7 / 25
探偵!?
しおりを挟む
あれからと言うものセオドールは、ほぼ毎日昼休みには足繁くテラスにやって来る。
皇族であり生徒会長でもあるセオドールは暇なのか?僕に執着する意味もわからない。
「皇族の番になる為には、知識と教養が必要だ」
尊大な口調で、なに、勝手に話進めようとしてるの!
「まだ番にはなりません」と言い放つ。
「お前謎解きは得意か?」
会話が成立していない、相変わらずマイペースだ。まあ、前世ではミステリー小説は嗜む程度読んではいたけれど……。
「得意ではないですけど……普通です」
「もし興味があるのなら生徒会室まで来い」
気が向いたら行きますと返事を濁す。
☆
校舎中央には、吹き抜けの大講堂がある、ステンドグラスから溢れ落ちる日の光は柔らかく、大きなパイプオルガンが置かれている、素敵な空間だ。
大講堂の西の渡り廊下の突き当たりに生徒会室がある、初めて足を踏み入れる場所だ。緊張した面持ちでドアを開けると、8人の生徒会メンバーが各々仕事をこなしている、まるで小さなオフィスのようだ。
目の前を横切ったマンチカン種のメスの先輩が「生徒会室へようこそ」とのほほんとした口調で挨拶をしてくれた。
中央奥の窓際に生徒会長用のひときわ大きなテーブルがある。
セオドールは目敏く僕を見つけ、こっちへ来いと言わんばかりに指で合図する。
行くと、奥の談話室に通された。
ロバート(ベンガル種)とキャシー(ノルウェージャンフォレストキャット種)も同席した。
「この生徒は一年のルカだ、事件の解決を手伝ってくれる。キャシー、経緯を話してくれ」とセオドールが促すと、キャシー先輩が話し出す。
要約すると、校長室の金魚鉢に飼っていた出目金のらんちゅう(時価3万円)が校長が出張から帰って来てみたら、死んで浮かんでいたと言うことだ。
容疑者は清掃員ビル、教頭のハリー、ちょうど美化週間で校長室へ入室した生徒会のロバートとキャリーだ。
ワクワクして来て、僕のボブテイルの短い尻尾が忙しなく動く。
「現場を見てもいいですか?」目を輝かせて言う。
「校長、失礼します」セオドールが低い声で言う。
「入りなさい」と声が聞こえて、ドアを開ける。
ダークブラウンの調度品の家具が敷き詰められ、ダマスク柄の壁紙が高級感を引き立てる、重厚感溢れるインテリアだ。
「校長、金魚鉢を拝見したいのですが……」とセオドールが訊くと。
「いいですよ」と柔かに返答する。
校長席左の窓際にある飾り棚の上に例の金魚鉢が置いてあった。
うーん、普通の金魚鉢だ。異物が混入している様には見えないし、西日が良く当たる場所だな。1匹の出目金(ベールテール)が泳いでいる、それにしても鉢に対して金魚が大きい、訊いてみると死んだらんちゅうも同じ程の大きさだったようだ、この鉢に2匹……んー。
「ありがとうございます、それでは入室された方達にお話を個別に伺って宜しいでしょうか?」
談話室にてーー。
先ずは生徒会ロバートとキャシーから……。
キャシーの証言「美化週間で入室した時、ロバートが冗談で金魚にネコパンチを3回程、喰らわせてて注意したんです……。爪も出していなかったし、それだけで死ぬとは考えられなくて」
「そうですか……経緯はわかりました、詳しくありがとうございます、考えてみますね。」
次は清掃員ビルさん、毎日普通に清掃していて、金魚鉢の水換えは難しくて手を付けてなかったとの事。
最後に教頭、特にいつも通り過ごしていただけだと言う。
「確証ではありませんが……。皆さんを校長室へ呼んで頂けますか?」
「まず最初に、校長と教頭は童心に返って、金魚を弄ったりはしてませんか?」
校長は一瞬ドキッとした様子で、教頭はいやいやと首を振った。
「まぁ、いいですけど……。生徒会のロバート先輩は金魚に3回ネコパンチをしただけなのでそれが原因とは言い難いです」
続けて「直接的な原因は、金魚鉢です。見て下さい……大きな金魚が金魚鉢の1/2を占めている、これでは酸素が吸えません、窓際にあるので温度変化も激しい。金魚は7度以上の気温差があると死んでしまいます、もっと大きな水槽に移して酸素を取り込める水草や石、ポンプがあればいいと思います」冷静に事実を伝える。
一旦、深呼吸をして「動物を飼うという事は、飼い主には動物が健康に過ごせる様にする責任があると思います、まずはその動物を知って下さい、飼育環境も誤認があれば虐待になります、獣人相手だったら殺人になりますよ……」
校長は気不味そうな表情だった。
きつい物言いだったと思う、でもどうしても理解して欲しかった。飼っていたクロを思い出して、涙が滲みそうになり俯く。
そうクロは保護猫だった、初めて会った時、体には無数の怪我があった。
猫耳は切り傷で二股に分かれ、カギしっぽが可愛い黒猫だった。
「不躾な物言いをしてすみません……。授業がありますので失礼します」淡々とした口調で話す。
振り返った時、セオドールの憂懼した表情が見えた。重い空気の中、校長室を後にした。
皇族であり生徒会長でもあるセオドールは暇なのか?僕に執着する意味もわからない。
「皇族の番になる為には、知識と教養が必要だ」
尊大な口調で、なに、勝手に話進めようとしてるの!
