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良い友人

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「やっぱ今日家行きたい」

「急に変わったな。分かった」

「ありがとう」

「そういえばさっき捨てられた犬みたいなのが話しかけてきたぞ」

「何か言った?」

「俺からは何も。…本当のことは言わなくていいけど謝ってやった方がいいかもな」

「うん。見かけたら謝罪しとく」

「そうしてやれ」

悪いことしたな。申し訳ない。俺なんかのせいで

「帰りにスーパー寄っていいか?今家なんもないんだよ」

「良いよ。泊めてくれるお礼として夕飯作るね」

「マジ、サンキュ。助かる」

「当然だよ」

「優人はそういうタイプだもんな」

「うん。そうだよ」




ーーーーーーー




「昨日母ちゃんに何されたんだ?」

「珍しいね、聞いてくるなんて」

俊の家で俺の作ったカレーを食べている時に不意に聞かれた。

「まぁ深入りするつもりはなかったんだけど…服の下痛いだろ。それに今日異常に怯えてた。
話したくないならいいんだが、横で友達が辛そうなのを見ると俺も辛い。」

本当に聞くつもりはなかったんだが、と申し訳なさそうに言われる。

「気づかれてたか。うぅん。話すよ。俊にまで黙ってる必要ないし」


それから俺は全て話した。
暴力や暴言、自分の本当の日常を。

俊は俺が泣いて話せなくなっても言葉が途切れ途切れになっても真剣に最後まで聞いてくれた。

「そっか。」

俺の話が終わった後、俊はそれだけを口にした。
今はその言葉が何より温かかった。

話し終えたらお風呂に入って涙の跡を流した。

それから布団に入った時にはもう12時を回っていた。

寝る前に一言だけ言われた。

「耐えきれなくなったら俺の家に逃げてこい」

その言葉が何よりも心強く、せっかくシャワーで流した涙の跡がまたできてしまった。



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