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21話 新しい村
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「でもさ、やっぱりそういうことなんだー」
春菜ちゃんがため息をつく。
私も彼らには裏があるだろうと思っていて、彼らの態度をちょっと迷惑とか思っていたのに・・・真実が知れると腹が立つ。女心は複雑なのです。
「でもアンズちゃんのこと可愛いと思ってはいるんじゃない」
「でも、彼はイケメンだし・・・それにチェリー様は良く見ると、すっごい美少女だけど、私は平凡に可愛いだけだもの・・・」
「そんなことないって、充分に可愛いわよ!」
・・・・・お互いに慰めあってどうするの!
これが旅をつづけて疲れ果てた時なら、ころっといってたんだろうな、そう思いながら春菜ちゃんに、
「ねえ、彼のことどう思っているの?」
私は声をひそめて聞いた。
「日本だったら、ためしのお付き合いになっていたと思う」
春菜ちゃんもこそっと返す。うん、感じのいい人たちだったよね、ちょっと焦っていただけで。私はぴんと閃いた。
「ねえ、彼らの懸念事項をなくしてから考えると言うのはどうかしら?」
「えっ、あの宝玉になにかするんですか」
「それは無理、余裕があれば魔力をそそぐぐらいはやってもいいけれど。それじゃなくて獣人の村と同じことをしようかと思って」
春菜ちゃんもうなずく。
「そうですよね、ここであの宝玉に力をそそいでも、問題先送りですもんね」
「それに開拓していると2ヶ月くらいはかかるじゃない。その間に彼のことを決めればいいでしょう」
「ナイスアイディア!それでいきましょう!」
春菜ちゃんも嬉しそうだ。
「使うのは肥料と種。地道が一番よね!」
うっかりぽろっと話さないように釘は刺しておく。焦っている彼らは薬珠の存在を知ったら飛びつくかもしれない。怖い未来が浮かばないでもないので、春菜ちゃんの耳元で再度ささやく。
「真実の愛を見極める為には宝物の存在は隠しておかなくちゃね。宝物を愛しているだけなんて見た目じゃわからないんだから」
春菜ちゃんも力強くうなずいてくれた。もしかしたら・・・の人なんだからしっかり見極めなくては!
翌朝早速私たちは話し合いを持つことにした。テーブルの置かれている小部屋に案内され、4人で席に着く。
「まずはですね、新しい村をつくりませんか?」
「新しい村ですか?私も考えなくも無かったのですが」
司祭様の言葉にダンリュードさんが続ける。
「お会いした時も、それを調べる為に出かけていたのです。でも貴女方を見て、女神の巫女だと知れたので、とりあえずジークヴァルト様に会っていただこうと思いお誘いしたのです」
どうりでウエルカムムード全開なわけだ。
そして春菜ちゃんが自分の身体を見回す。どこみても普通の人だよね。
「どこが人間と違うのですか」
私も聞きたかった、昨日から気になっていたのです。
「一目瞭然です。貴女方からは神気がかすかに感じられます」
「それって魔力とは違うのですか」
司祭様がなんと言おうかと迷うように一瞬黙り、
「私たち神官は魔力を持っている人のオーラが見えるのです。意識すればで、人によってでもあるのですが・・・
それの透明度が高いのです」
「感覚的なものなのでどう違うとも言い切れないのですが・・・魔力もちでも明るいオーラを持っている人もいますが・・・それとも違うのです」
ダンリュードさんが付け足してくれた。
「それで人間とは違うと言うのは?」
春菜ちゃんも気になっていたようだ。
「魔力持ちは人間でも寿命が長いのです。ましてや神気持ちなら、なおさらのことです。たとえば100歳まで生きるとしたら?、人間の倍の寿命があれば、生き方も変わってくると思います。彼らと一緒に歩むのは難しいですよね」
私は首を傾げる。日本で100歳はいないでもなかったし・・・それに80,90歳と100歳の違いが分からない。
「それに年の取り方が遅いのです。我々エルフも160歳ぐらいまでは若いままです。そこから徐々に年をとっていきます。魔力が衰えるのがそのころなので、魔力が関係しているのでしょう」
春菜ちゃんの目がきらきらしている。
「それって、私も?」
「貴女の寿命が幾つなのかは分かりませんが、もし100歳だとして90歳までは人間で言う20歳前後の姿だと思いますよ」
ダンリュードさんが嬉しそうな春菜ちゃんに優しく教えてくれる。彼女も拳を握ってやりーという顔をしている。
「私は今54歳です。この姿はあと100年続きます。貴女の実際の寿命は最低でもそれだけあるのですから、私たちは同じ時を長く過ごせますよ」
おぉ、彼がジャブを放った。春菜ちゃんは真っ赤にほおを染めている。分かっていても言われるとつい反応してしまう乙女心だ。敵は手ごわい。
「えっと、教えていただきありがとうございました。それでですね、こちらにお邪魔する前に出会った獣人の村で肥料を使って、建て直しをしたのです」
「肥料ですか?」
司祭様が食いついてきた。とりあえずお仕事モードに移ろう。でないと心臓に悪すぎる。
「えぇ、私たちが食事をするように植物はそれを吸収して育つのです。ご覧になりますか?」
「よろしければ、是非」
「それを土に混ぜて、力を与えてあげると野菜が育ちます。森にも同じことをしました。こちらは時間がかかるのでアンズちゃんが魔法をかけて、少し育てましたけれど」
春菜ちゃんの特技も教えておいた。出来るお嫁さんは嬉しいものね。そしてダンリュードさんが飛びついた。
「光魔法ですか?それはめずらしい」
「さすがに女神の巫女ですね」
てれてれしている春菜ちゃん。可愛いだけじゃだめなのよ、色々アピールしないと。男性が何に惹かれるかなんてわからないものね。迷ってはいても、好意を持っている男性に良く思って欲しいというのは普遍の女心です。
春菜ちゃんがため息をつく。
私も彼らには裏があるだろうと思っていて、彼らの態度をちょっと迷惑とか思っていたのに・・・真実が知れると腹が立つ。女心は複雑なのです。
「でもアンズちゃんのこと可愛いと思ってはいるんじゃない」
「でも、彼はイケメンだし・・・それにチェリー様は良く見ると、すっごい美少女だけど、私は平凡に可愛いだけだもの・・・」
「そんなことないって、充分に可愛いわよ!」
・・・・・お互いに慰めあってどうするの!
これが旅をつづけて疲れ果てた時なら、ころっといってたんだろうな、そう思いながら春菜ちゃんに、
「ねえ、彼のことどう思っているの?」
私は声をひそめて聞いた。
「日本だったら、ためしのお付き合いになっていたと思う」
春菜ちゃんもこそっと返す。うん、感じのいい人たちだったよね、ちょっと焦っていただけで。私はぴんと閃いた。
「ねえ、彼らの懸念事項をなくしてから考えると言うのはどうかしら?」
「えっ、あの宝玉になにかするんですか」
「それは無理、余裕があれば魔力をそそぐぐらいはやってもいいけれど。それじゃなくて獣人の村と同じことをしようかと思って」
春菜ちゃんもうなずく。
「そうですよね、ここであの宝玉に力をそそいでも、問題先送りですもんね」
「それに開拓していると2ヶ月くらいはかかるじゃない。その間に彼のことを決めればいいでしょう」
「ナイスアイディア!それでいきましょう!」
春菜ちゃんも嬉しそうだ。
「使うのは肥料と種。地道が一番よね!」
うっかりぽろっと話さないように釘は刺しておく。焦っている彼らは薬珠の存在を知ったら飛びつくかもしれない。怖い未来が浮かばないでもないので、春菜ちゃんの耳元で再度ささやく。
「真実の愛を見極める為には宝物の存在は隠しておかなくちゃね。宝物を愛しているだけなんて見た目じゃわからないんだから」
春菜ちゃんも力強くうなずいてくれた。もしかしたら・・・の人なんだからしっかり見極めなくては!
