上 下
22 / 29

黒髪

しおりを挟む
 まあなんにしてもこれでここもおきなくカノ草に集中できる。俺は早速鍋蓋を召喚し、黒髪に持たせた。さっき俺が使っていた包丁も忘れない。

「よし、そろそろ昼になるし引き上げるかな」

 黒髪に盾(ガラス製の鍋蓋)と短剣(包丁)を装備させてから俺はひたすらカノ草の採取をしていた。だいたいボール2つ分だろうか…やっぱり森はたくさん生えていて、他の本に書かれていた草も少しだけ見つけることが出来た。まあ今じゃボールの中に混ざってしまってどれがどれだかわからなくなっているけども。

「ん、そろそろ帰る? じゃあこれらどうしようか?」

 あーそういえば。俺がカノ草を集めている間にゴブリンが3匹ほどやって来て、足元に転がされていた。

「解体は…出来ないか」

 解体を頼もうかと思ったんだけど、言いかけたところで首を振られた。やっぱり自分と同じで出来ないみたいだ。仕方がないので再びゴブリンを布で包み保管庫にしまって持って行くことにした。

「そうだ昼はこの町のどこかで食べてみるんだろう? 俺も連れてけよっ」
「やっぱり食べてみたいのか」
「そりゃ~ね」
「わかった。まずはギルドよるからその後でまた出しなおすわ」
「了解~」

 黒髪も保管庫にしまってから俺は港町へと戻った。

 ギルドに寄った俺はまず先に解体所へ向かいゴブリンの処理をしてもらう。最初に向かってきた1匹と後でやってきた3匹を取り出しお願いした。昨日と同じように討伐証明部位の切り取りと魔石の買い取りを頼んで、1200リラになった。これで丁度ゴブリンの耳が5つ。カウンターへ持って行けばゴブリン5匹の討伐が完了したことになる。掲示板の所でゴブリンの討伐依頼をはがしてからカウンターへ。ちなみにゴブリンの討伐はEランクの所に張ってあったやつだ。Fランクに討伐依頼はない。

「おめでとうございます。依頼5回が終わり本登録へと移ります」

 あ…すっかりそんなこと忘れていたよ。

「ですのでカノ草が今回3回分ありましたが、2回分だけまず受け取り…その1回分とこちらのゴブリン討伐を本登録のカードの方での報告としておきますね」
「はいじゃあそれで」
「それでですね本登録につきましてカードが出来上がるまでの時間があるので、残りの説明を行いたいのですが今からよろしいでしょうか?」

 それはよろしくないな。今からまずは昼食にしたいし。

「えーと昼食をとりに行きたいんですけど…」
「わかりました。それではまた後でこちらのカウンターへお越しください」

 お金だけ受け取り俺はギルドを後にした。手持ちのお金と合わせると8000リラ、朝宿に1000リラ使ったから昨日と今日で9000リラ稼いだことになる。そういえば知らない間に別の草も買い取られていたみたいだ。まあいらないからいいんだけども。とにかくこれで何とかやっていくめどは立ったな。いるものを買いそろえていくのにはまだまだ足りない感じだが…

 適当に人通りの少ない場所へ行って黒髪を取り出す。2人で町の中を歩いてどこの店で食べようかと健闘をする。中央広場に出ている店はこぎれいでぼちぼち値段の張るものが多い。だけど俺たちはおいしくて安い方がいい。なので広場を物色したあとは港へと向かった。そういえば収納から黒髪を出しなおしたらゴブリンの血にまみれていたのが全くなかったことになっていた。

「はいよ、串焼き2本で300リラなっ」

 港につくと俺たちは早速露店で売っていた串焼きを買った。何の肉かわからないがこの世界では誰もが普通に食べているものだし、問題はないはず。味の好みによるだろうが。

「ん…ぼちぼちうまいじゃん」
「そうだな、ちょっと肉は硬めだけどうまいな」

 串焼きは塩と何かの香辛料がかかっていた。どうやらコショウではないらしい。まあコショウは高いって言ってたし、普通に使っているわけがないな。それにしても串焼きの店が多い…露店で出せる飲食となるとそんなものなのかもしれないが…まあ肉だけじゃなくて魚も串に刺されて焼かれていたのでもちろん買って食べた。こっちは2本で400リラ。肉よりちょっとだけ高め。味付けは塩だけだった。

 俺たちは露店を見て歩きいくつか果物も食べてみた。見た目がリンゴみたいだけど味が桃なモモリン。みかんに見えたけど半分に割ってみると白いつるんとした実が入っていて驚いた。これはライチっぽくて名前はミライ。大ぶりなイチゴの中には細かい赤い粒が入っていてザクロみたいだ。名前はイチクロ。どれも甘くておいしい。今の所酸味の強い果物にはあたっていない。それぞれ1つずつ買って半分に分けて食べた。合わせて900リラ…果物はちょっと高いな。まあ2人分無そうなのかもしれんが。

「…なあ」
「ん?」
「トイレはどこだ?」
「トイレ…ああ、言われてみれば公衆トイレとかあるのかな?」

 ユニの家に居た時はユニの家で、港町に来てからは宿くらいでしか利用したことがない。あーあと冒険者ギルドにもあったかも。

「宿にいこうか」
「よろしく~」

 トイレを使うために俺たちは一度宿に戻ることにした。この世界のトイレは…まあただの穴だな。暗くてよく見えないから中がどうなっているかわからないけどね。

「えーとトイレは中に入って…」

 宿の前についたところで場所を教えようと振り向くと黒髪はいなくなっていた。収納の中を確認してもやっぱりいない。状況は違うけど井之頭先輩の時のようにいきなり消えていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

辺境領の底辺領主は知識チートでのんびり開拓します~前世の【全知データベース】で、あらゆる危機を回避して世界を掌握する~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に転生したリューイは、前世で培った圧倒的な知識を手にしていた。 辺境の小さな領地を相続した彼は、王都の学士たちも驚く画期的な技術を次々と編み出す。 農業を革命し、魔物への対処法を確立し、そして人々の生活を豊かにするため、彼は動く。 だがその一方、強欲な諸侯や闇に潜む魔族が、リューイの繁栄を脅かそうと企む。 彼は仲間たちと協力しながら、領地を守り、さらには国家の危機にも立ち向かうことに。 ところが、次々に襲い来る困難を解決するたびに、リューイはさらに大きな注目を集めてしまう。 望んでいたのは「のんびりしたスローライフ」のはずが、彼の活躍は留まることを知らない。 リューイは果たして、すべての敵意を退けて平穏を手にできるのか。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

処理中です...