「まだ番にはなりません」と言い放つ。
「お前謎解きは得意か?」
会話が成立していない、相変わらずマイペースだ。まあ、前世ではミステリー小説は嗜む程度読んではいたけれど……。
「得意ではないですけど……普通です」
「もし興味があるのなら生徒会室まで来い」
気が向いたら行きますと返事を濁す。
☆
校舎中央には、吹き抜けの大講堂がある、ステンドグラスから溢れ落ちる日の光は柔らかく、大きなパイプオルガンが置かれている、素敵な空間だ。
大講堂の西の渡り廊下の突き当たりに生徒会室がある、初めて足を踏み入れる場所だ。緊張した面持ちでドアを開けると、8人の生徒会メンバーが各々仕事をこなしている、まるで小さなオフィスのようだ。
目の前を横切ったマンチカン種のメスの先輩が「生徒会室へようこそ」とのほほんとした口調で挨拶をしてくれた。
中央奥の窓際に生徒会長用のひときわ大きなテーブルがある。
セオドールは目敏く僕を見つけ、こっちへ来いと言わんばかりに指で合図する。
行くと、奥の談話室に通された。
ロバート(ベンガル種)とキャシー(ノルウェージャンフォレストキャット種)も同席した。
「この生徒は一年のルカだ、事件の解決を手伝ってくれる。キャシー、経緯を話してくれ」とセオドールが促すと、キャシー先輩が話し出す。
要約すると、校長室の金魚鉢に飼っていた出目金のらんちゅう(時価3万円)が校長が出張から帰って来てみたら、死んで浮かんでいたと言うことだ。
容疑者は清掃員ビル、教頭のハリー、ちょうど美化週間で校長室へ入室した生徒会のロバートとキャリーだ。
ワクワクして来て、僕のボブテイルの短い尻尾が忙しなく動く。
「現場を見てもいいですか?」目を輝かせて言う。
「校長、失礼します」セオドールが低い声で言う。
「入りなさい」と声が聞こえて、ドアを開ける。
ダークブラウンの調度品の家具が敷き詰められ、ダマスク柄の壁紙が高級感を引き立てる、重厚感溢れるインテリアだ。
「校長、金魚鉢を拝見したいのですが……」とセオドールが訊くと。
「いいですよ」と柔かに返答する。
校長席左の窓際にある飾り棚の上に例の金魚鉢が置いてあった。
うーん、普通の金魚鉢だ。異物が混入している様には見えないし、西日が良く当たる場所だな。1匹の出目金(ベールテール)が泳いでいる、それにしても鉢に対して金魚が大きい、訊いてみると死んだらんちゅうも同じ程の大きさだったようだ、この鉢に2匹……んー。
「ありがとうございます、それでは入室された方達にお話を個別に伺って宜しいでしょうか?」
談話室にてーー。
先ずは生徒会ロバートとキャシーから……。
キャシーの証言「美化週間で入室した時、ロバートが冗談で金魚にネコパンチを3回程、喰らわせてて注意したんです……。爪も出していなかったし、それだけで死ぬとは考えられなくて」
「そうですか……経緯はわかりました、詳しくありがとうございます、考えてみますね。」
次は清掃員ビルさん、毎日普通に清掃していて、金魚鉢の水換えは難しくて手を付けてなかったとの事。
最後に教頭、特にいつも通り過ごしていただけだと言う。
「確証ではありませんが……。皆さんを校長室へ呼んで頂けますか?」
「まず最初に、校長と教頭は童心に返って、金魚を弄ったりはしてませんか?」
校長は一瞬ドキッとした様子で、教頭はいやいやと首を振った。
「まぁ、いいですけど……。生徒会のロバート先輩は金魚に3回ネコパンチをしただけなのでそれが原因とは言い難いです」
続けて「直接的な原因は、金魚鉢です。見て下さい……大きな金魚が金魚鉢の1/2を占めている、これでは酸素が吸えません、窓際にあるので温度変化も激しい。金魚は7度以上の気温差があると死んでしまいます、もっと大きな水槽に移して酸素を取り込める水草や石、ポンプがあればいいと思います」冷静に事実を伝える。
一旦、深呼吸をして「動物を飼うという事は、飼い主には動物が健康に過ごせる様にする責任があると思います、まずはその動物を知って下さい、飼育環境も誤認があれば虐待になります、獣人相手だったら殺人になりますよ……」
校長は気不味そうな表情だった。
きつい物言いだったと思う、でもどうしても理解して欲しかった。飼っていたクロを思い出して、涙が滲みそうになり俯く。
そうクロは保護猫だった、初めて会った時、体には無数の怪我があった。
猫耳は切り傷で二股に分かれ、カギしっぽが可愛い黒猫だった。
「不躾な物言いをしてすみません……。授業がありますので失礼します」淡々とした口調で話す。
振り返った時、セオドールの憂懼した表情が見えた。重い空気の中、校長室を後にした。
12
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。
N2O
BL
狼の獣人(異世界転移者)×兎の獣人(童顔の魔法士団団長)
お互いのことが出会ってすぐ大好きになっちゃう話。
待てが出来ない狼くんです。
※独自設定、ご都合主義です
※予告なくいちゃいちゃシーン入ります
主人公イラストを『しき』様(https://twitter.com/a20wa2fu12ji)に描いていただき、表紙にさせていただきました。
美しい・・・!
