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25.エピローグ
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ここからの話は、前世のカイの話です。
転生したカイとは、別の世界線のお話という感じです。
転生したカイは別の世界線で幸せに暮らしています。
──前世のカイは一体どうなったのか?
*
「──、──?──ですか?大丈夫ですか?」
ハッと目を開けた。
一体、何が起こった?
周りは真っ白な部屋で、段々はっきりしてくる視界に、病院、という文字が頭に浮かぶ。
目の前にいる人は、看護婦だろうか。目を開けた俺に気づいて、誰かを呼びにいく。
──なんだか、夢を見ていたようだ。
何の夢だったかは忘れたが、大変な思いをしながらも、最後には愛おしい人と共にいる、幸せな夢だった。
夢から覚めて、心にポッカリ穴が空いたみたいに感じる。…まるで、忘れている誰かが来てくれたら、その穴にぴったりピースがはまるような。
「目が覚めましたね」
その時、医者であろう男性が来た。
「名前分かりますか?」
名前…。
えっと…。
「──か、甲斐、平助です」
「そうですね。甲斐さん、年齢は言えますか?」
「…30歳です」
「住所は?」
「○△です…」
「なるほど、記憶は大丈夫そうですね」
「…あの、何があったんですか?」
何なら書いていた医者は、甲斐を見ると穏やかに言った。だが、その内容はとんでもないことだった。
「…あー、そうですね。色々ありました。まず、貴方は昨夜、道路の真ん中で怪我をした猫を助けようと、道路に飛び出しました──」
そこで轢かれたのか?!
「──しかし、そこで轢かれたわけではなく、車は遠かったので、貴方は助かりました。しかし、その時、突然近くの建物の工事現場に落雷し──」
落雷で…?
「──たのですが、その時点では被害はなかったものの、直撃した工事現場の資材を吊り下げていたロープが千切れ、資材が貴方の上に降り注いだのです。でも、すんでのところで、1人の男性が貴方を引っ張って猫ごと助けました。その男性も、一応病院にいます。貴方が目覚めるまで、居るようですので、後で呼んできます」
「…そ、そうだったんですね…ありがとうございます…すみません」
「貴方が目覚めて良かったです。ちなみに、貴方が意識を失った直接の原因は、過労です」
「か、過労?」
「はい。過労と栄養失調です」
そこで、段々先生の顔が怖くなってくる。
「失礼ながら、貴方は労働環境を見直した方が良いと思います。これ以上無理をしたら、本当に命に関わりますよ」
甲斐は身を縮める。
「…はい。すみません…」
最近、ずっと連勤で徹夜もしまくっていた自覚はある。
「…それについては、また後で話しましょう。何か力になれると思います。では、先程言った男性を連れてきますね。とても心配なさって、お会いしたいと言っていました。あ、ちなみに貴方の助けた猫ちゃんも近くの動物病院にいるので、もし良かったら後でお教えします」
甲斐はペコリとすると、やってくる人物を待つ。
…過労の原因は分かってる。
もう俺を大事に思ってくれる人が周りにいなくなってしまって、俺も自分を大事にしなくていいんじゃないかと、社畜のように働いた。
ずっと寂しかった。
誰か、俺を見つけて欲しかった。
俺を助けてくれたという人。一体、どんな人なんだろう?
