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恋心

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 12月に入り、街や学校もクリスマスの装飾で一杯だ、庭園の生垣には無数のイルミネーションが施されて、とても幻想的だ。

 あれからと言うもの、昼は食堂でセオドール、シャーロット、僕の3人で食事する事が多くなった。3人でたわいも無い話をする。

 皆んなより先に食べ終わったランチボックスを手早く片付けて、ふと庭園を見やる。

 寒々さむざむとしたその場所に物寂しさを感じる…………。

 
 シャーロットは良い子だ、番候補の件も口止めしてないけど、口外してないようだし…………。

 初めて異性の友達ができた様で嬉しかった。セオドールも始めは不服そうだったけど、今は普通に仲良くしてる。
 良くある恋愛ストーリーで、ライバルが良い子で、皆んな友達になれたら幸せな世界線なのにと憂悶ゆうもんする気持ちを払拭するような気分。
 今になって考えてみると、初めは否定してたけど、この国の複数以上恋人がいる状況だって、恋人で同じラインにいるんだから、ヤキモチとかはあるだろうけど、きっとライバルと仲良くなれたりするんじゃないのかな?

 番を決める時は殺伐としちゃうのかな…………。

 失恋する人口が減れば、その分国民の幸福度が上がるだろうし。

 だって……好きな人を諦めるのって苦しい事だから…………。

 何だか胸の奥がぎゅーっとする。

 ふと、隣にいたセオドールと目が合い、心臓が跳ねた。

 セオドールが誘って来るのはきっと、僕を揶揄からかっているのか……、もしくは一時いっときの気の迷いだと思う。

 平民の自分のはわきまえているつもりだ、しっかりしなくちゃ。

 僕のことなんか、すぐに忘れて相応しい人と一緒になるのだろう……。



「それでね、今日先生が教壇に上がる前に転んでしまいましたの、起き上がったら眼鏡が斜めに歪んでしまって、そのまま何も無かったかのように授業を始めて、その様が可笑しくて、ついつい笑ってしまいましたわ、あの眼鏡大丈夫だったかしら?」

「僕も見たかった~」

 談笑が続く。

 カーン、カーン、カーン。

 昼休み終了のベルがなる。

 3人共、別々の棟へ向かう。

 不意にセオドールに耳打ちされる。

「放課後、玄関で待ってる」

 コクリと頷く。



 終業のベルが鳴る、身支度をして急いで玄関へ向かうとセオドールが腕組みをして待っていた。

「待ってたぞ」

「直ぐ来たんだけどなー」

 下校しながら、少し話す事にした。

「イルミネーション綺麗だね」

「あぁ綺麗だな。……あのメスが居るとどうも落ち着かん」

「えー、シャーロットはいい子だよ」

「それはそうと日曜日は空いているか?」

「ん?開いてるけど……」

 セオドールは少し頬を赤くして。

「クリスマスマーケットへ一緒に行かないか?」

 思いがけない誘いに、胸が高鳴る。

「え?一緒に行ってくれるの?」

「あぁ」

「やった!テディの出番だね!」と含み笑いで返す。

 怒ったような、恥ずかしいような、複雑な表情をしている。

「楽しみにしてるね!」

 湧き立つ心と自制心が混同した。

 セオドールが卒業までの思い出作り……、そう言い聞かせる。

 街のイルミネーションが一層煌めいていた。
 
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