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出会い セオドール視点
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幼い頃から、剣術は得意だった。
皇帝直属の近衛騎士団所属、ファウスト団長を師と仰ぎ、鍛錬に励む日々。
同じ師に習う兄、ラファエル皇太子は群を抜いて剣術の鬼才を放っていた。比べられることは多かったが、精悍な姿を間近で見ていて敬慕せずにはいられなかった。
やがてラファエルは、騎士団、入団後わずか1年で騎士見習いから騎士になり、魔物討伐にて武勲を立て第8騎士団まである騎士団の中で頂点の第1騎士団長まで登り詰めた逸材だ。
皇弟、皇女合わせて22人もいる環境で、皆、幼いながらに、帝に諂う者もいれば、己の才能を磨くことに精進する者、自由気ままに過ごす者、と三者三様。
宮殿にいる大人、兄弟とも、私に関心のある者などいなかった。兄弟と言えど皆、腹違いの兄弟だ、仕方のないことだと思う。
昔から病弱だった実母は、私が13歳の頃他界した。唯一、母だけが私を愛しみ愛情を向けてくれた。
蓋世の才を持った次期皇帝と名高いラファエルのおかげで、無用な権力争いに巻き込まれる事もなかった。
その中でも第22皇女のアンジェリーヌは、歳が離れた妹という事もあり、歩けるようになった頃から、私によく懐いてくれている。
☆
生徒会の投書箱に、いじめを告発する文書が投函される。
昼休みや、放課後に生垣に呼び出しては、虐めているようだ。
生徒会メンバーを危険な目に遭わせる訳にはいかないので「視察は我が行く」とマリーに伝えると、いつもののほほんとした声調で。
「無理はしないでくださいねー」と手を振る。
☆
策を講じて、猫型で視察することにした。着替えのペンダントは皇族の紋が入っているので着けずに出る。
なかなかいじめの現場は見つけられなかった。うろうろ生垣の中を走り回っていると、突然駆け寄って来る足音がした……。
瞬く間に、行き止まりに追いやられた。どうにか隙を見て逃げ出さなくては……。
すると、ねこじゃらしの様な左右する物が現れた、初めはゆっくり、……そして突然早く動く!
この動きに本能的に飛びついてしまった。
瞬時に捕らえられ、抱きしめられた……。
「会いたかったよ……クロぉ~」
こんなに熱く抱擁されたのは、いつ振りだろう……、クロって誰だ!?
「元気だったかぁ~」
甘い蜜のような匂いの中、身体中を撫で繰り回されて、もう自我が保てない……、猫型が維持できない。
「ポンッ」
当然、裸の人型になる……。
「我の求愛を受け入れる……ということか?」どういうつもりなのか訊いてみた。
「ち、違います……飼ってた猫と間違えて…………」
「獣人を飼う?……お前はそういう趣味があるのか」
「ひ、人違いです、ごめんなさい」
「これ良かったら使って下さい」チョーカーのペンダントを渡された。
思いがけず気遣いの出来る良い子で驚いた。
「昼休みが終わるので、失礼しますっ」と逃げるようにその場を立ち去った後ろ姿を見ながら。
抱擁された感触を思い出す……、あんなに熱く抱擁されたのは母、以来かもしれない。
今度は人違いではなく、私を必要として、心配してくれるあの腕にもう一度抱きしめられたい……、と願う。
皇帝直属の近衛騎士団所属、ファウスト団長を師と仰ぎ、鍛錬に励む日々。
同じ師に習う兄、ラファエル皇太子は群を抜いて剣術の鬼才を放っていた。比べられることは多かったが、精悍な姿を間近で見ていて敬慕せずにはいられなかった。
やがてラファエルは、騎士団、入団後わずか1年で騎士見習いから騎士になり、魔物討伐にて武勲を立て第8騎士団まである騎士団の中で頂点の第1騎士団長まで登り詰めた逸材だ。
皇弟、皇女合わせて22人もいる環境で、皆、幼いながらに、帝に諂う者もいれば、己の才能を磨くことに精進する者、自由気ままに過ごす者、と三者三様。
宮殿にいる大人、兄弟とも、私に関心のある者などいなかった。兄弟と言えど皆、腹違いの兄弟だ、仕方のないことだと思う。
昔から病弱だった実母は、私が13歳の頃他界した。唯一、母だけが私を愛しみ愛情を向けてくれた。
蓋世の才を持った次期皇帝と名高いラファエルのおかげで、無用な権力争いに巻き込まれる事もなかった。
その中でも第22皇女のアンジェリーヌは、歳が離れた妹という事もあり、歩けるようになった頃から、私によく懐いてくれている。
☆
生徒会の投書箱に、いじめを告発する文書が投函される。
昼休みや、放課後に生垣に呼び出しては、虐めているようだ。
生徒会メンバーを危険な目に遭わせる訳にはいかないので「視察は我が行く」とマリーに伝えると、いつもののほほんとした声調で。
「無理はしないでくださいねー」と手を振る。
☆
策を講じて、猫型で視察することにした。着替えのペンダントは皇族の紋が入っているので着けずに出る。
なかなかいじめの現場は見つけられなかった。うろうろ生垣の中を走り回っていると、突然駆け寄って来る足音がした……。
瞬く間に、行き止まりに追いやられた。どうにか隙を見て逃げ出さなくては……。
すると、ねこじゃらしの様な左右する物が現れた、初めはゆっくり、……そして突然早く動く!
この動きに本能的に飛びついてしまった。
瞬時に捕らえられ、抱きしめられた……。
「会いたかったよ……クロぉ~」
こんなに熱く抱擁されたのは、いつ振りだろう……、クロって誰だ!?
「元気だったかぁ~」
甘い蜜のような匂いの中、身体中を撫で繰り回されて、もう自我が保てない……、猫型が維持できない。
「ポンッ」
当然、裸の人型になる……。
「我の求愛を受け入れる……ということか?」どういうつもりなのか訊いてみた。
「ち、違います……飼ってた猫と間違えて…………」
「獣人を飼う?……お前はそういう趣味があるのか」
「ひ、人違いです、ごめんなさい」
「これ良かったら使って下さい」チョーカーのペンダントを渡された。
思いがけず気遣いの出来る良い子で驚いた。
「昼休みが終わるので、失礼しますっ」と逃げるようにその場を立ち去った後ろ姿を見ながら。
抱擁された感触を思い出す……、あんなに熱く抱擁されたのは母、以来かもしれない。
今度は人違いではなく、私を必要として、心配してくれるあの腕にもう一度抱きしめられたい……、と願う。
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