グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅰ

第25話 都市防衛戦争③

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 大河内の言葉を聞いたオレたち菅原班は、市長のいる中央ビルを目指した。司令型が狙うならやはりそこだろうという予測と、グールを操る中心に居るとするならばグール達の攻撃の中央付近にいるという考えからだ。

「菅原さん」

「どうした、佐々木」

「山崎さん達、セイヤさん達の安否については何か連絡ありますか?」

「……いや、来ていない。佐々木、それに今は目標の討伐に集中すべきだ」

「そう……ですね。すみません」

「ああ」

 オレたちはもともと都市中心部付近にいたこともあり、すぐに中央ビルの近くに辿り着いた。
 身を潜めてビルの入り口を窺うと、大勢のグールが確認できた。

「B級! A級もいる!」

 チバが驚きの声を漏らす。
 だがすでに付近の部隊が到着していて、そのグールの群れと交戦を開始していた。

「よし、オレたちも加勢するぞ」

「わ、分かりました」

 ユウダイも及び腰だ。 
 さすがにあの巨体のグールの群れの中にはすぐに飛び込む勇気が出ないのだろう。

「アオイ、ユウダイはなるべくグールと距離を取って攻撃すること。他はここから攻撃だ」

 菅原が銃を構える。

「行くぞ! 撃て!!」

ドドドドン!

 オレたちは集中攻撃で2体のB級グールを打ち倒すが、A級グールの1体がこちらに気づいて、頭の角を向けてきた。

「下がれ!」

カッ!
ドゥン!!

 相変わらず凄い威力だ。隠れていた瓦礫は吹き飛んでしまった。
 なんとか直撃はかわしたが、オレたちの体制は崩されてしまった。
 オレは再び攻撃をしようと起き上がると、さらにC級とD級のグールの群れがこちらへ向かって来ていた。

「殲滅するぞ!」

 菅原も頭からかなり血を流しているが、その士気は揺るがない。

(オレも! やれることをやるしかない!!)

「あああああああ!!」

 オレたちの激しい攻撃にこちらへ向かってきていた群れの大半のグールが倒れた。
 そんな中、上空からオレたちのそばに1体のグールが激しい音を立てて着地した。
 体長が7メートルはあるB級グールだ。

「またこいつか……!」

 オレは新しい銃を支給された後、兵宿舎で切り札とも呼べるデバイス型弾丸を10発渡されていた。すでに今日は4発を使ってしまっており、残りは6発だ。
 上空からの接近を無意識に感知していたオレは敵が現れる前にそのデバイス弾丸を銃に装着していた。

「食らえ!」

ドーォン!!

 新しい銃で使用するデバイス型弾丸は魔素ストレージ、本体の弾丸強化機能と合わせてその威力を大幅にあげており、B級とは言え、一撃でその巨体の半身を吹き飛ばすことができた。

「よくやった!佐々木!上級爆発剣メガエクスプロージョン!!」

 即座にアオイが追い討ちをかけ、B級グールに止めを刺した。

(やった!!)

「また来るぞ!」

 菅原の声に辺りを見回すと、さらにビルの方からB級がもう1体突進してきた。
 だが、こちらは菅原、チバ、ユウナの総攻撃でこちらへ辿り着く前に倒すことができた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

(う、腕が上がらなくなってきた……!)

「A級に注視!!」

 見ると、また別のA級がこちらへ頭を向けていた。

(ヤバい! レーザーが来る!)

 オレは一瞬やられると思ったが、別の部隊からの総攻撃を受けてたまらずA級グールも攻撃を中止して後ろに下がった。
 だがその間も絶え間なくF級やE級のグールがこちらへ向かって来ていた。

「うおお! どけぇ!」

 オレが激しい射撃を続けていると、ぞくりと背中に悪寒が走るのを感じた。

(これは……!?)

