さすがに全部はかわしきれていない。

 手足を失っていたグールはさらに激しく体を損傷しながら悶えだ。

グオオォォォ!!!

 欄島は苦しむグールの目の前で8丁の魔銃を自分の両手の周りへと集め、魔素を練り始めた。

「今度こそ終わりだよ。八集拡大収束密集魔光線オクタソニッククロウドレールソニック!!!」

ギュオオオオ!!!!

 2体のグールは欄島の放った光線に包まれ、とうとうその体を焼け焦がせながら地上へと落下した。

「や、やった! 欄島さん! 千城さんは!? 無事すか!?」

 オレは重傷のはずの千城の身を案じた。

「まあ、千城さんだから大丈夫だよ」

(そ、そうなのか??)

 千城はふらつきながらも胸を張ってオレにサムズアップで無事を知らせて来た。
 どうやら本当に大丈夫らしい。

「と、とにかく! 差し当たりのグールは倒せましたね!」

「うむ! しかし人型グールと戦うワイズ隊員! 他の上級グールと戦う隊員たち! どちらにも増援が必要そうだぞ!」

 オレの言葉に千城が答えた。
 もう先の戦況を読んでいるようだ。

「そ、そうなんですか?」

 千城は特殊な第6感覚と自身の感覚で一瞬で戦況を判断してこれからの先の最善な行動を決めることができる。
 以前、北部開拓任務の時はその能力でオレたちは大いに助けられた。

「うむ! 佐々木! 欄島! 2人は人型グールの方へ行け! オレは下の特級グールの方へ行くぞ!」

 オレは感知を凝らすと確かに大量のA級グールと特級グールに群がられているナナたちが苦戦しているのが分かった。
 しかしワイズから来た2人はなんと人型グールと互角以上で圧倒しているようだ。

(オレと欄島さんが人型の方へ行ったらバランスが悪いんじゃ? ……いや、でも千城さんがそう言うなら……)

「佐々木くん。君も千城さんの能力は知ってるだろう? 行こうか」

 欄島は迷いなく人型グールと戦うワイズ隊員の方へと向かった。

「わ、分かりました! 千城さんもお気をつけて!」

「うむ!!」

 オレも欄島を追って楢地、睦月の元へと急いだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 人型グールの居場所を見つけ出した睦月クラウド、楢地ソラは一直線にその空中の雲の中へと飛行を続けた。

 少しすると、人型グールがいる場所からなにかの気配が2人に向かってきたことを感じ取った。

「ほう。迷彩能力で隠れていたようだ。BSS級グールが2体か」

 そう言う楢地に焦りはない。

「楢地殿」

 睦月と楢地はもう付き合いは長い。みなまで言わずとも楢地はその考えを理解した。

「分かっている。あの2匹はオレが倒す。クラウドは先に人型を叩いてくれ」

「かたじけない」

 そこで2人は二手に分かれ、楢地はまっすぐBSS級グールの前へと躍り出た。
 楢地たちの飛行スピードは巡航速度で時速200キロを超えていた。

 楢地は光の壁とも言える術を展開してグールの行く手を阻んだ。

「お前たちの相手はオレだ。グールども」

ゴアアア!

 2体のグールが忌々しそうに楢地を睨んだ。

「こ、コロシテヤルゾ……」
「ニンゲン、クッテヤル……」

 BSS級ともなると片言ながら人語を話す。
 その言葉を聞いた楢地は低く笑い声を漏らした。

「面白い冗談だな。グールもそんなことを言えるとは驚いた」

ガアアアアア!!!

 グールは3重の光陣を光輝せ、臨戦体勢を取った。

「五度天輪、五条護符、五位血黥」

 楢地は激しく威嚇をするグールを前に落ち着いて術を展開した。
 これはワイズオリジナルの技術で、三宗撰修術と呼ばれている。
 天輪と言う身体内外に纏う光の法陣、護符と言う結界術、血黥と言う身体強化援護術を駆使して強力な力を発揮する。

 2体のグールは両手から光の腕を伸ばし楢地に素早く攻撃を繰り返したが、楢地はそれを問題なく捌いた。

「さすがに手強い。特級グールなだけはある」

 楢地は言葉とは裏腹に余裕の表情を浮かべると、右手の指2本をグールに向けた。

 いつの間にかグールの周囲には数え切れないほどの蛍の様な小さな光が浮かんでいた。

「爆ぜろ」

ドドドッオオオオウウウゥ!!!!

 楢地の言葉でその光の群れが激しく爆発を起こした。

グオオオウウウウ!!

 そしてグールの叫びが虚空に響き渡った。

 ワイズのメンバーはワイズ固有の三宗術を使うが、さらにその上位の数人はまた別に個人個人で固有の技術を身に着けている。
 その代表はワイズ総統の佐々木ユキが使う念動術だが、楢地ソラが使う術は爆発術だ。
 楢地は自身の魔素を爆弾に変えることが出来た。

 ワイズでも指折りの実力とその爆発術から、楢地ソラは爆発使いボマーと呼ばれていた。

「そんなに効いたのか? まだまだ小手調べだ」
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