グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅲ

第143話 北部奪還戦争⑬

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 欄島の放った弾丸は全てアツロウへと直撃した。
 しかしアツロウは超強化した肉体と展開した障壁により、問題なくその弾幕を受けきっていた。

「はは! そんなもんかよ! バカみたい銃持ってるって言われてたけどよ! その通りだな! お前は手数が多いだけだ!!」

 アツロウはA級グールならば数体は挽き肉に変えるような弾丸を全く問題とせず、いなしていた。

「へえ、凄いなー。いつものグールの大群ならこれで何とかなるんだけど」

「あんなのと一種にすんな、雑魚が」

 アツロウは強い殺意を込めて欄島を睨み付けたが、欄島は全く動じていない。

「……また、オレをけなしたな。お前はオレの何を知ってるんだ?」

 欄島は自身の殺意を改めてアツロウに向けた。

「お前の気迫だけは立派だがな、そんなんじゃオレのことは殺せねえぞ、オラ!」

ドドドン!!!

 欄島はアツロウの拳が放った連続の光弾を何とかかわしたが、連続の攻撃の最後の一発を空中に飛び上がった瞬間に食らってしまった。

「ははは! どうだ!」

「痛いなあ、やるね。お前」

 欄島は血を流しながら、笑みすら浮かべアツロウの攻撃を称賛した。

「なんだ、やりづらい奴だな。まあいいや。直ぐに終わらせてやるよ」

「君はアツロウだっけ?」

 欄島は殺意も笑みも消さないまま、アツロウに話しかけた。

「ああ?」

「君はかなりの実力があるね。それは認めるよ」

「うるせえな、黙れ」

「だからオレもお前に敬意を示して、本気で行くよ」

「……面倒くせえな」

ドン! 

 アツロウはそう言うと巨大な光弾を欄島に放った。

ドオオオンン!!

 アツロウの攻撃は欄島に直撃した。だが、欄島は血だらけのまま、話を続けた。

「オレはお前に敬意を示す。だからお前もオレに敬意を示せ。それが人間ってもんだろ。尊厳を無視して、人間扱いしないって言うのが、オレには信じられない」

「うるせえって言ってんだろ!!」

 アツロウは両手を前に掲げ、何十という光弾を打ち出した。

「……オレの弾丸は、デフォルトで三秒連弾スリーセコンド、少ししんどいけど、不停止型で行くぞ! 八集拡大連続弾丸オクタソニックガトリングバレッド!! 一秒連弾ワンセコンド!!」

ドドドドド!!!

 欄島の放ち始めた銃撃は言葉の通りに1秒に1発の弾丸を発射する。先ほどは3秒に1発の設定だったため、実に3倍の弾幕となる。
 8丁の銃が毎秒1発ずつ、B級グールならば粉々にする威力の弾丸を放った。

 かつて、新ミナトミライ都市で欄島が大量のグールを葬った際は、三秒連弾スリーセコンドの不停止型、つまり、欄島が攻撃を停止する魔素操作をするまで弾丸が連続発射される攻撃だった。

 今はその3倍の攻撃をアツロウ1人に向けていた。

「おおおお!!」

 アツロウはさっきとはまるで違う弾幕に一瞬怯むんだが、拳や脚を振るってその銃撃を受け止めていた。

「なかなかやるな! これがお前の本気かあ! だけど、やっぱりそこまでじゃねェな!!」

ドオオン!

アツロウは欄島の弾丸を受け止めてつつ、欄島に攻撃を放った。欄島はそれをかわしたが、背中の銃操環の6丁に加え、両手の2丁の銃から放たれる弾丸が一瞬止まった。

「は! オレの攻撃をいつまでよけれるか! 見ものだな! オレの術はまだまだ尽きねェぞ!!」

「やっぱり、やるね。じゃあ、仕方ない」

 欄島は銃撃を続けながら声を出した。その間もアツロウも隙を見て光弾を放っている。

「ぐうう! 半秒連弾オーファイブセコンド!!」

 ドドドドドウウウ!!!

「うおおお!?」

 一気に欄島の弾幕が増した。半秒連弾オーファイブセコンドは1秒に2発ずつの弾丸を発射する技だ。毎秒16発の弾丸がアツロウを襲った。

「ぐううう!! なめんなあ!」

 アツロウもワイズの戦士の意地でその弾幕を何とか受け止めていた。被弾する数は格段に増えたが、ダメージはそこまでではない。このまま受けきれば、自分の勝利だと確信していた。

「ぐっ、がぶっ!」

 欄島も自分の攻撃の反動によって、体にはかなりの負荷が掛かっていた。先ほどのダメージもあり、口からはかなりの血を吐いた。

「な、長くは持たない。これで決めよう。四半秒連弾クォーターセコンド!!」

ドルルルルルル!!!!

 さらに欄島の弾幕が増した。一秒間に発射するのは32発の弾丸だ。

ルルルルルルル!!!!!

「うおおおおおああああ!!!」

ドオオオオン!!

 アツロウも渾身の力で弾丸を打ち払うが、実に17秒間。500発以上の弾丸を身に受け、とうとう体に纏わせた魔方陣ごと彼方へと吹き飛んだ。

「がはっ、はあ、はあ、はあ」

 欄島は激しく血を吐くが、なんとかその場に留まり立っていた。

「アツロウ、お前はオレに対する敬意が足りなかったな」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 オレたちはスカイベースを飛び降り、援護の為、吻野の前へとたどり着いていた。

 吻野は膝をついて肩で息をしている。

「モモ!」

 セイヤが大声で吻野を呼んだ。

「せ、セイヤ? 何でここへ?」

「ワイズと戦闘行為に入ったモモたちの援護に来た! 欄島隊員は?」

「あっちでワイズのメンバーと戦っているはずよ」

 吻野はそう言って震える手で指を指した。

「そ、それじゃ……」

ドオオン!!

 その時、激しい爆発が起こり、オレたちの前に1人の女性が現れた。

「ぐう、やってくれるじゃないの、吻野モモ!」

 血だらけのセーラー服の女の子が怒りに顔を染めていた。

(こ、この前の娘だ! 怒ってる! それに、す、凄い魔素だ!)

 オレは一目見て目の前の女の子がとてつもない実力を持っているのを理解した。

「あら? そのまま寝てた方がいいんじゃない? あなた弱いんだし」

(も、モモさん! そんな挑発しちゃ!)

「言ってくれるわね……でもあんたの張った変な結界ももう消えたわよ! それに雑魚が何人増えたって変わらない!」

 女の子は両手を構えた。

「二度天輪! 一位血黥!」

 恐ろしい魔素が渦巻き、女の子の両手を両足に魔方陣が取りついた。そして、全身にうっすらと刺青のような紋様が浮かび上がっている。

「ふう、仕方ない」

 吻野は杖を女の子に掲げた。

反因果結界アンチコーズドーム!」

ダン!

 女の子は大きく後ろへ飛び下がり、吻野の展開した結界の外に出た。

「はっ! 二度も食うか、ボケが! あんたの結界は術を付与した結合点を組み合わせて発動してる! さっきは小技の魔術に術を組み込んでわざと私に打ち落とさせた! 今度は、そこらに転がってる兵器に術を付与して結合点にしたんでしょ!」

「へえ、よく気付いたわね。バカのくせに」

(もももも、モモさん!?)

「うるせえっ! だからこの結界の外からあんたも、あんたの仲間もぐちゃぐちゃにしてやるわよ!!」

 オレは血走った目をしている女の子の叫びに驚愕していた。だが、吻野は冷静に杖を前に向けた。

「あんたの魔術なんかいくら出したって……」

反因果結界付与アンチコーズアディション!」

パアッと光が輝き、一帯の淡い光が女の子の方へ流れ、包んだ。そして、セーラー服の女の子の魔方陣や肌の紋様が消えた。

「あんたの魔術なんか、なんだって?」

「こ、このやろう!!!」

ドン!

(うおお! こっちにくる!!)

二重神級岩石散弾ダイシンストーンショット!」

ドドオオオオンン!!! 

 セーラー服の女の子は、吻野の放った巨岩の雨に飲まれて消えた。

(よ、容赦ねえ! こわっ!)

 吻野は女の子の気配が消えるとガクッと腰を落とした。

「モモ!」

「あ、あなたたち。スカイベースで待機って言ったでしょう」

「いや、でも! とにかくユウナ! みんな! 治療をしてくれ!」

 オレはまず吻野の治療を優先するべきだと、お叱りは後にしてもらうことにした。

「了解!」

 ユウナや北岡たちの回復魔術が施され、重傷の吻野も少しずつ落ち着きを取り戻していった。

「それで、千城さんは?」

「ああ、他の人たちが回収してくれたみたいだよ、もうスカイベースに乗ったみたい」

(ええ!!?)

 オレは突然聞こえた声に驚き振り向いた。
 オレたちの後ろには血だらけの欄島が立っていた。
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