俺の顔が美しすぎるので異世界の森でオオカミとクマから貞操を狙われて困る。
篠崎笙
BL
山中深月は美しすぎる高校生。いきなり異世界に跳ばされ、オオカミとクマ、2人の獣人から求婚され、自分の子を産めと要求されるが……
※ハッピーエンドではありません。
※攻2人と最後までしますが3Pはなし。
※妊娠・出産(卵)しますが、詳細な描写はありません。
インバーション・カース 〜異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまでの話〜
月咲やまな
BL
ルプス王国に、王子として“孕み子(繁栄を内に孕む者)”と呼ばれる者が産まれた。孕み子は内に秘めた強大な魔力と、大いなる者からの祝福をもって国に繁栄をもたらす事が約束されている。だがその者は、同時に呪われてもいた。
呪いを克服しなければ、繁栄は訪れない。
呪いを封じ込める事が出来る者は、この世界には居ない。そう、この世界には——
アルバイトの帰り道。九十九柊也(つくもとうや)は公園でキツネみたいな姿をしたおかしな生き物を拾った。「腹が減ったから何か寄越せ」とせっつかれ、家まで連れて行き、食べ物をあげたらあげたで今度は「お礼をしてあげる」と、柊也は望まずして異世界へ飛ばされてしまった。
「無理です!能無しの僕に世界なんか救えませんって!ゲームじゃあるまいし!」
言いたい事は山の様にあれども、柊也はルプス王国の領土内にある森で助けてくれた狐耳の生えた獣人・ルナールという青年と共に、逢った事も無い王子の呪いを解除する為、時々モブキャラ化しながらも奔走することとなるのだった。
○獣耳ありお兄さんと、異世界転移者のお話です。
○執着系・体格差・BL作品
【R18】作品ですのでご注意下さい。
【関連作品】
『古書店の精霊』
【第7回BL小説大賞:397位】
※2019/11/10にタイトルを『インバーション・カース』から変更しました。
くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました
あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。
一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。
21.03.10
ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。
21.05.06
なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。
21.05.19
最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。
最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。
最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。
23.08.16
適当な表紙をつけました
異世界に転移したショタは森でスローライフ中
ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。
ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。
仲良しの二人のほのぼのストーリーです。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」
まほりろ
BL
【完結済み、約60,000文字、全32話】
主人公のハルトはある日気がつくと異世界に転移していた。運良くたどり着いた村で第一村人に話しかけてたら求愛され襲われそうになる。その人から逃げたらまた別の人に求愛され襲われそうになり、それを繰り返しているうちに半裸にされ、体格の良い男に森の中で押し倒されていた。処女喪失の危機を感じたハルトを助けてくれたのは、青い髪の美少年。その少年だけはハルトに興味がないようで。異世界に来てから変態に襲われ続けたハルトは少年の冷たい態度が心地良く、少年を好きになってしまう。
主人公はモブに日常的に襲われますが未遂です。本番は本命としかありません。
攻めは最初主人公に興味がありませんが、徐々に主人公にやさしくなり、最後は主人公を溺愛します。
男性妊娠、男性出産。美少年×普通、魔法使い×神子、ツンデレ×誘い受け、ツン九割のツンデレ、一穴一棒、ハッピーエンド。
性的な描写あり→*、性行為してます→***。
他サイトにも投稿してます。過去作を転載しました。
「Copyright(C)2020-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる