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宮殿

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 放課後、レオが駆け寄って来た。

「この前はごめんな」

「良いよ、気にしてないから」と笑顔で返す。

「アイツ、可愛い子には見境ないからさー、……もう別れよっかな~」

 透かさず「別れた方が良い!」と言ってしまった。
 
 レオはびっくりして、苦笑いする。

 下駄箱で下履きに履き替えていると、言い合いをしている声が聞こえてきた。

 セオとセバスチャンだった。

「平民で……、しかもオスなんて絶対ダメです!」セバスは諌める。

「もう決めたのだ、他のヤツでは駄目だ!お前はいつまで古い考えを持ってるんだ!」

 平民、オス…………、僕の事だ。この学院でこういう差別を受ける事は稀だったから、久々にチクッと胸は痛んだけど、こんな公然の場で言い争いしてるのは見過ごせない。

「何を言い争ってるんですか?」

 割って入る。

「こやつにプロムでお前としか踊らんと言ったのだ!」

「駄目ですよ、殿下!」

 終わらない言い争いに、ここでは目立つので場所を変える様に説得する。



 場所を変えると言ったら、何故だか帝城の宮殿の一室に通された。
 金細工が施された調度品の家具、装飾品、建具。豪華絢爛な空間に目眩がしそうだ。

 話を聞いてみると、プロムの会場は宮殿のダンスフロアを貸し切って行われるらしい。
 パーティーの1番最初に一緒に踊るという事は、恋人または婚約相手のお披露目の場でもあるらしい。

 本当に僕で良いのかな…………。

 両者一歩も引かない様子で、困惑していると……。

 並んでいた1人の侍女が、近づいて来てお辞儀をした後。

「この場で発言することをお許しください……。私に良い考えがございます」

「申してみよ」

「このルカ様に女装をするのは如何でしょうか?お顔が見られるのが嫌でしたら、仮面を付けて……」

「ほぅ、女装か……、それならばセバスは認めるのだな」

 歯を軋ませながらセバスチャンが口を開く。

「バレないように気をつけて頂けるのであれば……」

 え!?待って僕の意見は?

 侍女が駆け寄り。

「それではルカ様、採寸等させて頂きますので別室に参りましょう」

 侍女に連行されたーー

「私、侍女のエマと申します。主にメイクやお召し替えを担当しております。……前々から女装や男装に興味がございまして、この度女装をお任せ頂けるとの事で大変光栄でございます、精一杯勤めさせて頂きます」矢継ぎ早に話しながら、手早く採寸を進める。

「あの僕、まだ女装するとは……」

「えぇ、ご心配ございません!ルカ様は細身ですし、お肌もとても綺麗でございます、立派な麗しの淑女に仕立てて差し上げましょう、このエマにお任せ下さい」

 もう断る事も出来ない雰囲気だ。ドレスの色とか聞かれてもわからないから、全部お任せした。

 どうなっちゃうんだ僕~。
 
 
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