翌朝早速私たちは話し合いを持つことにした。テーブルの置かれている小部屋に案内され、4人で席に着く。
「まずはですね、新しい村をつくりませんか?」
「新しい村ですか?私も考えなくも無かったのですが」
司祭様の言葉にダンリュードさんが続ける。
「お会いした時も、それを調べる為に出かけていたのです。でも貴女方を見て、女神の巫女だと知れたので、とりあえずジークヴァルト様に会っていただこうと思いお誘いしたのです」
どうりでウエルカムムード全開なわけだ。
そして春菜ちゃんが自分の身体を見回す。どこみても普通の人だよね。
「どこが人間と違うのですか」
私も聞きたかった、昨日から気になっていたのです。
「一目瞭然です。貴女方からは神気がかすかに感じられます」
「それって魔力とは違うのですか」
司祭様がなんと言おうかと迷うように一瞬黙り、
「私たち神官は魔力を持っている人のオーラが見えるのです。意識すればで、人によってでもあるのですが・・・
それの透明度が高いのです」
「感覚的なものなのでどう違うとも言い切れないのですが・・・魔力もちでも明るいオーラを持っている人もいますが・・・それとも違うのです」
ダンリュードさんが付け足してくれた。
「それで人間とは違うと言うのは?」
春菜ちゃんも気になっていたようだ。
「魔力持ちは人間でも寿命が長いのです。ましてや神気持ちなら、なおさらのことです。たとえば100歳まで生きるとしたら?、人間の倍の寿命があれば、生き方も変わってくると思います。彼らと一緒に歩むのは難しいですよね」
私は首を傾げる。日本で100歳はいないでもなかったし・・・それに80,90歳と100歳の違いが分からない。
「それに年の取り方が遅いのです。我々エルフも160歳ぐらいまでは若いままです。そこから徐々に年をとっていきます。魔力が衰えるのがそのころなので、魔力が関係しているのでしょう」
春菜ちゃんの目がきらきらしている。
「それって、私も?」
「貴女の寿命が幾つなのかは分かりませんが、もし100歳だとして90歳までは人間で言う20歳前後の姿だと思いますよ」
ダンリュードさんが嬉しそうな春菜ちゃんに優しく教えてくれる。彼女も拳を握ってやりーという顔をしている。
「私は今54歳です。この姿はあと100年続きます。貴女の実際の寿命は最低でもそれだけあるのですから、私たちは同じ時を長く過ごせますよ」
おぉ、彼がジャブを放った。春菜ちゃんは真っ赤にほおを染めている。分かっていても言われるとつい反応してしまう乙女心だ。敵は手ごわい。
「えっと、教えていただきありがとうございました。それでですね、こちらにお邪魔する前に出会った獣人の村で肥料を使って、建て直しをしたのです」
「肥料ですか?」
司祭様が食いついてきた。とりあえずお仕事モードに移ろう。でないと心臓に悪すぎる。
「えぇ、私たちが食事をするように植物はそれを吸収して育つのです。ご覧になりますか?」
「よろしければ、是非」
「それを土に混ぜて、力を与えてあげると野菜が育ちます。森にも同じことをしました。こちらは時間がかかるのでアンズちゃんが魔法をかけて、少し育てましたけれど」
春菜ちゃんの特技も教えておいた。出来るお嫁さんは嬉しいものね。そしてダンリュードさんが飛びついた。
「光魔法ですか?それはめずらしい」
「さすがに女神の巫女ですね」
てれてれしている春菜ちゃん。可愛いだけじゃだめなのよ、色々アピールしないと。男性が何に惹かれるかなんてわからないものね。迷ってはいても、好意を持っている男性に良く思って欲しいというのは普遍の女心です。
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