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探偵!?

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 あれからと言うものセオドールは、ほぼ毎日昼休みには足繁くテラスにやって来る。
 
 皇族であり生徒会長でもあるセオドールは暇なのか?僕に執着する意味もわからない。

 

「皇族の番になる為には、知識と教養が必要だ」

 尊大な口調で、なに、勝手に話進めようとしてるの!

「まだ番にはなりません」と言い放つ。

「お前謎解きは得意か?」

 会話が成立していない、相変わらずマイペースだ。まあ、前世ではミステリー小説は嗜む程度読んではいたけれど……。

「得意ではないですけど……普通です」

「もし興味があるのなら生徒会室まで来い」

 気が向いたら行きますと返事を濁す。

        ☆

 校舎中央には、吹き抜けの大講堂がある、ステンドグラスから溢れ落ちる日の光は柔らかく、大きなパイプオルガンが置かれている、素敵な空間だ。
 大講堂の西の渡り廊下の突き当たりに生徒会室がある、初めて足を踏み入れる場所だ。緊張した面持ちでドアを開けると、8人の生徒会メンバーが各々おのおの仕事をこなしている、まるで小さなオフィスのようだ。
 
 目の前を横切ったマンチカン種のメスの先輩が「生徒会室へようこそ」とのほほんとした口調で挨拶をしてくれた。

 中央奥の窓際に生徒会長用のひときわ大きなテーブルがある。
 セオドールは目敏めざとく僕を見つけ、こっちへ来いと言わんばかりに指で合図する。
 行くと、奥の談話室に通された。
 
 ロバート(ベンガル種)とキャシー(ノルウェージャンフォレストキャット種)も同席した。

「この生徒は一年のルカだ、事件の解決を手伝ってくれる。キャシー、経緯を話してくれ」とセオドールが促すと、キャシー先輩が話し出す。

 要約すると、校長室の金魚鉢に飼っていた出目金のらんちゅう(時価3万円)が校長が出張から帰って来てみたら、死んで浮かんでいたと言うことだ。

 容疑者は清掃員ビル、教頭のハリー、ちょうど美化週間で校長室へ入室した生徒会のロバートとキャリーだ。

 ワクワクして来て、僕のボブテイルの短い尻尾が忙しなく動く。

「現場を見てもいいですか?」目を輝かせて言う。



「校長、失礼します」セオドールが低い声で言う。

「入りなさい」と声が聞こえて、ドアを開ける。

 ダークブラウンの調度品の家具が敷き詰められ、ダマスク柄の壁紙が高級感を引き立てる、重厚感溢れるインテリアだ。

「校長、金魚鉢を拝見したいのですが……」とセオドールが訊くと。

「いいですよ」と柔かに返答する。

 校長席左の窓際にある飾り棚の上に例の金魚鉢が置いてあった。
 うーん、普通の金魚鉢だ。異物が混入している様には見えないし、西日が良く当たる場所だな。1匹の出目金(ベールテール)が泳いでいる、それにしても鉢に対して金魚が大きい、訊いてみると死んだらんちゅうも同じ程の大きさだったようだ、この鉢に2匹……んー。

「ありがとうございます、それでは入室された方達にお話を個別に伺って宜しいでしょうか?」

 談話室にてーー。
 
 先ずは生徒会ロバートとキャシーから……。

 キャシーの証言「美化週間で入室した時、ロバートが冗談で金魚にネコパンチを3回程、喰らわせてて注意したんです……。爪も出していなかったし、それだけで死ぬとは考えられなくて」

「そうですか……経緯はわかりました、詳しくありがとうございます、考えてみますね。」

 次は清掃員ビルさん、毎日普通に清掃していて、金魚鉢の水換えは難しくて手を付けてなかったとの事。

 最後に教頭、特にいつも通り過ごしていただけだと言う。

「確証ではありませんが……。皆さんを校長室へ呼んで頂けますか?」



「まず最初に、校長と教頭は童心に返って、金魚を弄ったりはしてませんか?」

 校長は一瞬ドキッとした様子で、教頭はいやいやと首を振った。

「まぁ、いいですけど……。生徒会のロバート先輩は金魚に3回ネコパンチをしただけなのでそれが原因とは言い難いです」

 続けて「直接的な原因は、金魚鉢です。見て下さい……大きな金魚が金魚鉢の1/2を占めている、これでは酸素が吸えません、窓際にあるので温度変化も激しい。金魚は7度以上の気温差があると死んでしまいます、もっと大きな水槽に移して酸素を取り込める水草や石、ポンプがあればいいと思います」冷静に事実を伝える。

 一旦、深呼吸をして「動物を飼うという事は、飼い主には動物が健康に過ごせる様にする責任があると思います、まずはその動物を知って下さい、飼育環境も誤認があれば虐待になります、獣人相手だったら殺人になりますよ……」

 校長は気不味そうな表情だった。

 きつい物言いだったと思う、でもどうしても理解して欲しかった。飼っていたクロを思い出して、涙が滲みそうになり俯く。

 そうクロは保護猫だった、初めて会った時、体には無数の怪我があった。
 猫耳は切り傷で二股に分かれ、カギしっぽが可愛い黒猫だった。

 「不躾な物言いをしてすみません……。授業がありますので失礼します」淡々とした口調で話す。

 振り返った時、セオドールの憂懼した表情が見えた。重い空気の中、校長室を後にした。
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