「菅原班長! 点滅型の時と似た感じがします! おそらくこの反応が目標の司令型の位置だと思います!」

「なに! 本当か!? どこだ!」

「……あそこです!」

 オレは別部隊が攻防をしている場所を指差した。
 そこはすでにグールの攻撃で崩れた建物だった。

「あそこか!? 確かあの建物は地下がある、そこか!?」

「はい!少し下にいる感じがします!」

「……よし、まずは目標をハッキリさせるぞ! チバ、あそこを吹き飛ばすぞ!」

「ええ!? もしかして、地雷ですか!?」

「ああ!  全部使え!」

 地雷とは設置型魔術の中でも一番威力の高いものだ。ただ、これは通常は敵が直接接触しないと発動しないモノで、手動で爆発させるものではない。威力が強すぎるからだ。
 それを使えということは、地雷を設置し、グールをその地雷にぶつけるという手順が必要だ。そして、それをこの場でするということは地雷の爆発に多少ながら巻き込まれることを意味していた。

「早くしろ!  投げろ!」

「ああもう! 分かりましたよ!」

 チバが半泣きで地雷を投擲する。
 グールの何体かがその地雷をビルに近付く前に打ち落とそうとするが、オレと菅原、さらに他の部隊の銃撃でそれを阻んだ。

「班長! A級がこちらへ来ます!」

 ユウナが大声を上げる。
 ここでA級グールがこちらへ来るということは、オレの感覚は間違っていないようだと直感した。

「とにかく! 撃ちまくれ!!」

 オレたちは激しい銃撃と魔術の攻撃を加えるが、それにも構わずA級が頭の角をこちらに向けた。

(嘘だろ! ヤバいぞ!!)

「チバ、バリアを……!」

カッ!

 菅原がチバに指示を出しきる前に激しい爆発が起こった。
 オレは横に飛び退いて直撃はなんとか避けたが、爆発には巻き込まれてしまった。

 地面に叩きつけられて、息が苦しいし、喉に埃が絡み付いてうまく呼吸もできない。

「ぐうう……、でも……、まだ動ける……!」

 オレはすぐに秘蔵のデバイス型弾丸を全てセットして、魔素を込めた。
 粉塵が収まらないまま、感知したA級グールに銃を向けた。

「お前で地雷を爆発させてやる!」

ドドドン!!

 オレの放った銃弾がA級グールに直撃して、10メートルはあるグールがふっとんだ。そして、地雷の落ちている建物の残骸の上に落とすことができた。

「みんな、伏せて!」

ドドーォン!!

「ウッアアア!!」

 オレの注意がどこまで届いたかは分からないが、危険範囲に他の隊員はいなかったはずだ。
 激しい爆発が起こり、オレも吹き飛ばされてしまった。

「ううう……」

 パチパチと点滅する視界の中、オレは討伐目標の司令型グールがいるのか、爆発の中心部を注視した。

 収まる粉塵の中に、そいつはいた。
体の高さは5メートルほどだが、四足歩行、狼や犬のような形の怪物がいた。毛は生えていなく、赤い眼が4つもある。
 そして、その赤黒い自身を守るように周りには、5体ものA級グールが控えていた。
 建物の地下深くにいた様で無傷だ。

「くそっ、これじゃ……」

 オレたちだけじゃ、討伐できない。

「市長! 聞こえますか!? 目標を発見!都市中央ビル、目の前です!! 増援を頼みます!!」

 オレが通信装置を介して叫びを上げる。
 無線の通信装置は点滅型の影響で機能していないはずだが、叫ばずにはいられなかった。

 A級の内の1体が前に進み出てきた。
 オレを見ている。

(ヤバいぞ! 気づかれている! 一旦退避を……)

ドーォン!

 その時突然、オレを狙っていたA級グールが吹き飛んだ。

「よくやってくれた、佐々木くん」

 オレの横にはなんと大河内が立っていた。

「え!?」

「やあ、佐々木くん!いいやつを見つけてくれたね!」

 場違いな明るい声をあげるのは、譲原だ。

「後は、オレたちA級隊員に任せてよ!」

「オレたち……?」

「ああ、佐々木くん。大河内市長はね。A級戦力だよ」

「は……?」

ドバァン!!

 A級の1体が当然だぶっ飛んだ。
 大河内が凄い威力の攻撃をしたのだ。

「この場の皆にもう一度言おう。こいつらは、私たちが倒す!……すぐに終わらせて、日常を取り戻すぞ!!」

大河内が大きく声を張り上げて勝利の宣言をした。       
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