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「――ということなのだが、ユーリ殿、おわかりいただけただろうか」

 相手の口調はおごそかで重々しく、表情もひどく真剣だった。しかもなまじ彫像のように整った顔立ちなので、その威圧感はものすごい。
 だが、わかったかと言われても、とうてい納得できるような内容ではなかった。

(そもそもユーリなんかじゃないし)

 私の本名は水口真由利。
 とはいえ、この国のみんなが真由利はすごく発音しにくいというから、便宜上ユーリと呼ばれることを許容しているだけだ。正直私にとっては、彼らの名前の方がよっぽどややこしかった。
 だいたい目の前にいる五人は、

 知の騎士がリュミエール。
 武の騎士はセザール。
 徳の騎士はリシャール。
 愛の騎士で、騎士団長も務めるのがアルトゥール。

 そして彼らを教え導くのが、神の声を聞くという天為魔導師のダ・ヴァロワだ。
 雰囲気的にはフランス風で、響きもすてきだと思うが、たまに舌を噛みそうになる。だから私もこっそり別の呼び方をしているのだけれど……いやいや、問題なのは今そこじゃない。
 五人とも揃いも揃って、まばゆいくらいの男前なのだが――。

「ユーリ殿、お迷いになられるのも当然だろう。しかしながらここはぜひにも頷いていただかなければならない。あなたが聖乙女として目覚め、そのお力で、われらが王太子殿下をお救いいただくためには、四騎士の誰かひとりを選び」

 見るからに謹厳そうなダ・ヴァロワはかすかに頬を赤らめた。

「その者から誠の愛を捧げられ、身に精を注がれなければならないのだ。衷心よりお願い申し上げる。ユーリ殿、どうかご承知いただきたい」
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