幸せにしてもらわなくても、自分で幸せになります

お爺様の差し金

ヴァーミリアン様に顧みられない私のために、お爺様はこっそりと冒険者になるための教師役を送り込んでくれました。
それがバルトリッツ様です。

どのような身分の方なのかは、詳しく知りませんが…
腕は確かなようで、的確に指導をしてくださりました。

しかも、女性の手にまめは不要
とばかりに、厳しい鍛錬ではないけれど確実に急所を攻撃し
一撃必殺でしとめる方法を教えてくださいます。

必死で私が正面の的に向かっていると
背後から

「わきが甘いよ」

とバルトリッツ様が声をかけてきます。
気配を消して背後に回るバルトリッツ様をいまだに察知することはできません。
とても悔しいのですが、婚約者のいる間訓練できなかったのですから昔の勘も鈍るというものです。

そんな毎日をすごしていたある日、お爺様に呼び出されました。

「ブランシュ、もしまだ冒険をしたいのであれば、バルトリッツを連れて行ってもかまわないよ。」

「婚約者がいる身では、冒険者は夢のまた夢ですわ。」

その時は、今更平民にはなれないと思っていましたから、鼻で嗤ってしまいましたが…
ヴァーミリアン様との関係が思わしくなくなってきたころ、もう1度お爺様に呼び出されました。

「ブランシュ、まだ平民になりたいかい？」

「もちろん!!!このままヴァーミリアン様との婚約がなくなれは、すぐにでも冒険に出たいですわ。」

ヴァーミリアン様とオルタナ様との噂も、かなり大きな声で聞こえるようになってきていましたから、
「本当にかなえられるかも!!」と期待を込めて即答してしまいました。


そのあとは…
手を回してくださったお爺様のおかげで、あっという間に平民になることが出来ました。


しかし…
バルトリッツ様は一体何者なのでしょうね？
平民になった私に同行してくださるのは嬉しいのですが、名前からして貴族のような気がするのですが…

まぁ、今の私はお爺様の手のひらの上で転がされているだけですので、もう少し分別が付いて、実力が上がってきたら検討することにいたしましょうか。

貴族の令息でしたら、リリースしておかないと後々面倒なことになるのは、ごめんです。