パタン。
その時、扉が開いて、ハッと目を向けた。
その人を見た瞬間、俺は何かが全身を駆け巡るのを感じた。
──俺は、この人に……。
その人は、綺麗な金髪に恐ろしく美しい顔立ちの、モデルみたいな美形の男性だった。外国人かな?こちらを見て目を丸くしている。まだ若そうで、もしかしたら大学生かも知れないと思った。
──そして、なぜか彼の顔に見覚えがあった。
いや。会ったことはないはずだ。
俺にはこんな美形の知り合いはいない。
「甲斐さん、目が覚めたんですね…!」
外国人かと思った彼は、流暢な日本語で嬉しそうに言うと、駆け寄ってくる。なんだか犬っぽくて、可愛いと思ってしまった。
近くで見ると、更にイケメンだと分かる。目は灰色がかっているが、光の反射で青くも見える、綺麗な瞳だった。
「あの、俺、勇理・アランって言います!…本当、無事で良かったです」
アラン…何か懐かしい響きだ。ハーフだろうか。
「あ、俺、甲斐平助って言います。アランさん、俺を助けてくれたんですよね…本当、ありがとうございました」
甲斐は頭を下げた。
「いえいえ!…あの、なんか変なこと言いますけど、俺、甲斐さんと初めて会った気がしなくて…。甲斐さんを助けられた時も、何かに呼ばれた気がしたら、資材が落ちてくるのが見えたんで…。甲斐さんが無事で、これ以上ないくらい嬉しいんです」
美形の彼は、優しく微笑みながら、照れたように言う。
いや、可愛いな。
甲斐は、初めて感じる感情に戸惑った。
「…あの、実は、俺も貴方に初めて会った気がしないんです。すごく、懐かしいような気がして…。あの、良かったら、連絡先交換しませんか?今回のお礼もしたいですし…」
こんな大胆な誘い、今までしたことなかったが、アランさん相手にはスラスラ言葉が出てきた。
「…!もちろんです!嬉しいです…これからも、連絡取り合いましょう!」
目の前の美形の彼も、若干食い気味で嬉しそうに言う。
この人と、何だかとても仲良くなれそうで、甲斐はこの奇妙な出会いに感謝したくなった。
それから、2人は医者が止めに入るまで、今まで会えなかった時を埋めるように会話を続けた。
「アランさんは、まだ学生なんですか?」
「そうなんです、大学生で──」
「え!アランさん、モデルの仕事してるんですか?!道理で…──」
「──猫ちゃんのこと、一緒に見に行きませんか?」
「そうしましょう!」
「俺ゲーム好きで…あ、この『光と闇のクエスト』ってのにハマってるんです。…あれ、今見ると、この主人公、なんだかアランさんに似てますね!」
「本当だ!…あれ、このカイってキャラも甲斐さんに似てません?──」
──こうして、彼に出会って、甲斐の人生は一変することとなる。
転生したカイとは、別の世界線のお話という感じです。
転生したカイは別の世界線で幸せに暮らしています。
──前世のカイは一体どうなったのか?
*
「──、──?──ですか?大丈夫ですか?」
ハッと目を開けた。
一体、何が起こった?
周りは真っ白な部屋で、段々はっきりしてくる視界に、病院、という文字が頭に浮かぶ。
目の前にいる人は、看護婦だろうか。目を開けた俺に気づいて、誰かを呼びにいく。
──なんだか、夢を見ていたようだ。
何の夢だったかは忘れたが、大変な思いをしながらも、最後には愛おしい人と共にいる、幸せな夢だった。
夢から覚めて、心にポッカリ穴が空いたみたいに感じる。…まるで、忘れている誰かが来てくれたら、その穴にぴったりピースがはまるような。
「目が覚めましたね」
その時、医者であろう男性が来た。
「名前分かりますか?」
名前…。
えっと…。
「──か、甲斐、平助です」
「そうですね。甲斐さん、年齢は言えますか?」
「…30歳です」
「住所は?」
「○△です…」
「なるほど、記憶は大丈夫そうですね」
「…あの、何があったんですか?」
何なら書いていた医者は、甲斐を見ると穏やかに言った。だが、その内容はとんでもないことだった。
「…あー、そうですね。色々ありました。まず、貴方は昨夜、道路の真ん中で怪我をした猫を助けようと、道路に飛び出しました──」
そこで轢かれたのか?!
「──しかし、そこで轢かれたわけではなく、車は遠かったので、貴方は助かりました。しかし、その時、突然近くの建物の工事現場に落雷し──」
落雷で…?
「──たのですが、その時点では被害はなかったものの、直撃した工事現場の資材を吊り下げていたロープが千切れ、資材が貴方の上に降り注いだのです。でも、すんでのところで、1人の男性が貴方を引っ張って猫ごと助けました。その男性も、一応病院にいます。貴方が目覚めるまで、居るようですので、後で呼んできます」
「…そ、そうだったんですね…ありがとうございます…すみません」
「貴方が目覚めて良かったです。ちなみに、貴方が意識を失った直接の原因は、過労です」
「か、過労?」
「はい。過労と栄養失調です」
そこで、段々先生の顔が怖くなってくる。
「失礼ながら、貴方は労働環境を見直した方が良いと思います。これ以上無理をしたら、本当に命に関わりますよ」
甲斐は身を縮める。
「…はい。すみません…」
最近、ずっと連勤で徹夜もしまくっていた自覚はある。
「…それについては、また後で話しましょう。何か力になれると思います。では、先程言った男性を連れてきますね。とても心配なさって、お会いしたいと言っていました。あ、ちなみに貴方の助けた猫ちゃんも近くの動物病院にいるので、もし良かったら後でお教えします」
甲斐はペコリとすると、やってくる人物を待つ。
…過労の原因は分かってる。
もう俺を大事に思ってくれる人が周りにいなくなってしまって、俺も自分を大事にしなくていいんじゃないかと、社畜のように働いた。
ずっと寂しかった。
誰か、俺を見つけて欲しかった。
俺を助けてくれたという人。一体、どんな人なんだろう?
パタン。
その時、扉が開いて、ハッと目を向けた。
その人を見た瞬間、俺は何かが全身を駆け巡るのを感じた。
──俺は、この人に……。
その人は、綺麗な金髪に恐ろしく美しい顔立ちの、モデルみたいな美形の男性だった。外国人かな?こちらを見て目を丸くしている。まだ若そうで、もしかしたら大学生かも知れないと思った。
──そして、なぜか彼の顔に見覚えがあった。
いや。会ったことはないはずだ。
俺にはこんな美形の知り合いはいない。
「甲斐さん、目が覚めたんですね…!」
外国人かと思った彼は、流暢な日本語で嬉しそうに言うと、駆け寄ってくる。なんだか犬っぽくて、可愛いと思ってしまった。
近くで見ると、更にイケメンだと分かる。目は灰色がかっているが、光の反射で青くも見える、綺麗な瞳だった。
「あの、俺、勇理・アランって言います!…本当、無事で良かったです」
アラン…何か懐かしい響きだ。ハーフだろうか。
「あ、俺、甲斐平助って言います。アランさん、俺を助けてくれたんですよね…本当、ありがとうございました」
甲斐は頭を下げた。
「いえいえ!…あの、なんか変なこと言いますけど、俺、甲斐さんと初めて会った気がしなくて…。甲斐さんを助けられた時も、何かに呼ばれた気がしたら、資材が落ちてくるのが見えたんで…。甲斐さんが無事で、これ以上ないくらい嬉しいんです」
美形の彼は、優しく微笑みながら、照れたように言う。
いや、可愛いな。
甲斐は、初めて感じる感情に戸惑った。
「…あの、実は、俺も貴方に初めて会った気がしないんです。すごく、懐かしいような気がして…。あの、良かったら、連絡先交換しませんか?今回のお礼もしたいですし…」
こんな大胆な誘い、今までしたことなかったが、アランさん相手にはスラスラ言葉が出てきた。
「…!もちろんです!嬉しいです…これからも、連絡取り合いましょう!」
目の前の美形の彼も、若干食い気味で嬉しそうに言う。
この人と、何だかとても仲良くなれそうで、甲斐はこの奇妙な出会いに感謝したくなった。
それから、2人は医者が止めに入るまで、今まで会えなかった時を埋めるように会話を続けた。
「アランさんは、まだ学生なんですか?」
「そうなんです、大学生で──」
「え!アランさん、モデルの仕事してるんですか?!道理で…──」
「──猫ちゃんのこと、一緒に見に行きませんか?」
「そうしましょう!」
「俺ゲーム好きで…あ、この『光と闇のクエスト』ってのにハマってるんです。…あれ、今見ると、この主人公、なんだかアランさんに似てますね!」
「本当だ!…あれ、このカイってキャラも甲斐さんに似てません?──」
──こうして、彼に出会って、甲斐の人生は一変することとなる。
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